*若干の加筆修正、サブタイ変更。
切っ掛けは何だっただろう。
結局一駅離れた、人が少ない駅で終電に乗って。
足首に怪我がないかを確認しながら、最寄りの駅でタクシーを待ちながら肩を貸し。
周囲に見られている、というのを感じながらナツメの部屋へと立ち寄った。
何度も――――そう、何度もやってきて。
けれども慣れない、女の子の部屋。
冗談半分に、けれども将来のことを考えると本気半分で。
大学を卒業したら同居しよう、とか言い合っているのだから慣れなくては行けないのだが。
どうにも慣れないそんな部屋。
辿り着いて、玄関口で。
「ん…………。」
互いに顔を見つめ合って。
何方とも知らずに、互いの熱を求め合った。
息のために少しだけ距離が空き。
ぷ、と白い粘着性の糸が伸びて。
それすら勿体無いとばかりに、舌で巻き上げる。
切れることはなく、また辿り着いたのは互いの唇。
自分だけではなく、お互いに。
同じ感情を、想いを、願いを共有しながら。
二度三度、四度五度と。
奪い合う度に更に更に、と欲望だけが肥大していく。
「……何してるんだろ。」
「さあ、な。」
ふと、我に返ったような言葉。
その立ち直りでさえも、今の自分たちにとってはちょっとした切っ掛けに過ぎない。
荒い息を吐きながら、暗闇の部屋の中へ目を凝らせば――――既に
明日までが休み、という前提を挟まなければ。
いつかみたいにまた疲れを持ち越していたと思う。
着崩れた浴衣は、肩の辺りから白い肌を露出させていて。
暗闇の中だからこそ、余計に映える姿をこそ目立たせている。
――――誰にも見せたくない、なんて当たり前のような独占欲を感じながら。
そんな欲望でさえも、何処か薄れていた……感じることが無かったような、と自分を思い返しながら。
断片的に残っていた理性をかき集めて、彼女へ囁くように問い掛けた。
「……その浴衣、大丈夫なのか?」
「……うん、大丈夫。」
借り物ではないのか、汚してしまって良いのか。
そんな意味での問い掛けに、正しく理解しての返答。
その目も、恐らくは俺と同じように内側から覚える熱に動かされているのだろうか。
何処か、何かを訴えかけるような。
欲しい、と無言で囁くように俺の目へと言葉を向ける。
ナツメ自身が、そういった欲望をある程度コントロール出来ているのなら。
「……シャワーは?」
「……後で、ね。」
駄目だ、と感じる自分がいて。
行こう、と思う自分がいる。
「あ、でも……。」
「何だ?」
「何でも、良いけど。」
「ああ。」
「こーせーの、好きなようにして……いいけど。」
「ああ。」
一拍。
そして頬への熱と、囁く声。
言葉にならない、熱い熱と耳への振動。
「――――
その言葉を、理解して。
気付かないうちに移動していた、ベッドに互いに倒れるのを切っ掛けに。
何方ともなく、互いの距離をもう一度埋めた。
時間は、数瞬にも満たなかった。
それだけ――――互いの意識は合致していた。
ちゃぷ、と。
当たり前のような、湿気の音がして。
ぽたり、と。
水道から落ちる水滴の音が、妙に耳に残った。
彼女の声より。
俺の声より。
何よりも、そんな周囲の音が――――印象的だった。