※この作品はR-18です。

好色淫乱な武蔵が鈴木君を救う話   作:ヒルベルト

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それから(いろいろあったけれど)ラブソングを

その後。

鈴木が武蔵とセックスすることは少なくなった。

鈴木も武蔵も、セックスよりも学問を楽しむことが多くなった。

全くセックスしなくなったわけではないし、すれば鈴木も武蔵も十分に楽しんだが、あれ以来武蔵が鈴木とのセックスで放心してしまうことはなかった。

あの時のセックスは、鈴木の「マスターピース」だったのだろうと武蔵は思った。

 

学校では…。

佐藤を凜から遠ざけるため、武蔵に(金剛に)勧められたまま、鈴木は努めて笑顔で過ごしていた。

作り笑いではあったのだが、笑顔というものには人を惹きつける力があるらしい。

今まで特に話したこともなかった男のクラスメイトが何人か、鈴木の周りに集まってきた。

続いてやはりそれほど親しくなかった(佐藤の手に落ちていない)女のクラスメイトも。

鈴木は集まってきたクラスメイトに、武蔵から学んだ学問の話をした。

それぐらいしか話すことがなかったからだが、鈴木の話はクラスメイト達を楽しませた。

「鈴木と話していると、なんだか自分も頭がよくなったような気がする。」という評判が立ち、鈴木の周りにはさらにクラスメイトが集まるようになった。

また鈴木は、集まってきたクラスメイト達から、今まで知らなかった面白い話を聞けるようになった。

 

鈴木は今まで親しくなかったクラスメイト達と、楽しみを分かち合うようになった。

作り笑いだった笑顔も、作り笑いではなくなっていった。

 

 

鈴木の周りにはクラスメイトの輪ができるようになった。

しかし竹内みき、山田さくら、委員長(川上さん)の三人は、その輪に入ることができなかった。

輪の中心が鈴木で、三人は鈴木を避け続けていたからだ。

クラスメイトの輪に入れない三人は、クラスでの存在感を失い、クラスでの居場所も失ってしまった。

授業の合間、休憩時間には、三人は佐藤とともに教室から姿を消しているのが常となった。

 

鈴木も、三人がクラスでの居場所をなくしていることに気づいた。

そこで鈴木は意を決して三人に歩み寄ったが…三人は鈴木と目を合わせることもなく、鈴木を避けて佐藤と行動を共にした。

三人は明らかに佐藤への依存/隷属の度合いを強めていたが、歩み寄っても避けられてしまうのでは、鈴木にはどうすることもできなかった。

 

 

クラスメイトの一人が鈴木に、本当に何となく恋愛についての相談を持ち掛けたところ、鈴木からの回答が実に適切であったことが評判となった。

(武蔵から色恋について聞いた話が力になった。)

以来、鈴木はクラスメイトたちからの恋愛相談を受けることが多くなった。

相談は男子からも、なぜか女子からも持ち掛けられた。鈴木は各々の相談に、一つ一つ丁寧に対応した。

 

ある時鈴木は、佐藤が友人の恋人を自分のハーレムに加えようとしていることを知った。

友人たちを護るため、鈴木はすぐに行動を起こした。

武蔵は力を貸してくれなかった…が、知恵は貸してくれた。

(流石に武蔵がこの問題に直接介入してくるようなことはなかった。)

佐藤の意図を挫くため、何よりも友人たちを護るため、鈴木は武蔵や金剛の知恵を借りながら奔走した。

そして鈴木は、佐藤からこの友人たちを護り切ることに成功した。

 

だが、この時佐藤が狙っていたのは一人だけではなかった。

鈴木は友人たちの恋を護るため、武蔵や金剛の知恵を借りながらも、ガムシャラに、それでいて静かに佐藤と戦い続けた。

(静かに、というのは、暴力沙汰になるようなことはなかった、ということである。)

 

静かに、それでいてガムシャラに戦い続けているうちに、やがて鈴木は佐藤を遥かに凌ぐ知恵と行動力を身に付けていった。

そして多くの恋人たちを護り切ったことから、クラスでの…と言うより、学校内での鈴木の声望は高まった。

 

一方、佐藤は学校内で男子の大部分を敵に回すことになった。

また、佐藤が一体どういう男なのか、その正体を知る女子も徐々に出始めた。

当の佐藤がどう思っていたのかはもはや知る術もないが、客観的に見て佐藤の、そして佐藤のハーレムにいる女の子たちの立場は非常に危ういものになっていた。

(ハーレムにいる女の子の中には、石川順のように佐藤を”手伝った”子もいたのである。)

 

 

鈴木と佐藤の戦いは、鈴木の決定的勝利に終わるであろうことは明らかになった。

と言うより、鈴木の決定的勝利は、もはや避けがたい状況であったと言えた。

 

鈴木の勝利は避けがたい。それが問題だった。

 

 

この頃から武蔵は仕事…任務で海外に赴くことが多くなり、鈴木と会うことは少なくなっていった。

鈴木の勝利がもはや避けがたいこと、それ故に生じるであろう事態を、武蔵は憂えていた。

 

そして武蔵は鈴木と、最後になるかもしれない会話をした。

「お前と会うのは、これで最後になるかもしれん。そうなる前に一つ言っておきたいことがある。」

「…それは…残念です。それで、言いたいことって言うのは?」

「この後、お前が学校を卒業するまでにどんなことが起こるか、私にもわからん。だが…。」

武蔵は一旦区切り、続けた。

「…この後どんなことが起こったとしても、それは絶対にお前の所為(せい)ではない。それだけは、絶対に理解しておいてくれ。」

「!!」

 

鈴木は武蔵の言わんとするところを理解し、返答した。

「…わかりました。でも、どんなことが起こっても、僕は僕にできることを、しなければならないことをするだけです。」

「…………。」

「多分、僕は泣くことになるんでしょう。でも、泣くのは…しなければならないことをしてからにします。」

 

武蔵は鈴木を抱擁して、言った。

「…そういうことだ。しかし…お前を励ますつもりが、逆にお前に励まされてしまったな。…お前はやはり、もう『大丈夫』だ…。」

…そして二人は最後のセックスを楽しんだ。

 

その後武蔵と鈴木が会うことはなくなった。

鈴木と佐藤の戦いがどんな結末を迎えたか、武蔵がそれを知ることはなかった。

 

 

さらに二年が経過した…。

 

その日の夜、現場から岩川台営業所に帰還する途上、武蔵は忘れ得ぬ友、鈴木の姿を見かけた。

その鈴木の傍らには、女の姿があった。

その様子を認めると、武蔵は鈴木たちに背を向け、その場を立ち去ろうとしたが…。

 

「武蔵さん!」

…武蔵は鈴木に呼び止められた。

 

「お久しぶりです、武蔵さん。…って言うか、俺のこと見て、逃げないでくださいよ。」

「…女連れのようだから、気を利かせたつもりだったんだがな。…それはそうと、久しぶりだな。それであの後…どうしていた?」

「…やっぱり、泣きました。でも、俺自身はこの通り、です。」

「…そうか…。ところで、そちらの方は?やはり、お前の…。」

「はい、マキって言います。俺の…大切なひとです。」

 

マキと紹介されたその娘は、カーキ色のパーカーを纏い、アイボリーのパンツを穿いた、ショートヘアの、いかにも活発そうな娘だった。

 

「マキ、こちら、黒鉄武蔵さん。昔…俺のセックスフレンドだった艦娘(ひと)だよ。」

武蔵を紹介されたマキは、鈴木の腕を取ってしがみつき、眉根を寄せた顔を武蔵に向けた。

 

武蔵は苦笑いし、マキに話しかけた。

「…そんな怖い顔をしないでくれ。確かに鈴木とはセックスも楽しんだが、あくまでも私と鈴木はただの友達だ。それも昔の、な。貴女と鈴木の間に割り込もうなどとは、思わないよ。」

 

マキは武蔵の説明に納得していない様子だった。武蔵はさらに続けた。

「…それに鈴木が、黙って消えようとしていた私をわざわざ呼び止めて、貴女に私を『昔のセックスフレンド』として紹介したことの意味を察してほしい。」

「………?」

「…そうすることで鈴木は、貴女に対しては絶対に隠し事はしないし、嘘もつかないと言うことを、今この場で貴女に誓ったのだ。」

「………!」

「鈴木は貴女が信じるに値する男だ。それは、私からも保証しよう。」

 

鈴木は少し憤慨して、武蔵に言った。

「もう!武蔵さん、タネ明かしなんてしないでくださいよ!秘するが華って、武蔵さんも言ってたじゃないですか!」

「ハハ、すまん。…だが、マキさんはわかってくれたようだぞ。」

 

マキの表情は少し和らいだが、その表情にはまだ困惑が残っていた。

「………。」

「まだ何か、心配かな?」

ここでようやく、マキは口を開いた。

「何か、武蔵さん、鈴木と息がピッタリだなって…。武蔵さん、アタシの知らない鈴木のこと、たくさん知ってるのかなって思っちゃって…。」

「はは、なんだ、そんなことか…。」

 

「私は確かに貴女の知らない鈴木を知っている。だが貴女だって、私の知らない鈴木を知っているではないか。」

「え?」

「例えば…自分のことを『俺』と呼ぶ鈴木、とかな。」

「…!」

「それだけではない、このまま貴女が鈴木と共に生きていけば、私が知っている鈴木のことも知るようになるだろう。そして、私も知らなかった鈴木のことも知るようになるだろう。そうなれば、貴女は私などより鈴木を理解するようになる。それでいいではないか。」

「あ…はい…ありがとう、ございます…。」

 

武蔵は鈴木の方に向き直った。

「そうか、お前はもうすっかり『大丈夫』なんだな。」

「はい。」

「いろいろあったが、お前はようやく、落ち着いて『ラブソングを歌えるようになった』のだな。」

「…はい!」

 

「おめでとう、心から祝福しよう。その証(あかし)と言っては何だが…お前たちには、これを贈ろう。」

武蔵は鈴木に、縦に二つ並んだ手旗を手渡した。

 

「これは?」

「船乗りの常識、国際信号旗だ。今日、私が警備を担当したイベント会場で配布されていたものだ。」

 

「…とは言っても、そのイベントは海とも船とも関係のないイベントだったし、警備担当者の私にまで何故これを配ったりしたのかと首をかしげていたのだが…。もしかすると、今日、この場でこれをお前たちに贈れと言う天意が働いていたのかもしれないな。…ああ、ちょっと待ってくれ。」

武蔵は旗に何かを書き込み、あらためて鈴木に手渡した。

 

「信号旗には意味がある。この旗の意味は、あとでマキさんと調べてみてくれ。」

 

「もうその必要もないだろうが、縁がまだ残っていたら、またいつか、どこかで会おう。…さらばだ。」

そう言い残して、武蔵は鈴木とマキに背を向け、手を振りながら去って行った。

 

鈴木はそんな武蔵の姿に一礼し、マキを伴い、武蔵に背を向けこの場を立ち去った。

 

 

 

武蔵が旗に書き込んだ文字は…

From Musashi Kurogane for unforgettable friend and his pertner.

(黒鉄武蔵より、忘れ得ぬ友と、その伴侶のために)

 

信号旗自体の意味は…

「U」「W」(航海の安全を祈る≡君たちの行く路に、平安と幸いあれ!)

 

そしてこの後、鈴木と武蔵は二度と会うことはなかった。

 




…以上です。最後は駆け足になってしまいましたが、私なりの「鈴木君への救い」を示してみました。自分でこう書いておいて何ですが、竹内さん、山田さん、川上さんには残酷過ぎたかもしれません。この三人にも救いをもたらすようなssも出ないものかと思いつつ、ここで筆を置かせていただきます。
※ 2021/04/18 22:30 追記 勘違いに基づいて書いてしまった部分があったので修正しました。 これまでこの作品をご覧いただいた方、特に「お気に入り」に加えてくださった方には、心よりお詫び申し上げます。
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