「さすが世界を救った英雄だ。ここまで強いとは想定外だったよ。」
『約束、忘れていませんよね・・・』
拍手しながら会場に現れた私をリング上から怒りの籠った眼で見るユウリィ。
「もちろん。次の最終戦に勝てばジュード君は無傷で解放しよう。そして、今後二度と君とジュード君に関わらないことを約束する。」
『ジュードっ!!』
キャプチュードウェブに拘束され、衰弱したジュードの様子が会場の巨大スクリーンに映し出されるとユウリィは悲痛な声をあげた。
「さて、感動の再会が出来るかは次の結果次第だ。」
私が指を鳴らすと、スクリーンの映像が切り替わり、映像カメラマンが撮影するユウリィの表情が映し出される。
「怒ってたら可愛い顔が台無しだよ。」
ヘラヘラ笑いながらリング上で撮影するカメラマンをキッと睨むユウリィ。
「対戦相手以外への暴力行為はその時点で反則敗けだからね。」
カメラマンと同様に先程まではリングの外に居た審判の男がユウリィに忠告する。
長身細身で眼鏡をかけた審判の男。
その男のニヤついた気味の悪い表情に嫌悪感を感じているようだったが、ユウリィはその忠告に無言で頷いた。
「さぁ、第5戦の対戦相手の入場だ!!」
『えっ・・・!!』
アナウンスの声と同時に対戦相手の花道に現れた男に、警戒を強めていたユウリィの表情が驚きで固まる。
「まさか、こんな形で再開するとは思わなかったよ・・・ユウリィちゃん。」
『レイモンドさん・・・』
「ジュードを助けたければ試合に出ろと脅されて出場したが、まさか対戦相手が君だとは・・・」
顔を俯ける赤いプロレスパンツの男に声をかけるユウリィ。
「おやおや?知り合いだったのかな?」
私の問いかけに再び怒りの籠った眼を向けてくるユウリィ。
「早く得意のマテリアルでそのおっさん焼き殺しちゃえよ♪」
観客から飛び交う残虐な言葉。悲痛なユウリィの表情をニヤニヤしながら撮影し続けるカメラマン。
ユウリィは目的を理解したような様子で唇を噛み締めている。
(知人を殺害する少女なんてマニアックな内容じゃこんなに観客は集まらないよ・・・)
台本通りの勘違いをしてくれた少女に口元を歪めながら、審判の男に目線で合図する。
「両者前へ!!」
審判に促され向き合うユウリィとレイモンド。
「対戦相手が人同士でもルールは今までの4戦と変わらない。ギブアップなしの時間無制限一本勝負。どちらかが戦闘不能になれば試合終了だ。」
「殺せっ!!殺せっ!!」
審判のルール説明をかき消すような観客の怒号。
「いい表情だよぉ!!ユウリィちゃん♪」
興奮気味にユウリィの表情を撮影し続けるカメラマン。
異様な雰囲気の中、第5試合開始のゴングが鳴った。