※この作品はR-18です。

鋼の錬金術師 賢者の石を持つ彼女はアラサー女でした   作:木桜 春雨

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人魚になった彼女、キンブリーはジェントルマンらしい

 目を覚ました時に見えたのは天上だ、自分の部屋でない事は分かって少しだけ不安になった、起き上がろうとして、違和感を感じたのは足だ。

 ああ、そうだ自分は外で転んでしまったことを思い出した、誰がここまで運んでくれたのだろうか、もしかしてエンヴィー、少年のことを思い出した、セントラルに行ったら何か美味しいものをご馳走しなければ、ベッドから出ようとして違和感を感じた、転んで打ったかなと思いシーツを剥ぐ。

 ズボンが濡れているのだ、もしかして尿失禁、ジーバンが臭くなってないか、いや、そんなことはどうでもいいと思いながらボタンをファスナーを外して、ズボンをおろした。

 かぶれた、太ももの色がおかしい、青くなっている、いや、緑色っぽいところもある、皮膚病、今朝までなんともなかったのだ、怖々と触ってみると感触が堅い、なんとなくだが、鱗に見える。

 どうしてと思いながら起き上がろうとしたが、重くて足が動かなかった。

 

 

 部屋の中には三人の男達が自分を見ている、ここから抜け出すのは簡単ではない、まさかと思ったが、自分を捕まえに来たと知って驚いた。

 

 「我々は君をセントラルに連れ戻すように言われただけです」

 

 キンブリーの言葉に少年は、だったら自分は戻るつもりだ、迎えなんか必要ないとにやりと笑った。

 

 「おっさん三人と長旅なんて、それも一緒なんてとんでもない、自分で行くから帰ってくれよ」

 

 「そういう訳にはいかん」

 

 マルコーの言葉に少年はむっとした顔になった。

 

 「こっちは気分が悪いぜ、大体なんて、あんた達が来るんだよ」

 

 「それはこっちが聞きたい、一緒にいたのは」

 

 スカーの質問に少年は睨みつけて叫んだ。

 

 「うるせえっ、関係ないだろ、おまえには傷の男」

 

 その時、音がした、何かが倒れるような音だ。

 

 

 ドアを開けて部屋に入ったエンヴィーは床に倒れている女を見た、女の下半身、両足が青く変色している、よく見ると鱗のようだ。

 これじゃあ、一緒にセントラルに行けない、パフェもケーキも、分厚いステーキも、一緒に食べようと約束したのに、無理みたいと女が笑った。 

 エンヴィーは近づいて女の足を見た、こんなことが人間に、普通に起こるわけがない、だが、目の前で実際に目の前で彼女の足は変わっている。

 

 「痛みはあんのか、大丈夫か」

 

 怖いと女が呟いた、それは当然の反応だろう、このとき、エンヴィーは開いたドアから覗いている三人の視線に気づいた。

 

 錬金術師のキンブリー、ティム・マルコー、傷の男、医者ならどうだと思ったが、病気ではないのだ、では頼れる人間はいない、ここには。

 

 このとき、自分をを生み出した世界中で誰よりも頼れる男の顔を思い出した。

 

 お父様、どうすればいい、こんなとき、自分は何をすれば。

 

 

 (水)

 

 頭の中に声が響いた。

 

 大量の水、足、体を、頭の中に浮かぶ、その声は紛れもなく。

 

 「大丈夫だ、風呂だ、おい、傷の男、風呂の用意しろ、水だ」

 

 

 

 何故、こいつに命令されるんだ、だが、少年の表情と目の前の事態にスカーは浴室に行くとバスタブに水を入れた。

 キンブリーに抱かれてバスタブの中に入ると女は深く息を吐き呼吸をした、だが、顔色は良くない。

 

 

 

 水音がして、水槽のそばでうたた寝をしていた男は目を覚ました、どうしたんだと声をかけるのはいつもの癖だ、喋ることができないと分かっても声をかけて、話しかけてしまう、だが、それももう終わる。

 ショウ・タッカーは扉を開けて向こうに行った、そして無事に連れてきたという連絡を寄越してきた、ところが、以後、連絡がない。

 何かあったのか、誰かが邪魔をしているのだろうか。

 

 軍は黙認する、それは当初からの約束なので安心していた、このことは上の人間しか知らない筈だ、だが、それでも安心はできない。

 不安があるとすればホムンクルスではなく、作った人間だ。

 

 

 「あっ、アアッッ」

 

 それは悲鳴にも似たような声で男は驚いた、こんなことは初めてだ、水から出すべきか、だが、また以前のようなことなったらどうする、それを考える

と怖い。

 だが、このままではと思って男は水から水槽の中に入り、人魚を抱き上げようとした、ところが。

 抱き上げた感触、その頼りなさに驚いた、それだけではない、体、肌の色、髪が少しずつ、消えていく、どういうことだ、これは一体、訳が分からず男は混乱した。

 どうすればいい、彼女を助けられる、だが、少しずつ体は溶けるように軽くなっていく、自分ではどうすることもできない、だが、それだけではない、水槽の中の水の色が変わり始めたのだ、どういうことだ、これは、もしかして扉を開いたこと、向こうから連れてきたのは賢者の石ではないのか、別のものなのか、いいや、そんな筈はない。

 男は混乱した、タッカーに連絡しなければ、向こうの状況を知らなければ、彼はそばにいる筈だ。

 

 

 「ミヤ」

 

 エンヴィーは声をかけた二本の足は完全に一つになり、完全に魚のような尾ひれに変わっていた、返事をしようとしているのか、しゅーしゅーと口から息が漏れるような音がするが、それは少しずつ、小さくなっていった。

 

 「大丈夫、だか、ら」

 

 人魚という生き物は想像の産物、映画や小説の中の生き物だと思っていた、童話や小説、伝承など話は幾つもあって有名だが、実際にはそんな存在しな

いと思っていた。

 最後はどうなった、確か尾をなくして人間になったとか、泡になって消えたとか、そんな異国の話を思い出したのはキンブリーだ。

 女の髪は真っ白、いや、少し青みかがっている、水のような色だ、目の色は黒っぽい、いや、光の加減でよくわからないが、思わずじっと見てしまった、そんな視線に気づいたのか、女が自分を見ると口元を緩めた、それは笑顔だ。

 なので思わず自分も返した、笑顔でだ。

 

 「どうかしたのかね、君は」

 

 マルコーの声に思わずはっとした、自分では違和感のない笑顔のつもりだったのに、傍から見ればそうではなかったのだろうか、何故かもう一人の傷の男も自分を見ていることに気づいた。

 

 「ここまで運んでくれたのは、あなた」

 

 自分達の中で一番体格のいいスカーに女が声をかけた、無言のまま頷いたスカーに女はありがとうと笑いかける、このとき女の上着がずぶ濡れなのにキ

ンブリーは気づいた、人魚だから濡れたままでもいいだろうと思うが疑問が浮かび、キンブリーは思わず尋ねた、あなたは人間かと。

 

 「昔は人間だったけど、今も自分は人間だと思っているんです、おかしいでしょうか」

 

 「いえ、人間に見えますね、私には」

 

 女は顔を見たキンブリーは確信した、作られたもの、動物と人間を掛け合わせたキメラなどの生き物ではないと。

 

 「シャツが濡れたままでは風邪をひくでしょう」

 

 すると女は今更のように気づいたのか、シャツを脱いだ、上半身、乳房があらわになルとキンブリーは自分の上着を脱ぎ、女の肩にかけた。

 

 「ありがとう、あなたは」

 

 「ルドルフ・キンブリーです、こちらは傷の男はスカーとドクター・マルコー」

 

 自分の名前を言いかけて女は無言になった。

 




ちょっとシリアスっぽくなってしまいました、こういうのが続くとギャグが書きたくなるのよね、困ったわ。
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