一ヶ月……クロエとの初夜を含めれば一か月半が過ぎた。医者の診断と俺の『万能感知』によって、三人の妊娠は確実なものとなった。魔物は上位存在になればなるほど子供ができにくくなるし、俺は一応世界最高峰の魔物と言ってもいいのだが……どうしてか日に日に状況が悪化してきている。本当に気のせいだと思いたい。
いや、子供ができるのは嬉しいよ? 魔物は子供が欲しいという意思がなければ妊娠しないから、カレラとクマラは俺の子供が欲しいと思ってくれていた訳だ。クロエも入れて三人もの美人に愛されるのは悪い気がしないし、俺のものにしたという仄暗い歓喜もある。
だがしかし、俺は一国の主なので……王妃とか側室とかの問題が出てくる訳で。今は何も言われていないが、それも時間との勝負だろう。妊娠期間とか出産時期とか立場とか……問題が山積みだ。
しかも彼女達は頻繁に誘惑してくる。虜になっている俺に断れるはずがなく……一日も性交をしない日がない。俺から求めていったこともあるくらいだ。嬉し……ひどい時には朝、昼、夜と搾り取られている。
とにかく! 俺の愚息の節操のなさをどうにかせねばならない。俺自身も孕ませたいと思っているから、彼女達は妊娠したのだ。身体を重ねることはもう仕方ないとしても、孕ませたいと思ってしまう思考をどうにかしたい。
「いや、マジな話どうすればいいんだ……」
執務室で考えるべきことではないだろう。しかし、俺の長考は止まらない。
根性なんて曖昧なものじゃ駄目だ。これは実際に肌を重ねるなりして耐性を付けねば話にならない。つまり、身体を委ねてくれる相手がいる。もう妊娠している三人は除外して、だ。彼女達に耐性が付くことは一生ない。断言できる。
条件は貞操を捧げてもいい程度に俺を好いていて、子供はまだいいと考えてる知り合い……。
「無理だろ! 完璧に糞野郎じゃないか……」
俺と致してもいいと考えてくれる子は全員が俺との子供を望んでいると言ってもいい。逆に俺と子供を作りたくないと思っている人は、そもそも身体だけの関係を許してくれるはずがない。というか、この考え自体があまりにも酷すぎる。完全に女性蔑視だし、仲間をそういう目で見始めている自分に危機感と嫌悪が湧いてくる。
……致し方ない。ならば、そういう目で見ても大丈夫な相手を呼ぶしか……。
「かくなる上は……口の堅い高級娼婦を利用するしかない、か?」
「――何を悩んでいるのですか、リムル様?」
「うおっ!?」
すぐ後ろから漂ってきた甘く香しい匂いが鼻腔をくすぐる。唐突に耳元で囁かれ、俺は慌てて声の主を見た。
「テスタロッサ!? どうして俺の後ろに……」
新雪よりも白く美しい純白の長い髪と、
しかし、テスタロッサには国外での仕事を任せてあるし、俺の隙を突いて耳元に話しかけるなんてこともしないはずなのだが……。
「申し訳ございません。室内から気配を感じられるのにノックをしても反応がなく、緊急事態かと思ったため、勝手ながらも入室させていただいたのですが……お気付きになられるまで、何をしても反応がございませんでした」
そこまで集中していたことに驚く。やはり相棒がいないと『万能感知』すら使いこなせないな……。
「そうだったのか。気付かなくてすまなかったな」
「いいえ、何も問題御座いませんわ」
なんとなく「何をしても」の所が気になるけど、テスタロッサは品性や礼儀にこだわりがあるし、変な真似はしてないだろう。シオンとかだったらとんでもないことをやりそうだが。でも、本当に何をしたんだろうか?
「ところで」
テスタロッサが話しかけてきた。凄く綺麗な笑顔なんだけど……どうしてだろう。瞳孔が縦に裂けていてメッチャ怖い。蛇に睨まれたカエルの気分だ。肩をガッチリ掴まれて逃げられない――転移すれば逃げられるが、そんな真似ができる空気じゃねえ。
「リムル様の口から『娼婦』という単語が聞こえたのですが……気のせいですわよね?」
「はは、気のせいに決まってるだろ……」
誤魔化しに走った瞬間、テスタロッサの笑顔が冷笑に変化した。心なしか肩への圧力が強まった。ディアブロと同じく、親近感や恋愛感情を抱かせず、恐怖だけを与える類の表情だ。
「……………………………………」
「……ごめんなさい。言いました」
超怖い。ごめんなゴブタ、ごめんなフラメア、テスタロッサに微笑まれても抵抗したお前等は勇気あるよ……。俺は隠すのをやめて素直に打ち明ける。臆病者と言うことなかれ。
話し終える頃にはテスタロッサの笑顔は直視できるようになった。逆にこんな不純な話をしたのに不機嫌にならなかったことが理解できないが、冷たさがなくなって本当に良かった。蛇は綺麗だけど怖くもある。テスタロッサを蛇と称した者がいるらしいがピッタリだな。
「なるほど。理性の弱さ――というより、性欲の暴走を克服するために娼婦を抱こうとしたのですね。リムル様の御考えに異を唱えるなど差し出がましいですが、それはおやめになった方がよろしいかと」
「ま、そうだよな。絶対に問題が起きるし、娼婦の子も魔王が相手じゃ緊張して仕事に――」
「――この世界から娼婦という職種が消滅し、性犯罪率が高まってしまいますから。それではカレラやウルティマを喜ばせてしまいます」
何をする気だったんだ!? 俺が即決、即断して、娼婦と寝てたらどうなっていたんだ……? 考えては駄目だな、これは。封印しておこう。
ま、まぁ言ってみただけだし? 元から娼婦を抱こうなんて思ってなかったし? 俺の仲間並の美女・美少女なんて滅多にいないしな。俺が生まれた時からの知り合いであるエルフのお姉さん達ならアリだが、こう……種族のイメージ的にね。頼んだら割と快く了承してくれそうだけど、彼女達には身体を大事にしてもらいたい。
心の中でつらつらと言い訳を並べていると、テスタロッサが軍服の上からでもわかる豊満な胸を肩に乗せてきた。硬い軍服を着ているはずなのに、柔らかな感触がはっきりとわかる。しかも密着されているからテスタロッサのいい香りが鮮明に……!
テスタロッサの白い指が俺の顎をつつぅーっと撫でる。それだけで俺の背中がゾクリと震えた。
「わたくし、リムル様がこの身体を求めてくださるならば、何を置いても応じますのに」
「いや、俺もテスタロッサのことは好きだけど……どうした? 急に鼻を押さえて後ろを向いて……」
「お気になさらず」
ハンカチで鼻を押さえているっぽいけど、悪魔って鼻から何か出たりしたっけ? 俺が戸惑っている間になんとかできたようで、振り向けば見惚れるような笑みになっていた。
「……コホン。わたくしに何か至らぬ点でもありますでしょうか?」
「これ、自意識過剰かもしれないけどさ……テスタロッサは俺のことを好いてくれているだろう? 俺もテスタロッサみたいな美人が相手だと、子供を産んでほしいという思いが絶対に湧く――なんか今透けなかった?」
「お、お気になさらず……」
ジュッて音がしたぞ!? あれは太陽の光を浴びた吸血鬼やゾンビが焼かれる時の音に酷似していた。
とりあえず、テスタロッサが相手では本末転倒なのだ。理性と自制心を鍛えるのが目的なのに、初っ端から躓くことになる。娼婦を利用しようと思った要因の一つがこれだ。一夜限りの相手と生涯を共にしたいなんて思わないし、な。
もう今更だ! と若干ヤケになりながら説明してみたものの、テスタロッサはむしろ切り込んできた。
「その点ならご安心を。カレラからお聞きになったかもしれませんが、わたくし達
絶世の美女が自分との子供が欲しいと言ってきて耐えられる男がいるだろうか? 俺には無理である。
「テスタロッサ、今日はお前に夜の相手をしてもらう。いいか?」
「もちろんでございます、リムル様」
「……お前の気持ちを踏みにじるようで心苦しいが、子供は――」
「わたくしの意思では御子を望まないと誓いましょう。悪魔にとって契約は絶対ですからご安心を」
俺の前に来て跪くテスタロッサの顔は見えない。でも、今は助かった。流石に面と向かって最低なセリフを吐ける自信はなかった。
――のだが、
「ではリムル様、今すぐわたくしを抱いていただきましょうか」
「え゛っ?」
なんかいい笑顔なんですけど!? 傷ついたり怒ったりしている様子はないけど、逆に俺をビビらせる。
「リムル様のためにも性欲の抑制は急務です。さっさと始めてしまいましょう!」
「あ、あの、やっぱり怒ってる?」
「いいえ? ただ時間は有限です。暇ができたのでリムル様に会いに戻りましたが、リムル様に抱かれる時間はいくらあっても足りません。カレラは妊娠したのにとか、無言の自慢がウザいとか、思ってなどおりませんよ?」
これ怒ってるだろ。絶対に怒ってるだろ? 生存本能的なものが訴える警告に従って、俺は逃げようとするが、
「どこへ行かれようとしているのですか。わたくしの部屋はこちらです」
「ア、ハイ」
強引なテスタロッサからは逃げられそうになかった。
♦♦♦
深窓の令嬢の部屋を純白に染め上げたもの、それがテスタロッサの私室を見た感想だった。上等なレースが使われたベッドも白いし、精緻な装飾が施された棚や調度品、敷かれた絨毯も全て白い。俺よりも大きい姿見とテスタロッサが着ている軍服だけが白くなく、この空間で異彩を放っていた。
「さぁリムル様、こちらへどうぞ」
異性の部屋に未だ慣れない俺の手を引いたテスタロッサがベッドに腰掛ける。当然、俺もベッドに座り込んだ……肩が触れ合いそうな距離で。
ちらりとテスタロッサの横顔を見る。……やはり、どこをどう見ても人間の美人にしか見えない。完璧に整った横顔も、長い白髪から覗く細い喉元も、艶のある桜色の乳輪が綺麗な胸も――!?
思わず二度見どころかガン見してしまった。びっくりするほど自然に、テスタロッサは魔素で構築された服を解除していたのである。
俺の視線に気が付いたテスタロッサは頬を紅色に染めながら微笑み、胸と秘部を手で隠した。
「愛する殿方に見つめられると……恥ずかしくもありますが、こんなにも嬉しいのですね」
隙を見せない完璧な女性の恥じらう仕草と声音。それは色香となって俺の情欲をどうしようもなく刺激する。下半身で節操のない男の象徴が膨らんでしまい、俺は慌てて隠した。俺の場合は恥じらう仕草とは言えず、ただの醜態である。
少し落ち込んでいると、
「リムル様、気に病むことは御座いません。生殖能力が活発であるのは喜ばしいことです」
「……」
「さぁ……わたくしをお好きになさって下さい。できれば、リムル様も生まれたままの姿で」
「……うん」
俺も服を解除し、もう身体を隠していないテスタロッサと一糸纏わぬ状態で向かい合う。
シミ一つない白皙の肌にますます昂る肉竿に顔を赤くしながら、俺はテスタロッサの胸を触る。手に収まらないほど大きな胸は、指を沈めるとしっかりした柔らかさと弾力で押し返す。
「……」
逡巡した後、俺は綺麗な乳首に吸い付いた。
「あらあら……まるで赤子のよう。可愛らしいですよ、リムル様」
テスタロッサの声が俺の理性を溶かしていく。ちゅうちゅうと音を立てて吸うと、母乳が分泌されている訳でもないのに微かな甘い味がした。
俺の肉竿も彼女の手で奉仕されている。ゆっくりと上下に扱いていたかと思えば、皮を剥いて外気に晒された亀頭を掌で包み込むように圧迫し、鈴口を指先でかりかりと優しくひっかいた。偶に肉付きのいい太腿にも擦り付ける。
心地よい刺激で零れる先走りの汁だけでなく、テスタロッサが自身を慰めて掬い取った淫蜜も塗され、淫らな水音と快楽は次第に大きくなっていった。
身体の奥から湧き上がってくる熱い精液。これを彼女の手に出せたらどれだけ気持ちいいか……考えてしまった瞬間、俺の脳内から我慢するという言葉は消えてしまった。
しかし、あと少しというところでテスタロッサは扱くのをやめた。口を胸から離さず彼女を見ると、
「切なそうな顔をされても駄目ですわ。わたくしの
「そう、だっけ……」
理性は溶かされて、蕩けた頭では碌に考えられない。……テスタロッサがそう言うなら正しいのだろう。
彼女の手に導かれて俺の肉竿が淫蜜を垂らす秘部と密着する。俺の腰に置かれたテスタロッサの手に力が入り、肉竿は生温かい蜜壺に呑み込まれた。俺の弱点を知っているかのようにヒダが分身を舐めまわし、淫肉がきつく絡みつく。先端は膣奥にぶつかり、隙間もないほど深く繋がった。
身体の芯まで熱くなる快楽を与えられ、肉竿は子種を吐き出そうとする。俺も吐精感に完全に身を委ねていた。
――だからリムルは気付けなかった。テスタロッサの指が下半身の穴に伸びていたことに。
「ひぎっ!?」
本来何かが入ることなどあってはならない尻の穴。テスタロッサは容赦も躊躇もなく指を侵入させ、とある場所……射精を強制する前立腺を刺激した。
「んぐぅ~!?」
吐き出される大量の白濁液。しかし、それは心地よい射精と一緒に無理矢理の射精もさせたからこその量である。味わったことがない大きさの快楽と苦痛に、リムルはくぐもった悲鳴を上げた。
「いいですわぁ。超然としたリムル様の御尊顔がわたくしの手で淫らに……ふふっ、濡れてしまいますわ」
「ぎぃ!? んあ゛っ、んぐ、ふう゛っ! あひゅっ!」
嗜虐的に嗤うテスタロッサの声を処理する余裕はリムルにはなかった。何故なら、テスタロッサの指が今も俺の腸内をかき回しているからだ。
脈動している間だろうと前立腺はリズミカルに押され、肉竿は精液を吐き出すことを止められない。止まらない絶頂は快楽と苦痛の境界を破壊し、リムルの喉から意味をなさない絶叫が迸る。意識を失っても少しすれば覚醒させられ、気絶することも許されない。再生能力が高いせいで、精が尽きることもない。
必要のない空気を欲して舌は突き出され、白眼を剥きかけている瞳から涙がボロボロと流れていく。敬愛する主の痴態に子種を注がれるテスタロッサの子宮が疼いた。
「あひっ! あぐ、てしゅたっ、んぃ! やめ……んぶっ!?」
「あむ……じゅるぅ、ちゅううっ」
やめてほしいという懇願も言葉になる前に潰す。みっともなく突き出された舌をキスで押し戻し、自分の唾液をリムルの中に流し込んでいく。
そうして思考が停止したリムルに呟くのだ。――破滅が約束された悪魔の囁きを。
「リムル様。わたくし、実は怒っていますの。貴方様の御子を心の底から望んでいますのに、リムル様は肌を重ねるだけなんておっしゃって……」
「ひゅ……もぅ、むり……う゛あ゛!?」
「わたくしは『自らの意思では子を望まない』と誓いました。しかし、リムル様の御子を諦め切れないのですわ」
「ぁ……かっ、は……」
絶え間なく腸内を蹂躙され、胸の谷間に顔をうずめて痙攣するリムル。彼の目尻に溜まった涙を拭い、猫なで声で囁く。
「どうすれば二人で幸せになれるでしょうか? リムル様の口からお聞かせ願えませんか?」
「……………………………………」
最早言葉も出ないリムルの口は動くだけ。けれど、テスタロッサにはそれで十分だった。
「うふふふふっ、わたくしを孕ませたいですか。もちろん断ったりなどしませんわ。で~す~が、女としての矜持を傷つけられたので……仕返しさせてさせてもらいますわね」
口端を裂いて、蛇のように嗤った。
「わたくしが身籠るまで、ずっとこの方法で精を注いでいただきます。お覚悟を」
♦♦♦
「外交の場で身の程を知らない汚らわしい男達に求められてうんざりしていたけれど……次からはリムル様のものになったと言えますし、楽しみね」
自身を包む愛する主の妖気を感じながら、テスタロッサは隣で眠るリムルを抱きしめた。
ベッドの上のテスタロッサはドS。異論は認める。