「気分はどうだい?ジュード君。」
ギャラボベーロ地下闘技場のVIPルーム。
その部屋に設置されたキャプチュードウェブの中で這いつくばる赤髪の少年に声をかける。
「お前・・・何が目的だ。」
ウェブの生体拘束効果によって、身動きが取れない少年は何とか首だけを動かし、私の顔を睨み付ける。
大事な取引先である議会騎士団が瓦解した原因になったと噂される4人の子どもたち、憎しみから彼らのことを徹底的に調べあげた私と違い、見ず知らずの男に拘束された少年は私のことを探っているようだ。
「おぉ、怖い怖いw 無料で特等席にご招待してあげたのに酷い仕打ちだな。」
そう言いながら窓の外を指差す。
「・・・ユウリィ。」
満員の観客で埋め尽くされた地下闘技場、その中央に設置されたリングの上で戦うパラディエンヌの少女。
その少女を見つめながらジュードが呟く。
「強い、強い!!さすが、かつて闘技場を賑わせた4人組の1人、ユウリィ・アートレイデ。圧倒的な強さだ!!」
自己強化魔法、そして強力なマテリアルの力で、モンスターを圧倒するユウリィ。
以前、ジュードたちが出場した闘技場ならば大歓声が上がりそうな光景だったが、
興奮気味なアナウンスに相反して、観客は不気味なほど静まり返っていた。
「さぁ、残り2戦!!見事に勝ち抜き、人質の少年を救い出せるのか!!次の相手はこいつだ!!」
アナウンスの声に反応するように闘技場には巨大なモンスターが姿を現す。
連戦による疲労が隠せない様子のユウリィだが、自身に補助魔法をかけ、巨大モンスターに立ち向かっていった。
「さすが、神剣から世界を救った英雄の1人だ。見かけと違って強いねぇ~」
這いつくばるジュードを見下ろしながら声を掛ける。
「君を人質にしなければ、彼女に言うことを聞いてもらうのは不可能だったな。」
ハリムで1人開拓作業をしていたジュードを罠にかけ捕え、私はユウリィに交渉したのだ。
「ギャラボベーロの地下闘技場に出場し、5戦勝ち抜けばジュードを無傷で解放してやる。」と・・・
私の言葉の真意を警戒しながらも、仲間の命を人質に取られた彼女は条件を飲むしかなかった。
巨大モンスターの耐久力に苦戦しながらも、終始戦いを有利に進めているユウリィ。
決着は時間の問題のようだ。
「さて、目的を教えて欲しいんだったよね。」
必死の形相をしたジュードに向かって薄ら笑いを浮かべながら語りかける。
「君たちのせいで大事な取引先である議会騎士団を失って、多額の損失が出たからね。その埋め合わせはしてもらわないと・・・」
そう言ってポケットから一枚の写真を取り出し、ジュードに見せる。
「ユウリィ・・・?」
「君たちが出場した闘技場の試合で撮影された写真だ。彼女が大きく写ったものだけ高値で取引されている。それだけ、商品価値があるということだ。」
「ユウリィに何をする気だ!!」
「それは最終戦の対戦相手から語ってもらおうかな。君に挨拶したいそうだよ。」
合図すると部屋の扉が開き、赤いプロレスパンツに身を包んだ肉付きのよい男が現れる。
「ジュード、久しぶりだな。」
「レイモンドおじさん!?」
議会騎士団のシエルシェルター襲撃によって別れた後、逃亡生活の途中で再会し、怪我をしていたためギャラボベーロの医師に預けた男。
見知った顔が現れたことにジュードは動揺しているようだ。
「レイモンド、時間はあまりなさそうだ。挨拶は手短に済ませてくれ。」
「分かったよ。」
そう言ってジュードの前で屈むレイモンド。
「レイモンドおじさん、どうしてそんな奴と!?」
「どうしてか・・・全て、この子のせいだよ!!ヒヒヒヒヒヒ!!」
先程私が取り出したユウリィの写真を一舐めし、不気味な声で笑うレイモンド。
その様子を見て、ジュードはレイモンドが自分の知っている男と別人になっていることを察したようだった。
「ジュード、お前はこの子と一緒にいて何も感じなかったのかい?」
「どういうこと?」
「私は一緒に居た時間はほんの僅かだったけど自分を抑えるのに必死だった。」
レイモンドはそう言いながらジュードにユウリィの身体がアップになった写真を見せつける。
「幼い顔立ちなのに、15歳とは思えない厚着の上からでも分かるデカい乳、それにムチムチの白タイツ脚。見ているだけでチンコが痛いほど勃起してしまって大変だったw」
ベロベロとその写真を舌で舐めまわすレイモンド。その気味の悪い行動にジュードは言葉を失っていた。
「強すぎるぞ!!ユウリィ・アートレイデ!!第4戦も圧勝だぁ!!」
アナウンスの声を聞き、会場を見るとリング上には動かなくなった巨大モンスターが確認できた。
「準備しろ、レイモンド。」
「待ってましたw」
子どものようにはしゃぎながら、私が手渡した精力剤を一気に飲み干すレイモンド。
そのまま、ジュードのことなど忘れたように、赤いプロレスパンツを大きく膨らませながら部屋を飛び出していった。
「さぁ、ショーの開幕だ。」
背後から聞こえるジュードの静止の声を無視し、私も会場に向かう。
リング上では巨大モンスターの撤去作業が進んでいる。
先程まで静まり返っていた会場からは、観客たちの不気味な笑い声が聞こえ始め、モニターには第5戦に向けて警戒を強めるユウリィの様子が映し出されていた。