高校2年生の始業式。その日俺は鏡の前で自分の左目を見ていた。
「目立つよな……やっぱり眼帯するか……」
彼女の”天使”を引き継いだので左目が時計になってしまっている。後、髪が若干白味がかっている。影響が大きすぎる……それでも俺は学校に行って彼女のことについて極秘裏に調べなくてはならない。
「はぁ……朝飯作るか……」
「士道さんも大変ですわね……」
「ああ、そうだろ」
俺には”彼女”が見えるが本当は”見えていない”。他の人からすればただの独り言にしか見えないのだ。それでも俺の心が壊れないのは彼女が居るからである。
「おはよ~おにーちゃん」
琴里が起きてきたので皿を出す。俺は特に空腹でもないので自分の分はいらない。
「おにーちゃんは食べないのか~?」
「特に腹減ってねえし、別にいいよ」
そうしてテレビを付けると、ニュースで空間震について報道していた。
「ん~予定よりちょっと早いかな~」
それを俺は聞き逃さなかった。早い?恐らく何かを隠している。精霊についての。
「琴里?昼飯は何にする?ファミレスでいいか?」
琴里はデラックスキッズプレート!!というので先に言っておく。
「おお!!分かってるなおにーちゃん。終わったらファミレス前に集合だぞ?」
そうして俺は学校に行き自分のクラスと席を確認すると、席に座り彼女と話す。
「士道さんは、2年4組なのですわね。相変わらず殿町さんが居ますけど……」
「腐れ縁だ。仕方がない、やつとは呪いに掛かっているんだ」
「ふふふ、士道さんも冗談ができるようになってきましたわね」
「それは無いだろ、狂三がからかってくるから対抗だ」
俺は一人で話しているように見えるだろう。しかし隣に居た彼女はそれを知っていた。
「また、見ているの?」
「ああ、折紙か……まあ、仕方ないものだ……俺の精神的な問題だからな」
彼女にはあの時よりも以前に会っていると言われているが覚えていない。しかし、1年生の時に色々問いただされ、幻覚を見ていることは話した。それ以外は話していない。
「それでも、貴方が心配。眼帯は外さないし口調も少し変になったりしている」
それは彼女の影響で眼帯は仕方がないとして口調が変わるのはどうにかしたい。移ってしまっているのだ。彼女の人格が俺に。
「あらあら、そんなことを言われても直せませんわよ。っ……またか」
「最近酷くなっている。少し休んだ方がいい」
俺もそうした方がいいと思っていた。いつも彼女の傍に居るだけで休めるのでファミレスで食べたら、部屋で休むことにしよう。
「少し、休める時に休むよ」
そうしてホームルームが始まった。担任はタマちゃんだったので心配はないと思った。そして授業が終わると警報が鳴り始める。
「仕事。貴方も来る?」
「ああ、少し精霊を見てみたい」
折紙は一応俺の考えには同意している。折紙の親はイフリートに殺されたと言っていたが俺がしっかりと記憶を整理していると違う人物が浮かび上がり、精霊を手助けしてそいつに会うことを目的としている折紙と俺の精霊を助けるという目的が一致しているのでよく行動している。
「ああ、<プリンセス>か。相変わらず、あしらってるな」
ASTの隊員が戦うがあしらわれている。
「私も行くけど貴方も行くの?」
そう、俺には”これ”がある。折紙は少し知っている。
「ああ、お姫様とお話をするためにお前以外の人は少し眠ってもらう」
「じゃあ、私は此処に待機している。危なくなったら呼んで。すぐに行く」
折紙との信頼関係は色々と複雑だが助け合える中ではあると思う。
「いくぞ……<刻々帝>、<狂々帝>」
俺は二つの”時計”を出すと白と赤の軍服に着替える。そして手には軍刀と現代的なハンドガンが握られている。
「やるか……<刻々帝>。、<一の弾>」
自分にヘッドショットをして、速度を上げる。虚空を蹴るのは慣れている。その速度は目で追うことはできない。そうしてお姫様の前に降り立つ。
「ごきげんよう、<プリンセス>。貴方様の助太刀に参上いたしました」
相変わらずの口調、これは狂三の口調が男っぽくなっただけであるが。
「む?助太刀とは、本当だろうな」
「では、行動でお見せしましょう。<狂々帝>、<巨蟹の剣>」
そうして空間を切断し彼女らASTのCRーユニットを破壊する。
「ふむ。なかなかやるではないか。私は力でどうにかしようとするからお前のような奴が居ると助かる」
「いえいえ、貴方も勘で戦う分には恐ろしいですよ」
そうして、彼女らを気絶させて姫と話す。
「で、お名前は?」
「そういえば……名前は……なかったな」
名前がない。要するに純粋な精霊であると思う。
「………十香とかどうです?まあ、単純ですけど」
「うむ。いい名だ、それでどう書くんだ?」
それで俺は軍刀で地面に十香と書く。
「ふむ。分かったぞ、しかし時間の様だ。そういえばお前の名を聞いていなかったな」
「わたくしは、五河士道。彼女の意志を継ぐもの、悪夢のなり損ないと覚えていただいた方がよろしいですわ」
「何故口調が変わっているのだ?」
「それは癖です。気にしないでください」
そうして彼女は消えた。そうして折紙がこちらに来る。
「どうだった」
「上々かな。とりあえずこの人たちを運んだ方がいいな……遠い人集めてくる」
そうして集めて折紙に後を任せる。
「じゃ、俺は帰って休むな。お疲れ、折紙」
「お疲れ様。士道」
そうして帰る途中に謎の浮遊感があり、何処かに転移させられた。
「………?」
周囲を見渡すとSFチックなつくりになっている。そして奥から誰か来そうなので銃を構えておく。
「ふむ。銃を構えているとは、警戒されているかな?」
「ええ、警戒してますよ。私を此処に誘拐して何がしたいんですか?」
目の下の隈が酷い女性に聞く。今にも倒れそうで怖い。
「私には敵意は無い。私は口下手でね、此処の上司に聞いてもらえると助かる。付いてきたまえ、案内しよう」
そうして、敵意が無いことは分かったので霊装を解除し、眼帯を付ける。そうして行くと、船の重要な所に着いたようだった。
「ここに件の人がいる」
「ようこそ、<ラタトスク>へ……歓迎するわ」
黒リボンをした琴里だった。何だ妹かと安心する。
「で……これが……」
精霊とAST、精霊の封印方法について説明を受けるが狂三にすべて聞いていたので復習になった。
「あらあら、教えたかいがありましたわ」
「そうだな……教えてもらって聞くと意外ともっと覚えるな」
「他の事も教えましょうか?後からでも教えられますわ」
「そうだな。宜しく頼む、俺の目的とお前の目的を果たすために……な」
そうして彼女と話していると。
「士道?誰と話しているの?」
「独り言。気にすんな」
いつもの様に気にしないと思っていた。はずが、
「おかしいわよ、あの日から独り言と言っていても誰かと会話してる。部屋には入れてくれないし。何があったの?あの日、2年前の4月10日に……」
「やめろよ!!関わるな!!」
声を荒げると琴里は聞いて不味かったと思っているようだった。
「ごめん……でも、なんで天使使えるのくらいは教えて欲しいんだけど」
天使、それぐらいはいいか。
「修行して使えるようにした」
そのまま言ったはずだが、ポカンとしている。
「修行して使えるようになったの?天使の同時顕現なんて危険すぎて出せないのに……」
そんなにすごい事なのか?でも俺はやることがある。
「あのさ、話はこれだけか?精霊は助けるけど……家に帰りたいんだが……」
頭をかすめる彼女の顔。何故かそれを考えると頭が痛む、幻覚と現実で齟齬が起きているからである。
「早く……っ……家に……帰して……くれ」
「わ、分かったわ。士道?最初に来た位置に戻って。そうすれば帰れるから」
そうして、俺は壁を伝いながらもと来た道を戻る。
そうして戻ると浮遊感とともに家の目の前に転送された。
「狂三……」
俺は部屋に行き彼女の傍で意識を手放す。そうしないと耐えられないからだ。
~琴里side~
私は司令官という立場で聞きたいことを聞いたまでなのに、あのことに兄が激高したことがただただ怖かった。
「何で、<ナイトメア>の天使を使えるのか。そうして<ナイトメア>の反転した時の天使も使える。そして二年前のこと。何でだと思う?令音」
私の親友でもあり大事な部下である優秀な人物だ。
「今、彼を見ていたら”狂三”という単語を口で話しているのが分かった。何かしらナイトメアと関係があったと言ってもいいだろう」
うちの兄がそんなにも酷い状況だと思わなかった。恐らく<幻覚>。そして眼帯をしているのは左目を隠すため。口調が変わっているというのは恐らく天使の影響だと思われる。
「ナイトメアと何かあって彼は変わってしまったのかい?」
「多分そうでしょうね……部屋に何か……あるのか。それとも記憶に手がかりがあるのか」
私はまず部屋を探すことにした。あの時までは部屋に入ってよかったのに、あの日から部屋に入るなと言われたとき殺されそうな感じがして怖いと思った。
「……部屋には鍵が掛かってるし、窓はカーテンで閉められているし、それなら鍵を開けて入った方が良さそうね。明日、入ってみましょう。令音?」
「分かっている、証拠は残さないさ」
自分の部下は優秀であることには絶対の自信がある。
「でも、過去の映像を見ても分からないのよね……何でかしら?」
過去を見ても何も分からない。すべて壊されていたから。
~士道side~
起きると午後5時。夕飯を作り始めないといけない時間だ。意識を覚醒させ、辺りを見渡す。鍵は掛かっていたので誰も入ってこない。でも彼女だけは誰にも見せたくはない。この綺麗な俺だけの愛する人を。俺は一階から濡れたタオルと乾いたタオルを持ってきて体を拭く。毎日しているから匂いはしないし、綺麗なままの体を維持できている。拭き終わり、部屋を出る。そうすると彼女が待っていた。
「士道さん、ありがとうございます。いつもすいませんわね」
「自分で好きにやっているから気にすんな。帰ってくる前に夕飯の支度をしなきゃな」
「そうですわね……今日は魚などはいかがでして?」
「そうだな!それにしよう」
俺はリビングに行きエプロンを付け冷蔵庫から食材を取り出し調理を始める。
「相変わらず、料理がうまいですわね。士道さん」
「そんなことねぇよ、両親が居ないから俺が料理するしかなかったんだ」
「それでもですわ。自分で調理を研究するのは素晴らしい事ですわ」
「そうか。誉め言葉として受け取っておくよ。……っ……ちゅ……」
「ちゅ……ちゅば。キスは最高のご褒美ですわよ。頑張ってくださいまし」
「ああ、頑張るよ……」
俺は一人、夕飯の準備を進めていた。
「ただいま……士道?もう大丈夫?」
「ああ、治った。飯は出来てるから手を洗って来い」
「分かったわ……」
俺は一人で彼女と話していた。
「なぁ……俺の部屋を見ようとしてるのか?どうだと思う?」
「恐らく、見ようとしてますわね。別にいいですけど……士道さんがどう言われるか……」
「だから俺は見られたくはないんだが……見られた時のことを考えておかないとな」
「正直に言った方がいいですわよ。目的は隠して、可哀そうだったからとでも言っておけばいいですわ」
「分かった。そう言っておくよ……ありがとな……狂三」
頭を撫でる、俺には感覚が分からないが狂三は嬉しそうにしている。
そうしていると、琴里が丁度戻ってきていた。
「士道?その手は……何?」
行き先をなくした右手が空中に停滞していた。それを下すと椅子に座る。
「何でもない。とりあえずご飯食べようぜ」
この時の食事はお通夜のように静かだった。
「ねぇ……士道?部屋……見ちゃ……駄目かしら。一応許可を取りたくて」
「やっぱり気になるか……じゃあ、これ」
そして俺の秘密のカギを渡す。勿忘草のキーホルダーを付けている無機質なカギを。
「勿忘草?何で?」
「部屋に行ってみれば分かる。でも、見ても……後悔しないか……?俺が壊れた原因を見て壊れないか?」
壊れたモノを見て俺はオカシクなった。それを増やすわけにはいかない。
「分かったわ。明日見て、理由を聞くわ……ごめんなさい」
「いいんだ……絶対に壊れるなよ?」
俺は洗い物をし風呂に入って部屋に戻った。
「綺麗にはしておくか……後はあんま漁られないように重要な物は出してい置いて……よしこれで良いか」
そうして俺は彼女の隣で寝る。隣で寝ることは普通になったが知ったらどんな顔をするだろう……死体と寝ているなんてことに……そんなことを考え、眠りにつく。
~琴里side~
私は許可を貰い、鍵を受けとった。それで、何故かこんなにも緊張しているのだろうか……司令官というのに知りたくないという本能が動き始めている。
「琴里?あまり緊張は良くない。落ち着いて深呼吸だ」
「すーーはーー。ふぅ、落ち着いたわ。開けるわよ」
そうして久しぶりに彼の部屋を開けた。彼の部屋は薄暗くこれを付けろと言わんばかりの青く光るランプがあった。
「付けるわよ……っ……」
私は目を背けたくなった。写真、服、そしてホワイトボード。それら全てが見たくない物になった。それでも私は見なければならない。彼の真実を知るために。
「とりあえず、布団をめくってみましょ……っ……」
彼女が眠っていた。いや、死んでいたと言った方がいいかもしれない。
「………シンはこれと一緒に寝ているということか」
それは死体と寝ていることになる。匂いなどはしない、士道が綺麗にしているのだろう。でも、何故そんなことを?それを見つける鍵は机に置いてあった。
「何かしら?アルバム?開けても……いいわよね?」
「いいんじゃないか?シンはそのために置いているんだろう。その箱と一緒に仕舞っているとみていいだろう」
隣にある箱を見る。紫の蛇が箱の全体に描かれている箱。とりあえず、開けてみることにした。
「……っ……え?」
そこにあったのは、宝石。クリスタルと言った方が聞こえがいいかもしれないが血が付いていた。淡く輝く宝石は血に濡れ汚れていた。
「これが彼の隠していた秘密の一つじゃないかい?彼女の中に入っていたものだった。それを彼が大切に保管している」
恐らくそこに居る彼女の物だろう。そうして丁寧に仕舞いこみ今度はアルバムを見始める。
「………4月10日から一年間。楽しむことにする。……7月、12月、2月、3月、4月10日……っ……彼を喰らう日。……っ……士道は中三の一年間を過ごしたら死ぬつもりだった……ってわけ……」
恐ろしい、あのナイトメアがそこまで彼に恋心を抱いていたのは分かった。その最後の日に何かが起こり彼女は死んでしまい、おかしくなった。
「………読んでいて気分がいいものでは……ないね」
令音がそんなにも拒絶するところは見たことが無かった。あの令音でさえ、恐ろしいと思うのだろう。
「ん?カメラ?何が入ってるのかしら?……っ」
電源を付けると恐らく士道が彼女を撮った写真が千枚程度記録されていた。
「ああ……それをあまり見るのはいけない……違う所を見よう琴里」
電源を切り、元あった場所に置く。そして飾られている服を見る。
「これって……霊装よね……洗濯されてる。こっちは私服かしら?……下着も付いている……着物?こんなものまでって……あ……」
アルバムやカメラに収められている服だ。彼が買って送った物だろう。
「今でも……取っておいているのは……彼女を忘れないため……だろうね」
そして壁に貼り付けられている写真を見る。プリクラや撮ってもらった写真。それと何があったのかを記しているメモが貼ってあった。
「………彼氏彼女の関係は確定ね……でも……自分が死ぬことに抵抗を持っていない……何でかしら?」
その隣にあるホワイトボードに全て書いてあった。
「これって……何?FBIの仕事じゃない……彼女が死んだのは……DEM執行部長……エレン・M・メイザース……殺害対象……会うか接触してくるまでは、精霊を救うことに専念……彼女のような犠牲者を出さないために情報を整理してる……って所かしら」
私は何がどうなっているのかが分からなかった。見ても理解しても何も分からない。
「………何がしたいんだろうか……目的が分からない……彼女の場合、霊力で過去に戻りたいと書いていたね……それだったら、シンは……」
「自分が霊力を封印できる唯一の存在。その霊力を使って過去に戻り全てを”なかったことにする”。それが目的かしら……」
無かったことにする。彼の目的はDEMに復讐。彼女の思いを引き継ぐ。その二つ。
「協力者がいないとおかしい……それか……彼に助言をしている人物がいる?」
「令音?何言ってるの?」
私の親友が推理を始めた。
「恐らく、協力者がいないとここまで調べられないだろう。そもそもDEMのことをどうやって調べる?知っている人物に聞かなければ分からないだろう。それと、恐らくだが彼には幻覚として狂三が見えている。その彼女が知りたい情報を彼に伝えている。それならばここに物が出ていることも理解がつく」
司令官の私にもようやく理解できた。
「狂三は彼にしか見えない。協力者がいる。でも、どうしてナイトメアにターゲットを絞ったのかしら?DEMには利益は無いはず」
「単に邪魔だったからじゃないかな。彼と一緒に居るところを見られその時ならば隙かできる。それを狙って殺しに来た」
それによって厄災<ディザスター>を生み出してしまったということになる。
「ああ、見たんだな。よく壊れなかったな……」
兄が部屋の横で待っていた。その隣にはあの精霊が居た。でも目が彼に依存しているような……あまり気にしないようにして話す。
「見たことは……謝るわ……でも……貴方の口から聞きたい……ああなってしまった理由を……」
彼は納得したように……話す。
「いいぞ、俺が心を……壊した理由を……十香?聞くか?」
「シドーがああなってしまったのを知りたいんだ。私と同じなら……私と悲しみを共有できる……だろう?」
そんなことを言うと彼は頭を撫でる。それは慣れている手つきで。
「分かった。無理すんなよ。じゃ、下降りて話そうか……」
そうして私は話を聞きに部屋を出て鍵を閉めた。
~士道side~
今日は琴里が部屋を見て俺の秘密を知ってしまう日。終わった後には帰ろうと思い学校が休みだと分かっていながらも私服で学校に向かった。学校は臨時休校。何となく学校を見ていると、知っている声に呼ばれた。
「シドー?何をしているのだ?」
そこに居たのはドレスを着た戦姫だった。その恰好ではまずいと思い、路地裏へ連れて行く。
「十香?まず、服をどうにかしよう。これだとASTに見つかる」
「むう。仕方がない……どんな風ならいいのだ?」
「俺と同じ格好はできるか?」
そうすると彼女の体が光り、俺と同じようなジーンズの格好になる。
「これならばいいのか?」
「そうだな……じゃあ、遊びに出かけようか」
そうして二人でデートをする。俺はデートをすると記憶が刺激され、頭痛が酷くなる。狂三とのデートの記憶を十香で上書きしているからである。
「っ……あ……」
「大丈夫か?シドー?」
「お前にも言っておかないといけないな……」
しかし、言うタイミングを逃し続けて気づくと高台に居た。偶然にもあの時と同じ時間。
「ここは、綺麗だな……」
「ああ……そうだなっ……はぁ……ふぅ……」
此処に居ると思い出してしまう、その記憶がフラッシュバックされ意識が飛びそうになる。
「うっ……はぁ……」
「本当に大丈夫か?誰か人を……」
「呼ばなくていい……此処に居てくれ……俺が壊れる……」
人に頼らないと壊れる。こんなにも記憶によって自分が壊れるとは思わなかった。
「ふぅ……はぁ……はぁ……」
「私は此処に居るぞ……何処にも行かいからな……」
そうして、俺が落ち着いた後に十香に俺の全てを教えることにした。
「大丈夫か?教えるのに何故天使を使うんだ?」
「こっちの方が分かってもらえるから。……<刻々帝>、<十の弾>」
その弾を撃つと俺の一部分の記憶が見える。そうすると十香は顔を青ざめる。
「シドーは……自分が死ぬことになっても怖くないのか?」
「俺は初めて好きになって人に悲しくなってほしくなかったから……死ぬくらいは別にいいと思ってた」
俺の考えは一人の考えで違った考えはまだたくさんある。
「そのために、狂三を取り戻すために自分を”殺す”のか?」
「俺は何があろうと狂三を取り戻す。自分が死んでも構わない……彼女が生きていればいい。それだけだ……」
そんなことを見た十香は俺に抱きついて来た。
「なら、私はシドーの目的のためにシドーの力になろう……支えてやる。私が居る限り」
「そっか、ならいいよな……目を閉じて……」
十香が目を閉じるのを確認するとキスをする。そうすると彼女の服が消えた。
「む!服が消えたぞ。どうすればいいのだ」
「買った服でも着てればいい。ワンピースでいいか」
そうして着れば、誰にも分からない。俺の秘密を知ってしまったこの子も守ることになるのか……
「じゃあ、俺の家に帰ろうか……ご飯も作るし、何がいい?」
「そうだな……ハンバーグが食べたいぞ!」
その話をしながら買い物をし、家に帰って部屋を覗くと彼女らが部屋を出るところだった。
「見たことは……謝るわ……でも……貴方の口から聞きたい……ああなってしまった理由を……」
そういわれたので、リビングでその話をする。
「分かってると思うけど、狂三とは恋人だってのは分かったよな?」
頷く。その後のことを話そう。
「俺は好きと伝えた日に彼女の秘密を知った。その時に俺を目的としているって言ったんだ。俺は君のために死ねるならと言って殺すことを了承した。でも、条件として狂三と一年間過ごすって言って一年を過ごしたんだ。その一年たった日に俺は殺されようとした、けどあの女に殺された。だから俺の部屋には彼女が居るし遺品として物が置いてある。忘れないためにも。でも、今日。デートしてると記憶が塗り替えられて俺が壊れかけたんだ。俺はもしかしたらデートが出来なくなるかもしれない。それだけは言っておく」
その話を聞いて、私は兄をメンタルケアしないといけないと思った。隣を見ると令音は考え込んでいた。解析官だから他の事も考えているのだろう。
「シドー?私も部屋を見ても……いいか?」
「見てもいいけど……後悔しないか?」
それならばと鍵を返す琴里。
「はい。鍵、勿忘草を付けてるのは……愛してるから?」
受け取った時にこう言った。
「彼女に愛してるって言われた。その時に言えなかった俺の罪を意識させるために着けてる。それは俺の負の感情そのものだよ」
それを聞いて、悲しいのか虚しいのか分からないようだった。それはそうだ。俺にしか分からない。
「十香?準備はいいか?」
「いつでもいいぞ……」
俺は自分から十香を部屋に入れた。
「………っ……あ……」
彼女の死体を見たときに口を押えるのは仕方ない。俺は何も思わなくなってきた。
「これが……狂三か……そして、服、写真……全部シドーが送った物か?」
「ああ、狂三にプレゼントしたのも、写真を撮ったのも大体俺だ」
全て俺が設置した物。彼女が起きたときに必要なものを用意しておいているのだ。
「そうか……シドーは……もう狂三が居なくても……生きていけるか?」
その答えは、
「無理だな。俺は彼女が居ないと生きていけない、俺と何もかもを共有したから居なくなった彼女の分の心がなくなって俺の心に穴が開くのは当たり前だろう?」
そうして、十香と部屋から出て夕食を食べる。またお通夜のようになってしまった。俺が原因ではあるんだが……
「士道……精霊は十香だけじゃないってわかってるわよね……」
「分かってる……でも、体調だけ悪くなるかもしれない」
記憶を同化して、齟齬を起こさせる。それによって俺は記憶の整理を余儀なくされる。
そして俺は夕飯と風呂に入り、部屋で一人、狂三を撫でる。なにも反応が無いが……それだけで良かった。今日は静かに眠って彼女を感じる。それだけを考えて眠った。
彼の部屋はほぼストーカー?病んでる?のでしょうか。あまりにリアルな感じに書けなかったですけど。次は女神をも理解する壊れた心。そして初めてあの力を使います。
さあ、出てこい!<俺達>!