※この作品はR-18です。

月面出生管理法   作:喚く狂人

1 / 2
月面式出生管理 - 綿月依姫

「では、出生管理法第七二四九条に基づき、綿月依姫の妊娠作業を開始します。子宮への精液注入後、固定作業をもって完了となりますので、よろしくお願いします」

 スピーカーから流れるアナウンスは、極めて事務的なものだった。声の主は別室におり、こちらの様子をモニター越しに監視している。何かあれば、すぐ作業を中止できる状態だ。

 依姫は、両手・両足・腰を機械に拘束され、大の字で宙づりにされていた。怪しい組織に囚われたとかの危機的状況ではない。今から行われることには必要な処置だったのだ。

 また彼女は、何一つ身に着けていなかった。出生管理法に基づけば、妊娠作業中、実際の男性を伴う場合において、その性的興奮を助長する目的でのみ、衣服並びに装身具の着用が認められている。「実際の男性を伴う」ケースはとうの昔に廃れているため、妊娠作業といったら裸で行われるものというのが、月の都における常識だった。

 露わである彼女の肉体は、日頃の鍛錬によって鍛えられた、しなやかなものだった。肌には染みの一つもなく、絹よりも滑らかだ。年齢相応の女性らしさをうかがわせつつ、汚れなど知らぬといわんばかりに無垢だった。険のある美貌と比較すると、驚くほどに純である。

 武術を志しているわりに首は細く、見ればどきりとさせられる。肩も細く、丸みがある。全体的にスレンダーな肉体の中で、乳房は女性らしくふっくらと膨らんでいる。茶碗を伏せたようなフォルムで、サイズとしてはさほど豊かでないが、形の美しさで抜きん出ており母性をうかがわせている。しっかり鍛えられた大胸筋が支えとなり、支えているからこそだろう。先端は鮮やかな色合いで、かわいらしい膨らみが先端にぽつんと存在していた。

 腹部はしっかりとしたくびれを描いている。無理に作った不健康なものではなく、日頃の鍛錬によって培われた、非常に健康的なカーブだ。蓄えられた皮下脂肪に覆われているので、腹筋は六つに割れて見えるようなことこそなかったが、それでもアブ・クラックスが走っていた。

 下腹を見れば、陰毛は髪色をやや濃くしたような色合いで、外見年齢と比較すると密度は低めだった。しっかり手入れされているので、なおのこと薄く見える。下から透ける地肌とのコントラストが見事だった。盛り気味の土手が形作る秘裂は、身体の発育に対しては意外なほど無垢な、ぴっちり閉じた一本線を描いている。月面においては自由恋愛が認められていないため、使う機会がほとんどないのだ。今から子を孕む己の運命など、知りもしないというようだった。

 元々スタイルもよいため、大きく広げられた脚はすらりと長い。大腿筋はかなり発達しているが、脂肪によって適度に覆われており、むきむきとして見苦しくなってしまうことを防いでいるようだった。

「三十秒後に、作業を開始します」

 穢れまみれの地上と異なり、月における平均寿命は非常に長い。そこで問題になるのが、人口調整だ。少なすぎるのも問題だが、地上のように考えなしにポコポコ子作りしていれば、大問題になるのは目に見えている。

 なので、月においては、徹底した出生管理が行われている。まず、無許可の性交は論外である。さらに、優秀な子を作るため、子の種親には母胎と遺伝子の相性の良い者が選出される。依姫には夫がいるが、今回使う精液に、彼のものは含まれていない。全月人男性から選りすぐられた数百名のものが用意されていた。種親と育ての親が異なるのは、月においては当たり前のことだ。

 最適なタイミングで、最適な相手と、最適な方法で。かつて月の頭脳と呼ばれた者の作り上げた、素晴らしい制度が出生管理法なのだ。地上から来た巫女に説明したら顔をしかめていたが――あれらは、きちんとした子作りの重要性すら理解できないということなのだろう。地上の楽園が聞いて呆れる。

「では作業を開始します。準備はよろしいですか?」

「はい。開始してください」

「分かりました。まずはこちらを咥えてください」

 アナウンスと同時に壁が開き、アームが現れる。先端には男根を模したもの、ディルドが備え付けられている。眼前に突き出された。この手の淫具は、肉と肉との交わりを禁じている月面においては、一定の需要があった。

「母胎の妊娠を確実なものとするよう、排卵誘発剤と媚薬を混合したものが分泌されます。くれぐれも、吐き出さないようお願いします。また、気分を高めるため、男性への口淫と同様の疑似性的奉仕を行うことを推奨します」

「は――あむっ、んむぅ」

 口を開くとアームが伸び、口内にディルドが突き込まれた。亀頭にあたる部分を唇で包み込むと、竿を扱くように吸い付きながら、奥まで迎え入れていく。

「んく、ぢゅる、ふむっ、んぅ、ンッ、くふ」

 れろれろと、口内の異物を舐め回す。頬を窄めて吸い付きながら、頭を前後に動かしていく。出生管理法の下においても、膣性交以外での同意ありでの性行為は、性犯罪を防ぐ目的でも推奨されている。夫に対してするようにやればいいのだ。――といっても、コレは夫のモノよりもずいぶん大きいようだったが。

「れるぅッ、ふむ、んちゅっ、んぅ、くぷぅ」

 そうしているうちに、ディルドから粘液がとろとろとあふれてくる。案内のあった薬だろう。指示通り、嚥下していく。妙に生臭いような匂いと、苦みがあった。精液のそれだ。気分を高めるためというアナウンスもあったし、わざわざ本物に似せているのだろう。あまり、好きではないのだが。

「んふぅッ、くぷ、ふむぅ、ンッ、くぷ」

 拘束されているため、しゃぶるといっても中々難しい。口端から涎と薬の混ざった汁が滴る。手の自由なしには拭うこともできず、顎へと滴っていく。

「く、む、ふぅっ、んぅう」

 暑い。気温が、上昇しているのだろうか。母胎に影響しないよう厳密に管理された室内で、考えにくいことだ。これは、己の体の方が火照っているのだろう。

 早くも、薬が回り始めているのだ。快楽と妊娠への欲求を、それぞれ強制的に高められている。きゅうきゅうと、腹の奥が疼いてしょうがない。

「ちゅるっ、ふむ、んぅ、ぐぷ、んぅう」

 全身にうっすらと汗が浮かぶ。美しい肉体が、きらきらと輝く。乳房の先端が、ぴんと尖っている。秘裂から、熱い潤みが滴る。ねっとりした露が、太腿を伝っていく。淫核は充血し、己の存在を主張していた。

「んぅ、ふぅ、ふぅうッ」

 呼吸が荒くなっている。体内の衝動を解消したいが、腕一本動かせない状態では、自涜など不可能だ。身をよじることすら満足に行えないのだ。

 どうしても空腹であるときに奥歯を噛みしめるように、ディルドに一生懸命吸い付く。だが、火に油を注ぐようなものだった。それは擬似的なフェラチオであり、性行為を連想させる。当然、興奮を煽るばかりだった。

 口内にとろとろと流れ込んでくる薬液が、次第に美味に感じられはじめる。精液そっくりの味と匂いであるということは、興奮した女にはてきめんに効くということだった。喉を鳴らして、嚥下していく。喉奥までディルドを咥えながら、にじみ出る甘い蜜をちゅうちゅうと吸い上げていく。

「バイタル値が基準を超えました。次の工程に移行します」

「んぅうっ」

 しばらく、乳飲み子のように疑似肉棒に吸い付いていた。だが、アナウンスとともに無慈悲に引き抜かれる。離れたくないというように唇で最後まで吸い付き、口腔から引き抜かれる際には、ちゅぽっと音を立てた。唇からディルドの先端にかけて、ねっとりとした橋がかかっている。

「先んじて母体に性的快感を与えることで、この後の工程の負担を軽減します。声を上げることは問題ありませんが、出し過ぎて喉をからすことのないよう」

 アームが三本現れる。二本にはローター、一本は柔らかなブラシ状になっており、それぞれ細かく振動している。

「はあッ――」

 戦慄する。この昂ぶった体のどこであれ、あんなものを押し当てられたら、どうにかなってしまうだろう。しかし、逃れようにも、拘束されている現状ではどうしようもなかった。

「アッ、ひッ、あぁぁああああああッ!?」

 なだらかな乳房の先端、ぴぃんと尖っていた豆に、ローターが押し当てられる。振動でもって、責め立ててくる。さらにブラシが、股間にとりついた。外気にさらされているだけで感じてしまうほど敏感になった裂け目を、蜜に濡れてぬらぬらと輝いていた淫核を、容赦なく擦り上げてくる。

 あまり性的なものと関わりをもたない依姫も、そういった部位を弄くる自涜くらいは、したことがあった。夫との、性交を伴わない営みにおいても、触れてもらうことくらいはあった。しかし、これはそんなものがおままごとに思えてしまうほど強烈だった。

「はひぃッ、あぁあッ! はっ、あああッ、ひぃいいッ!?」

 毎秒何百回、機械の無機質な振動によって、神経を焦がすような快感が全身を駆け巡る。目の裏がちかちかと光り、涙が零れるようだった。彼女にできることといったら、ぎりぎり自由になる頭を、髪を振り乱して悶えることくらいだ。

「あぁああッ、はぁぁッ、くっひ、あぅあっ、はぁああッ!」

 嬌声が垂れ流しになり、口を閉じることができない。舌は突き出されたままだ。時折息を吸いこそするものの、それ以外はずっと、声帯を震わせ続けている。流石にまずいと判断したか、いくらか慌てた様子のアナウンスがスピーカーから流れる。

「声量が基準値を超えています。喉をからしてしまうので、自重してください」

 ダムの放水を真っ正面から食らって、流されずにいろというようなものだ。無理に決まっている。そんな無意味な指示を飛ばしてくるくらいなら、自重できるようにしろと、せめてもの恨みを込めて監視カメラをにらみつける。

「不可能なようでしたら、これにしゃぶりついてください」

「あむぅうッ」

 再び、ディルドが口元に突き出される。もう一度、しゃぶりついた。

「ぢゅるぅッ、ふむっ、ンッ、くふ、くぷぅッ、んぐッ、ふぅうッ」

 度を越した性感を堪えるためであるから、必死である。じゅぶ、ぐぷと唾液の音を立てながら、しゃぶりついていく。あるいは、飢えていたところに性感を与えられ、燃え上がった女の本能がそうさせていた。性感に悶え、くぐもった嬌声をあげながらも、頬を窄め、唇で幹を扱き立てる。舌で先端をねぶり回していく。夫にするより、よほど熱心な口淫だった。

「ん、ぐ、ぅううッ!?」

 が、驚愕の声に、フェラチオは中断させられた。ディルドから、例の薬液が放たれたのだ。思わぬことに、嚥下してしまう。

 薬液は、男の精とそっくりの味・匂いをしている。この昂ぶった状態で、スペルマそっくりのものを味わうなど、ガソリンにたいまつを放り込むようなものだった。ぎりぎりだった肉体は、助走をつけて一線を飛び越える。

「んぐッ、ふ、む――んあぁぁあああああッ!」

 あっさりと絶頂させられる。だが、与えられた快楽の甚だしさは、けっしてあっさりなどしていなかった。

 背が、全身が跳ねる。全力で暴れているようなもので、拘束用アームがぎちぎちと音を立てる。もはや玩具に口づけていることすらできず、今までと比較してもひときわ高く大きな嬌声があがる。まるで悲鳴だった。喉がかれてしまうだとか、そんなことを気にしている余裕は全くなかった。ただ脳内に流れ込む強烈なエクスタシーをこういう形で少しでも発散しなくては、狂ってしまいそうだった。

「はぁぁッ、あぁぁあッ、ひぃッ、ひぃいッ!」

 快楽信号が、次々と脳味噌に叩きつけられる。ばちばちと、視界が明滅する。秘唇から熱い潮が、ぶしぃっと勢いよく噴き出した。

「はひぃッ、ひぃッ、はっ、アッ、はぁッ――」

 上り詰めるのが一瞬であれば、下りていくのも速い。その点は、依姫にとって幸いであっただろう。暴虐ともいえる性感の波は、あっという間に過ぎ去っていった。もっとも、濃縮された快楽をそのまま叩きつけられた本人は、丸一日ほどにも感じていたが。

「はっ、ひぃッ、あぁッ、はッ、あぁ」

 緊張の次に訪れるのは、弛緩だ。ぐったりとした彼女の、あらゆるところから力が抜ける。目尻からは涙、口端からは涎が垂れており、険のある顔つきは今や惚けきっている。全身は汗で艶めき、荒い呼吸のたび、胸郭が上下していた。

「あっ、や、だ」

 括約筋にすらも力が入らず、膀胱にたまっていた黄金水が、しょろろ、とあふれ出す。すぐさま壁からアームが伸び、滴る排泄液を収集していく。もともと朱の差していた頬が、羞恥でさらに赤くなる。

「母体の体調管理のための資料として利用させていただきます」

「か、堪忍を」

「却下します。より素晴らしい月面社会のためですので」

 一度出してしまったものを止めることもできず、ただただ己の恥を採集されるしかなかった。溜まったものを出し終わる頃には、別の意味で疲労してしまっていた。

「では、第三工程に移行します。これより、この疑似ペニスを膣内に挿入します」

 現れたアームには、最初のものと同じように、ディルドが備え付けられている。ただし、サイズが違う。一回り大きく、亀頭に当たる部分も大きく張り出しており、カリも太い。一目で分かるほど凶悪なフォルムだった。

「あの、こ、工程を飛ばすわけには行かないのですか?」

 尋ねる。あんなものを受け入れられる気がしなかった。先の絶頂で体力を消耗しているし、何より、体の疼きが、未だに収まっていなかった。なんなら、先ほどよりも昂ぶってすらいるように感じられる。汗をかき代謝が良くなったところで、媚薬と排卵誘発剤が本格的に回り始めたのだろう。

「残念ながら、それは認められません。出生管理法に定められた妊娠作業において、疑似性交は必須要件となっています。疑似性交なしで妊娠作業を行った場合、妊娠の確率並びに生まれてくる子の身体能力が有意に低下するという資料が存在します。出生管理法第二九八三四条に基づき、あなたには当該資料の閲覧申請を行う権利が与えられています」

 杓子定規な答えだった。出生管理法が優れたシステムであることに疑う余地はないが、このときばかりは恨めしい。

「では、第三工程を開始します」

「あッ――」

 アームが、膣口に押し当てられる。それだけで、背筋がぞくりと震えた。やはり、駄目だ。今こんなものを挿入れられたら、とんでもないことになってしまう。腰をよじって逃げようとするも、拘束具に戒められていてはどうにもならなかった。

「アッ、ひッ、あ……あぁぁあああああッ!」

 ぼぢゅんと、嫌な音がした。アームはまっすぐ突き出され、彼女の肉穴を思い切り貫いていた。狭穴に凶悪な玩具がねじ込まれ、肉襞が思い切りめくり上げられる。

 頭が壊れてしまうかと思った。叩きつけられた快楽信号は、先の絶頂と同等といってもいいほどのものだった。神経が、白熱するのを感じる。目を見開き、またしてもい悲鳴じみた嬌声をあげる。だが、これで終わりでは、当然ない。

「あぁぁぁッ! ひぃッ、はひッ、あああッ、くあああッ!」

 ぐちゅぐちゅぐちゅぐちゅぐちゅと、容赦のない抽送が開始されていた。より良い子を作るという絶対の正義のため、一切の遠慮なく、膣穴をほじくり返し、快楽を叩きつけてくる。

 髪を振り乱し、悶える。身動きが取れないために、与えられる快楽を真正面から受け止められるしかなかった。ダムの水を、真正面から。

「ひぃいッ、あぁああッ、ひッ、はっ、あぁあッ、ひぇえッ、あああああアッ!」

 機械は相変わらず、ひたすらピストン運動を繰り返している。一定であるようだが、月の技術がそのようにつまらないことをするはずがない。母体の性的興奮を高めるという目的の下、リアルタイムに絶妙な調整が加えられている。的確に、一切の慈悲なく、最も弱いところを最も弱いやり方で突き、擦り上げてくる。人がするものでないからこそ可能な、悪魔的ですらある責めだった。

 普段玉兎たちを束ね上げ訓練を施すときに見せる威厳など、もはやどこにも存在しなかった。巨大すぎる快楽は、依姫から何もかもを剥ぎ取り、ただエクスタシーに喘ぐ機械に仕立て上げるに十分すぎるほどだった。

「はひッ、あぁ、ゥアッ、あぅううッ、ううぅうううううううッ!」

 こちゅこちゅと、体の奥から音がするのを聞いていた。その音が響くたび、お前は女なのだ、子を産むために生きているのだぞということを思い知らせるような性感が、全身を駆け抜ける。

 子宮口、子をなすための聖域の入り口が、小突かれているのだ。そのようにして、妊娠するための用意と覚悟を、体に整えさせようというのだろう。女としての悦びが、全身に満ちていく。肉体が勝手に感極まり、目尻から涙が零れる。これが疑似性交をする意味なのだと、身体のほうが理解する。

「バイタル値が基準を超えました。これより、精液の注入を開始します」

「はひえッ、まッ、まって、まッ、へぇえええッ」

 もはや言葉をまともに紡ぐことすらできないが、それでも必死にアピールする。

 精液の注入? 薬がばっちり効いていて、性交の快楽に狂わされていて、孕む用意を肉体が整えたこの状態で? そんなことをされたら、きっと壊れてしまう。もう戻れなくなってしまう。依姫の思考は、戦慄し恐怖していた。だが、肉体は、強烈な期待を覚えていた。

「注入、開始」

「アッ――」

 子宮口に、ディルドの先端が押し当てられた。今度は、小突くという動きではなかった。どちらかというと、狙いをぴたりと定めるものだった。来る――覚悟を決める暇もなく、それは解き放たれた。

「はッ、ひッ、あぁぁあああああああああああああああああああッ!」

 鈴口を模した小さな穴から、勢いよく濁液が流れ込んでくる。この日のために月人男性全てから選りすぐられた、数百人の精液が。

 選ばれたのはそもそも、依姫と遺伝的に適合する、いわばエリート的精子である。その中でも、産まれる権利は、何億という精虫のうち一匹にしか与えられない。熾烈極まる生存競争だ。本人の意思を脇に置いて、無数の精子が泳ぎ回り、卵子を食い散らかそうとしているのが感じられる。

 遺伝子レベルで最高の相性で、準備も相当入念に行われている。誰のものであろうと、孕むことは間違いない。妊娠への期待に、脳が幸福物質をまき散らした。ただでさえ肉体の性感に悶えていた状況でそんなことになって、絶頂しないでいられるはずもなかった。

 今度のオーガズムは、先のものに比べても遙かに強烈で、鮮烈だった。当たり前のことだ。意義が違うのだ。先のものは、ただただ大きな快楽を与えられたことによる、生理的な反応に過ぎない。今回はそれに加えて、妊娠という、女としての本能的な悦びまで加わっているのだ。スケールが、まるで違う。

「あぁぁぁあッ、ひぃいいッ、ああぁッ、はひぃッ、あああああああッ」

 視界が白く光ってはブラックアウトする。浮かんだ汗が珠となって散り、背は思い切り反らされる。全身が痙攣し、拘束具が、ぎちぎちと耳障りな金属の音を立てる。ディルドを咥え込んだ肉壺から、熱い潮が音をたてて噴き出した。

「あひぃッ、はひッ、ひえッ、はぁッ、あぁぁッ――」

 どれくらい、時間が経ったろうか。実際には数十秒ほどだろうが、一生ほどにも感じられた。月人の中でも武に秀でる依姫の体力は、群を抜いている。それでも、疲弊しきっていた。

 顔は虚ろで、涙や鼻水、涎でぐしゃぐしゃになっている。美しい髪も、ぶんぶんと振り回されたことでぼさぼさに乱れてしまっている。喉はかれてしまっており、ときおり零れる声は聞き苦しい。全身脱力しながらも、思い出したように痙攣していた。

 何もかもを使い果たすほどハードなアクメだった。肉体的にはひどい有様だった。だが、だからこそ心は満ち足りていた。これが、子を作るという神聖な行為であるのだ。工程が激しいからこそ、母となる重みが分かるというもの。ポンポン交わっては産んでいる地上の連中に、分かるはずもあるまい。

「お疲れ様でした。これより、挿入したディルドの固定作業に入ります」

 膣に挿入されたままのディルドが、アームから取り外される。依姫の股ぐらに、金属製の重たいカバーが取り付けられる。いわゆる貞操帯だ。妊娠の確率を極限まで高めるため、しばらくの間はこうして、子宮から精液がこぼれないようにするのだ。

「今後三ヶ月間、子宮を中心としたあなたの肉体的データは全て監視されます。異常があればすぐに精密検査となりますので、ご了承ください。仮に妊娠が確認されなかった場合、時期を調整した後、再度の妊娠作業となります。作業は以上です。お疲れ様でした」

 床に下ろされ、拘束が解かれる。ぐったりとした体を支え、どうにか立ち上がる。

「ふふ……」

 恍惚の笑みを浮かべて、依姫は腹を撫でる。ずっしりと、重たい。何億何兆という精子が、今も生まれるためのレースを繰り広げているのだ。どの精虫が勝利して、どんな子が産まれてくるのか、どう成長して、どのような利益を月にもたらすのか。今から、楽しみでならなかった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。