アダルトショップ佐藤へようこそっ! 作:Rヲウ
「うわ、やばっ!」
「どうしたの? お姉ちゃん」
十夏が不思議そうに姉の千秋に声をかけた。
姉の千秋はベッドに寝転んでスマホで飽きもせず掲示板を見ていたのだ。
「まあいつかバレるとは思ってたけど早かったなぁ」
と言いつつ、妹の十夏にスマホのアプリの画面を見せた。
「あれ? これお兄ちゃんと紬お姉さんだよね?」
スマホの画面にはお風呂に入っているお兄さんと紬お姉さんをおそらく窓の隙間から撮った画像が映っていた。
体をボディソープの泡まみれにした紬お姉さんがお兄ちゃんに後ろから抱き着き腰の前に手を回して何かを握りしめているけど、肝心な部分と目元にはモザイクが入ってる。
「そうだよ、朝見たらスレが3つも消化されてておかしいとは思ったんだよね」
「?」
「そりゃ盗撮したやつが悪いんだろうけど……これは絶対騒動になるよ」
「えー大変じゃない。八千花ちゃんにも知らせていい?」
「……そうだね。知らせた方が良いかも。下手すると私たちも盗撮されてるかもしれないし。先週、紬さんがいない時を狙ってお兄さん騙してみんなで一緒にお風呂に入ったでしょ?」
「うん、あれ楽しかったぁ。裸で逃げるお兄ちゃんの隙をついて八千花ちゃんがぎゅうって握りしめたらすごく堅くなったって大はしゃぎしてたし」
「十夏も大喜びでお兄さんの顔の上に跨って二人がかりで握りしめて離さなかったじゃん」
「だってお姉ちゃんすぐ独り占めするし」
◇◇◇◇◇◇
「誰この女……」
会社に向かう通勤電車の中でスマホで掲示板を見ていたら、何個も隔離スレが立ってしかも消化されてたのでおかしいとは思ったのだ。
朝から気分が最低にまで落ち込む。
となりで股を広げて座ってる中年のおっさんに押されて狭くて窮屈なのが更に気分が落ち込ませる。
ちったあ遠慮しろよ、おっさん。
ああ、しかし、しかしぃ……美月はがっくりと項垂れた。
あれだけのイケメンなのだ。そりゃいつ彼女ができたって不思議じゃないけど、あたしのオアシスが一個消えちゃったなぁ……
んんー……。
でも……待って?
最近まで独り身だったのは間違いないはず。
なら彼女だとしてもそういう関係になってからまだ日は浅いよね?
……ダメ元でやって見る価値はあるんじゃないかな?
こっちが勝手に惚れてるだけだけど諦めるにはまだ早いような気がする。
生まれてはじめての彼が略奪愛ってのもいいかもしれない。
年上の女性のテクニシャンなところを見せて体で奪っちゃえば。
処女だけどなんとかなる、きっとなる!
よし!
今日は定時上がりだ。
◇◇◇◇◇◇
「
「うっそぉおおおおおおお!!」
あまりの衝撃で背中まで垂れてるポニーテールがガクガクと揺れる。
講義が始まる前の大学の教室で絶叫した曽根絵里香に教室にいた学生全員の視線が集まった。
「ね、びっくりでしょ?」
「て、店長さんに彼女が、ががが、うがぁ!」
「しかももう深い仲になってるっぽい……」
「中村っちぃ……慰めてよぉ」
「こら、曽根っち胸揉むなっての。あたしにその趣味はないっ」
「ちっくしょーいやだぁ……小学生以来の10年ぶりの恋なのにぃ」
「ああもう。そりゃあたしもそうだよ」
「ぐぅぅ……もういっそ、当たって砕けてみるかぁ!?」
「えぇ? ……うん」
◇◇◇◇◇◇
「今日もいいお天気ねぇ……」
雲ひとつない天気に湿度は低くカラッと晴れ上がっている。
洗濯の終わった子どもたちの服を物干し竿にかけて干していく。
「
下の子の楓は大人しいからそんな心配はいらないんだけど。
でも男の子ってほんと可愛いし息子大好きなママ友は多い。
……手がかかる方が可愛く感じてしまうのは親の性なんだろうか。
掃除洗濯を終えたのでキッチンで休憩する。
TVをつけると芸人が他愛もないことをべらべらと喋っていた。
それを眺めながら煎餅を一枚カリっと齧る。
「美味し」
少し古くなってきたお茶葉を早く消化してしまおうと最近はお茶ばかり飲んでる。
そしてお茶だけだと口元が寂しくなるのでついつい煎餅をつまんでしまう。
もう一枚煎餅に手を伸ばしかけて思いとどまる。
「だめよ、真季。その一枚がだめなの」
夫がせっかく頑張って痩せたのだ。妻の私が太るわけには行かない。
だけど、ああ……だけど。
「美味しいのよねぇ」
カリッと二枚目の煎餅を齧りつつ真季は呟いた。
今日の夜の散歩はもうちょっと長めにしないといけないかなぁ。
◇◇◇◇◇◇
昼休み。
いつものように彩乃はトイレの個室に籠もってディルドを口に咥えて吸い始めた。
いつもなら三本使って昼休みの間だけで深く何度も
さっきスマホで見たいつもの隔離スレでとんでもない騒ぎが起こっているからだ。
「店長さんに彼女がいたとか……」
考えれば考えるほど気分が落ち込んでいく。
最後の大会、表彰台に立てたのは間違いなくあの店で買ったディルドのおかげだ。
ディルドで膣奥を
もうその時点でディルドを使い続ける意味はなくなったとは言えるけど、その後も日課のようにディルドを使ってオナニーを続けたのは店長さんの声が聞きたかったから。
店長さんの声が
むしろ心地良さはそちらのほうが上なのだったりしたし。
「はぁ……」
だめだ、やっぱり諦めきれない。
というか、好きだって自覚しているのになんの行動も取ってない自分はまだ始めてもいないかったのだ。
始めてもいない自分は、このままでは終わることもできないのではないか?
そうだ。
遅かったけど、もう手遅れかもしれないけど、今からでも始めよう。
もしかしたら本当に始まるかもしれない。
◇◇◇◇◇◇
「ふぐぅぅ!」
ベッドの上に置いたノートPCで掲示板を見ながら咲良はゴロンゴロンとのたうち回っていた。
お店で買物をする時には必ず何か話題を店長さんに振って長々と話をすることを繰り返しようやく気軽に話せる間柄になれたのはこの前だ。
遠距離恋愛の不利さは十分に理解していたけど、こちらの一方的な片思いともなれば尚更だ。
バイト代が貯まる度に北海道から飛行機で彼の店に通ってアダルトグッズを購入する。
……常識的に考えれば自分の行動は常軌を逸している自覚はあるけど、しょうがないじゃない惚れちゃったんだから。
でもそんな店長さんに彼女が出来てしまった。
駆けつけて問い質したいけどお金がない。
来週にならないとバイト代は振り込まれない。
「あああああぁっ、うっぐぅううう」
ごろんごろんとベッドを転がっても何の解決にもなりはしない。
ただ、涙だけが溢れてくる。
「うぐっ……ひぐっ……」
ベッドのシーツに顔を押しつけても喉の奥から出てくるうめき声がどうしても止まらなかった……。
◇◇◇◇◇◇
「ただいまぁ」
「あら、おかえり夕貴」
碧と別れて家に帰り、キッチンに入るとお母さんがいた。
髪は後ろで軽くまとめているだけだけど年齢なりの化粧はしてて私に似てて……美人だと思う。
ニコニコと笑っていて娘の朝帰りを非難するような素振りはない。
事前に碧と一緒にホテルでパジャマパーティするって言っておいたからなんだけど、怪しむ素振りもない。
一人娘がホテルに行って朝帰りなんかしたら一般的にはもうちょっとこう何かありそうなんだけど。
……だけど怪しまないのは当然なのかも。
私の力の最初の被害者は両親なのだ。
親を被害者と言うのは少し違うかもしれないけど、幼少時無自覚に振るった私の力の影響をもっとも色濃く受けた両親は私を溺愛してしまっている。
子供の頃から私がしたくないことはさせなかったし、欲しいものは何でも買ってくれた。
私も両親が大好きだったので、「大好き!」って言いながら何度も抱きついていたものだった。
両親が私を愛し過ぎているのでは……と思ったのは小学校に上がってしばらくした頃だったか。
いろんなことが分かり始めた時期だ。
そして自分の力に気づく切っ掛けになったクラスメイトの転校事件。
小学校3年生の時に喧嘩してしまったクラスメイトを大嫌いって言って突き飛ばしてしまったのだ。
自分のこの力がまるで凶器のように思えたあの時も両親は私を庇ってくれたけど同時に怖くもなった。
「……お母さん、私のこと愛してる?」
「どうしたの急に。もちろん愛してるわ? 子供を愛さない親なんていないわよ」
普通の家族なら望んだ言葉そのものなのに私の場合は話が変わってくる。
「どうしたの? 何かあったの? もしかして碧ちゃんと喧嘩でもした?」
私の表情が優れないのを察したのかお母さんが心配そうに声を掛けてくる。
「お母さん、私に彼氏ができるかもって言ったらびっくりする?」
「ええっ!」
「あ、やっぱり驚くよね?」
「そりゃ驚くわよ。うちにはいつ連れてくるの?」
「いやまだ確定じゃないし……その……碧の好きな人も同じ人なの」
その私の言葉を聞いた瞬間、お母さんは顔を手で口元を隠してあちゃーという表情を浮かべた。
「……恋愛初心者の夕貴がずいぶん難しい恋をしてるのねぇ。顔色が悪いのはそのせいなのね」
「うん、まあ……」
言葉を濁して私は自分の部屋に戻った。
顔色が悪い……か。
碧は関係ないんだよね。
碧と一緒に二人揃って崇弘さんと彼氏彼女の関係に……最終的には二人で彼の奥さんの立場に納まるつもりだし。
顔色が悪いのは……自分の罪を再認識したから。
部屋に戻り、ベッドに倒れ込む。
崇弘さんのおちんちんをメロメロにできたことで浮かれていたけど、背後にある問題は放置したままで悪化し続けている。
私は目を瞑って逃げているだけだ。
待ち望んだ崇弘さんとの関係が始まりかけた今、蓋をして見ないようにしていた問題を無視できなくなったのかもしれない。
ベッドに横になったからか睡魔が襲ってきた。昨晩はまともに寝てなかったし……
…………だめ、眠い。
……
……耳元で鳴り響く着信音で目が覚めた。
「──ん、みどりぃ? まだ時間じゃないよね?」
「夕貴、大変よ。例の掲示板今すぐ見て!」
「ん……なに? 一体」
かなり焦った様子の碧の言葉に、タブレットを立ち上げ掲示板を見る。
あれ?
3つも新スレが立ってて全部数時間で完走済み?
「まず昨日の夜の0:00に投稿された画像見てくれる?」
……これか。
「うそっ!!」
「夕貴、落ち着いて。終わったわけじゃないから! 私たちはちょっと出遅れただけ!」
震える指先で画像を拡大する。
全身から嫌な汗が一気に噴き出してきた。
この女だれ?
彼の後ろから裸で抱きついているこの女は一体誰なの?
「それで問題なのはその画像を見た女性会員がお店に押し寄せるみたいなの」
「え?」
「いえ、もう何十人も詰めかけてるみたいなの。夕貴、私たちも行ったほうが良いわ!」
「どうしたの夕貴!?」
キッチンの横を通って玄関へふらふらと向かう私に気づいたお母さんが驚いたような声で呼びかけてきた。
「え? あ? お母さん?」
駆け寄ってきたお母さんが両手を私の頬に当ててまっすぐ見つめてきた。
「何があったの?」
「……ううん、なんでもないの。ちょっと……そう、ちょっと出かけてくるね?」
お母さんの目を真っ直ぐ見ることが出来なくて目を逸らしてしまった。
ぐいっ
「え?」
お母さんに抱きしめられたままキッチンまで連れられ椅子に座らせられた。
「この後用事があるんだろうけど、そんな顔で行ってもなんにもできやしないわよ?」
一度座ってしまうと今度は立てなかった。
そのまま黙って座っていると、テーブルの上に温かいココアが入ったカップが置かれた。
「飲みなさい」
「……うん」
カップを持とうとすると手の先から完全に血の気が引いていてふるふると小刻みに震えていた。
自分の状態に酷さに改めて気付かされる。
震える手でカップを持ちゆっくりとココアを口に含むと冷え切っていた体に暖かさが戻ってきた。
「落ち着いた?」
「……うん」
カップをテーブルに置く。
なぜかお母さんが何も聞かず黙っているので、もう一度さっきと同じことを聞いてみた。
「……お母さん、私のこと好き?」
「もちろんよ」
「…………好きすぎるんじゃないかって疑問に思ったことはない?」
「あるわよ?」
思わず顔を上げてお母さんを見た。
「お父さんとよく話したわ、溺愛しすぎてるってね。なんでこんなに夕貴を好きなんだろうって。でもね? 子供を愛してない親も稀にはいるかも知れないけど、親が子供を愛するのに理由なんかないのよ? お父さんもお母さんも夕貴のことが大好きだけど理由なんかないの」
お母さんが愛おしそうに私の肩に手を置いて話を続ける。
「でも最近、こうも思うのよ。親子の愛だけじゃなく、男女の愛もそれ以外の愛も好きになるのに理由なんか無いんじゃないかって」
柄にもないことを言ってるわねってお母さんが少し照れている。
「夕貴がさっき言っていた好きな人を……好きになった理由ってあるの?」
「……あると思う、けど」
「聞かせてくれる?」
お母さんが隣の椅子に座った。
首を少し傾けて私の話を待っている。
私の口から──彼との出会い、彼の不幸、私の気持ち、碧の気持ちを思いつくまま語るのをゆっくりと……辛抱強く聞いてくれた。
「ふふっ。それが理由なの?」
「う、うん?」
「じゃあ、その助けてくれた彼が別の男性だったら同じように好きになってた?」
「え? …………えっと……どうだろ……分かんない、かな。好きになってないかもしれない」
「そうね、つまりただの切っ掛けなのよ、それ。好きになった理由じゃなくて、ね」
「……あっ」
私に微笑んでるお母さんを改めて見直す。
「同じような切っ掛けがあっても好きになる人とならない人が出るなら、本当に好きなるかどうかは本人次第なんじゃないかな? もっと言うと切っ掛けなんか無くたって運命の相手はいずれ必ず好きになっちゃうのよ」
お母さんが正面から見返してきた。
「だから夕貴の力もただの切っ掛けに過ぎないのよ? 誰かを好きになる気持ちは切っ掛けだけではきっと生まれないの。もっと素敵なものだとお母さん信じてるわ」
「お母さん……知ってて……」
「そりゃそうよ? 夕貴が子供のときなんかお母さん大好き〜って言いながら抱きついてきて、『好き好き』って伝わってくるんですもの、お父さんもお母さんも夕貴にもうメロメロにされちゃったわ」
「あっ」
「そうよ。好きな人に好きって言われるのはすごく嬉しいけど、それは好きな理由にはならないの。夕貴が何に悩んでいるかはお母さん聞かないけど、ふふっ……もう大丈夫ね?」
「うん、お母さん……ありがとう」
「もし、それでもダメなら自分の名前を思い出してね?」
「え?」
「勇気。本当に大切なことには勇気を出せる子になって欲しくてそう名付けたんですから」
お母さんが身を乗り出して私を抱きしめてきた。
──暖かくなってきた、心も体も。
長く長くお母さんに抱きしめられて……うん、私は大丈夫。
「ふふっ、じゃあ行ってらっしゃい」
「行ってきます」
玄関を開けて私は一歩前に踏み出した。
◇◇◇◇◇◇
時間が早かったけど最初は約束していた鈴鳴さんと長谷川さんが来たのかと思った。
だけど扉を開けたら次から次へとうちの女性会員の方が店内に入ってきて終いには店から溢れ出て外の階段、道路にまで人が溢れかえってしまった。
最初はうちで販売した商品になんらかの欠陥があってそのクレームかと思ったらそうではなかった。
一体なんなのか、詰め寄って来たはずの女性会員に聞いてもさっぱり要領を得ない。
「私も彼女にしてください」
「愛人で良いんです」
「一度だけでも体の関係に」
「私を好きって何度も言ってくれましたよね?」
「そばに居させてください」
怖すぎる。
何十人と詰めかけてきた女性客が開口一番こう言うのだ。
いつの間にかサイコホラー映画の世界に紛れ込んでしまったのか?
と、俺が思ってしまうのも無理はないよな。
どう答えたら良いのかさっぱり分からないままとにかく騒ぎを収めようとしていたところに鈴鳴さんと長谷川さんが人垣をかき分けてやってきた。
「崇弘さん、ごめんなさい。これ全部私のせいなんです」
「は?」
鈴鳴さんからの言葉も訳がわからない。
この事態が鈴鳴さんの所為になるわけが無いと思うんだけど?
俺の疑問を余所に鈴鳴さんが自分の超能力みたいなものを俺に説明する。
気持ちを……伝える力だって?
え?
そんな力があるのか?
俺が呆然としている間に、鈴鳴さんが詰めかけた女性会員に向かって頭を下げて謝り始めてしまった。
しかもその力が俺に移ってしまったって?
あっ! 開店初日の静電気のあれがそうか?
まてよ? じゃあ射精するたびに好き好き大好き愛してるって連呼してたのが全部伝わってたってことか?
考えないようにしてたけど……おかしな行動を取る女性客って……俺がコネクタ能力を付与した若くて綺麗どころの女性会員だけだわ……
うわ、マジか……全部筋が通る。
すべてが繋がった衝撃で呆然としている俺の目の前で鈴鳴さんと長谷川さんが謝り続けている。
ひたすら周りの女性に謝り続ける鈴鳴さんを、俯く辛そうな彼女の顔を以前どこかで見たような気がした。
「……あ、あの時階段で足を挫いていた子か」
鈴鳴さんの隣に立って一緒に謝っている長谷川さんは……そうか、あの時心配そうな顔をして近くにいた彼女か。
そうか、同じ大学だったんだ。
俺はもう辞めてしまったけれど。
思わずあの時の足は良くなったのかなんて聞きたくなった自分の抜け具合に苦笑いする。
今大事なのはそんなことじゃないよな。
鈴鳴さんと長谷川さんが謝ってるけどあれじゃ謝られた方だって訳が分からないはずだ。
「ちょっと、待ってください」
と、声を出したのにそこで言葉が詰まった。
その先の言葉が喉から出てこない。
喋るために口を開いたのに、何も言わないまま口を閉じかけてないか、俺。
このことを、いやこの先へ一歩踏み込んだらどうなってしまうのか、喋ってしまえばどうなるのかを想像し情けないことに躊躇ってしまったのか。
だけど……俺がやったことなんだよな。
知らなかったとはいえ、俺がやらかしてしまった。
店に詰めかけてきている大勢の女性会員を改めて眺める。
知らなかったでは済まされないな。
不純な動機で始めた商売でこんなにも沢山の女性に迷惑をかけてしまった。
ならやっぱり責任は取らなくては。
取りきれるかどうか分からなくても、少なくとも責任を取ることを始めなくては。
「そうだ。うん……そうだな。実は、皆さんに言わなければならないことがあるんです。鈴鳴さんも長谷川さんも聞いてください」
そういうと俺に注目が集まった。
「実は悪いのは全部俺なんです」
俺は時間をかけてコトの最初から説明していった。
俺の力のこと、子供の頃のこと。
そして店を始めた理由。
その中にはさっき始めて知った事実もある。
だけどそれは免罪符にはならない。
始めた動機が不純すぎる俺がそもそも悪いんだから。
自分の知る全てを語った。
見苦しい真似はしたくなかったから同情を誘ったり、言い訳じみたことは言わなかった。
すると彼女たちは黙って俺の言うことに耳を傾け続けた。
……なんてことにはならなかった。
映画やドラマ、小説の登場人物のように物分かりの良い人間なんて少ない。
彼女たちは現実に生きている人間なのだ。
そして俺は一方的な加害者であり彼女たちは被害者なのだ。
俺がなにか一言喋る度に大騒ぎになった。
誰かが怒って、それを誰かがまた咎めて、俺にもっと話を聞きたい女性はいくらでも現れて彼女たちが納得するまで説明して、納得しなくても説明して、俺が何を考えていたか、何を感じていたか、そしてなぜかどう気持ちよかったのか根掘り葉掘り細部詳細に至るまで何もかもを語らせられた。
え?
そこ重要?
と思いつつも血走った眼をした女性会員の質問に全て答えていく。
昨日の21時から20分までのおまんこの具合がどれだけ良かったか、どんな風に搾られて何度でも搾られたいと思ったとか、一昨日の夜、23時くらいに肉襞が俺のペニスにどう絡みついていたとか、特に俺がどれだけ感じたか、如何に気持ち良かったかを彼女たちに問われるまま答えていく。
……そして、長い長い話し合いは深夜にまで及び、俺は店を……アダルトショップ佐藤を閉店することを決めた。