逆行転生TSF 作:逆行物増えろ
春、桜は咲き乱れ、通学路のそこかしこには菜の花畑が広がっている。風にも暖かな陽気が混ざり、微かな花の薫りも含まれている。
そんな中、僕達5年生は在校生代表として卒業生である6年生を見送ったところである。
三月中旬、暖かな陽射しの下、卒業式が執り行われたのだ。
今の6年生とはそこまで深い思い出もなかったのだが、雰囲気に呑まれてしまったのか年甲斐もなく少し泣いてしまった……ちょっと恥ずかしい。
今は帰りの会だ。
僅かに赤くなった目を押さえつつも先生の話を聞いている。
来年からは最終学年なのだからどうこうという激昂を聞きつつも僕は先程の事を思い出す。
帰りの会に入る直前、教室への移動中に勇斗くんから終わった後に時間が欲しいと言われたのだ。
久しぶりに見るその真剣な様子にその時は僕も少しだけ緊張してしまった。
……もしかして、もしかするのだろうか?
そう思うと顔がドンドン熱くなってくる。
もしかしたらニヤケ顔になってしまっているかもしれない。
そうしている内に、もう帰りの挨拶だ。
「では皆さん、さようなら!」
「「「さよーなら!!」」」
「一緒にかえろー?」
「いいよー」
「じゃーねー」
「バイバーイ」
みんな思い思いに帰っていく。
僕も帰る準備だけして自分の席でジット勇斗くんを待っている。
その様子から察してくれたのか委員長と愛梨ちゃんが励ましていってくれた。
逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ!
前世も含めて人生で初めての事なのだ。多少精神年齢が高いくらいじゃどうしようもない。
だからこそ僕は気合を入れる。
前回の様にはぐらかしたりせずに、正面から勇斗くんの気持ちを受け止めてみせるのだ!
みんなが帰っていき教室に生徒は疎らだ。
そんな中こっちに向かってきた勇斗くんに気付いた僕は、席から立ち上がってアピールするかの様に手を振る。
「あっ!勇斗く―――」
そんな僕の手をグッと掴むと、緊張しているのか一言も喋らないまま僕を引っ張ってきた。
「「………………」」
勇斗くんの緊張が僕にも伝わってしまい、二人して無言のまま手を繋いで歩いていく。
そうして勇斗くんに連れらて来た場所は、学校の裏山にある僕達の秘密基地の1つだった。
学校の裏には小さな山があり、その中腹にはちょっと開けた場所があるのだ。
昔は畑だったのかこの時期は毎年の様に菜の花畑に変わっている。そしてその際には小さな東屋があり、農機具が保管されている。
僕らは管理されなくなっていたその場所を秘密基地として使っていた。
眼下にある学校では、卒業生と保護者だろうか?学校から次々と旅立っているのが見える。
それを横目に眺めながら東屋へと立ち入る。
当然鍵なんて無く、窓にもガラスなんて上等な物ははまっていない。気持ちの良い外からの風が直接中へと吹き込んでくる。
そして誰が持ち込んだのか、ベッドのマットレスが東屋の床の大半を占領していた。
―――僕らはその横で向かい合う。
「……悠季!」
「……うん」
勇斗くんの真剣な表情。
僕はその視線を正面から見つめ返す。
「悠季、お前にずっと、伝えたかった事があるんだ!」
勇斗くんの熱い視線に僕の身体も熱くなる。
「まだお前には解らない感情なのかもしれない!親友から向けられるには迷惑な感情なのかもしれない!」
ううん、そんな事ないよ……!
「だけど!お前には知っておいて欲しかったんだ……俺の気持ちを!」
ドキドキと心臓が早鐘を打っている。もう他の、風の音も鳥の声も、何も聞こえない……。
世界には僕と勇斗くんの二人だけだ!
「俺は…………お前の事が好きだ!悠季!!」
凄い熱量を持った気迫が僕の全身にぶつかってくる。
ともすれば勢いだけでうなずいてしまいそうなほどだ……だからこそ、僕は僕自身の意思で応えるのだ。
「うん……僕もさ!僕も大好きだよ、勇斗くん!!」
僕はそう応えた勢いのまま勇斗くんに抱きつき、頭の後ろに両腕を回す。そしてそのまま口付けをする。
少しだけを上を向いてのキスだ。
勇斗は僕の突然の暴挙に固まり、目を白黒させている。
そのまま数秒……最後に舌で勇斗くんの唇をつついてからサッと離れる。
僕を抱こうと上げた腕が空を切り、勇斗くんは呆然としている。
……ちょっと面白いかも。
そして我に返った勇斗くん。
「なぁっ!?お前っ!やっていい事と悪い事が有るんだぞ!?」
「きゃ〜〜♡」
勇斗くんはそう言い、僕の首に腕を回してヘッドロックを決めてきた。
緊張して張り詰めていた空気が霧散し、騒がしくも温かないつもの雰囲気が戻ってきた。
男女の関係も欲しいのだけれど、やっぱり親友の関係も捨て難い。
僕はなんとも強欲だったみたいで、どっちも欲しいと思っているのだ。
組み合っている状態で僕は、力を抜いて横のマットレスへと倒れ込む。当然勇斗くんも巻き込んでだ。
僕の上に覆い被さっている勇斗くん。鼻先が触れ合いそうなくらいの至近距離。
僕の視界にあるのは勇斗くんの瞳だけだ。
キスしようと目を瞑ると勇斗くんの方からしてきてくれた。
キスって気持ち良かったんだ……♡
長い長いキスだ。段々と息苦しくなってくるが離れたくない。振り払う気持ちすら湧かない。
そもそもこう抑えられてしまえば、そうそう脱出する事なんかできないだろうけどさ。
……これからどんどん体格差は広がっていくんだろうなぁ。
もしかしたら最終的には背伸びをしても届かなくなるかもしれない。
そうなるまで、そうなってからも、僕は勇斗くんとずっと、何度だってキスをしていたいと思うのだ。
―――ぷはぁっ♡
名残り惜しいけれどキスは一旦終わりだ。
最後の方は口の中まで舐め合っていたけれど、それに夢中になってしまい先に進めそうになかったのだ。
勇斗くんの背中に両腕を回して引き寄せる。
そして鼻先で触れ合い、笑い合った。
そのまま少しだけお喋りに興じる。
この一年の振り返りみたいな感じだ。
「いやぁ〜……お前平気で俺に肌見せたりしてたしさ、男女のアレヤコレヤに疎いのだとばかり……」
「むっ、失礼な!勇斗くんにしか自分から迫ったつもりは無いよ!」
ちょっと意地悪かもしれないがネタバラシだ。
「は?迫った?……まさかお前、今までのヤツ全部解ってて……?」
「さーて、どうだったかなぁ?」
ニヤリとイタズラが成功した時みたいに笑って見せる。
勇斗くんは顔真っ赤だ。
「お前っ!俺がっ!どれだけ……ッ!!」
そんな勇斗くんの様子にクツクツと笑っていると、勇斗くんはグワシと僕の手を纏めて頭の上に抑えつけてきた。
バンザイでまな板の上の鯉状態だ。
「……許さん!」
「許さないなら僕をどうしてくれるのかなぁ♡」