※この作品はR-18です。

四季の中、彼女と二人。   作:氷桜

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多分砂糖が薄めだったので加糖。


宵篝、夢花火(下)

 

空に光の花が散って。

数秒遅れて、どぉんと耳に響いた。

 

「おお……。」

「始まった、のね。」

「だなぁ。」

 

幾つかの店を冷やかしついでに周り、ナツメが気になったものや食べ物なんかを更に購入。

祭りの締め、何を見に来たと言われればこれを見に来た、と言うべき天空の火花。

花火大会を見るために、少しだけ離れた河川敷へと足を運んでいた。

ちらほらと同じように見るためか、男女や子供連れが点在している場所。

こんな穴場を知ったのも、宏人経由の情報だったりする。

何処で知ったのか……までは、聞かなかったけど。

 

「ナツメ、ほらこれ。」

「?」

 

良さそうな場所を見つけていたら始まってしまった。

木の陰、茂みの傍ではあるが花火を見るには申し分ない場所。

そんな場所で立ち続ける彼女へ、背中から一枚のビニールを手渡す。

 

「なにこれ?」

「何ってビニールシート。 立ったまま見るのか?」

「……ああ、成程。」

「妙なところ抜けてるよな。」

「ぐむ。」

 

横目で睨まれても可愛く見えるだけ。

ニヤニヤしながら見ていれば、どぉんという二度目の音。

ナツメを見ているのも楽しい……というか、面白いけれど今日の目的はそうじゃない。

早く、と急かして二人で座るには広すぎるくらいのそれへと腰を下ろす。

 

「ええと……失礼するね?」

「そんな言葉必要か?」

「別に、何でも良いでしょ。」

 

まあその辺は好きでいいと思う。

手首にぶら下げていた、普段こういう場所でもないと飲まないサイダーの瓶を差し出す。

水で冷やされていたタイプだから、未だに水滴がぽたりぽたりと垂れている。

片付ける際は瓶ゴミでいい、とか言っていたので途中で分別すれば良いやと割り切って。

 

「ほい、ナツメの分。」

「あ、ありがと。」

 

空を見上げれば、丁度橙色の光が散るところだった。

 

「たまやー、とか言うんだっけ?」

「ああ……江戸時代の花火職人が由来っていう?」

「そうなの!?」

「私も聞き齧りだけど。」

 

ぱぁん、とまた一つ。

ごろり、とビニールシートに横になれば。

引っ張られ、手放された所でとすんと頭を落とす。

頭の後ろに感じたのは土の感触ではなく、柔らかい人肌のものだった。

視線の先に見える彼女の顔と、和服姿と――――天蓋の花。

 

「……何してるんだ?」

「分かるでしょ?」

「いや何をしてるか、じゃなくてですね?」

「分かってる――――したいからしてる、それじゃダメ?」

「……駄目ではない、けども。」

「なら良いでしょ。」

 

柔らかく微笑む顔を見れば、頬に熱を帯びて空へと視線を逸らす。

そんな俺の動きも当然のように見つめられ、微笑まれているのは……良いことなのだと判断して。

 

「次、また上がるぞ。」

「そう、ね。」

 

たぁん、と上がる火花を見つめ。

横目で、空を見上げるナツメをこそ、視界に入れていた。

こうしていられる事自体が、互いにとっての奇跡なのだと思いながら。

 

「――――。」

 

言葉にならない声を、微かに震える唇で囁きながら。

言葉にならない想いを、散っていく刹那に託しながら。

 

 

 

――――それだけで、終われば平和だったのだろうけれど。

 

「……あ。」

 

花火が終わり、帰ろうとした際に。

ぷちり、という嫌な音とともにナツメが前のめりに転びそうになった。

幸いなことに、腕を取っていたから身体に問題はなかったけれど……。

 

「大丈夫か?」

「助かった……けど、草履が切れちゃった。」

「履き慣れてないんだし運動靴にするとかはなさらなかったので?」

「は?」

「ごめんなさい。」

 

いや、半分くらいは俺のためってのは分かってるぞ?

分かってても言わなきゃいけない時ってあるだろ、と誰に謝っているのか分からない謝罪を自分に向けつつ。

 

「……替えの靴は?」

「……持ってきてない。」

「じゃあタクシー……あー、いや。」

「お金掛かるけど……ん?」

 

たまには、少し無理もしよう。

どうしようもなかったらタクシーを拾えばいい。

それまでは……さっきの膝枕の礼と思えばやる気だって出てくるんだし。

 

「ん。」

「……ん、って。」

「たまには甲斐性くらい見させてくれ……彼(・)氏(・)、なんだし。」

 

背中を向け、屈み込んでナツメを待つ。

お姫様抱っことは到底言えないけれど、彼女の一人くらいは背負う位彼氏の甲斐性なんだと信じて。

 

「……良いの?」

「多分。 キッチンで重いの運んだりで多少は筋肉付いてきた筈だし。」

「気のせいじゃなかったんだそれ。」

 

おどおどと。

おずおずと。

背中に掛かる重みと、柔らかさをしっかりと抑えて立ち上がる。

無理をしない程度に、体勢を整えて。

ナツメに負荷が掛からないように、声を掛けて。

 

「……大丈夫?」

「大丈夫大丈夫。」

 

月夜の下、二人で一人で歩き続ける。

 

「ごめんね?」

「いいよ、良いもの見れたし……楽しかったし。」

「それは私も……だけど、良いもの?」

 

星空の下、一つとして二人で。

 

「ナツメの浴衣姿。」

「……。」

「正直見惚れてたの、気付いてただろ?」

「……実は。」

「だったら、その代金とでも思えば軽いよ。」

 

夜闇の中――――。

 

「だから、さ。」

「……うん。」

「また何処か、行こうな。」

「……人混みじゃないところね。」

「……そうだな。 二人きりになれる場所な。」

 

ただ、互いを想いながら。

背に/胸に、互いを感じながら。

声を頼りに、二人で。

 




この後にR17.9とかマ???
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