~士道side~
「士道さん?こっちですわよ?」
「士道さん?あ~ん。美味しいですか?」
「士道さん?これは……どうですか?」
「士道さん……ありがとうございます」
「後悔は……ないですの?」
「私は……絶対に……忘れませんわ」
「愛していますわ……士道さん……」
俺が殺した。殺した、殺した、殺した、殺した、殺した、殺した、殺した、殺した。
「士道さん?何で見殺しにしたんですの?」
そうだ。俺は見殺しにした。
「何で死んでくれないんですか?」
早く死ぬべきだ。
「わたくしに喰らわれてくださいまし。貴方はわたくしを見殺しにした、最低なクズですわ」
「士道?こんな夢なんて見ないで……」
何故?この夢が俺の求めているモノだ。
「違う。士道は生きるべき、彼女の願いを引き継ぐんでしょ?なら生きなきゃ」
そうだった……忘れていた。
「思い出してくれたみたいだね。私が貴方を助ける。私は貴方の中に存在してるから……」
「は……っ……う……」
洗面台に走って吐く。最近の夢は酷い。一応助けてくれる人はいるが、段々と酷くなっている。洗面台は血と胃酸で汚されている。顔を見ると目が赤くなってきている。髪は白と黒のツートンカラーになってしまっている。”彼女”に強く影響されているのだろう。
「大丈夫ですか?士道さん?」
「う……おぇ……」
吐くのが止まるまで暫くかかった。
「はぁ……はぁ……本当に何なんだ……」
「大丈夫ですわよ……士道さんの近くに居るのはわたくしですわ」
今日は修学旅行の日だが、俺は朝から最悪の目覚めをした。
「士道?死にそうだけど大丈夫?」
妹には心配されるが行くべきだろう。彼女らを見守るために。
「令音は行くけど……私は行けないから、神無月に船を任せて付いて行ってもらうわ」
「分かった……とりあえず行ってくる」
空港に着くと彼女らはもう来ていたようだった。
「シドー?大丈夫か酷い顔だぞ」
「士道?飛行機に乗ったら休んだ方がいい」
二人が言うくらいだから、休んだ方がいいだろう。そうして飛行機に乗った俺はまた眠りにつくことになった。
ー士道は考えないで……私が何とかするから……今は、いい夢を……ー
声が聞こえた後には目が覚めた。
「………?」
もう着陸するようだったので、シートベルトを付けた。そうして修学旅行先の或美島に着いた。
「或美島ねぇ……一応カメラは持ってきたけど……俺にしか見えないからな……」
「でも、わたくしの写真を撮ってくれるのでしょう?嬉しいですわ」
俺にしか見えない写真になるが、記録として残しておくのはいいことだと思う。
ひそひそと話し声が聞こえる。
「ねぇ士道君はイタイ人なの?一人で話してるし、髪とか眼帯してるとか……」
「何となく病気っぽいよね~」
「マジ引くわー」
いつもの三人組か、と思い無視する。案の定俺は変な人扱いだ……でもこれで孤立できる。
「これで、一人になれるな……思う存分狂三の写真が撮れるな」
「あらあら、そんなにわたくしの写真を撮りたかったのですの?」
「そうだよ……最近の写真は無かったしな……ちょっと撮ってみたいとは思ってたんだ」
そんな風に話ながら、道を歩く。とても懐かしく……もないと思う。
「………?風が強くなってきた?これって……<ベルセルク>?」
「来ますわね……しかも、此処に」
雷と暴風が起こり、飛ばされそうになるがすぐに止んだ。その中から二人の女の子が出てきた。
「双子?すごい既視感がある人と、すごいだるそうにしてる人が居るな……」
「わたくしも思い出したくない記憶が思い出されそうですわ……」
二人で話していると戦いになりそうになる。なので止めに行く、精霊には精霊の力を。
「<刻々帝>、<一の弾>。<狂々帝>、<天秤の弾>」
因果を変えた。そうすると、二人は空気が変わったことに気づき攻撃を辞めた。
「お主は何者だ。我が八舞の争いに首を入れようなど……死にたいのか」
死にたい。その言葉によって俺はコワレタ。
「………」
二つの”時計”は目まぐるしいほど回転し始め俺に力を分け与え続ける。バチバチと音が鳴り、俺の軍服も色が濃くなっていく。
「もう一回言ってみろ……死にたい?ふざけんな!!」
俺の目が赤く染まる。”彼女”のように。そして二人に剣を銃を突きつける。
「死ぬのって……怖いよな!?なあ!?そう思うだろ!?」
彼女たちは後ろに下がっていく。それでも俺は近づいていく。
「耶倶矢?これは人生最大の事をしでかしましたね」
「知らないし!気に障ること言っただけで死にかけるなんて分からなかったし!」
「ああ……そろそろ……限界だ。俺達?こいつ等を拘束しろ」
そうして、俺の分身が彼女らを捕まえる。
「いい子だ……お前らには……しっかりと”死ぬ怖さ”を教えてやるよ……覚悟は出来てるだろうなぁ!!」
そうして影に連れ込もうとした時に、声が掛かった。
「シドー!!何をしている!!」
その声を聴いて正気に戻って、霊装を解除する。
「悪い、なんかおかしくなってたみたいだ。ありがとう十香」
彼女が近づいてきているので受け止める形で抱きつく。そして頭を撫でる。
「この馬鹿者!資料館に居ないから心配したのだぞ!」
そういえばここは資料館から離れた場所だった。一人、”彼女”と話したかったのでこっち側に来ていた。
「ごめんな……よしよし。で、あの二人は気絶してるか……あれを素でやってしまったからな……運ぶか。令音さんに連絡頼む」
「分かったのだ。あ、令音か?士道が見つかったが……」
そうして二人の精霊を肩に担いで運ぶ。そうすると彼女が話しかけてきた。
「あらあら、士道さんはわたくしよりも怖い精霊さんになってしまわれましたわね」
「何か、死ぬって言われた時に狂三のことを思い出してさ……狂三みたいに命の重さを分かってない奴に教えようとするとああなっちゃうんだよ」
「くすくす、どれだけわたくしに愛を注ぎたいんですの?わたくしは今の愛情で十分ですわ」
そんなことを言われるが……そんなものでは足りない。”彼女”は大切な人だから。
「どうしてこんなことになったんだい?彼女らは精霊だろう?」
二人を見た令音さんは怪訝そうな顔をして二人をベットに寝かせた。
「ちょっと、言われたくないことを言われたことにキレて二人を気絶させちゃった……ってとこですかね」
「何をしたかは聞かないがそれは控えた方がいい。霊力反応が計器が壊れてしまうほど高かったからね」
そうして彼女らは暫く起きないということなので、俺達は研修をすることになった。研修はすぐに終わりホテルに入った。
「シン、彼女らが目覚めた。話をしに行った方がいい」
令音さんに言われ、俺は教員用の部屋に入ると二人が楽しそうに話していた。
「本当に助かったよね……マジで死の危険を感じたわ~」
「憤慨。元は耶倶矢が言ってはいけない禁止用語を言ってしまって怒らせたのが悪いです」
いつもあの調子なのだろう……仲良しな双子だと言う印象を受けた。
「どうも、<ベルセルク>」
挨拶すると、彼女たちはこちらに首を向けて後ずさる。
「大丈夫ですよ。危害を与えるつもりはありませんから……私の失態です」
そういってお互いの情報を交換した。彼女らの名前は耶倶矢と夕弦、八舞という精霊だったが何度目か現界した時に分かれてしまった。一つになる時に人格が片方消えるのでその残る人格を決めるため勝負をしている……とのことだが。
「で、そっちは精霊なの?精霊じゃないの?どっちでも言えるような……そんな感じ」
初めてそんなことを言われたが、俺のことを話すよりも記憶を見せた方が良いということに気づいたので天使を出す。
「シン?何故天使を出しているんだい?」
「知ってもらうんだったらこっちの方が効率が良いんですよ。<刻々帝>、<十の弾>」
そうして二人に撃ち込むと彼女らの顔がどんどん暗いものになっていく。俺の記憶を見た者は最初はこうなってしまう。
「だから……”死”っていう言葉に怒っちゃうんだ……大体わかった」
「……どうやって見ても可哀想です。どうしてこんなことに?」
「それは、私の部屋を見れば分かりますよ……見て気持ちの良いものではないでしょう?ねえ、令音さん?」
見たことがある人に聞くと大体の答えは……
「見ていて気持ちの良いものではなかったよ……あまり見たくはないね」
この通り、見たくないと答える。
「それで付いてくると言ったら見せてあげますよ……私が壊れた理由を」
二人は付いていくと言った。なのでとりあえずこの子たちをデレさせる使命を持っている俺の出番になるというわけだが……
「ちょっといい?一回眼帯外してみて」
そう言われたので眼帯を外す。
「へぇ……時計になってるんだ……天使と同じように……進んでるけどこれはどういうことなの?」
「時が”進む”ということは私の寿命も”進む”ということです」
二人は驚く。ナイトメアはそれをなくすために人から時間を吸い上げていたのだ。眼帯を戻し彼女たちを見る。
「私は”彼女”から引き継いだ……記憶も、目的も。ならば私は世界を壊そう……死んでしまった”彼女”のために私は何でもしますよ……貴方達は私の計画に必要ですから」
二人の顎を猫のように上げる。その目を見つめると俺に魅入られているようだった。俺の赤くなりつつある目に。
「はぁ……貴方達は何やってるんですか。ちゃんと起きなさい!!」
二人にデコピンをする。そうすると正気に戻り額を押える。
「いた~い。何するの!」
「貴方達を正気に戻しただけですよ。私は部屋に帰りますから。令音さん後は宜しくお願いします」
そうして俺は部屋から出て自分の部屋に向かった。
「はぁ……またやってしまった……癖の強い口調はどうにかしたいな……」
「ぷぷぷ、士道さんの口調はとても面白いですわ。ぷぷぷ……」
「仕方ないだろぉ、狂三の天使が原因なんだからさぁ……」
そういってベットに倒れ込む。
「でも、彼女たちは従うしかありません事よ。あの目に魅入られた人は暫く士道さんの事しか見れませんもの」
「そんな効果あったのか?魅了みたいな」
「ありませんわよ。でも、士道さんはそういう効果ができ始めているのかもしれませんわね」
自分に新しい能力が生み出されていると思うと何かあまり誇らしくない。どっちかというとがっかりに分類されるだろう。
「はぁ……明日から忙しくなるなぁ……」
「頑張ってくださいまし……明日を頑張るためにわたくしは士道さんに抱きつきますわ」
そうして感覚は無いが彼女が俺の体に飛び込んでくる。すごくイケナイ気分になる。
「なぁ……すごく……アホになりそう……」
「頭まで溶かしてあげますわ……」
そうして俺は眠ってしまった。
そうして2時間たった後扉がノックされたので飛び起きる。彼女はもういなかった。そうして扉を開けると……双子だった。
「士道よ……今宵の晩餐を食しにいこうではないか!」
「翻訳。耶倶矢は士道と一緒に食べさせあいっこしたいにゃ~。と言っています」
「分かった、今すぐ行って猫のように扱ってやる」
「どうして~!!」
そうして食べさせていると本当に猫に見えてしまう。猫……その時にまた”彼女”との記憶と今のしていることが合わさり始め、手が震え出す。
「………っ……ふっ……はっ……」
震える右手を左手で抑える。これを押えなければまた壊れる。
「質問。士道?どうしましたか……耶倶矢?毒でも盛りましたか?士道が青ざめています」
「は?毒なんて持ってないし!」
「ならばどうして手が震えているのでしょう?禁断症状でしょうか?」
そうしていると十香たちがこちらに来た。
「シドー?またか?」
「また来た……今回はえげつないくらい震える……部屋に行って休む……肩貸してくれ」
そうして俺は部屋に連れていかれた。
「はぁ……ふぅ……」
「大丈夫か?最近酷くなってきているのではないか?」
狂三と重なる。それで俺が拒絶として体に異常を出しているのだ、暫くは動けそうにない。
「十香?……俺が……寝るまで……一緒に……居てくれ……っ……」
「よいしょ……シドーが眠るまで私は一緒に居るぞ」
俺が寝るまでの間彼女は俺の傍に居た。そう考えていると意識は途絶えた。
ーこの夢を……永遠に、続かせる。士道のためだもんー
また声が聞こえた。そうして起きると誰も居ない、いや”彼女”が隣に居た。
「士道さん、おはようございます。昨夜はお楽しみでしたわね」
「やってないし、心当たりはない。やったとしても一人でやってるから快感は無いだろ」
「ふふ、そうですわね。今日は海に行く予定ではなくて?」
「そうだったな……海には水着の女の子っていうのが決まっているしな」
彼女の水着姿はもう二度と拝めないと思うと世界の損失を感じる。
「士道さん?もしかしたら……体を借りて、彼女たちとお話をするかもしれませんわ」
お話?体を借りる?どういうことだ?そう思っていると彼女からの説明を受け理解した。
「なるほどな~。あいつ等には言っておく必要があると……で、一応霊力はあるから俺に乗り移れば俺の体を介して会話ができると……霊力は不思議なもんだな……」
圧倒的不思議パワーである。それを俺は二つも顕現することができるのはやはり”彼女”に対する気持ちが強いからなのだろう。
「では、準備して海に行きましょう?士道さん?」
俺はカメラと水着を持って部屋を出た。
「………う~ん……もうちょっとこっちに……そう!!そのままで……」
俺は彼女の姿を写真に収めていた。水着には成れないが黒いワンピースというどう見ても神衣装で写真を撮らせてくれるとのことで俺はテンションを上げながら写真を連写していた。
「ふふふ……いつぶりですかね……こんな風に写真を撮っていただくのは……」
「いいだろ?俺はお前の姿を目に焼き付けたいんだ……俺の愛したたった一人の”彼女”をさ」
「あらあら、そんなセリフを言うようになるとは……腕を上げましたわね……」
そんな二人……否、一人で写真を撮りながら話している彼にある五人は彼を儚げに見ていた。
「シドーは、楽しそうだな」
「”彼女”を撮れる絶好のチャンス。昨日あんなことがあったから当然」
「シンは……何がしたいんだ……?」
三人は分かっているので一人になっている”彼”を見るが……分かっていない双子は疑問を浮かべる。
「疑問。マスター折紙、どうして士道は一人で写真を撮っていたり話しているのですか?」
彼女は話す、彼がおかしくなっていることを。
「”彼女”は死んだ。しかし彼はそれを認めなかった……認めていたけど、生きていてほしかった願望……それによって彼の精神は”彼女”を見えるようにしてしまった」
「それって、士道にしか見えないってこと……はたから見れば変人ね」
「精神疾患という奴なのでしょうか?ということは昨日のあれは何なのでしょう?」
「それは私から話そう」
令音は彼から少し聞いているため憶測交じりに彼の現状について話し始めた。
「彼は”彼女”が見えている。それはいいね?」
四人は頷く。
「”彼女”はシンにとって心の支えだったのだろう。それが壊れた……そして彼は”彼女”と同じ目に逢わないように精霊を救うという”使命”を背負いデートをすることになった。それは彼の記憶にある”彼女とのデート”が”精霊たちのデート”置き換わり始めているのを阻止するために体の震えが起きる。拒絶反応と言ってもいいだろう」
拒絶反応。その言葉を聞いて四人は私達のせいで”彼”を苦しめていた……それを知った。
「え……士道はあれと闘って……それでも私達を救おうとしているの……?」
一応、それを聞いていた俺はため息をつく。
「なんでこんな話になるかな……」
そうすると彼女は俺に近づき、合図をする。
「あんま変なことするなよ……来い……」
そうして、俺……いえ、わたくしは彼の体を借りて彼女たちに話す用意をした。
~狂三side~
久しぶりの体を得る……わたくしはもう”死んだ”存在。それでも、彼はわたくしを思い続ける……それに応え彼女たちに話をするべきだと思った。
「何が起こったのだ!?」
それはそうだ。彼が天使を使ったのだから。
「ごきげんよう。皆様、わたくし……時崎狂三と申しますわ。以後お見知りおきを」
この自己紹介も、彼にした後一回もしたことが無い。
「時崎……狂三……貴方は、死んだはず……」
死んだモノを見た彼女だから言えることである。その他に二人も顔を青ざめている。
「一つ言うとなれば、わたくしは死んでいますわよ。”今は”彼の体を借りて話しているだけですわ」
そうは言っても体は女になっている。それも自分の。さっき着ていた黒いワンピース姿で。
「どうして現れたんだい?」
”彼の目”を通じて見ていたので大体は分かる。
「分かっていますわ”村雨先生”。わたくしが彼の体を借りてまで現れたのは貴方達にお話をするためですわ」
彼女は少し驚くが、理由が分かったようで落ち着きを取り戻す。
「話とは、何?」
「わたくしが話したいのは……”彼を支えてあげて欲しい”ということですわ」
そう、私は彼に恋をし愛してしまったのだ。彼は私の代わりに悲願を叶えようと努力している。その姿に惚れない女などいるわけがない。
「わたくしの”友人”がもう少しでこちらに着くそうなのでその人と一緒に”彼を支えて”くださいまし……それをしなかったら……わたくしが貴方達を”喰らいますわよ”」
その声音は彼女たちを怖がらせるのに最適だったようだ。
「支える……本当にそれだけでいいのかい?」
それ以上求めると私は私でなくなる。
「いいんですの、彼が”悲願”を叶えてくれるんですもの。わたくしの”悲願”は……30年前に戻り、原因を潰しわたくしの唯一無二の友人を蘇らせることですわ。死んでしまったわたくしが言うセリフではありませんけど」
その目的を話す。それを話せばこちらに協力してくれると思ったからであり、情報を与えるだけでこっちに有利な盤面で進めることができる。
「疑問。そんな壮大な計画を話して、大丈夫なのですか?」
「ええ、問題ありませんわ。彼はそれにわたくしを蘇らせることも含んでいますから」
彼女たちは驚く。それもそうだ……本当に私を愛してしまったばかりに他の女とデートしてキスをするなんて……恐ろしい苦痛で謝ることすらできない。
「士道は……自分が死んでも蘇らせるつもりなの?」
それは……
「”彼”ならば、そうするでしょうね。わたくしはそれを阻止する……もう、目の前の幸せを離したくありませんもの」
その言葉に私は自分が馬鹿でアホなことに気づく。一人の男性を愛してしまったばかりに自分を殺してしまった、”悪夢”なのだから。
「それでは……”約束”を果たした時に、またお会いしましょう」
そうして”彼女”は”彼”に戻った。
~士道side~
「っ……何やってんだか……話は終わったか?狂三」
俺は隣に居る愛おしい彼女に言う。
「ええ、終わりましたわ。士道さんも問題はありません事?体を借りるなんて初めての事でしたので」
そう話す、俺と彼女には”愛情”という名のもとで繋がっていると感じられた。
「シン?戻ったのかい?」
令音さんは落ち着いた様子で話しているがその他の彼女らは驚きを隠せないでいた。
「とりあえず戻りましたよ。じゃあ、皆で泳ごうか……」
そう俺が言ってから皆は海に入り始めた。しかし俺は、”彼女”と一緒に砂浜にある椅子に座って彼女らを眺めていた。はたから見れば保護者の様である。
「………楽しそうだな……」
率直な俺の感想を言う。
「士道さんは入りませんの?あの子たちも入ってほしそうにこちらを見てきたりしていますわよ」
それには気づいていたが、俺はこうして彼女と話しながら危険が無いか周囲を警戒していたのである。
「エレン・メイザース……なんで、此処に居る?」
そう……俺が殺すべき存在。何故此処に居るのか、何が目的なのか?それを探るために今は周囲を見ていた。
「士道さんったらそんなことを考えていましたの?……大丈夫ですわよ。わたくしの”友人”が彼女を付けていますから、今はお休みになってくださいまし」
友人……話には聞いているが……それならば休むことにしようと思い、椅子に寄りかかった。
「それじゃあ、寝るから……俺のこと宜しく……」
そうして、俺は眠った。
~???side~
嗚呼、何ということだろう。まさか彼女が”死んでいたなんて”思いもしなかった……その代わに”彼”のお手伝いをしてくれと……彼女から言われたならば”友人”として、一人の女として彼女に忠誠を誓おう。
「………彼女が、エレン・M・メイザースですか……」
私が尾行しているのは最強の魔術師である人なのだが……砂に埋まっていた。
「ここから出しなさい!!」
砂でいたずらされていた彼女を見てしまった私は笑いを押えるのに必死だった。
「………っ……ぷぷ……本当に強いんでしょうか?”彼と彼女”が願うならばですけど……」
指令としては尾行であるが最悪殺してもいいと言われている。
「そちらはどうですか?< >さん?」
「上々ですよ。見てくださいよ、面白くないですか?」
私は彼女に報告をする。
「一応、報告しておきますね”狂三さん”。恐らくですが今日の夜に決行するみたいですね……あちらの辺りに船がいるようで指示があれば機械人形が降りてくるようです」
そう言うと彼女は顔をしかめる。仕方ない、彼女は”霊力だけの存在”なので実体化は出来ないので触ることもできない。
「士道さんに苦労を掛けたくはないのですが……精霊封印を邪魔されては困りますもの。引き続きよろしくお願いしますね?< >?」
私は彼女と一体化してしまった化け物。彼女の考えは少しだけ分かる……私も”彼”に恋い焦がれているから。
「お任せください……”狂三さん”。いいえ……女王様」
私と狂三は”女王”。”彼”は”王”。そのようにこの世界は出来ている。
「じれったいですわ……貴方も女王”だった”でしょう?貴方がわたくしの考えに賛同してくれるとは思っていませんでしたもの」
私も彼女から話を聞いて”彼”のことに興味を持ち調べた所……好きになってしまったのであるからお手伝いをするのは当たり前である。
「私も狂三さんが好きになった理由が分かった気がしますよ……私達二人で彼に尽くせば、不平等ではないでしょう?」
「くすくす、< >さんも同じ考えをするようになりましたわね」
彼女と話していると”時間”を忘れる……私達には時間が……大切だった。
~士道side~
かなり眠ったようで日が傾き始めていた。それでも彼女らは遊んでいた……否、砂遊びをしていた。
「城?……何で俺は此処に居るんだ?」
俺の周りには城壁が出来ていて広いスペースが確保されていた。
「シドー!起きたか?そろそろホテルに帰らないか?折紙たちも帰ろうと言っているぞ」
「その前に……お前らは海を背景に並んでくれないか?写真を撮ってやるよ」
そうして彼女らを写真に収めた……そこには”彼女”は映っていないが彼女たちには思い出になるだろう。「………いいか……帰ろうか、皆」
ホテルに帰り写真を整理する。俺にしか見えない写真と、彼女らを撮った写真を見て映りの悪い写真が無いかを捜す。しかし俺もプロ並みに撮れるようになったのでどれもいい写真ばかりだった。
「シドー!夕餉を食べに行くぞ!」
十香にそう言われ、食べに行くことにした……しかしエレンはその場所には居なかった。
「居ない?……どこかに出たのか?」
それを気にしながら食事をしたためあまり味を楽しむことができなかった。おのれエレン。
「外に出るか……」
外に出て頭を冷やすことにした。
「………」
夜の海を眺めながら一人砂浜を歩いていた。此処には誰も来るはずが無い……そう思っていた。
「お久しぶりですね……いえ、ここでは初めましての方がいいでしょうか?」
「あんたの顔を一時も忘れることはなかったよ……目の前で俺の愛しい愛しい”彼女”を殺したんだからな」
そう二人で会話しながら近づいていく……その距離10m。
「識別名<ディザスター>。貴方がそんな風に変わってしまった理由をアイクが知りたがっていましたよ」
「そうか、あんたの社長さんも俺にご執心か。しかし俺もお前にご執心なんだよ」
残り5m。
「そうですか……貴方がこちらに来れば精霊には手を出しませんし、最高の待遇をしますが……どうしますか?」
「その質問の答えはエレンさんも分かってるんだろう?答えは……」
一閃。海は波が起こり、木々は枝が折れるほどの風を起こした。
「予想通りですね。貴方はこんなものでは満たされない……どうやっても満たされない渇望で満たされている精霊……本当に精霊ですか?」
精霊なのかも怪しくなってきたのか……そもそもの前提が違う。
「俺は、人間であって精霊ではない。精霊の力を使えるのはそういう体質だからだ。それじゃあ……再開だ」
そうして俺達は闘う。剣でしか分からない領域へと足を踏み入れた。
「本当にっ!!面倒ですね!!……っ!!」
「そっちもっ!!随意領域がっ!!固いんだよっ!!」
俺達は一進一退の攻防を繰り広げていた。一応”秘策”はあるがあまり出したくはない。
「お助けに参りました。士道さん?」
その声に俺は困惑した。何故なら”彼女”の声であったからである。
「は?……く、るみ?」
「貴方は私が殺したはずでは……」
いや、違った。そういうことか……
「ははは!!傑作だな!!なら、さっさと済まそう。リミッター宜しく頼んだ」
「分かっています、”彼女”ためですから」
そう言う白い”彼女”に全てを任せ、憎しみを露わにする。もっとだ、コイツヲコロセ!!
「嗚呼……嗚呼……殺し程楽しいものは無い」
そうして俺に握られていたのは<鏖殺公>のような”黒い剣”であった。
「ん?……俺の思っていたのとは違ったが”こっち”も使い勝手がよさそうだな……死ね」
急接近に気づかず彼女を傷つけることに成功する。そして足、手、身体に傷を付ける。
「………つまらない。もっと叫べよ!!」
「そこまでですよ……こっちに戻ってきてください」
白い少女は俺を抱きしめ俺の感情を元に戻す。本当にどうにかしたいな……コントロールぐらいはしたい。
「ごめんな。やり過ぎて気絶させてしまったよ……でも、今だけは甘えてもいいよな?」
「ええ、存分に甘えてください。”彼女”までとはいきませんが……」
「狂三!狂三!……」
俺は失ったはずの涙を彼女に向かって泣いた。本当は忘れたかった、消えてしまいたかった。
「よしよし……いくらでも泣いていいですよ。私は代わりですから”彼女”のように振舞いましょう……貴方がそう望むのであれば」
彼女に甘えたかった、支えて欲しかった、一緒に居て欲しかった。それはもう”叶わない”。でも、代わりになってくれる人が現れた。
「私は、山打紗和……狂三さんの親友です……でも、私は精霊になっちゃって今は<白の女王>って名前になってるんだ」
そう聞くと俺は彼女を”彼女”と重ねた。そんなことはどうでもいい、彼女の姿形をしているのであれば俺のやることは一つ。
「………っ……ちゅ……」
キスを、した。何度目のキスなのかも忘れたが”彼女”と初めてのキスをした時と似ている。そんな気がした。
「ちゅ……っぷは……本当に大好きなんですね。私も好きですよ、士道」
そう、彼女との違いは”士道さん”と”士道”という違い……でもそんなことはどうでもいい。
「さ、帰りましょう。彼女たちが騒いでますから……手を繋いで……ね?」
今は、彼女と手を繋いで帰れることがただただ嬉しかった。本当に嬉しかった。
「何処に行っていたのだシドー!!……狂三!?何故此処に居るのだ!?」
帰ってからは事情聴取をされそして俺の怪我の治療も同時進行で行われた。
「はぁ……士道はいつもこうなんですか?狂三さんも見ていて疲れるのも分かりますね」
「そうだろ……痛っ……流石に体が追い付いてないか……無理しないようにしないとなぁ」
「そうですわ。わたくしは泣いてしまいますわ、悲しいですわ」
彼女と紗和と俺の会話は前よりも弾んでいると思う。俺にしか見えないのに紗和には見えている、だから狂三も喜んでいるのであろうと思う。
「お前ら二人も……こっちに来い!!」
そうして二人(一人)を俺と一緒のベットに横たわらせる。
「添い寝してほしいんですか……美女二人にやってもらうなんてなんて贅沢な」
「自分でも分かってるよ。でも、一緒に今だけは……」
そういって俺は意識を飛ばした。
起きたら、隣には耶倶矢と夕弦が居た。何で?
「しど~う。もうちょいこっち~」
「懇願。士道……」
色々当たっている、面倒臭いので霊装を纏いさっさとベットから出る。
「~ん。はっ!!夕弦と抱き合ってる……」
「………疑問。何故耶倶矢と抱き合っているのでしょう?」
「「まさか!!そういう関係になっちゃった!?」」
そう言うと彼女らは熱いキスを交わして今までのことをなかったことにした。
「前戯は終わりましたか……」
いつもの調子で話しかける。
「士道!?今の……見てたの……」
「大丈夫ですよ。私の脳内フォルダに消えないように記録されましたから。それと私にもしてもらっていいですか?」
「困惑。秘密の花園に飛び込みたいとは……とんだ変態さんですね」
二人を抱き寄せて同時にキスをする。そうすると彼女らの服は消え素肌が露わになる。
「きゃ~~~!!な、なな何やったのよ!!」
「封印ですけど……貴方達も私のもとに来てください。拒否権はありません。来なかったら……貴方達の大事な物を……奪いますよ?」
ドスの利いた声で話すだけでも効果はあったが脅しをするだけでこんな風になるとは……
「では、準備が終わりましたら私に連絡を。此処は一応私の部屋ですから」
そうして部屋から出ると三馬鹿に見つかった。
「え!?五河君、普通にカッコいいコスプレしてんじゃん!!」
「眼帯してたのってそれを隠すため!?カラコンなのに!?」
「マジ引くわ~!!」
そういえば着替えるのを忘れていた……仕方ない、少しやってあげよう。
「ごきげんよう、皆様。朝一番に貴方方に出会えたことを嬉しく思います」
そうして三人の手にそれぞれキスをする。そうすると……
「きゃ~~!!カッコいい……ぐふ……」
三人は気絶した。それだけで、だ。何が何だか。
「士道?やらかしましたね?」
「ああ、霊装解除しないで部屋から出ちゃった……一応コスプレと認識されたけど」
「そろそろ飛行機の時間になりますよ。準備をして行きましょう?私と貴方で」
そう、俺達の戦争は……
”今、始まったのだから”
ネタを考えて、そして体調が悪くてこんなに時間かかりました。
構成の中では狂三さんが居ないので代わりに紗和ちゃんを出したらいいんじゃないかと思っていたので出してみました。
次のやつが一番疲れるかも……