※この作品はR-18です。

スーパーヒロインと俺 R   作:はいのき

1 / 12
1話 出会い

「どうした? 早くキミの唾液を私にくれ」

 

 そう俺にせがむのは、以前テレビでよく見たことがある超有名な女性ヒーローだ。

 今の彼女は、俺の平凡なマンションの一室には似つかわしくない迷彩服を着こんでいる。

 

 しかしそんな真面目そうな恰好とは裏腹に彼女は俺がいつ唾液を垂らしてもいいようにと、ぬらぬらとした思わずしゃぶりつきたくなるようなピンク色の舌を口から出し、口を大きく開けて俺が唾液を垂らすのを今か今かと待っている。

 

(一体どうしてこうなったんだろうな……)

 

 俺は目の前の現実から目を背け、過去に意識を飛ばした。

 

 

 

 

――――

 

 

 

 

「悪いね、ついでに豚の治療もお願いしちゃって」

 

 元気がない豚に俺が汗を塗り込んでいる姿を見て、養豚場の経営者のおじさんが申し訳なさそうに言う。

 

「いえ、仕事ですから」

 

 そもそも仕事じゃなけりゃ、自分の汗を豚に塗り込むとか只の異常者の行動だしな。

 

「でも、あんたまだ若いし特級能力者なんだろ。えーと確か…グレ、グラ…グラティエイターとか言うすごい能力者の。他にいくらでもいい仕事があるんじゃないのか?」

「若いといっても能力者だと大分年長の方ですけどね。今年で三十歳ですし。それに自分で言うのもなんですが、回復方法に難がありますから…。他の回復系能力者は大抵手をかざして念じるだけですけど、自分は体液塗らないと回復しませんし」

 

 あとグラティエイターじゃなくてグレイターですけどね。と俺は心の中でおっさんに突っ込みながら表面上はにこやかに返事する。でもまあわざわざグレイターなんて言う人は日本にはまずいないから間違えてしまうのも無理ないか。

 

「あー、確かにな…… だけどよ、そのおかげで飼料に混ぜられるから、儂らからしたらそっちの方がありがたいんだけどな。お前さんと契約してから肉の質も随分良くなったし」

「はは… そう言ってもらえるとありがたいです」

 

 こういった感謝の気持ちがないと、流石に豚のエサに自分の尿を混ぜる作業とか虚無過ぎてやってられない。

 

 まあ報酬の方もかなりいいからやってる面もあるけどさ。

 

「それじゃまた必要になったら呼ぶから、その時はよろしく頼むわ」

「はい、それじゃあまた」

 

 俺はおっさんに軽く会釈して、養豚場を後にして帰路につく。

 

 この仕事だけで一人暮らししている分には普通に生活していけるだけのお金がもらえるけど、尿を出すために飲み物を飲みまくらないといけないのが最大の難点だ。

 

 俺の回復能力は時間が経過するほど能力の効果が落ちるので、残念ながらあまり取り置きすることが出来ない。

 

 出来たとしてもそれはそれで自宅が地獄の光景になりそうではあるし、特級能力者の能力を使用した製造物の郵送は特別な許可がいるから、ヒーローでもない一般能力者の俺は結局のところわざわざ現地に赴くしかないんだけど。

 

 せめてもう少し使い勝手が良かったら、俺も他の能力者みたいに怪獣相手に活躍出来るんだけどな。

 

 そんなことを考えながら俺は、電車に乗り込み空いている席に座り、暇つぶしがてらスマホを見ると能力者協会からメールが来ていることに気づいた。

 

(なんだろ…人の治療依頼?)

 

 珍しいな。

 

 個人的な依頼ならともかく協会からの治療依頼は初めてかもしれない。

 

 よほど緊急性が求められる外傷でない限り、三級ぐらいの回復系能力者であれば外傷だろうが病気だろうが治せるはずだからだ。なんなら一般人相手なら底辺の五級能力者でも、時間をかければわりかし何とかなる。

 

 依頼するような悠長な時間があるなら、緊急性があるはずもないし時間があるならそもそも特級に依頼するまでもない。

 

 一部の能力に纏わる難病であれば、特級クラスの力が必要になると聞いたことはあるがいくら回復系能力者の

人数が他系統の能力者に比べて少ない方といっても、能力者協会なら依頼先は選び放題のはずだ。

 

 詳しい話は明日、担当者が直接自宅に来て説明するみたいだしその時にでも聴いてみるか。

 

 まあここしばらく動物相手しかしたことなかったし、気分転換にはなるかな。

 

 そう思いながら俺は電車を降りると、自宅のマンションに向かって歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日、担当の人が説明に来るはずなんだけど、いつ来るんだろうな」

 

 暇だし身だしなみでもチェックしておくか。

 

 そう思った俺は鏡で顔をチェックする。最近散髪に行ったばかりなので、まだ髪は耳に掛からない程度の長さで野暮ったい印象は与えないと思う。だけど数年前から前の方に生えだした白髪が少しだけ目立つようになった…気がする。

 

 髭のソリ残しもないし、あとは相変わらず良いとも悪いとも言えない平凡な容姿だ。まあ学生時代によく一重まぶたのパッとしない奴って言われたが、そもそも日本人は割合的に一重まぶたのほうが多いのだから、それは俺だけに限らないはずだ。

 

 それはそうと、そろそろ人生で初めての髪染めも検討しなきゃならないかもな。やっぱり地毛と同じ黒色にすべきか…いや思い切って白髪というのもアリかもな。

 

 そんなことを考えながら壁に掛けられた時計の針を見ると、もう昼をとうに過ぎてそろそろ十四時に差し掛かろうかといった時間になっていた。

 

(別に外出する予定ないし、のんびりゲームでもして待ってるか…… おっ、来たか?)

 

 ゲームのコントローラーを手に持ったところで、インターホンが鳴る。依頼内容が少し気になっていたこともあり俺は誰が来たかも確認せずに勢いよく玄関のドアを開けると、そこには身長が百七十一センチある俺が少し見上げてしまう程の高身長な女性が一人立っていた。

 

 女性は、俺が生まれる前に軍化したらしい自衛軍が着ているような緑の迷彩服に身を包んでいて、綺麗なプラチナブロンドの髪をポニーテールにしてまとめている。その髪の上に服と同じく迷彩柄の帽子が乗っていて、女性は帽子のつばを掴むと晴天の空のように澄んだ瞳で俺をジッと見た。

 

「キミが、特級回復能力者の御酒仁 良太郎(ごしゅじん りょうたろう)で合っているだろうか」

「あ、はい。そう…ですけど」

「私はヒーローの雷竜乙女(らいりゅうおとめ)だ。雷竜のワルキューレか光の女神の方が一般的には知られているかもしれないが」

「あぁ! あの有名ヒーローの」

「まあ今では元が付くがな」

 

 雷竜乙女と言えば、美しすぎるヒーロー、現世に降りた女神の化身などとも言われ何度もテレビで特集が組まれたこともある雷を操る攻撃系の特級能力者ヒーローだ。そこまでヒーローに興味がない俺でも知っているような超有名どころのヒーローで、ファンクラブがいくつもあるらしい。

 

 確かにこの日本人とは思えない透き通った綺麗な白い肌に凛とした端正な容姿、それに加え均整のとれた男好みの見事なプロポーション。そして何より大玉のメロンでも入ってるのかと思うくらい大きな胸。

 

 テレビ越しでも綺麗だと思っていたが、現物を目の前にすると綺麗すぎて驚きを通り越して、逆に冷静になってしまう。

 

「それで今日はどうして俺の家なんかに?」

 

 まさか彼女が協会から派遣された担当の人ってはずもないだろうし、見たところ彼女は目立った外傷もなく体調が悪そうにも見えない。

 

「先日協会から依頼のメールが届いたはずだが、もしかして見てないのか?」

「あぁ、はい。見ましたけど今日は担当の人が説明に来るんですよね?」

「その通りだ。私がその担当者であり治療してほしい本人でもある」

「え、でも… えーと雷竜乙女さん見た感じ、特に怪我とかされてないように見えるんですけど…」

「言いづらかったら天雷(てんらい)と呼んでくれ。それが本名だ。質問の方に答えるが身体の方は問題ない。だが…」

 

 そう言って彼女は言いづらそうに目線を下に向ける。

 

「だが?」

「ここでは説明出来ない。すまないが、詳しい話は中で説明させてもらっていいか」

「あっ、はい。どうぞどうぞ」

 

 確かに依頼内容を立ち話で、しかも玄関先でするのはまずいだろうなと思い、配慮の無さを誤魔化すように俺は少し慌てて彼女を部屋の中へと招き入れる。

 

 リビングに入って彼女を事前に用意しておいた座布団の上に座るように促すと、急いで飲み物を二人分用意した後、テーブルを挟んで彼女の対面に座る。

 

 ちなみに座布団はマンションの備品だ。今住んでいるマンションは能力者専用のマンションであり、その関係上入居者へ依頼しに来たが来客することが多く、三級以上の能力者が住まう部屋には必ず付いているらしい。

 

 彼女は気分を落ち着けるかのように軽くお茶を口にしてから、ポツリポツリと語り始めた。

 

「実は能力の方に問題があってな。その治療をお願いしに来たのだ」

「一時的な体調不良とかではないんですか?」

 

 人間が能力を扱うようになってからまだ数十年しか時が経ってない。それ故にまだまだ分からないことは多いが、体調が思わしくない場合はそれに伴って能力も不調に陥るのはよくある話だ。

 

 彼女のような人間がそんなことを知らないはずはないだろうが、いつもの仕事の癖でつい聞いてしまう。

 

「それはない。詳しく検査してもらったところ、二級よりの一級レベルまで能力が落ちていると診断が出た。戻る見込みもないそうだ」

「そう…ですか。何か切っ掛けとか思い当たる節はありますか?」

「以前出動した防衛任務で少し無理な攻撃をしてな。それからしばらくして能力の出力が安定しなくなって、気が付いたら力が落ちていた。今思えばそれが原因だったのだと思う」

「なるほど。たまに聞く話ですね。他の回復能力者に見て貰ったりとかは?」

「既に幾人もの特級回復能力者に回復を試みて貰ったが効果はなかった。キミが私のツテで見てもらうことが可能な最後の一人だ」

 

 彼女には悪いがそれを聞いて俺は、俺にも回復させるのは無理だろうなと思った。

 

 回復能力者の回復は病気や外傷などにしか効果がない。これは一般人でも知っている常識だ。

 精神的なものになると補助系統の能力が有効な場合もあるらしいが、原因を聞く限りでは精神的なものではないし効果はないだろう。

 

 日本だけでなく世界に目を広げても、未だ能力を回復させるような能力は聞いたことがない。

 

 恐らくわずかな希望に掛けてここに来た彼女には悪いが、変に希望を持たせず現実を突きつけるべきだろうと考えて俺は口を開く。

 

「知ってると思いますけど、特級でも一度低下した能力を回復させることは出来ません。自分も何度か過去に試したことはありますけど駄目でした。仕事柄回復能力系の情報にアンテナを張ってますけど、そっちでも聞いたことは無いです。だから男性能力者も未だに、えーと…そういう行為を極力控えてるわけですし」

 

 男性能力者は性行為。正確には射精すると微弱ながら能力が低下することが確認されている。一ヵ月に一度くらいなら問題ないと言われているが、それ以上の頻度で行うと回数に応じて凄まじい勢いで能力が低下する。

 

 だからヒーローデビューして性に奔放になった男性ヒーローが、極まれに泣きついてくることがあるのだが、回復に成功したことは未だに無い。

 

「だがキミは今まで女性能力者を治療した経験はない。そうだろう?」

「えぇ、まあ、自分の回復方法はちょっと特殊ですから…」

 

 体液を塗って回復させるという特性上、今まで女性を治療した経験は残念ながらない。治療方法を聞くと例外なくみんな顔を顰めて拒否するからだ。

 

 だから動物以外は男性しか治療した経験がないのだが、男性相手だとこちらも精神的に来るものがあるので、緊急時以外はもう二度と治療しないと、つい最近心に決めたところだ。

 

「知っている。体液を直接、傷や患部に塗り付けるのだろう?」

「はい、その通りです。ただ今回のようなケースになると外傷とかではないので、仮に回復させるとしたら飲むか粘膜に塗布して吸収する形でしか効果は見込めないかと…」

「わかった。治す為なら仕方ない。元よりここには藁にもすがる思いで来たからな。能力が元に戻るなら何でもするつもりだ」

 

 特に照れるでも嫌がるでもなく、真面目な表情を浮かべ冷静に言い切る彼女。

 

 そんな彼女の顔を見て俺は、これはとりあえず治療して見ない事には帰らないだろうなと感じた。

 

「わかりました。それでは粘膜…の方は色々問題があるので、飲む形で治療してみましょうか」

「了解した。それで何を飲めばいいのだ?」

「えっと、自分の能力は粘性のある液体の方が効果が高いらしいんです。」

「なるほど、で?」

「だから仮に能力を戻すほどとなると、汗や涙、血、尿などでは厳しいと思うので、唾液か…精液辺りが候補になると思います」

 

 まあ唾液ともかく精液は一度も試したことはないけども。自分も嫌だし。

 

「わかった。が…流石に精液を飲むのは抵抗があるな。すまないが唾液で頼めるだろうか?」

「はい、わかりました。じゃあコップに出すので、薄めずにすぐ飲んでください。時間が経ったり薄めたりしても効果が落ちるので」

 

 俺は説明を終えるとコップに入ったお茶を飲み干し、コップを洗ってから彼女がジッとこちらを見つめる中、唾液をコップの中に垂らす。

 

 そのまま彼女に唾液の入ったコップを手渡すと、彼女は少し逡巡した後に舌を使いながらコップの中に入った俺の唾液を飲んだ。

 

「んくっ」

「どう…ですか?」

 

 俺が問いかけると彼女は確認するように手や足を動かした後、俺の方に向き直る。

 

「…… 少し身体が温かくなってきた感じがするな」

 

 ほんのり赤みがさした顔で彼女は言う。

 

「そうですか…。あっ、そういえば以前唾液を飲ませた動物が少し興奮したことがあったので、人に対しても興奮作用みたいなものがあるのかもしれません」

 

 以前受けた依頼で、身体の調子が悪い馬に唾液を飲ませたらめちゃくちゃ興奮し出したことを思い出す。

 興奮して暴れるというよりは、俺に異様なほど懐いて全身を舐められまくって、結局服が一着駄目になってしまったんだよな。

 

「なるほどな。だが効果はありそうだ。飲む前に比べると力の流れがスムーズになったような気がする」

 

 彼女は口直しにお茶を飲んでからそう言った。

 

「それは良かったです。どうしましょう、まだ続けますか?」

 

 男なら絶対提案しないけど、こんな美人ならそれも大歓迎だ。

 

「そうだな…。他の能力者と違って可能性は十分ありそうだ。すまないが今度は直接頼めるか。違いを確認しておきたい」

 

 彼女は机に置かれたコップを見下ろしながら提案する。

 

「えっ、直接ってもしかして…そ、そのキスするってことですか?」

「ち、違う! 私が下で口を開けているからそこに唾液を垂らしてくれればいい。ほらっ、さっさとしろ!」

「わ、わかりました。すみません」

 

 赤らめた顔でまくし立てる彼女に慌てて謝罪する。

 

 それから彼女は床に四つん這いになったり、寝そべったりと唾液を受け取る最適なポーズを探り始める。

 

 さすがに声を掛けることも出来ず、彼女を見守っていると最終的には服が汚れるのを嫌ったのか、その場にしゃがんで顔を上に向けると、餌をねだるひな鳥のように大きく口を開けてペロッと舌を出した。

 

(恰好も相まってそういうプレイの店に来たみたいだな) 

 

 俺は彼女の姿を見て、ゴクリと唾を飲み込みながらそう感じた。

 

 姿勢の影響で、胸の部分がボタンが今にも弾け飛びそうなほどパツンパツンになっているのが一番のポイントだが、恥ずかしそうに頬を赤くしてズボンをきゅっと手で握っているのもポイントが高い。

 

 それに加え迷彩服ということでまるで彼女を捕虜にして、それをいいことに好き放題させているような背徳感もある。

 

「どうした? この姿勢は辛いから早くキミの唾液を私にくれ」

「す、すみません。今、出しますね…」

 

 俺はドキドキする心臓を抑えながら彼女に近づくと、照明の光を反射してヌラヌラと輝く彼女の口に目掛けて、唾液を垂らした。

 

「ん…はぁ……」

 

 彼女は俺の唾液を飲み込んだ後、ずっと待ち望んでいた大好物を食べたかのような恍惚とした笑みを浮かべる。

 

 なんかちょっと様子がおかしいような……。

 

 俺の方をぼんやりとした顔でジッと見つめてるし、というかなんかジワジワとこっちの方に近づいて来てないか。

 

 俺が戸惑っている間にも彼女は俺の方にどんどん近づいて来て、あと一歩お互いが前に踏み出せば口が触れ合う距離まで接近してきた。

 

 が、そこで彼女はハッと正気に戻ったかのように大きく目を見開いたかと思うと、両手を使って俺を思いっきり突き飛ばした。

 

 咄嗟に能力者なら誰でも使える基本的な身体強化で衝撃を緩和しようとしたが、攻撃系の彼女と回復系の俺ではやはり地力が違うのか一回転して無様に床に這いつくばる結果となった。

 

「す、すまない。体調がすぐれないようだ。今日のところはこれで帰らせてもらう!」

 

 一瞬、床に這いつくばった俺に駆け寄ろうとした彼女だったが、俺と目が合った瞬間、白く端正な顔が真っ赤に染まったと思うと、ガチャンと勢いよく玄関を閉めてそのまま帰ってしまった。

 

「え? え?」

 

 状況が飲み込めない俺はあ然と呟きながら、彼女がいなくなった部屋の中をキョロキョロと眺めるだけしか出来なかった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。