※この作品はR-18です。

恋姫†無双 ~漢ノ朱儁ココニ有リ~   作:黒影

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二十三

 一刀が紫苑に匿われ、密かに愛を育んでいた頃、そうとは知らない女たちが、董卓の所業に怒りをあらわにしていた。

 

 まずは炎蓮。彼女は一刀が政変によって追い落とされ、追撃の末に斬られて川に落とされたと聞くと、一目散に洛陽へと駆けていこうとした。

「炎蓮様、落ち着いてくだされ。今、揚州を離れれば、袁家の小童どもが喧しくなるだけですぞ」

 さすがに祭を初めとする古くからの宿将が、炎蓮を止めに入る。彼女らの言う通り、近隣の太守である袁術の勢いが強くなっており、揚州を空けるのは自殺行為であった。

 いや、袁術だけなら、ただ蜂蜜を舐めるだけの小娘でしかないのだが、その配下の劉勲が油断がならないので、隙を見せる訳にはいかない。

 それは炎蓮とて分かっている。だが、宿将たちに抑えられたものの、彼女の怒りは簡単にはおさまりそうもない。

「董卓の野郎、潰さねえと気が済まねえ!」

 自分のお気に入りの男が害されたのだ。炎蓮がキレない訳が無い。そして、それは炎蓮だけでなく、粋怜も同じであった。

「今すぐ捜索隊を出して一刀くんを探しに行くっ!」

「いや、だから早まるなと言うとるに……」

 洛陽方面は、孫家の勢力範囲外である。そんな場所に勝手に出兵したらどうなるか。粋怜を祭が制しようとするものの、心の内では彼女も同じ気持ちである。炎蓮や粋怜と同じく、祭も一刀と愛し合った女性の一人である。荒れる炎蓮と粋怜を見て、祭はそっと呟いた。

「やはり都になんか行かせず、強引にでも婿入りさせるべきだったかのぉ」

 

 

✳✳✳✳✳

 

 

「関羽、いつになったら、貴女のしっとりつやつやに触らせてくれるのかしら」

「嫌です! 私には、心に決めた人がいるんです」

 曹操による、今でいうセクハラ紛いの要求に、愛紗は辟易としていた。彼女は現在、曹操の陣営に客将として寄宿していたのだ。

 董卓軍との交戦によって一刀が生死不明の状態で姿を消した影響で、壊滅してしまった揚州兵たち。仕える主を失った愛紗は、一刀の消息を求めて彷徨った。

 だが、その頃には紫苑が一刀を保護して厳重に秘匿していた影響もあり、行方を知ることが出来なかった。

 そうして各地を彷徨っている内に、路銀が底を尽きてしまい、やむなく客将として曹操に仕えたのだ。

 愛紗が曹操を選んだのは、今最も勢いがあり、人材マニアの彼女なら一刀の行方を掴んでいるのではないかという期待と、単純に揚州まで行けるお金が無かったからである。

 

 だが、あまりにも百合百合しい曹操陣営に来て、愛紗は少し後悔していた。夏侯姉妹といい、荀彧といい、夜な夜な曹操の下に忍んでアンアンしている様子だった。

 まあ、先に仕えていた一刀も多くの女性を抱きまくり、愛紗も頻繁に一刀と愛し合っていたから文句は言えないが、曹操が頻繁に愛紗の事も閨に誘って来るのに辟易としていた。

 きっかけは、近くの温泉に曹操が湯治にいった事である。夏侯姉妹や荀彧といった側近たちに加えて、愛紗も護衛として参加し、曹操と一緒に温泉に入ったのである。その時は、まだ曹操の百合趣味を知らなくて、愛紗は一緒に温泉に入るのに抵抗は無かったのだが、愛紗の裸を見た曹操が、その時以来愛紗に執着し始めたのだ。

 唯一の救いは、曹操が愛紗にご奉仕を無理強いしなかった事であるが、愛紗自身が欲求不満であり、いつ快楽に屈してしまうか怖かった。現に、愛紗は一刀がいない寂しさに、夜な夜な密かに自慰をするようになっていたのだから。毎晩のように一刀に抱かれる事に身体が慣れてしまい、急に一刀がいなくなった事による空虚感に、身体が耐えられなくなったのだ。

 だから、割り当てられた自室に戻った後、愛紗は一人寝台で大好きな一刀を想いながら自慰行為に耽っていた。

「ああんっ❤ ご主人様ぁっ❤」

 

 

✳✳✳✳✳

 

 

 故郷の幽州へと帰った風鈴だが、彼女は現在袁紹に仕えていた。一刀を無くして傷心の彼女は、董卓への怒りも相まって将軍職で居続ける事を拒否し、故郷に引きこもって余生を過ごす事を決めたのだ。

 しかし、先の将軍であり、優れた軍師でもある風鈴を周囲が放っておく訳が無い。結局、彼女は何度も請われる形で袁紹に仕える事となったのだ。

 さて、その袁紹であるが、風鈴が仕える気になったのは、彼女も元は何進派の人間であったから。

 それに、袁紹は名家の出身であり、旧来の秩序を重んじる性格である。そんな彼女が、董卓の専横ともいえる振る舞いを見過ごせる筈が無い。

 だが、袁紹単独では、董卓に対抗するのは不可能である。董卓には呂布といった当代最強の将がおり、また献帝の強力な後ろ盾を得ている事もあり、袁紹の宮中内での発言力は大きく低下、何進の失脚をきっかけにして地方へと追いやられる事となったのである。

 だから袁紹は、風鈴が持ち込んだ案に従って、他勢力を巻き込んで董卓に対抗する事を決めた。いわゆる『反董卓連合』である。

 反董卓連合に関しては、袁紹は当初、消極的だった。董卓に対抗する気概のある勢力は数少なく、果たして参加者が居るのだろうか、と。しかし、風鈴は自信たっぷりであった。

 風鈴の見立てでは、まず孫堅は必ず参加すると考えた。孫家はそもそも一刀の朱家と関係が深く、当主の孫堅はもちろん、黄蓋や程普といった孫家の古い宿将も一刀と愛し合った仲である事は把握済み。一刀の弔いとなれば、孫堅は確実に参加するだろう、と。

 不安材料は孫家と対抗している袁術だが、彼女も袁紹と同じく董卓によって宮中から追いやられており、何もしなければ衰退の一途を辿る筈。袁術自身は何も考えていなさそうだが、好物の高価な蜂蜜水が飲めなくなるとなったら、参加しない訳にはいかないだろう。

 そして、曹操。彼女は風鈴が見たところ野心家で、董卓の下に立って満足するような女ではない。それどころか、自身が頂点に立たないと気が済まない性格なので、こちらも参加するだろう。もし参加しなければ、曹操だって現状では董卓に単独で対抗できないし、それが分からないほど曹操も阿呆ではない筈。

 上記の勢力が参加するとなれば、他の勢力も必然的に参加するはず。唯一の不安は連合が上手く纏まるかどうかだが、その時はその時である。自身の自尊心よりも対董卓が最優先であることは、馬鹿でも分かる事である。瓦解するなら、所詮その程度の連中だったという話。それなら早く散った方がマシ。

(……一刀くん、仇は必ず取ります)

 心の内で、風鈴は一刀に誓うのであった。

 

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