~士道side~
あの日から、数日経つと家の隣にそこそこ大きいマンションが出来ていた。
妹が言うには精霊用のマンションだと言う。一応、十香が住んでいるが……他の精霊が来てもいいように部屋はたくさんあると言っていた。
「だからって……でかすぎないか?」
何度見ても大きい。それに精霊用なので顕現装置が使われている。頑丈で音は出ない。隣に住んでいても大丈夫だと言われた。
「ええ、精霊が他にも居ると言ってもこれは大きすぎますわね……」
俺の隣に居る”彼女”が話す。
「やっぱり……そうだよな……」
暫くマンションを眺めていると、十香が玄関から出てきた。
「シドー!おはようだ!」
彼女は俺が”二人目”に封印した精霊、夜刀神十香。食べることが大好きな俺のクラスメイトで俺の秘密を知っている人物でもある。
「今日は体調は悪くないか?……前みたいになると戸惑ってしまうからな……」
封印した時の俺の状況を見て最近はそんなことを気に掛けてくる。
「大丈夫だ……今日の弁当な……じゃあ、行こうか」
「うむ!!遅れないようにするのだ!!」
彼女と登校する……何となく俺の”彼女”との記憶により十香が”彼女”とタブって見える。ブラウン管のテレビのようにノイズが掛かったり消えたり……それが最近起こっている。頭が痛むことはなくなったがこれが起き始めた。
「…………………」
学校へ行くと雨が降り始めた。校舎には入れたので濡れはしなかった。
「士道。おはよう」
「ああ、おはよう折紙」
彼女も俺の理解者である鳶一折紙。そろそろ……あれを見せるべきだと思い、話す。
「今日……暇か?ちょっと俺の家に来てくれないか……あれを見せる」
彼女は驚いた顔をしたがすぐに心配する顔になる。
「それはいいの?貴方がそんなことをしたら……」
「いいんだ……一応、折紙には協力してもらったし……知っておく権利はある」
そうだ。情報をくれたのは折紙でASTに入っているのでDEMの存在を知ることができた。敵の名前が分かっただけでも返しきれない恩である。
「………分かった。彼女にも見せたの?」
彼女とは十香の事であろう。仲良くはしているが、彼女の事も士道と同じような目で見ている。
「見せたよ……自分から見たいって言って……そしたら、あのザマだ」
理解はしてくれたが困惑という感情が渦巻いているためどんな顔をしたらいいのか分からなくなっているのだろう。
「それじゃあ、放課後。貴方の家に行く」
そうして放課後、彼女が家に訪問しに来た。
「いらっしゃい、折紙。荷物はリビングに置いてくれ……俺は部屋の前で待ってる」
俺は部屋に行き扉の前に立つ。そうしていると”彼女”が話しかけてくる。
「士道さん?彼女に見せていいんですの?あれは……耐えられる人は……限られていますわ……」
「それは……そうだけど……見せなきゃいけない。俺は……決めたんだ」
そう話していると折紙が向かってきていた。
「”彼女”と話したの?」
「ああ、見ても耐えられるかって。話してた」
俺の部屋は綺麗だがある意味”汚れている”。
「開けるぞ……」
ガチャと扉を開け、電気を付ける。そうすると俺にとってはいつもの光景。彼女にとっては恐怖の光景になる。
「………っ……」
最初はあまり反応しなかったが……
「彼女は布団?見ても……いい?」
「ああ……いいぞ」
めくった時の反応は少し怯えているように見えた。
「彼女の遺品、それを飾っているの?写真や服……思い出を……消さないために」
「そんなところだ。どうやっても俺の部屋はこのままだ……何をしても変わらない」
この全てを消した時、俺は俺でなくなる。絶望しありとあらゆる物を破壊し続ける精霊になってしまう。
「そう……でも、なんでこれが置いてあるの?」
指を指したのは写真と線香。何となく手を合わせたくなったら線香を立てるようにしている。
「一応死んでしまった……からな……手を合わせる場所はあった方がいいと……思ってな……」
彼女は手を合わせる。そうしてくれるだけでも俺は楽になる。
「貴方の悲しみは少し受け持つ。私の感情を持ってもらっているから」
その言葉は分からなかったが、受け持ってくれることにはありがたかった。
「ありがとう……じゃあ、部屋を……でるか」
そうして、十香と折紙で夕飯を食べその日は終わった。
そして次の日は休みだったので買い出しに朝から出掛けていた。
「う~ん……何にしようか……」
俺は”彼女”と一緒に考える。
「昨日は……肉料理でしたわね……魚も……やりましたし……最近寒いですし鍋などがよろしいのでは?」
「そうだな……寒いし鍋にしようか」
そうしてその提案に乗り、鍋の材料を買う。精霊の食費はラタトスクから出ている。あの十香はブラックホールなので食費が高くつくので、すごくありがたい。
「十香さんはよく食べますし、多めに買っておいて損はありませんわ」
「そうだよな……多めに買わないと冷蔵庫が空っぽになるしな……ん?」
俺は”彼女”と話しながら帰っていると、帰り道の神社で合羽を着た女の子を見た。
「合羽に……パペットって……<ハーミット>?静粛限界か……」
折紙からは聞いていた、精霊の情報に一致する。俺は救わねばならないのでその子に近づく。
「え……貴方も……精霊さんですか……?」
精霊と知っている?それならば俺はあっちで振舞わなければならない。
「そうですよ。<ハーミット>さん、此処じゃあ話しづらいですから私の家に来てもらえますか?ご飯もご馳走しますよ」
何故かご飯とワードに目をキラキラさせていたので少し鍋の材料を使って、小さな鍋を作ることにした。
「ただいま~」
「おお!シドー!お帰りだ……精霊を連れてきたのか?」
十香も勘が鋭く大体のことは分かってしまう。十香も帰ってきているのであれば普通に鍋を作ることにした。
「では、リビングでくつろいでいてください。私は作っていますので」
「へぇ~料理できるんだね~」
パペットが急に人格を持ち始め、話をし始めた。
「いや~ホントに料理がうまいね~」
「………!……!」
「相変わらずうまいなシドー!!」
彼女らとパペットが俺の料理している姿を見て褒めているようだ。
「くすくす、士道さんは小さな女の子に好かれてますわね」
「余計なお世話だ。俺は知らないけどよく好かれてしまう……狂三みたいな人に会いたいよ……お前が居れば何もいらない」
野菜を切りながらそう言う。少しソファーの方を見ると彼女らが不思議そうな目で見ている。
「まあまあ、一人で話しているから不思議と思っているのではありません事?」
「仕方ないだろ……お前は俺にしか”見えない”。だけど居なくなったら俺が壊れる。俺は生まれたときからこうなることを決定づけられているのさ……」
鍋のベースになるものを入れ、火にかける。
「シドー?狂三と……話しているのか?」
十香も分かっているらしい。それもそうだ、折紙が話すことと言えば俺の事を話す。
「十香は折紙から聞いたのか?」
「一応聞いてはいた……一人で楽しそうに話しているときは”狂三”話しているときだと折紙が言っていた」
「そんな楽しそうに話しているのか?」
俺はそれだけがよく分からなかった。最近は笑うことも多いと思ったが、笑っているようで笑っていないのだろうか。
「ねえねえ、自己紹介をしたいなって~よしのん思ってるんだ~」
そうして鍋を煮込んでいる間、名前を聞いた。彼女は四糸乃。パペットはよしのんでもう一人の人格的な物であると分かった。それで、何故攻撃しないのかを聞いたところ相手も痛いのは嫌だからという慈悲に満ち溢れた答えだった。
「おにーさんは、何者~?」
「わたくしは……っ……私は五河士道」
「士道君ね~。何で今、口調が変わったの?」
そうして俺がある精霊の力を引き継ぎ、目的を果たすために精霊を救っていると話した。
「へぇ~士道君は、色々大変な目に合ってるんだ~。それで話してた子はよしのんたちには見えないから……幻覚?」
「精神的に来てるからです。直しようがありません……彼女が戻ってこない限り」
「彼女って……狂三ちゃん?」
よしのんには分かっているようだ。
「時が来たら、私の秘密を見せますよ……一応、”彼女”を見ることができますけど……」
そう話していると、鍋から煙が出始めた。
「?あ……出来たみたいですね……食べましょうか」
そうして鍋を食べる……四糸乃の鍋を食べている様子が”彼女”と重なり始める。俺はあまりそっちを見ないようにしながら食べ始める。
「士道さん?……どうか……しましたか?」
四糸乃に気づかれた。
「ああ……何でもないです……」
食事をしているときはあまり見ないようにしたが避け続けるのも限界があった。今回は”彼女”が重なる時間は長かった。
「ふぅ……長かった……全然リラックスできないな……」
「大丈夫ですか?士道さんは一度休んだ方がいいですわよ」
”彼女”がそう言うと言うことはかなり来ているということだろう。
「休むか……大体終わったし……風呂に入って寝よ……」
そうして俺は眠りについた、しかし彼女を抱きつきながら寝るなど……これを見た人は気持ち悪いと言うだろう。
そうして次の日、起きて鏡を見ると髪が白くなり始めながら反対の方が黒くなり始めている。流石に染めた方がいいのかもしれない。
「何で前髪から変わっていくかな……青っぽい方が俺みたいでいいと思うんだけど……」
「そうですわね……士道さんのトレードカラーは青色ですもの」
「やっぱりそう思うよな……眼帯しながら髪がいかついって……変人だと思われるな……」
そうして眼帯を付け、朝食を作ってリビングに居ると十香が家に来たようだ。
「シドー!おはようだ!……やはり、四糸乃はいないか……よしのんを置いて行ってしまったようなのだ」
彼女の手にはパペットを持っている。そうなれば四糸乃がどうなるか……預かっておくことにする。
「よしのんは預かる……ご飯食べて学校に行こうか……」
そして学校に行き昼休みになると警報が鳴った。
「仕事。来る?」
「ああ、行く。十香も行くぞ」
「分かった。私も精霊の力を出せるからな」
そうして三人で現場に向かうと大きなドームが作られているのが見えた。
「<ハーミット>が作ったドームを破壊しないと、住民が出られないから隊長が攻撃をしている」
その情報を聞くと、俺はあれを使おうと思った。
「それなら、俺の能力でかく乱か……二人とも手伝ってくれよ?」
二人が頷くのを見て俺は天使をだした。
「<刻々帝>、<八の弾>」
そうすると、俺の影から”俺”が続々と出てくる。
「久しぶりだな、俺。で何すればいい?」
「ああ”俺”達で折紙と十香をサポートしつつかく乱を頼む。彼女と話を付けてくるよ」
「了解。じゃ、頑張れよ……俺」
グータッチをして”俺”達は空に飛び立っていく。
「シドーは分身もできるのか……初めて見たぞ」
「彼女の力だから、これで死なないことに説明がつく」
二人はそれぞれ感想を言っているが、四糸乃に届け物をしなければいけない。
「二人とも?宜しく頼む……よっと……」
俺はビルの上から降り空を蹴って向かう。そうして彼女が作ったドームの中にどうやって入ろうかと考える。
「士道さん?<灼爛殲鬼>を使えば壊れますわよ」
「<砲>を使えばいいか……<灼爛殲鬼>、<砲>!!」
そうして撃った炎はドームを破壊し、赤い道を作った。
「士道さん……ひっぐ……よしのんが……」
「忘れ物……」
そうして彼女の手にパペットを装着させる。そうすると陽気な声で話し始める。
「いや~助かったよ士道君。まさか落として忘れ物になるなんてね~」
「ありがとう……ございます……」
これなら、いいか?そう思い聞く。
「よしのん?少し四糸乃を借りてもいいか?」
「もっちろ~ん。暫くおとなしくしてるね~」
そうすると力が抜けたようにしゃべらなくなる。
「で……四糸乃?目を瞑ってくれるか」
目を瞑ったのを確認すると俺は唇にキスをした。
「士道さん……これって……」
「封印した……はいこれ。ん?こっちは終わった?……ああ、こっちも計画通りに行ったよ」
「誰と話してるんですか?」
見てもらった方が分かるだろうと思い、一人出す。
「よう。俺、で新しい子か?」
「封印に成功したから……一応分身からも聞こうと思って」
そうして報告を受ける。その時の四糸乃の目は白黒していた。
「被害は無し。って所だな、それじゃ影に戻る」
「お疲れ、俺……」
そうして、封印に成功した俺は司令官である妹に報告をしていた。
「で、終わり。理解した?」
「大体分かったわ、四糸乃は検査に入れたし……士道は大丈夫?」
妹なりに俺を心配しているのだろう。
「大丈夫だ……でも、今日は晩飯は別々な……ちょっと寝る」
そうして報告をし終わった俺は風呂に入って寝る。”彼女”と一緒に寝ているとあの時を思い出す……彼女の素肌を触っていると色々欲情してしまう。それを我慢しながら眠りについた。
~琴里side~
「四糸乃?検査は大体終わったからマンションに案内するわ」
そうして四糸乃を案内する。その時にあることを聞かれた。
「あの……琴里さん?士道さんの秘密って……何ですか?」
「よしのんも気になる~」
二人には秘密があるとは言っていたのだろう。それで気になってしまうとは……
「士道に聞けば見せてくれる……でも、見ない方がいいかもよ……私は……もう、見たくはないわね」
「それぐらい見たくなくなるとちょっと見てみたくはなるよね~」
そうして部屋に案内する。
「欲しいものがあったら言って頂戴。隣には十香が居るから困ったら声を掛ければいいわ」
「はい、ありがとうございます」
「でも、見に行くんだったら……覚悟しておくことよ……私は覚悟しても、駄目だったわ」
そうしてマンションから出る。彼はもう寝ているだろう。私の仕事はまだ続く。
~士道side~
今日は休みだったのでリビングでくつろいでいると四糸乃が遊びに来たが……深刻な顔をして訪問してきた。
「あ、あの……士道さんの……秘密……教えてください……」
「よしのんも気になってさ~。いいかな?士道君?」
何となく気づいてはいた。彼女にも見せる予定ではあってが大丈夫だろうか……一応、倒れないように近くに居ようと思った。
「分かった……無理はするなよ?」
そうして部屋に行き、鍵を開ける。
「此処が……士道さんのへ……や……?」
思ったよりも反応が不味い。がたがたと震えているので抱っこをする。
「え!?……士道さん?」
「大丈夫だ、俺が居るから怖がらなくてもいいぞ」
そうして四糸乃が見たいところを見せて回る。
「狂三さんは……優しい人でしたか?」
「俺には勿体ないくらい優しい人だったよ……」
俺にはその優しさは重すぎた。
「なら……私が狂三さんの代わりに……優しくしてあげます……士道さんがつらくならないように……」
俺はその慈愛に甘えることにした。そして頭を撫でる。
「なら、ちょっと付き合ってくれるか……」
そうして線香を立て、二人で合掌する。最近多いが、何となくやっておかないと気がすまなくなってきたのだ。
「ありがとうな……暫くはいいと思う……」
そうして、部屋を出て鍵を閉める。そうするとキーホルダーが気になるのか四糸乃が見てくる。
「士道さん?その花は……どういう意味なんですか?」
「私を忘れないで、真実の愛。俺は期待に沿えなかったけど……」
俺はそのカギを握り、そう思う。何処で俺はマチガッタ?
「狂三さんのことをとっても……好きだったんですね……」
「一目惚れってやつだよ……」
その言葉に驚くのは当たり前だと思う。しかし俺は変わらなかった。
「じゃあ……四糸乃?出かけるか……?」
その言葉に喜んでという顔をしてくれた。俺は精霊を封印をしながら目的を果たす。
”彼女”は絶対に生き返らせる。何があっても……
女神は優しさ、戦姫は悲しみ。
それを受け持ってくれた二人の他にまた受け持ってくれた精霊になってしまう折紙さん。
次は双子を書きます。