1995年
同年代なんですけど、まだ〈呪いの家〉は
存在してました。野良猫が異様に集う
から“猫の集まる家”など呼ばれていた時期です。
「イヤっ」
「動いたら危ないよ~」
その家へ同級生に連れこまれた女子高生(当時)、
聖美さん。友人だと思っていた女子二人に
両腕を押さえられ、他校の男子学生に
暴行されかけた時でした。
「なにやってんねん」アイスピック片手に
気配なく現れたレイン。男子学生の脇腹へ
何度もアイスピックを突き刺す。
「頼む、や、やめてくれ……」さらに
靴底で容赦なく、佐伯の顔面を蹴りつけました。
男子の鼻がひしゃげ、大量の赤い飛沫
しぶきが噴出。震える女子二人をよそに
男子の髪を鷲わし掴づかみに何度も、何度も、
額をブラウン管テレビに叩きつける。
「やめでぐだざい……お、お願いしまふ……」
鼻血が噴き出し滝のように垂れ流す男子学生の
頭髪から手を離しました。口角から
鮮血が滴り落とす彼を蹴り飛ばし、懐から
有名な軍用自動拳銃の中国製コピー、
「にゃーっ」そしたら女子の片割れが、
猫のような声を出し始めた。とっさにレインは
ヤバいと思い
その子の頭頂部を殴りつけたらしいんです。
「この娘つれて早く出ろ! カバン持って!!
早よせぇ!!」拳銃を突き付け、玄関まで見送り
置いていたガソリンの蓋をあけて
撒きはじめたんです。
「お姉さんも手伝って。そのアホも
焼いてエエから」力なく座り込んでた
聖美さんもガソリンを渡され、うずくまる
男子に浴びせかけました。レインは
C-4──プラスチック製の遠距操作型爆弾を
家中に設置してまわったんです。
聖美さんが二階に上がろうとしたら「ダメや。
玄関におり、何が見えても気にしたらアカン」
キツ目に言われました。まぁ
二階にあがらなくて良かったと、聖美さんは
のちに神妙な顔で呟ってましたよ。
「逃げるで」ほぼ見ず知らずの少女に、手を
ひかれて玄関を蹴破りダイナマイトと
US MkII手榴弾を巻きつけたやつを投げ捨て
男子学生ごと吹き飛ばしました。閃光とともに
一階から轟音が響きわたり、二階がくずれ
落ちたんです。
レインは拾った車(細かく聞いたところ、
違法駐車されていたホンダS-MXらしい)の
トランクからお手製の缶詰め爆弾や火炎瓶、
パイプ爆弾を投げ込み、必要以上に爆破を強めて
完全に、家を粉々にしました。助手席へ乗ったら
「どこに住んでの?」彼女に訊かれました。
聖美さんは口ごもってしまう。それはお母さまが
手当たり次第に転校を繰り返し、担任や同級生と
肉体関係を持つ淫売。さらに聖美さんが
可愛がってた猫を死に追いやるコトまで
やったそうなんですよ。
なんとなく様子から察したレインは「ムッコロ
しちゃう?」と母親殺害を提案しました。
静かにうなずいた聖美さんを連れて、
車を走らせる。
後に『謎の事故! 自宅に無人車が突っ込み
大爆発。女性は即死、娘は行方不明』という
ニュースが数ヶ月ほど盛り上がったそうです。
呪いの家を恐ろしいヒロイン。怪談でまさかの
『淫売』という単語。