新世紀43年。すなわち人類補完計画発動から43年。人類はその虎口を逃れ、新天地の太陽系外惑星Ross128bへと移住の旅を続けていたが、この年、遂に、目的の系外惑星へと到着した。
移住船たる恒星間航行船AAAヴンダーの船室の一つ……家族用に割り当てられた一室で、小さく声が上がった。
「そろそろ、起きようか……」
「そうねぇ……」
不老不眠のシトであるシンジとアスカは、どうせ寝ていないし、そもそも眠くもならないが、時計を見ると朝の7時なので、もぞもぞと寝床から起き始める。
「シンジ、あたしのパンツが行方不明。捜して」
「えっ、どこに脱いだの」
「たぶん、シーツの中だと思うけど」
「ああ、そっかぁ……どの辺だろ」
「見つけたら、あんたにあげる」
「い、いや、要らないよ」
「ひとりエッチのおかずとかにすればいいじゃん」
「しないよ。したくなったら、アスカとするし」
「ま、それもそうか」
などと騒いでいると、カーテンで仕切っただけの部屋の一画から、小さな七、八歳ほどの少女顔を出した。
「とと、かか、ユウグモ起きた」
とととは、もちろん、父親であるシンジ。
かかとは、もちろん、母親であるアスカを指す。
アスカとシンジの長女。今のところ、二人の間に生まれた一粒種だ。名前は名乗ったとおり、ユウグモという。人類補完計画の発動年からカウントする新世紀35年生まれ、八歳。
「あ、あら、起きたの、ユウちゃん……ほら、シンジ早くあたしのパンツパンツ」
「えっと……どこだろう、ないよアスカ」
「ったく使えないわねっ!グズノロマ!」
「お、怒るなよっ、自分が脱ぎ散らかしたんだろ!」
そこにユウグモがとてとて近付いてくる。手にはお気に入りの赤いハンドパペットを抱えて。これは母親のアスカ譲りのもので、もうあたしには要らないからと、ユウグモにあげたのだった。
「ユウグモ、起きたけど、全然眠くなかった。寝るの意味いつも分からない」
「ああ、そうだよね。うん、お父さんとお母さんも眠くないよ。でも人間はみんな夜に寝るんだ。だから、僕たちも合わせて静かにしていようね」
「あ、パンツあったあった」
「もうさっきからうるさいな……アスカは……」
シンジは眉を顰める。最近のアスカはそれが地だったのか、ちょっとがさつで、いささかえっちになりつつある。
「ねぇ、とと、かか」
「ん?なんだい、ユウグモ」
「カツラギミサト。逢いたい」
「え?ミサトに?ミサトおばあちゃんに逢いたいの、ユウちゃん。でもすぐに会えるかな、ミサトは一応この船で一番えらい人なのよ?」
それに最近は体調が思わしくなく、床に伏せている時間も多いと聞いていた。無理もない、ミサトは確か今年で85歳になる。ただの85歳ではない、激闘続きの軍人として生きてのその年齢だ。
「今日、逢わないと絶対ダメ。明日じゃ間に合わない」
「ねえ、シンジこれって」
「……うん、また何か予知したのかも知れない」
前にも度々そういう事はあった。ユウグモが何か騒いで急がせると、その時に相手に事件があったりして、未然に防げる事もあった。
「とりあえず、ブリッジクルー経由で連絡してみるわ」
◆
すっかり白髪になった髪をアップにまとめ、寝間着のままベッドから身を起こして、ミサトは微笑んだ。枯れ木のように痩せている。血色も悪い。しかし眼だけは輝いていて、最期の最期まで生きる力を振り絞るようだった。彼女の生き様がこの老境にも表れているようだった。
「久しぶりねえ。二人とも変わらない……わね」
見た目が十四のまま変わらない二人を見るたびに、ミサトは羨ましいような、申し訳ないような気分になる。ただ、二人が揃って一緒にいて、明るく愉しげなのは救いだった。
「ミサトさんもお元気そうで何よりです」
「はは、もうすっかりしょぼくれたおばあちゃんよ」
「まぁ確かにあたしたちよりは老けてるけど、それは最初からじゃない。おばあちゃんってよりはおばちゃんよ」
アスカは彼女らしい回りくどいひねくれた言い方で、ミサトを励ました。
「ありがとう、アスカ。ユウグモちゃん、久しぶりだね、元気してた?ミサトばあばだよ?……大きくなったわね」
アスカが腕に抱っこしている長女のユウグモ(彼女もまたハンドパペットを抱っこしている)にミサトは顔を近づけて声を掛ける。
前に会ったのは一年前ぐらいだったか。シトも幼い頃は人間同様に成長し、個体差があるが、ある年代で成長が止まる。ユウグモはまだ成長していた。
「うん、ユウグモ元気してた。でも人間みたいに夜寝れないの。ゆうべもずっと、とと、と、かかのお話しするの聞いてた。途中から、二人ともなんか苦しそうな声も上げてた」
「ちょっ!バカ!何を言ってるのよ!」
アスカは顔を真っ赤にした。カーテンの薄布では防げない艶めかしい行為の声は、睡眠を取ることのない娘には筒抜けだったのだ。
ミサトもそれとなく察して、フォローする。
「ま、まあ、仲が良さそうなのは良いことよ。あれから、四十年以上が経ってるんだものねえ。あなたたちなら、まだ新婚サン気分ね」
「子供はあれこれ悩んでしまって、少し遅くなったんですけど」
と、シンジは答える。
どうもシトになってからはタイムスケールが狂ってしまい、無限の時間に対して、十年二十年は僅かな期間という気がしてしまうのだ。グズグズしていた訳ではないが、子供を作る決断をしたのは、ようやく十年ほど前。地球を出発してから三十年以上が経過していた。
ミサトは船長室の天井、宇宙船の船殻に直接はめ込まれた、対放射線加工を施した鉛ガラス越しに、外の風景を見る。夜闇の孤独な深淵を圧するように巨大な岩石惑星が迫っている。
「もし世界に時間の経過を示す手がかりが何もなくなったとしても、子供たちの成長を見れば、我々は時間の経過を知ることが出来る」
葛城ミサトがそう言ったとき、脳裏に浮かべているのは、もちろん、己の一人息子であり、恋人加持の忘れ形見である加持リョウジだろう。彼ももう六十に近い年齢の筈だ。
「四十三年の月日を掛けて、我々はようやく目的地に到着した。生きている間に、こうして肉眼でRoss128bが見れて良かったわ。残念なのは、やはりテラフォーミング無しではあの星には住めないということ」
「それは、約束どおり僕とアスカで引き受けますから」
「また、あなたたちにつらい想いをさせる日々が始まるわね」
二人は重機として再建造された、F型エヴァに乗って、数ヶ月後には、惑星環境改造のために、惑星に降下する事になっている。今はその最終準備作業中だ。
「やーね、ミサト。あたしたちは見た目はそうは見えないだろうけど、もう大人よ。子供だっている。大人が人生に苦労するのは当たり前だわ。子供たちの未来のためでもあるんだから」
アスカはあの星で、ヒトの子らと自分たちシトの子らが同じテーブルに肩を並べる日を夢見ている。マーティン・ルーサー・キングJr.牧師の語った夢─かつての奴隷主の子孫と、奴隷の子孫が共に兄弟愛のテーブルを囲む─は、アスカたちにとっても夢だった。もっともシトである自分たちには食卓を囲むことは出来ないけれど。
「あたしとシンジは、ユウグモをあの星の大地に立たせてやりたいの」
「必ず来るであろうその日を直接、この目で見れないのだけが残念ね……」
ミサトはもう自分には時間がない事を知っている。
すると、アスカの腕の中から身体を乗り出し近づけてきたユウグモがミサトの指をそっと握った。そして、静かに目を瞑って、何かを暗闇の中に見通すように眉を顰めた。
再び目を見開くと、静かに託宣を告げるように言った。
「……ユウグモ、知ってる。ミサトの子供の孫孫孫……ずっと後の子供が、あの星に降り立つのを」
「あ、あのミサトさん……ユウグモには不思議な能力があって、予知夢みたいなのが見れるみたいなんです。シトの力なのか。本当に全部当たるのかどうかは分からないけど」
シンジが突然の娘の行動を補足、釈明するように言った。
「そう。それじゃリョウジの子孫が……あたしと加持の命の流れはちゃんと続くのね」
ミサトはあっさり、ユウグモの能力と言葉を信じたようだった。
「……リョウジとは全然会ってないわけ?」
アスカが尋ねた。
シンジとアスカはとある出来事で、艦内でミサトの息子リョウジと知り合い、友人になっていた。もちろん、ミサトと実は親子であるという関係を彼に告げるようなことはしていない。リョウジは今でも艦長のミサトが自分の母親だとは知らない筈だった。
「ずっと会わずに済ませるつもりだった。でもこの間、一度だけ会ったの。もちろん、親とは名乗らずによ」
「そうなんですか……」
「そして、今日この後、もう一度会う予定になっているの。そろそろ最期かも知れないしね。やっぱりそう思ったら未練が残るのよ」
「そんな!まだまだ元気じゃ……」
「ううん、いいのよ、最近は病気もしたし、年齢以上に老いてる気がする。宇宙放射線の影響かもね、なんちゃって」
「そんな……ミサトさんは心労も大きかったから」
船内での叛乱騒動も数回あり、ミサトは卓越した指導力でそれを阻止していた。アスカやシンジも、その金剛不壊の身体を生かして、ミサトの護衛を務めたことがあった。
「でも私はリョウジに会えなくても、シンジ君とアスカにはしょっちゅう会えていたから救われていたわよ。今さらだけど、あなたたちのこと、自分の本当の子供みたいに感じている部分もあった。もちろん、親という程の事は何もしてあげられない、それどころか過酷な運命を背負わせてしまっただけだったけど」
その言葉にアスカは首を振って、否定する。
「ミサトと三人で暮らした日々、今でも思い出すわ。あたしとシンジが家庭を持ってから、あの時はミサトはどんな風にしてたかなって思い出しながら、試行錯誤することもある。ね、シンジ?」
「うん、僕らにはあれが初めての人間らしい家族の形だったから。僕らにはちゃんとした親がいなくて、ミサトさんが初めて家族の温かさを教えてくれた。赤の他人の僕らにそこまでする必要もなかったのに、僕らを自分の子供のように育ててくれた」
「その子供たち二人が、もう赤の他人ではなくなって子供まで連れて、会いに来てくれる。それも一番会いたい、人生のおそらく最期の頃合いにね……私の人生は、もう十分に報われているわ」
「ミサトさん……」
「ミサト……」
シンジとアスカはミサトを前にして泣きたくても泣けなかった。だって、泣いてしまったら、ミサトが人生の終焉を迎えようとしているのを認めてしまうことになるような気がして。それが─ミサトの命数が限られていること、人は誰でも死ぬという人のことわりが─悔しかった。シトは真空崩壊以外で死ぬことはない。永遠ならざる人生を歩むヒトを羨ましく思うこともあったが、こうして人生の終焉間際に立ち会い、悲しみをこらえていると、ヒトの知り合いたちをみんな同じシトに引き入れてしまいたくなるのだった。
でも、それはシンジとアスカが勝手に押し付ける幸せだ。人間の生は限られているから、美しい。やり遂げて安らぎの眠りに就くことが出来る。シンジとアスカにそのような意味での安らぎはなかった。
ミサトはもう一度、天窓を見上げた。
「ねぇ、シンジ君。あの星に、名前を付けてくれないかしら。あの星は人類の新天地になる星だわ……素敵な名前を付けて、私はそれを知っておいて……逝きたい……」
「それなら、名前はもう決まってる気がします。ね、アスカ?」
「ああ、当然……アレよね?」
「え?アスカ、シンジ君?」
きょとんとしたミサトは交互に二人を見つめるが、アスカとシンジは声を揃えて綺麗なドイツ語の発音で言った。シンジはアスカに教えてもらって、今ではドイツ語もかなり流暢になっている。
「「Wunder!」」
そして、シンジは静かに説明を続ける。
「テラフォーミングしなくちゃいけないとはいえ、人類がまたもう一つの新天地を見つけられるなんて奇跡ですよ。そしてヴィレの主要メンバーや僕らの友達がみんな揃って欠けることなく、新天地にたどり着いた、こんなに嬉しいことはない。だからこれは奇跡なんです」
「ヴンダーか。AAAヴンダーから惑星ヴンダーへ。いいわね。これ、明日、あなたたちの発案ということで発表してもいいかしら」
「それはダメよ、ミサト」
「うんダメだよね、アスカ」
シンジとアスカは顔を見合わせて微笑む。なんなら、アスカの両手がユウグモの抱っこで塞がっていなければ、手のひらと手のひらをすぐパチンと打ち合わせそうな勢いだった。シンジが二人の考えを代表してミサトに伝える。
「あの星は、もうあなたたち、人類のものなんです。テラフォーミングは手伝いますけど、僕らシトのものじゃない。だから名付けるのはミサトさんでなくちゃいけない、分かりますよね?……あなたたち人類こそ、あの
人類をあなたたちと二人称でよばなくてはいけないことは寂しくつらいことだ。かつては自分もアスカもその一員だったのだから。でも、僕らはまだ人類の手助けが出来る。生き続けて、彼らへの償いが出来る。
「……確かにその通りね。これは負うた子に教えられたわ。じゃ、遠慮なくあなたたちのアイデア、無断拝借させてもらう」
惑星ヴンダーの名前は明日、艦長葛城ミサト。僅かに生き残った全人類の代表者たる彼女の名前で、彼女の発案として発表されるだろう。シトであるシンジやアスカの名前は、歴史の教科書には残らない。人類にはシトとの戦いの勝利者として自らを誇る必要がある。シトはゆっくりと歴史と伝説と神話の中に消えていけばいい。それでいいと思う。
「シンジ君、アスカ。あなたたち、本当に大人になったわね」
「うちの旦那さま、素敵でしょ?十四年の隔たりで、ガキだとか言って見捨てなくて本当に良かった。もちろん、シンジなんだから、あたしが付いてなくちゃ、まだまだ頼りはないけれどね」
「アスカには毎日助けられてるよ」
ミサトが二人を眺めて目を細める。自分にも加持とのこんな生活があり得た、そう思うと、古傷が少し傷む。その寂しい目に、シンジは少し躊躇いながら、声を掛けた。
「あの、ミサトさん……ニアサーのこと、今さらですがすみませんでした。加持さんのこと、ずっと申し訳なくて……でも何を言っても、償いにもならず、余りにも軽い気がして、ずっと言えませんでした」
「うん、正直言えば、ニアサーで家族や恋人を失った、残されたものはみんなシンジ君には多かれ少なかれ恨み節はあると思う。でも、シンジ君があれを予見できた訳ではないし、結局は誰かが苦しんでしまうものだったのよ……加持はそこで己の信念に殉じた、私はそれを今でも誇りに思っている。アスカとシンジ君だって、ちゃんと犠牲は払っていて、ヒトをやめざるを得なくなった。私たちの世界は本当に残酷ね」
「こいつ、結婚後も、いっつも悩んでてさ。第三村の区画に土下座に行ったりしたこともあったの」
「そう……」
ミサトはその光景を想像して痛ましさを感じる。
「でも、鈴原や相田に止められてさ。頭を下げるなら、お前を生かしておいて良かったと思えるぐらい、みんなの役に立て、そして式波と幸せになるんや、って。それから、シンジは二人の助手をやったり、リョウジと知り合って意気投合したり、あたしも紹介してもらって、みんなで仕事したり、楽しかったわ」
「うん……みんなとはもう年齢が隔っていて、最初は馴染めるか心配だったけど、やっぱり同級生だな、って」
重機としてのエヴァというアイデアも、そんな元級友たちとの交流で発案されたものだった。シンジがテラフォーミングの話をし、皆で隘路や困難のポイントを抽出し、解決策として衆知を集めたのがこのエヴァだった。
「エヴァを土木作業に使うというのは、軍事的に素人でないと出て来なかったかも知れない。元軍人のあたしには思いつかなかった。シンジとシンジの友達たちがいなければ、解決出来なかった。職業軍人は往々にして、素人に遅れを取る事があるものよね」
そう語るアスカには、もう背伸びした自負心や他者を見下す見せかけの自尊心は無かった。シンジや旧友たちを対等の人間として、時には自分を負かし、あるいは助けてくれる存在として認めている。
友達と共同してアイデアを練り上げることが出来たシンジ。友達の能力を素直に認める事が出来るようになったアスカ。四十三年の月日は、二人の見た目はそのままに、二人の中身を大人に変えていた。
「アスカ、シンジ君。私は今、本当に嬉しいわ。わかる?どうして嬉しいのか」
ミサトは一生懸命、涙をこらえている。
「エヴァに乗せて、あなたたちを苦しめてごめんなさい。あなたたちの人生をもしかしたら滅茶苦茶にしたんじゃないかと悔いていた。人類存続のために犠牲が必要だとしても、あなたたちは加持のような、大人じゃなかった。そんなことを強いていい筈が無かった」
「ミサトさん……」
「ミサトは気にしすぎよ、あたしもシンジも適当に楽しくやってる」
「だとしても、あなたたちがちゃんとした大人になってなかったら、私は悔やんでも悔やみきれなかった。でも、今私は安堵してる。二人はちゃんと大人になった。本当に良かったと思っている。ありがとう、そして、おめでとう」
「ミサト。なぜ泣く。人間だから、どこか痛いのか?」
アスカの腕の中のユウグモが言った。
痛いという概念はシトにとっては永遠の謎だ。痛覚がないからだ。習い覚えたばかりのよく分からない概念をユウグモは口にしてみる。
「……そうね、心が痛いのかも知れない。昔、私はあなたのお父さんお母さんにひどいことをしたから……だから今、痛くて泣くのかも」
しかし、アスカとシンジが否定するまでもなく、ユウグモは首を左右に振った。
「ミサト、そんなことしない。いつも、ユウグモに会うとき、遊んでくれるおばあちゃん。前は本当のおばあちゃんだと思ってた。おばあちゃんは、とととかか、にそんな事しない」
その言葉に堪えきれず、ミサトはわっと泣き出してしまう。ユウグモに抱きついて、頭を撫でる。
「ユウグモちゃん、ユウグモ……ありがとう、ありがとう……」
「ミサト、目からしょっぱいの。涙。シトでも涙は出るよ。ユウグモたち、痛いのないから、嬉しいとき、涙出る。ミサトも嬉しいのか?」
「もちろん!もちろん、嬉しいの。こんなに可愛い孫が出来て。私の人生は幸せだった。必死に生きてきて良かった……!」
シンジもアスカもそれを見ながら、それまでずっと我慢してきた涙で遂に、視界を曇らせている。
◆
「やっぱり、ミサトさんは……」
「ユウグモの予言が、明日じゃ間に合わないというのなら、そうかもしれないわね……」
もちろん、二人は心配して、医官のサクラ(今ではトップクラスの地位を占めている)に事情を説明して、不寝番の看病を頼んでいる。
しかし、運命というのは、そういう事では変えられないもののようだった。
葛城ミサトの容態が急変したのはその夜のことだった。