ハンティング・ナイフの原型でもボウイを
砥石で必要以上に磨ぐ彼女。
彼女は「“MK-8ボウイナイフ”の手入れちゃんと
してくれたんやね」そう、いとおしく長さ8インチの
ボウイスタイルの両刃を持つナイフを見つめる。
喜んでくれてなりよりだ。
彼女と路上で下品なマネする雌たちの間を
横切っていく。
「おにいさん~安くするわよ」
「イイことしない~」
「絶頂! イクイクイクイクイクイクイクッ!」
「Wow……これはキョーレツやね」
彼女も苦笑いしている。すまない、もう少し
居住場所を考えるべきだった。
狭い路地を抜けた先に〈天才探偵の弟子☆Mitsuhiko
相談所 人探しや未解決事件の待ってます〉
というふざけた看板を掲げたドア。
彼女は一秒間にインターホンを百連打して
探偵を呼び出す。
「誰だっ!」
「依頼人や」
怒号をあげ飛び出す雄のジャイアント・パンダ
に真顔でそう言った。「どうぞ博士、
おとなしくわたし達を中へ招きいれた。
彼と旧知のなかで、きっと
わたしが来た目的を察したのだろう。
「笹茶でも──」
「スッースッー」
事務所の台所で笹茶を焙煎しようとしたパンダ。
だが、彼女はカウンターの上に粉を集め、
棚からせしめたストローで鼻から一気に
吸い込む“スニッフィング”をやった。
「ビールもらうね」
「全部、持って帰ってもかまいませんよ」
「あんがと。でも一缶でダイジョブ」
それから冷蔵庫を自然にあさり、わたしが
座るソファーの隣へ腰をおろしビールを
あおっていく。
「ヒュー再会の一杯は最高やね
「気づいてらしたんですか?」
「もちろんや。
声は絶対に忘れへん」
やはりそうかっ! 流石だ。気づいた上で
厚かましい行動していたんだな。
いくら姿かえても……声やしゃべり方まで
完璧に変わるワケではない。
強面で粗野な岩石を積み立てような筋骨隆々の
ジャイアント・パンダになろうとも
『探偵団の頭脳No.3』だった円谷 光彦としての
「ご用はなんでしょうか。灰原さんの件ですか?
それともコナン君やお母さまの……」
「まぁ~それもあるやんけど、チキン・ジョージ
博士がなんか用件あるらしいで」
「そうだ、円谷くん。預けていたモノを
出してもらえないだろうか」
「少しお待ちを」
円谷くんは砂漠色するズボンのポケットから
鍵を取り出す。小走りで台所へ向かい、床下を
開ける。そこからアンティーク木製のケースと
革製トランクを上へあげた。二つを
抱えて卓(テーブル)に置く。
「どうぞ」二百年の眠りから同時に放たれる
彼女の得物。ケースのほうにはダークグレー・
グリップ、レールドフレーム、3ホールトリガー
を備えたキンバー社製のカスタム1911である
米海兵隊の特殊部隊が暫定的に採用した
カスタムガンこと〈ICQBピストル〉を
トレースしたウォーリア。母親から
譲りうけ長い間、愛用してきた45口径拳銃を
スライド(遊底)を前後に動かし
彼女はバックサイド・ホルスターを
円谷くんから受け取り、装着。KW(キンバー・
ウォーリア)入れる。だが、弾がはいってない
ことに気づき、卓において次の得物へ
手を伸ばす。
H&K社製ハンドガンの小型(コンパクト)
バージョン、USP。正式名称は
用意された法執行機関向けの拳銃。彼女が
実戦用としてメインに持ち歩いてるものだ。
次は二つで一対。象牙製のグリップに髑髏と
二本のカトラスの装飾を埋め込んだ
グロック社のハンドガン、合成樹脂
(プラスチック)で製造された
ポリマー・フレームが特徴の17。
バレルを六インチ、スライドも一インチ延長した
シルバー・カラーモデル。
どうやら母親が使ってるUSPの発展型の
が採用する
H&K社製大型ハンドガン、Mk.23カスタム
“ソード・カトラス”を元にしてるそうだ。
最後は……
「久しぶり
──スライドとグリップ(銃把)の間を
折り畳めるフレームのグロック22。
セミ/フルオートの切り替え用レバー付きの
特別版。彼女が実の叔父みたいに慕った
人物の遺品らしく、とても大切な得物っ。
ショルダー・ホルスターを両脇に吊るし
円谷くんが用意した45ACP、.50AE、5.56x45mm
弾 などを弾倉へ装填していく。わたしは
手伝いながら「この世界での貨幣取引は
9mmや.357マグナム弾やダイヤモンド、金貨
だ。細かくはのちに実際みせよう」と
通貨について話した。
彼女は「オモロイやん。まるで核戦争後の
ロシア地下道でサバイブするゲームみたいや」
わたしの言葉に微笑んだ。そうだ……ホントに
あぎゃあぁあああぁああと耳障りな悲鳴が、
穏やかなひと時をぶち壊した。
銃器や弾薬などの型番や口径はすべて
ローマ字表記にします。
ナイフも同様です。