やかましい雄のクロヒョウの悲鳴。
期待してない惨劇に、わくわくする彼女を
よそに円谷くんとわたしは準備をはじめた。
新ベイカー共和国の法律に『自分の身は
自分でまもれ』と記されている。だから
やるしかないのだ。はやくしなければ……
感染が拡大してしまうっ。
「博士、これを使ってください」円谷くんは
マーリン社のボルトアクション・ライフル、
M983を渡してきた。わたしは護身用に持ち歩く
ローム社の安物リボルバー、RG-66のシリンダーを
横に振りだす。454カスール弾が六発ほど
装填してあるを確認した。
「あたしにもなんかちょうだいや」
円谷くんは、彼女にねだられてモデル12こと
ウィンチェスター社のハンマー内蔵式ポンプ
アクション・ショットガン、M1912を貸す。
“ドア・ブリーチ”弾(スラッグとも)を受け取り、
彼女は飛びはねながらドアを蹴り開けて
外へ飛び出す。折りたたみストック付き
レミントン社の870ショットガンを握る
円谷くんとわたしも後を追う。
「あぁ゛ぁ゛ああ゛ぁ゛ぁ゛ぁああ゛ぁ゛ぁあ゛ぁ゛
っっ゛」
「Wow~あらぶってるんやん」
大通りはまさに死屍累々だった。
赤柄のボンテージ姿した雌のヒョウが、
ヤギと羊にむしゃぶりつかれている。
「うびっ?」眼球が突出して、黒目の割合が
小さくなった目で赤い腸を咥えたまま、振り向く
前に頭を四散させた。
「どんとこい!」どうやら、彼女の喜びのツボを
刺激したらしい。血の海と化す路上を
スキップしながら、
コッキングさせている。
ためらう様子もなく引き金を絞る彼女。
弾が切れたら、M12を逆さにして
シャッシャッと一瞬で弾倉チューブへ押し込む。
やり慣れているのだろう。8番の散弾を二発ずつ
直列に握っている。リズミカルに頭蓋骨と
脳味噌を粉砕していく。
「あぶないですよ」円谷くんもS&W社のマグナム・
リボルバー、4インチの腐食に対する耐性を持つ
ステンレススチール製M629を抜き撃つ。
さすが私立探偵、修羅場なれしているっ。
わたしと円谷くんも彼女が仕留めそびれた
感染者を処理する。
いつの間にやら動くモノが居なくなった
表通りに、
「動くな!
どうやらベイカー共和国の
特殊武装戦術部隊まで呼び寄せる大騒ぎに
なってしまったようだ。ベレー帽を
かぶる雄のドールビッグホーンが近づき……
「レインちゃん?」
「あっ、ロム兄ちゃん」
誰か知らないが、二百年前の知り合いのようだ。
「おかあさん、どこ? お姉ちゃんは?」
「いやっ──」
「言い淀んでるつーなら、ツラ貸してよ。
この場を処理したあとにでエエから
「了解しました“お嬢さま”」
目尻が下がっている水色の瞳には
動揺しつつ、喜びも感じられるっ。
〈バーボン〉か。どこかで聞いたことある
ように思うが……もしかしたら二百年前の
言葉かもしれないっ。後で“ログ”を確認しよう。
「ねぇーあたしにもマグナム買ってやー」
「もちろんだ風呂要らいん。選りすぐりの
最高級品を買ってあげよう」
「ウェーイ」
〈感染者インセイン〉を容赦なく虐殺しても
罪悪感を抱かないとは……さすがの
さて──ドールビッグホーンに
後始末をまかせて、わたしたちは買い物へ
向かおう。彼女の一級マグナム・
リボルバーを見つけるために。
次は、母親回です。