※この作品はR-18です。

遊戯王Cruel 猟奇的殺人デュエルと少年少女の破綻   作:胡麻野すり子

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お待たせ致しました!
廻理&殺那のデュエルです!





第13話 『孤児院』最古参 ── 蟲と獣

 相対するはチンピラふたり。

 隣には最も付き合いの長い親友。

 

「殺那とこうして組むのも久しぶりだね」

 

「ふふっ、廻理くんと、一緒に、デュエル、するの、楽しみ」

 

 殺し合い(デュエル)の中で、互いに笑い合う。

 いやぁ、これは酷いことになりそうだ。

 過剰戦力感がハンパないぞぉ。

 

「最初は、私から、だね」

 

 さて、順番を確認する。

 ふむ、殺那、チンピラA、ボク、チンピラBの順番か。

 

「おうおうおう!精々足掻くんだなぁ!」

 

「時間いっぱいターンを続けな!俺のターンが来れば死んじまうんだからな!」

 

「ふぅん、そう。私の、ターン」

 

 男たちがヤジを飛ばし、殺那が一転、つまらなそうな顔をする。

 そのまま彼女は手札を一瞥して、その宣言をした。

 

「────ターンエンド」

 

「「………………は?」」

 

 殺那が、なんの行動もせずにターンを終える。

 その意味不明な行動に、男たちはポカンと口を開いた。

 

「絶(・)好(・)調(・)み(・)た(・)い(・)だ(・)ね(・)、殺那」

 

「うん、悪くない、感じ」

 

 殺那がピースサインをする。

 かなり本当に調子が良さそうだ。

 

「は、ははは!なんにもしねぇとは驚いた!勝負を諦めたみてぇだなぁ!」

 

「まさか、そんなわけ、ない、よ」

 

 くるり。ドレスの裾を揺らして、殺那が男たち(獲物)を見据える。

 それは獰猛に、残酷に、たおやかに、柔和に、そして獣(少女)のように。

 

「エンドフェイズ、手札から、効果発動」

 

 殺那の手札から、2枚のカードが消える。

 それと同時に、ポムっ、と可愛らしい音がして、2体のモンスターが出現した。

 

「おいで、かわいい、かわいい、獣たち」

 

 現れたのは、淡い色彩のデフォルメされた動物たち。

 ぬいぐるみ、あるいは童話のような、可愛らしいキャラクターたち。

 

 メルフィー・パピィ

 レベル2/DEF100

 

 メルフィー・キャシィ

 レベル2/DEF200

 

「モンスターが一気に2体……!?な、なにをしやがった!?」

 

「【メルフィー・パピィ】、【メルフィー・キャシィ】は、自分エンドフェイズに、手札から、特殊召喚、できる。

 その効果により、私は、この子たちを、特殊召喚、した」

 

 殺那が説明の片手間に、猫のようなモンスター、キャシィを抱きかかえて、優しく撫でる。

 

「これで、本当に、ターンエンド。さあ、どうぞ?」

 

「はっ!ちょっと驚いたが、所詮は低ステータスの雑魚モンスター!軽く捻ってやるぜぇ!」

 

 窓ガラスに突っ込んだほうのチンピラが、血のついた指でドローする。

 こいつ結構頑丈だな。肋骨イッてるはずなのに。ヤクでもキメてるのかなぁ。

 

「俺のターン!ドロー!

 俺は手札を1枚捨てて、【THE トリッキー】を特殊召喚するぜ!」

 

 男の場に現れるのは、黒と緑で彩られた怪人物。

 ともすれば道化のようにも見える、謎の人。

 

 ソレを見て、メルフィーがざわめき始める。

 

「【THE トリッキー】が、特殊召喚された、瞬間、【メルフィー・パピィ】と、【メルフィー・キャシィ】の、効果、発動」

 

「なにぃ!?」

 

「まず、【キャシィ】の、効果。このカードを、手札に戻し、デッキから、獣族モンスターを、手札に、加える。

 私は、獣族の、【ホップ・イヤー飛行隊】を、手札に、加える、よ」

 

 殺那が抱きかかえていた【キャシィ】が、ぽんっ、とピンク色の煙になって消える。

 仲間を呼んで、殺那の手札に帰ったようだ。

 

「そして、【パピィ】の、効果。デッキから、レベル2以下の、獣族を、特殊召喚、するよ。

 おいで、【森の聖獣 カラントーサ】」

 

 犬のようなメルフィーもまた、可愛らしく姿を消す。

 それと入れ替わるように、背中に植物の生えた白兎が現れる。

 

 森の聖獣 カラントーサ

 レベル2/DEF1400

 

「獣族の、効果で、特殊召喚された、【カラントーサ】の、効果発動。

 フィールドの、カード1枚を、破壊するよ。じゃあね、【トリッキー】」

 

「なんだとぉ!?」

 

 【カラントーサ】がぴょんと飛び跳ね、【トリッキー】の頭に体当たりする。

 それにより怪人物は破壊され、姿を消した。

 なんとも可愛らしい光景だ。

 体当たりの瞬間、首からゴキンと鈍い音が聞こえたのは気のせいということにしておこう。

 

「こ、このクソガキ……!」

 

「おいおいクールになれよ!まだ召喚権は使ってねぇんだぜ!」

 

「っ、そうだな相棒!まだ俺のターンは終わってねぇ!コイツがぶっ殺してやるぜぇ!」

 

 相方の応援により勢いを取り戻したチンピラが、カードをディスクに叩きつける。

 

「コイツは自分の場にモンスターが存在しなかったら特殊召喚できる!来い【フォトン・スラッシャー】!」

 

 フォトン・スラッシャー

 レベル4/2100

 

「そして俺は【フォトン・スラッシャー】をリリースし、【偉大魔獣 ガーゼット】をアドバンス召喚だぁ!」

 

「げぇ!【ガーゼット】!?」

 

 光子の戦士を贄として、魔獣が君臨する。

 

 偉大魔獣 ガーゼット

 レベル6/ATK?

 

 【偉大魔獣 ガーゼット】。その能力は単純にして豪快。

 自身の攻撃力を、リリースしたモンスターの攻撃力の倍にするというもの。

 

「【ガーゼット】の攻撃力はリリースした【フォトン・スラッシャー】の倍!

 よって攻撃力は4200だぁ!」

 

 偉大魔獣 ガーゼット

 ATK?→4200

 

 派手な攻撃力だ。

 もっとも、デュエルは攻撃力だけで勝てるわけもないのだが。

 

「ふふっ。手札の、【ホップ・イヤー飛行隊】の、効果、発動。

 このカードを、特殊召喚し、即座に、シンクロ召喚を、行う」

 

「手札からシンクロ召喚だと!?」

 

 空から耳の大きな青い兎──【ホップ・イヤー飛行隊】が降下し、そのまま緑の光輪へと姿を変える。

 

「レベル2、【森の聖獣 カラントーサ】に、同じく、レベル2の、【ホップ・イヤー飛行隊】を、チューニング」

 

 光の輪はカラントーサを包み込み、一筋の光となる。

 

「旧き支配者、黄衣の王よ。風の隨に、舞台へどうぞ?」

 

 大きく、風が吹き抜けた。

 それは、名状しがたきものが舞台(フィールド)へと上がる合図。

 

「シンクロ召喚、レベル4────悲劇を、遊ぼう、【古神ハストール】」

 

 光の中から現れたのは、黄色いローブに身を包んだ怪人。

 あるいは、旧き支配者の一柱。

 ローブの裾を靡かせて、黄衣の王は降臨した。

 

 古神ハストール

 レベル4/DEF1000

 

「あぁ?イキってシンクロしてきたと思えば、えらく弱そうなのが出てきたなぁ?」

 

 召喚された【ハストール】を見てチンピラが笑う。

 哀れ。どうやらコイツはステータスでしか価値を測れないらしい。

 

「そんな雑魚はぶっ殺してやるぜぇ!【ガーゼット】で攻撃…………」

 

「いや待て!あのモンスターにはヤバめの効果がある!」

 

 おっと?血まみれのチンピラが攻撃宣言をする直前に、無傷な方のチンピラが待ったをかけた。

 

「たしかアイツはフィールドから離れたときになんかする効果があった!

 ここで攻撃して破壊するのはおそらく罠だ!」

 

「な、なにぃ!?罠だと!?」

 

 これは驚いた。ただのチンピラの割には、カードのことを知っているじゃないか。

 コイツの言う通り、【ハストール】にはある効果がある。

 それは、モンスターゾーンから墓地へ送られた場合、相手モンスターに装備され、そのモンスターの攻撃と効果を封じるというものだ。

 

「残念、だね。破壊して、くれれば、【ガーゼット】、無力化、できたのに」

 

 そう、この場合で重要なのは、効果の無効化。

 【ガーゼット】の攻撃力上昇は、自らの効果によるものだ。

 つまり、無効化してしまえば【ガーゼット】の攻撃力は0になるわけで。

 

「危ないところだったぜ……!罠と分かれば攻撃する理由はねぇ!

 カードを1枚伏せてターンエンドだぁ!」

 

 そうして男はターンを終える。

 さて、場には馬鹿みたいな攻撃力の【ガーゼット】と、伏せカードが1枚か。

 

「お手並み、拝見。廻理くんは、この盤面、どうやって、突破、する?」

 

「あははっ、普通にやるだけだよ」

 

 明るく笑って、デッキに指をかける。

 

「ボクのターン、ドロー。

 じゃあまずは、フィールド魔法【歯車街(ギア・タウン)】を発動するよ」

 

 カードを発動すれば、景色が変わっていく。

 館裏のガレージから一変、歯車が空回りを続ける、機械の街が広がった。

 

「さぁて、それじゃボクも派手に行こう!

 手札から【ダブル・サイクロン】を発動!

 キミの伏せカードと、【歯車街】を破壊するよ!」

 

「チィ!クソが!俺の【奈落の落とし穴】がよぉ!」

 

 危なっ、油断も隙もないな。

 いやはや、事前に破壊できて良かった良かった。

 

「それはそうと破壊された【歯車街】の効果発動だよ!

 デッキから【アンティーク・ギア】を特殊召喚する!

 おいで!【古代の機械熱核竜(アンティーク・ギア・リアクター・ドラゴン)】」

 

 竜巻により崩れた歯車の世界から、一機の歯車が飛翔する。

 それは核熱によって稼働する、歯車仕掛けの機械竜。

 

 古代の機械熱核竜

 レベル9/ATK3000

 

「ふぅん。熱核竜(リアクター)に、歯車街……まだ、使ってるんだ。ミ(・)ズ(・)リ(・)の、カード」

 

「形見だからねぇ。あと雑に強いし」

 

 殺那が少しむくれる。

 ボクが歯車街やリアクターを使っているのが気に食わないのだろう。

 まぁ、殺那はあの人のこと嫌いだったしなぁ。

 

「さて、【ガーゼット】を弱らせるかな。

 ボクは【B・F(ビー・フォース)─毒針のニードル】を通常召喚し、そのまま効果発動。

 デッキからB・Fモンスター、【B・F─連撃のツインボウ】を手札に加える。

 でもって持ってきた【連撃のツインボウ】の効果発動。このカードを手札から特殊召喚するよ」

 

 飛来するは2匹の蜂、

 赤い薬液をはらに溜めた、機械のような蜂の【ニードル】。

 そして、2つの針を持った蜂の【ツインボウ】

 群れとなって反抗する、革命蜂(ビー・フォース)の2匹だ。

 

 B・F─毒針のニードル

 レベル2/チューナー/ATK400

 

 B・F─連撃のツインボウ

 レベル3/DEF500

 

「さらに【毒針のニードル】の効果を発動!このカード以外の自分フィールドの昆虫族1体をリリースし、相手の効果モンスターの効果を無効にする!

 ボクは【連撃のツインボウ】をリリースし、【ガーゼット】の効果を無効にするよ!」

 

 ボクの合図に合わせて、【ニードル】と【ツインボウ】が魔獣へと突撃する。

 この蜂たちは、個々ではどうしようもなく弱い。

 けれど蜂は、結束することを知っている。

 

 連携し、強大なる魔獣へと針を突き立てれば、【ガーゼット】は膝をついて沈黙した。

 

「無効化だと!?ということは【ガーゼット】は……」

 

「残念ながら攻撃力はリセットされちゃうねぇ!」

 

 偉大魔獣ガーゼット

 ATK4200→0

 

 これで無力化完了。

 あとは殴るだけだ。

 

「じゃあ痛い思いをしようじゃないか!

 バトルフェイズ!【古代の機械熱核竜】で────」

 

「3000ダメージとか認められるかよぉ!!墓地の【超電磁タートル】の効果発動!

 コイツを墓地から除外してバトルフェイズを終了すらぁ!」

 

「っと。止められたか」

 

 【超電磁タートル】……前のターンの【トリッキー】のコストで墓地に送っていたのか。

 しかもバトルフェイズに入った瞬間に撃ってきたのが絶妙だな。

 【熱核竜】には攻撃時に相手の効果の発動を封じる効果があるけど、ギリギリ攻撃宣言前に使われちゃったか。

 

「隙間を、狙われた、ね」

 

「ちぇー。ここで殺しておきたかったんだけどなぁ」

 

 なんて文句を言っても、防がれたものは仕方がない。

 それならそれで、次の策に繋げるだけだ。

 

「メインフェイズ2。通常魔法【九字切りの呪符】を発動。

 レベル9の【熱核竜】を墓地へ送って、デッキから2枚ドローするよ」

 

 【熱核竜】が光の粒子となって消えていく。

 消滅する間際、【熱核竜】は二度見してきた。

 当然無視してボクは2枚ドローする。

 

「うーん、ここはカードを2枚伏せてターンエンドかな」

 

 いやぁ、まさかの【超電磁タートル】だったね。

 それさえなければ、【熱核竜】【ニードル】【ハストール】の攻撃で終わったんだけどなぁ。

 なんて、もしもの話をしても意味はないか。

 致し方なし、切り替えていくとしよう。

 

「クソガキがよぉ!しゃしゃってんじゃねぇぞぉ!

 俺のターン、ドロー!」

 

 チンピラBが怒声を上げて、ターンを始める。

 

「行くぞぉ!【可変機獣 ガンナードラゴン】を通常召喚だぁ!」

 

 可変機獣 ガンナードラゴン

 レベル7/ATK2800→1400

 

「ふぅん。【ガンナードラゴン】、か。妥協召喚モンスター、だね」

 

「リリースなしで召喚できるけど、代わりに攻守が半分になるモンスターか」

 

 竜を模した赤い戦車が、鎌首をもたげる。

 ほほう、【ガンナードラゴン】ねぇ。

 元の攻撃力が2800だから、【ガーゼット】でリリースすれば倍の5600に化けるな。

 とはいえ、コイツも【ガーゼット】を使ってくるとは限らないが……

 

「手札の【デフラドラグーン】の効果発動ぅ!手札のモンスターを捨てて特殊召喚だぁ!

 そして墓地へ送った【ゾンビキャリア】の効果発動ぉ!手札1枚をデッキトップに戻してコイツを特殊召喚だぁ!」

 

 デフラドラグーン

 レベル3/ATK1000

 

 ゾンビキャリア

 レベル2/チューナー/DEF200

 

 ノイズが走り、鋭角的なシルエットの飛竜が出現する。

 そして地下からは、紫色に腐ったゾンビが這い出してくる。

 

(えーと、この流れはなんだ?…………あぁ、【真魔獣】か【魔獣皇帝】か。

 なら次は【ゾンビキャリア】と【ガーゼット】でシンクロ召喚ってところかな)

 

「行くぜぇ!レベル6の【偉大魔獣 ガーゼット】にレベル2の【ゾンビキャリア】をチューニングだぁぁぁ!

 シンクロ召喚!レベル8ぃ!【ギガンテック・ファイター】!」

 

 【ゾンビキャリア】が光の輪になり【ガーゼット】を潜り抜け、やがて一筋の光が迸る。

 光が晴れれば、そこには白い装甲に身を包んだ闘士の姿があった。

 

 ギガンテック・ファイター

 レベル8/ATK2800

 

「うぉぉぉ!死ねぇ!自分フィールドの全モンスターをリリースして特殊召喚だぁ!

 君臨しろぉぉ!【真魔獣 ガーゼット】ぉぉ!!」

 

 モンスター達が贄となり、新たなる魔獣が姿を現す。

 2対4本の腕を持ち、大きな翼を広げた、真なる【ガーゼット】。

 魔獣はボクらを睨みつけ、雄々しい咆哮を上げた。

 

 真魔獣 ガーゼット

 レベル8/ATK?

 

「ぎゃはは!【真魔獣 ガーゼット】の攻撃力はリリースしたモンスターの元々の攻撃力の合計になるぜぇぇ!それがどういう意味か分かるかクソガキ共よぉぉ!」

 

 えーと、【ガンナードラゴン】が2800で、【ギガンテック・ファイター】も2800。

 でもって【デフラドラグーン】が1000だったから、その合計は…………

 

 真魔獣 ガーゼット

 ATK?→6600

 

「攻撃力、6600、だね」

 

「頭悪い数字だなぁ」

 

 そうは言ったが、正直なところ6600は食らったら即死するな。

 ちなみにボクの場には攻撃表示の【ニードル】がいる。

 なお【ニードル】の攻撃力は400だ。

 うーん、死。

 

「死ぃぃねぇぇっ!【ガーゼット】で【ニードル】を攻撃だぁ!」

 

 魔獣が、ちっぽけな蜂へと迫る。

 この一撃が通れば、ボクらはぐちゃぐちゃになって死んじゃうだろう。

 

 ──通れば、の話だけどね?

 

「あははっ!そう簡単にはいかないのさ!

 トラップ発動!【星遺物からの目醒め】!

 自分フィールドのモンスターを素材に、即座にリンク召喚を行うよ!」

 

「相手のターンでリンク召喚だとぉ!?」

 

 【ガーゼット】が【ニードル】を叩き潰すその前に、毒蜂は藍色の門へと飛び込む。

 それが、新たなるモンスターを呼び出すための合図。

 

「【毒針のニードル】と【古神ハストール】をリンクマーカーにセット!

 召喚条件はカード名が異なるモンスター2体!

 リンク召喚!リンク2!頼んだよ【虫忍 ハガクレミノ】!」

 

 藍色の門から、忍が舞い降りる。

 すらりと精錬された立ち振る舞いの、緑の虫忍だ。

 

 虫忍 ハガクレミノ

 リンク2/リンクマーカー:左上 下/ATK1000

 

「なにが出てくるかと思えは攻撃力たったの1000のザコじゃねぇか!

 ぎゃはははは!だったらこのまま【ガーゼット】でぶち殺してやるぜぇ!」

 

 再度、【ガーゼット】が拳を構えて、虫忍に向けて振り下ろす。

 だが、魔獣の拳が【ハガクレミノ】を捉えるとこはなかった。

 

「キミこそお忘れかな!リンク素材として墓地へ送られた【古神ハストール】の効果発動!」

 

「ふふっ。【ハストール】を、【真魔獣 ガーゼット】に、装備する、よ。

 そして、装備された、【ガーゼット】は、攻撃宣言できず、効果も、無効化、だよ」

 

 【ガーゼット】の足元から、無数の触手が出現し、魔獣の身体に巻き付き動きを縛る。

 それは、黄衣の王のもうひとつの姿。

 名状しがたき触手の群れが、魔獣に絡みついてその力を削ぎ落とした。

 

 真魔獣 ガーゼット

 ATK6600→0

 

「ク、ソ、がぁぁ……!ちょこまか逃げてんじゃねぇぞぉ!」

 

 攻撃が決まらなかったことが気に障ったのか、男が懐から銃を取り出し乱射してくる。

 銃声が何度も響き、銃弾がボクに向かって飛んだ。

 

「ハガクレミノ」

 

 けれど弾丸は、ボクの身体に突き刺さることはなかった。

 優秀な虫忍が、飛んでくる弾丸を全て手で受け止めたからだ。

 

「あははっ、銃じゃなくてカードで殺し合おうよ。

 というわけで、ソレは没収ね」

 

「は?…………あぁ!?銃がねぇ!?いつの間に!?」

 

 木の葉が舞い、男の手から拳銃が消える。

 どこへ消えたのかと探してみれば、銃を手にした【ハガクレミノ】の姿が目に映った。

 さすが忍者。素早くて優秀だ。

 

「こ、の、クソガキがぁ……!メインフェイズ2で魔法カード【アドバンスドロー】を発動!

 【真魔獣 ガーゼット】を墓地に送って2枚ドローだぁ!

 そしてカードを1枚伏せてターンエンドだぜぇ!」

 

 【ガーゼット】の姿が消え、ターンが終わる。

 流石にコイツらも、攻撃力0のモンスターを残すほど馬鹿じゃなかったか。

 

「ふふっ。私の、ターン、だね」

 

 まぁ、ちょっと利口なくらいじゃ、次に控える殺那は止められないけど。

 

「私の、ターン、ドロー。」

 

 殺那がターンを始める。

 そうしてカードを引いた彼女は、笑っていた。

 

 ふわふわとした少女然としながら、同時に獣にも似た獰猛な笑み。

 獲物を前に歓喜する野獣みたいに、ご馳走を前に心を躍らせる乙女のように。

 甘く、鋭く、柔らかく、熱っぽく、酔ったみたいに、兎ノ宮殺那は微笑んだ。

 

「殺、ろう。手札から、【森の聖獣 ヴァレリフォーン】を、通常召喚。

 効果で、手札を捨てて、墓地の、レベル2以下の、獣族1体を、特殊召喚。

 私は、墓地の、【カラントーサ】を、攻撃表示で、特殊召喚、するよ」

 

 森の聖獣 ヴァレリフォーン

 レベル2/チューナー/ATK400

 

 森の聖獣 カラントーサ

 レベル2/ATK200

 

 草花で彩られた鹿──【ヴァレリフォーン】が鳴けば、物陰からこっそりと白兎が顔を出す。

 白い兎──【カラントーサ】はトテトテと殺那の足元に寄ってきて、彼女の足に頬擦りした。

 

「覚えてる、かな?【カラントーサ】は、獣族の効果で、特殊召喚されると、カード1枚を、破壊、できる。よって、その伏せカードを、破壊、するよ。お願い、【カラントーサ】」

 

「させるかよぉ!破壊される前にリバースカードオープン!【戦線復帰】!

 墓地の【ガンナードラゴン】を守備表示で特殊召喚だぁ!」

 

 【カラントーサ】が伏せカードを破壊するその前に、仕掛けられていた罠が発動する。

 白い兎が突撃する先にはもうカードはなく、代わりに竜を模した戦車があった。

 

 可変機獣 ガンナードラゴン

 レベル7/DEF2000

 

「流石に黙って破壊させてはくれないみたいだね。

 壁がひとつ出来ちゃったけど、どうする?」

 

「問題、ない、よ」

 

 短く答えて、殺那が手札から1枚のカードを抜き取る。

 

「通常魔法、【エアーズロック・サンライズ】を、発動。

 墓地の、獣族モンスター1体を、特殊召喚、する。

 さっき、墓地に送った、【レスキューキャット】を、蘇生」

 

 レスキューキャット

 レベル4/ATK300

 

 【レスキューキャット】か。さっきの【ヴァレリフォーン】の効果のコストで墓地に仕込んでたみたいだね。

 

「【レスキューキャット】の効果、発動。

 このカードを、墓地へ送り、デッキから、レベル3以下の、獣族2体を、特殊召喚。

 私は、【メルフィー・ラヴィ】2体を、特殊召喚、するよ」

 

 メルフィー・ラヴィ

 DEF2100

 

 ポムっ、とカラフルな煙が舞って、可愛らしい兎が2匹現れる。

 それは童話へ誘うような、淡く、優しい、ウサギさんだった。

 

「ぎゃはは!なにやらモンスターを並べたようだが、そんなザコ共じゃ俺は倒せねぇぜぇ!」

 

「そんな貧弱なモンスター共は次の俺のターンでぶっ殺してやらぁ!見てろよ見てろよ!」

 

 チンピラ共が下品に笑い、【メルフィー】たちを小馬鹿にする。

 はぁー、ヤダヤダ。これだからステータスでしか物事を測れないデュエリストはいけない。

 まぁ、追い詰められていることにも気づけないような連中だ。

 頭のデキもデュエルの実力も程度が知れてるな。

 

「聞けばお前らは人権もねぇクズらしいじゃねぇか!クズはデュエルまでクズみたいだなぁ!今までどうやって生きてきたんだぁ~?」

 

「どうせ身体売ってきたんだろうよぉ!こんなクズガキでも女なんだからよぉ!

 股開いて男に媚びて、セックス奴隷にでもなって生かしてもらってたんじゃねぇかぁ~?」

 

 下卑た声が、殺那に浴びせられる。

 醜悪なその言葉を受けた彼女は────

 

「─────────そう」

 

 すっと、表情を消して。

 それから妖艶に、口元を歪めた。

 

「どうする?殺す?」

 

「ふふっ、どうする、か、なんて、簡単、だよ?」

 

 殺那に問いかけてみれば、彼女はすっと手を伸ばし、答える。

 

「ぶっ殺す」

 

 殺意を込めて、確かな言葉を使って。

 そして殺那は、告げる。

 殺めるための、その宣言を。

 

「私は、【メルフィー・ラヴィ】2体で、オーバーレイ」

 

 地に黒い渦が構築され、その中に2匹の兎が飛び込んでいく。

 その様子はまるで、童話の中のワンシーンみたいで。

 

「おいで、おいで、かわいい動物たち。ラヴィと一緒に、迷い込もう?」

 

 黒い渦が弾けて、内側からたくさんの動物たちが溢れてくる。

 それは、たくさんのメルフィーたち。

 

「エクシーズ召喚。ランク2────楽しく、遊ぼう、【わくわくメルフィーズ】」

 

 わくわくメルフィーズ

 ランク2/ATK2000

 

 現れたのはメルフィーの群れ。

 ぬいぐるみみたいに可愛らしく、童話みたいに淡くて暖かな動物たち。

 

「まだ、まだ、行く、よ。【森の聖獣 ヴァレリフォーン】と、【森の聖獣 カラントーサ】で、オーバーレイ」

 

 再び黒い渦が形成され、今度は聖獣たちが飲み込まれていく。

 

「彩り、淡く、優しく、包み込むように。澄んだ貴方を、抱きしめたい」

 

 殺那が両の手を伸ばせば、それと同時に黒い渦が弾けた。

 

「エクシーズ召喚。ランク2────殺(あや)そうよ、【メルフィー・マミィ】」

 

 現れたのは、メルフィー達よりも大きく、二足で立つ、柔らかな獣。

 【メルフィー・マミィ】。母なる獣は殺那と並び立って、優しく目尻を下げた。

 

 メルフィー・マミィ

 ランク2/ATK1000

 

「ようこそ、メルフィーの森へ。ここが、お前らの、墓場、だよ」

 

「はぁ?墓場だぁ?なにを言ってんだクズガキがよぉ」

 

 殺那の言葉に、男たちは冷笑を浮かべる。

 さて、その余裕が数十秒後まで持つだろうか。

 無理だろうなぁ。殺那はやり方が汚いし。

 

「ふふっ。【わくわくメルフィーズ】の、エクシーズ素材を、取り除き、効果、発動。

 このターン、【メルフィー】たちは、直接攻撃、できる」

 

「はぁ!?」

 

「な、なんだとぉ!?」

 

 一変。男たちの顔が焦りの色に染まる。

 壁など意味はない。相手がなにを並べようが関係ない。

 メルフィーたちはそんなものには縛られない。

 殺那はそんなものでは止められない。

 

「行く、よ。バトルフェイズ。【わくわくメルフィーズ】で、ダイレクトアタック」

 

 喜悦を浮かべ、殺那が命を下す。

 それに伴い、メルフィーの群れがガラの悪い男たちに殺到する。

 

「や、やめろぉ!」

 

「痛ぇ!?なんだコイツらぁ!?俺をかじって……!?」

 

「私、悲鳴が、傷つけるのが、好きなの」

 

 獣に群がられる男たちを観て、殺那が目を細める。

 

「心が、ゾクゾクして、気持ちよくて。私が、生きてる気がして、好きなの」

 

「ぎゃああぁぁぁあ!?痛ぇぇぇよぉぉあぁあぁ!?」

 

「やめろぉぉぉぉおぉ!?あぎゃあぁぁぁああいてぇえぇぇえいてぇぇあがぁぁぁっ!?」

 

 童話みたいな動物たちが、ふわふわとチンピラたちに牙を剥く(じゃれつく)。

 なんともメルヘンチックな光景だ。

 もっとも、当のチンピラたちは悲鳴を上げているのだが。

 

「ふふっ、ふふふっ。いいよ、いいね、もっと、もっと、鳴いて?泣いて……♡」

 

 優しい獣たちが、肉に爪を立てて引き裂き、牙を突き刺して食いちぎる。

 そうして哀れな獲物が痛みに叫び、血が飛び散る様子を、殺那は愉しそうに眺めていた。

 

チンピラ

LP:4000→2000

 

「クソ、がぁ……!いてぇ、いてぇよぉぉ……!」

 

「許さねぇ……許さねぇぞ、クソメスがぁぁ……!」

 

 ひとしきり男たちを喰い漁れば、獣達が跳ねるように離れていく。

 命からがら助かった男達は、憎悪の籠もった目で殺那を睨みつけていた。

 

 チンピラ共は全身血まみれ。

 けれどまだ、反抗的な態度を崩さない。

 

「殺すッ……!許さねぇ、ぶっ殺してやるぅ……ッ!」

 

「タダじゃおかねぇぞこのクソアマがぁ……!」

 

 ……あーあ、可哀想に。

 それがなにより、殺那を煽るのに。

 

「あはぁ……凄いね、まだ、生きてる……!」

 

 口元に両手の指を添えて、殺那は心底から悦に浸った表情を浮かべる。

 その唇は三日月みたいに歪み、涎が溢れて指先をてらてらと濡らしていた。

 

「ふ、ふふふっ……!生きてる、生きてる……!やった、やった…!まだ、遊べる、ね……!」

 

 あっ、ダメだこりゃ。

 まぁ、止める理由もないし、このまま好きにさせるとしよう。

 どうせ、デュエルの勝敗は変わらないんだから。

 

「見せて、死ぬとこ、もっと、血を、見せて、見せて、見せて……!【メルフィー・マミィ】で、ダイレクトアタック……!」

 

 興奮しきった様子で、殺那が【マミィ】に命令する。

 そうすれば【マミィ】は、トコトコと男たちに近づいていく。

 可愛らしく、穏やかな動作。

 そんな動きで母なる獣は…………

 

「えぁ────?」

 

 …………チンピラの内の片方。男の頭を、思い切り叩いた。

 

チンピラ

LP:2000→1000

 

 骨の折れる鈍い音と、肉のちぎれる音がした。

 それから少し遅れて、ゴロンとなにかが転がる。

 

 視界に広がるのは、地面に落下した男の頭部。

 噴水みたいに血を吹き出す、首のない男の死体。

 モンスターに殴られ、頭と身体が分離したチンピラの残骸が、真っ赤に染まってそこにいた。

 

「う、うわぁぁああぁぁぁあぁあぁぁぁあああぁぁぁ!?

 なんで!?どうして死んでるだよぉぉおぉ!?!?」

 

 数秒遅れて現実を認識した男が、絶叫する。

 憎たらしい態度から打って変わって、男は愕然とし、そして膝を震わせていた。

 

「そりゃあキミ、モンスターに殴られたら痛いじゃん。

 身体が耐えられなかったら、ライフがゼロにならなくても死ぬって」

 

 サイコデュエルでは、手加減でもしない限りはライフが尽きたら自動的に死亡する。

 だがそれは、ラ(・)イ(・)フ(・)が(・)あ(・)る(・)間(・)の(・)生(・)存(・)が(・)確(・)約(・)さ(・)れ(・)て(・)い(・)る(・)と(・)い(・)う(・)意(・)味(・)で(・)は(・)な(・)い(・)。

 

 受けた傷が深ければ人は死ぬ。

 流れた血が多すぎれば人は死ぬ。

 デュエルのダメージが致命傷になれば人は死ぬ。

 身体がモンスターの攻撃に耐えられなければ人は死ぬ。

 ただそれだけの、酷く簡単なコトだ。

 

「ぁ、あぁ…………あ……そ、そんな……バカな……」

 

 男は歯をカチカチと鳴らして震えていた。

 相方が死んだことで、自分が今どのような状況に立たされているのかが分かったのだろう。

 もっとも、全ては手遅れなのだが。

 

「ふふっ……ふふふっ♡はぁ……♡」

 

 恐怖に震える男を尻目に、熱を孕んだ声が聞こえた。

 そちらを見れば、唇に添えていた指を艶かしく舐めしゃぶり、耽美にため息をつく殺那の姿があった。

 

「あはぁ…………♡真っ赤、だね……♡」

 

 そこにいたのは、“女”だった。

 娼婦もかくやと、色を纏い、たまらないとばかりに身を捩らせるその姿。

 それはまさしく妖婦のようで。

 あるいは、血と死体に快楽を見出すソレは妖婦というよりも、獣に等しく。

 

「はぁ、はぁっ♡いいよ、いいよ♡もっともっと♡傷を♡血を♡見せて、魅せて♡」

 

 浅い呼吸を吐いて。

 興奮で血走った目で玩具(男)を見据えて。

 

 兎ノ宮殺那が────血に酔った獣が、涎を垂らす。

 

「もっと私をっ♡愉しませて……♡」

 

 欲情に身を委ねた親友を見て、ふと思う。

 あぁそういえば、ボクは平和的解決を考えてたっけかな。

 

 そんなことを、ボクは思い返していた。

 

 

 




読んでくださりありがとうございます!

やっとR18小説らしく♡マークが使えました!
次回も早めに投稿できるように頑張ります……!
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