「じゃあ、俺たちと来るか?」
ゾルダートが言った。
サラにひっぱたかれて、自殺をゾルダートに止められた後。
もっと言うなら、サラと事をいたそうとしたが息子が役に立たず、ゾルダートに娼館に連れて行ってもらったがそこでも役に立たなかった後だ。
俺は全てに絶望していた。
1年前に起きた置き去り事件から、自分なりに頑張ってきたつもりだった。
人に嫌われないように。もう誰にも置き去りにされないように。
だが、ダメだった。
二度と顔を見せるなとまで言われた。
結局、俺はその程度の人間なのだ。
もういやだ。
「……いや、行けない」
俺の口から出たのはそんな言葉だった。
「そうか。だがもう死のうとするんじゃねえぞ? お袋さんを探すんだろ?」
思っていたよりもあっさりとゾルダートは引き下がった。
ゾルダートも本気で来るとは思っていなかったのかもしれない。
「……ああ」
「もし気が変わったら『ステップトリーダー』を尋ねてこい。面倒は見てやるよ」
「……ありがとう。ゾルダート」
俺はこいつを誤解していたようだ。
ずっと妙に絡んでくる嫌なやつだと思っていたが、面倒見がよくて、相手の問題に一緒になって考えてやれるいいやつだった。
だからこそいけない。
一緒にいってしまったら、きっとゾルダートに甘えてしまうから。
俺みたいなやつが一緒にいたら迷惑をかける。
……というのは建前だ。
本当はもっと単純に。
もう何もかもが嫌になってしまったのだ。
人と付き合うのが。
たとえ親切にしてくれたゾルダートであっても、俺はこの先迷惑をかけてしまうだろう。
それが嫌だったのだ。
もう誰にも関わりたくない。
誰と関わってもろくな事などない。
俺はその感情をよく知っていた。
前世で。
結局、俺はその程度の人間なのだ。
俺はひとり宿に戻ると、自室に入った。そして眠った。
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夢を見た。
何度も見た夢だ。
赤い髪の少女と楽しく笑っている夢。
親しげに話をしていたり。
冒険をともにしていたり。
そして最後は俺の腕の中に飛び込んでくる。
そこで夢は暗転する。
消えるのだ。
赤い髪の少女は。
髪の一部だけを残して。
俺は手の中に残った髪の感触に呆然として。
あたりを見渡すがそこには誰もいなくて。
涙がこぼれてくる。
「――!」名前を呼ぶが、返答はない。
捨てられたのだ。
俺は。
あの少女に。
快活に笑う、赤い髪の少女に。
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目が覚めたのは、もう日が暮れる頃だった。
目覚めは最悪だった。
残ったアルコールの感触が気持ち悪い。
昨日はぐでんぐでんになるまで飲んだにも関わらず、解毒魔法をかけなかったのだ。
今さらながらに解毒魔法をかけて酔いを消す。
そなえつけの洗面器に水魔術で水をためて、顔を洗う。
目の前にある鏡を見る。
そこにあるのはひどい顔をした青年の姿だった。
「……明日からどうするかな」
もう『カウンターアロー』には入れてもらえないだろう。
いや、入るのが怖い。
サラには拒絶されるだろうし、ティモシーたちにも蔑んだ目で見られると思うと怖い。
……そう考えると、ゾルダートと一緒に旅立つのも良かったかもな。
まぁいいや。
明日になったら考えよう。
そう心の中でつぶやくと、俺は寝床に入り直した。
すぐ寝られるわけではないが、どこにも行きたくないし誰にも会いたくなかった。
翌朝。
俺は冒険者ギルドに顔を出そうと宿を出た。
そこに、彼女はいた。
サラ。横にはスザンヌもいる。
サラは、なんだか消え入りそうな、申し訳ないような顔をしていた。
「悪いね。サラがどうしても話をしないといけないと言ってね」
スザンヌが言う。
「……話?」
何だろう。
二度と顔を見せないでと言ったのに、まだこの街にいる事への文句だろうか。
だがサラは何も言わずにスザンヌの後ろに隠れるようにしている。
「――ほら。話をちゃんとするんだろう?」
スザンヌに促されて、サラが前に出る。
「サラ、昨日は――」
「ごめんなさい!」
俺が何も思いつかないままとりあえず声をかけようとしたところで、サラが大きな声で言い、頭を下げた。
「――」
呆気にとられた。
俺は、彼女に拒絶されたはずだった。
何も謝られることなどないはず。
娼婦を横にサラの悪口を言っていたのは自分なのだから。
「……本当に、ごめんなさい」
サラが顔を上げた。
その目には大粒の涙が浮かんでいた。
「サラ」
「私、自分のことばかり考えてた。あんたは私の身体に満足しなかったんだ、だから娼館に言ったんだって」
「……」
「でも違った。娼館の人に聞いたんだ。あんたは女性を抱けない身体で、それに凄く悩んで、苦しんでいたって」
「……サラ」
「だから、ごめんなさい! ひっぱたいてごめんなさい! 傷つけてごめんなさい!」
もう一度頭を下げるサラ。
ぽたぽたと、地面に涙が落ちる。
「……いや、僕も悪かったんですよ……。あの場で、サラの悪口を言っていたのは確かなんですから」
言って。
サラの肩に手をあてて、助け起こすようにして顔を上げさせる。
サラの顔は涙でぐちょぐちょだった。
「……ルーデウス!」
そう言うと、サラは俺に抱きついてきた。そしてわんわんと泣き始めた。
---
俺とサラはふたりで俺の部屋にいた。
スザンヌがこんな往来で泣いていたら周りに迷惑だと言うからだ。
本人は「じゃ、あとはゆっくりふたりで話しなよ」と言ってどこかに行ってしまった。
サラはまだぐすぐすと鼻を鳴らしているが、一応は泣き止んだようだ。
俺の部屋。
サラはベッドの横の椅子に腰掛けて、俺はベッドに座っている。
「――私ね、あんたが好き」
サラが言った。
どきんと胸が跳ねる音がしたような気がする。
「こないだは嘘ついたんだ。助けてくれて感謝しているから抱いてもいいって言ったけど、本当はあんたが好きだから、抱いて欲しかったの」
「……すいません。僕の身体が――」
「それは謝らないで。……ねぇ、なんでそんな病気になったの?」
「そうですね……」
あの時、娼婦のエリーゼが言っていたことを思い出す。
女性を恐れているように見える、と。
……とすれば、やはり話すしかないか。
俺は覚悟を決めた。
「1年前にね、女性に捨てられたんですよ」
「捨てられた?」
「一緒に旅をしていた仲間の女性と、同じような関係になったのですが、翌朝彼女はいなくなっていました」
「……そ、その時はできたの?」
「はい」
「それ以来……だと思います。自分でも立たなくなっていたのは先日まで気づいていませんでしたが」
「そっか」
と。
サラは急に席を立つと、ベッドに――俺の横に腰掛ける。
「あんた、傷ついていたんだね」
そういうと、俺の頭を不意に抱きしめた。
「急にいなくなられて、捨てられたような気持ちになって」
思い出す。赤い髪と手紙だけが残された床を。
「ごめんね。私の方が年上なのに、全然年上として振る舞えてなかった。ごめんね」
今日のサラは謝罪ばっかりだな。
そんなことを思っていた。
と。
不意に、目頭が熱くなった。
ぼろぼろと涙が落ちる。
「ぐすっ、サラ。僕は……うっ」
「いいよ」
サラはそう言うと、ぎゅっと俺の頭に回す手に力を込めた。
「泣いたらいいよ。あんた、傷ついているんだもん」
俺はサラの腕の中で泣いた。
泣き続けた。
---
それから俺の生活は一変した。
まず日中はほぼ『カウンターアロー』と一緒に依頼をこなす。
正式に俺が加入したわけではない。だが、皆もうメンバーの一員のように扱ってくれていた。
そして夜だ。
パーティで食事を済ませた後、俺は部屋に戻る。
サラと一緒に。
ふたりで一緒に部屋着に着替える。
「じゃあ、ルーデウス、お休み」
そしてサラと一緒に寝る。
「……ん、おはよう、ルーデウス」
朝もサラと起きる。
この提案をしたのはサラだ。
「朝いなくなっていたのがトラウマなんだから、それが消えればいいんじゃないかって」
サラから相談を受けたティモシーとスザンヌはそう言ったらしい。
「私、そのエリスって子にはなれないけど、がんばるから」
ふんす、と鼻息荒く言ったサラ。
何だか俺のことを好きだと言ってから、開き直ったようだ。
あけすけに俺への好意を隠そうとしなくなった。
他のパーティメンバーも、なんだか暖かい目でサラの様子を見ている。
だがそんなサラの努力にも関わらず、俺の息子は一向に復活する様子を見せなかった。
---
夢だ。
いつもの夢を見ている。
赤い髪の少女の夢。
そしていつものように彼女は消える。赤い髪だけをあとに、俺を残して。
抱きしめる手が空を切る。
そのはずだった。
温かいものに手が触れた。金髪の少女。
いや、これは夢じゃない。現実だ。
俺の手はサラを抱きしめていた。
時刻はまだ夜中だろう。朝の光はまだ先だ。
「……んむ、ルーデウス?」
まだ夢うつつなのか、眠そうな声でサラが言う。
だが俺はそれどころではなかった。
……復活している。
あれ以来全く立ち上がる様子を見せなかった俺の息子は、しっかりと立ち上がっていた。
以前と同じく、血が通っている感触がある。
「サラ!」
「わっ、何……!? 急に大きな声を出さないでよ」
文句を言ってくるサラを無視して、俺はサラを強く抱きしめる。
「えっ、ルーデウス……!? これ、当たっているのって、もしかして」
「治った……」
俺はそれだけようやく言うと、サラにキスをした。
「サラ。ありがとう。君のおかげで治った」
「うん……でも、急に、なんで?」
「俺にも分からない。でも」
そっと抱きしめていたサラの身体を離すと、正面から向き直る。
「――ずっと言いたかった。言えなくてごめん。俺も君が好きだ」
そう言うと、サラの目に涙が浮かんだ。
そう。俺はサラのことが好きになっていた。
だが身体が治らない以上、何を言っても証明することができない。
だから言えなかった。
「うん。……うん。嬉しい。ルーデウスにそう言ってもらえて」
ちゅ。
再度、俺とサラはキスをした。
ついばむようなやさしいキス。
そっと舌を差し入れる。拒否されるだろうか。
そんな心配はいらなかったようだ。
サラはぴくりと身体を震わせると、俺の舌を吸い始めた。
俺はそろりとサラの衣服の中に手を忍ばせる。
これまでの話で、サラも経験がないというのは聞いていた。
「――いい?」
念のため、声をかける。
「うん。……ずっと、この日が来るのを待ってた」
赤い顔をしたサラが答える。
胸を撫でると、サラは「あっ……」と熱い息を漏らした。
胸は大きくも小さくもなく、俺の手に吸い付くようだ。
その感触を味わうと俺の息子は更に元気を増す。
早く先に進めと急かされているような気分になる。
ひとしきり胸を堪能すると、俺の手は下に伸びる。
パンツを割って指が秘所に。
そこはぬるりとした感触を返してきた。
彼女も十分に興奮している。
「サラ、俺、もう……」
「うん……いいよ……ねえ」
「?」
「さっきから、敬語じゃないね」
おかしそうにサラがくすりと笑う。
そういえばそうだ。
「……そういえば。なんでだろ」
「うん、でもいいよ。こっちの方が、ルーデウスが心を開いてくれてる気持ちになれる」
「じゃあ、敬語はやめるよ」
「うん……」
サラのパンツを脱がす。
俺の息子をあてがう。
ずっ。
腰を押し出す。
息子がめり込んだ。
「んっ!」
サラが声を上げる。
「サラ、力を抜いて……」
「う、うん……」
ずぶぶっ。
サラの力が抜けたのがよかったのか、一気に残りが吸い込まれるようにサラの
「ああっ!」
サラが声を上げる。
「入ってる、ルーデウスのが、入ってるよ……」
「ああ……」
「ああもう、本気出すとこんなに固いんだね……」
「……」
「ずっと待ってたんだよ……もっと早く欲しかったよぅ……」
「ごめん。サラ、ごめんな……」
「ううん。治ってくれたから。全部、許すから」
ちゅ。
今度はサラの方からキスして来た。
ずっ、ずずっ、ずちゅっ。
俺の腰は絶え間なく動き、結合部からはいやらしい音が響いている。
冒険者らしい、引き締まったサラの身体。
首筋と手の甲だけが日に焼けていて、それ以外は雪のように白い。
それが俺の腰の動きに合わせてくねり、動く。
「ああ、ルーデウス、私、気持ち、いい……」
「俺も気持ちいいよ……」
腰の動きを止めずに俺は言う。
「嬉しい……」
「俺も嬉しい。サラを歓ばせる事ができて」
「ふふ……一緒だね……」
俺とサラは長いキスを交わした。
限界は思ったよりも早く訪れた。
1年分溜まっていたというのもあるだろうか。
「サラ……そろそろ……」
「うん……出して、
「えっ」
サラは冒険者だ。
万が一妊娠でもしたら、その間依頼を受けることができなくなる。
生活にも困りかねない。
「サラ、それは」
「やだ! やだ! ぜったい
そう言うとサラは両足を俺の身体を後ろに巻き付けてきた。
強い力だ。
「サラ! ……くっ」
抜いている暇がない。
「うっ、出る! ああっ!」
どくんっ! どくんっ!
……出してしまった。
俺の息子は俺の気持ちも知らずに全力でサラの一番奥で白濁液を発射してしまった。
「……やった」
嬉しそうなサラが言う。
射精後の力が抜ける独特の感触を感じつつ、俺は答える。
「……できちゃったらどうするんだよ」
「当然、あんたが面倒見てくれるんでしょ?」
全く疑っていない口調。
この世間知らずめ。俺が嫌だと言って逃げたらどうするつもりなんだ。
これも信用されているって事でいいんだろうか。
ぽん、とサラの頭に手を乗せる。
「そういう先のことはちゃんとふたりで話し合って決めていこう」
「うん」
サラは顔を赤くして答える。
「その前に――」
サラの目が下に行く。
具体的には俺の息子だ。
そこは早くも復活を遂げてびんびんと己の存在をアピールしている。
「こ、これ、あんたがもう一回したいってことで、いいんだよね?」
「……ああ」
正確には性欲が勝手に言っているだけで理性も常にそうとは限らないのだが、説明するのもややこしい。
と、ベッドの中でサラが俺に飛びついてきた。
「じゃ、もう一回しようよ」
目がキラキラしている。
「ああ」
俺はその目に抗えず、思わず答える。
俺が正式に『カウンターアロー』のメンバーになったのはその次の日のことだった。
サラは一度ややこしい状態になってからくっつくことになったので
えっちが始まるまで時間がかかってしまいました。