「ずっと前から好きでした!」
「ごめんなさい、貴方の事良く知らないから。」
幾度も幾度も繰り返された、「愛の告白」なんて行動。
その行動に、感情に。
何の理解も持てずにいた。
気付けば妙な呼び名に同性からも妙な噂が立つ。
『お高く止まってる』
『所詮今だけ。』
『ねえ知ってる、あの子って――――。』
彼方此方から伝え聞くそんな言葉に、内心で溜息を吐きながら心配さえしてしまう。
そんな言葉を聞いて、何も思わないわけではないのだけれど。
そんな言葉を言って、誰かに聞かれても良いのだろうか、なんて考えてしまうけれど。
(言うだけ無駄だものね。聞こえてるのが分かってて言ってるんでしょうけど。)
関わるだけ損だから、気にしない。
気付けば一人、唯大学を行き来しながら悩み続けるだけの日々。
ずっと、ずっと一人で。
今では一人と一匹を加えながら。
どうすればいいのか、認められるには何をすれば良いのか。
自問自答を繰り返し、その度に浮かぶのはほんの少しの変化だけ。
(…………どうすればいいのかな。)
心に傷が付いたとしたって、両親の夢を奪った私にはそれが相応しい。
でも、私の夢だから。
何度も、何度も変えようとしても。
大家さんは、首を縦には振ってくれずに。
(何かを変えれば、いいのかな。)
そんな事を思って、視線を吊るされた幕へと向ける。
『特性珈琲、今ならSカップ100円!』
苦さしか感じない、そんな液体の存在を目に入れて。
浮かんだのは幾度も受けた『告白』の言葉。
受け入れられれば、甘く。
断られれば、それだけ苦い味を当人に残す儀式じみた事。
海外では、そんな文化がないなんて――――テレビか何かで聞いた覚えがある行為。
それ自体には、何も思わないし……受け入れる理由も無いと断じれる。
知らない相手と付き合う、なんて。
ただ、少しだけ気になるのは。
「誰か」を好きになるって、どういうことなのだろう。
甘い言葉が、誰かを救ってくれるのか。
慰めの言葉が、どれだけ癒やしてくれるのか。
共にいることで、何かが変わるのか。
――――
空想でしかないことだから。
理想でしかないことだから。
(……考えるだけ、無駄ね。)
そんな事を夢想しながら。
苦さの象徴の、黒い液体のカップを手に取って。
小銭を支払い、入り口傍の専用機へと移動して。
(…………ん?)
コンビニのガラス越しに、誰かと目が合った気がして。
――――気の所為だ、と首を振った。