遊戯王Cruel 猟奇的殺人デュエルと少年少女の破綻 作:胡麻野すり子
同じ感じでストラクチャーデッキ『星遺物』とか出ないでしょうか……
クローラー新規が10枚くらい収録されたストラク、待ってます。
今回は触りだけではありますがデュエルパートありです。
それでは始まります。
バレないように、こっそりと。
ボクはチンピラの惨殺死体を運んでいた。
人に会わないように注意しつつ廊下を歩くこと数分。
屋敷の1階、地下室のある物置の扉を開く。
「あれ……ベニアちゃん?」
するとそこには、ベニアちゃんがいた。
どうしたんだろうか?
てっきり彼女は、梨々華ちゃんと一緒にいるものかと思っていたのだけど。
「ぁ…………廻理さん。どうもで……いやその死体どうしたんですか!?」
シャインブラックに持たせていた死体を見て、ベニアちゃんが驚きの声を上げた。
「あぁ、こいつら?なんか襲いかかってきたからぶっ殺したんだけど…………それよりベニアちゃんこそどうしたのさ?」
数十分ぶりに見た彼女の顔には、青痣が浮かんでいた。
それはまるで、誰かに殴られたみたいに。
「え、えへへ……ちょっと、クソ執事にぶん殴られまして……」
「はぁ?マジで?」
ぶん殴られた?クソ執事に?ベニアちゃんが?
「ええと、その……アイツ、梨々華さんになんかしそうだったんで……止めようとしたんですけど…………えへへ、失敗しちゃいました」
照れたようにベニアちゃんが笑う。
顔の痣が、笑い顔に合わせて歪んだ。
「あっ、でもですね!ちゃんとやり返してやりました!
金玉ぶっ潰して、ゲロ吐きかけてやりましたよ!」
「ボクが離れている間にいったいなにがあったんだ……???」
殺那と一緒にチンピラをぶっ殺してる裏で、彼女たちも大変なことになっていたようだ。
具体的なことは分からないが、とりあえずベニアちゃんがとても頑張ったことだけは分かった。
「うーん…………うん。よく頑張ったね、ベニアちゃん」
まぁとにかく、屋敷の執事に暴力を振るわれ、ベニアちゃんはそれに対して全力で反抗したということか。
(けど、こんなことになるなら早いとこあの執事をぶち殺しとけば良かったな……)
ベニアちゃんの口ぶりからして、殴ってきたのは屋敷に着いたときに出会ったあの執事だろう。
流石に初っ端で殺すのはよろしくないと思い我慢したが、こうなるなら出会った瞬間に殺っておけば良かったか。
「今晩中に殺那と一緒に、ベニアちゃんに危害を加えたヤツをどうにかするとして…………
……ごめんね、ベニアちゃん。痛い思いをさせちゃったね」
「えっ?い、いえいえ!大丈夫ですよこれくらい!あたし、殴られるの慣れてますから!」
頭を下げれば、彼女は慌てて言葉を並べた。
「うぅ、謝られた経験がないので……こういうとき、どうすればいいのか……」
「あー……お詫びと言ったらアレだけど、なんか奢るよ」
「ホントですか!?」
困ったような顔から打って変わって、ベニアちゃんが目を輝かせる。
「まぁ、知っての通りボクはあんまりお金持ってないから高価な物だと厳しいけど…………」
「じゃあ、肉が食いたいです!A5ランクのめっちゃサシ入ってる分厚いステーキがいいです!」
「おぉう、それクソ高いヤツだよね?」
ボクのカスみたいな財力では買えない代物だ。
だが、奢ると言ってしまった手前、後に退くことはできない。
「えー……ちょっとお時間をいただいてもいいかな?どうにか手配するからさ……」
死ぬ気で頑張れば……ギリギリ手が届くか?
いや、意地でも届かせないといけない。
だってベニアちゃん、すごく期待してるんだから。
「はいっ!了解しました!じゃあ、ちょっと待ってます!」
屈託なく、ベニアちゃんが笑う。
やばい、滅茶苦茶に頑張らないといけなくなってしまった。
「よぅし、頑張ろー。ファイトだよーボク」
ゴミみたいな応援で己を鼓舞する。
とにかくベニアちゃんは楽しみにしているので、どうにかしてみるとしよう。
「まぁとりあえず先のことは置いといて。今は死体遺棄をしないとね」
「なんかメッチャ死んでますね……それ、誰なんですか?」
「あー、雇われのチンピラかな?ボクらを狙ってたから平和的正当防衛でぶっ殺したよ」
「はえー……エグい死に方してますね……」
「そこの首が飛んでるヤツは殺那の仕業だよ。全部ボクがやったわけじゃないからね?」
会話しながら、物置部屋のハッチを開ける。
ハッチの向こう側には、相変わらず禍々しい暗闇が広がっていた。
「…………もしかして、潜る感じですか?」
「ん?うーん、まぁそうかな。そこそこ下のほうに遺棄したいところだね」
別にこのまま真下に死体を投げ入れたっていいっちゃいい。
ただそうすると、ボクらはこの迷宮に踏み込む度に男の死体を見なきゃいけないわけで。
それはちょっと、いや正直かなり嫌なので、出来る限り目に入らなそうな下層に遺棄することをボクは考えていた。
「あの、でしたら…………あたしも、ついていっていいですか?」
「えっ」
そんなことを言ってくるとは予想していなかったので、思わず声が出てしまった。
いや、だが……そもそもベニアちゃんがこの場所にいる以上、彼女もこの地下迷宮に用事があったのだろう。
「問題はないけど……なんかあった?」
「…………その、梨々華さんと、話しをしたんです」
ぽつり、ぽつり。
小さな声が、物置に零れる。
「彼女も、頑張ってて……だから早く、お姉さんに会わせてあげたいなって、思って……えぇと、ですので…………」
しどろもどろになりながらも、ベニアちゃんは理由を話してくれた。
早く会わせてあげたい。そのために、地下へ行こうとしたのか。
「あははっ!なるほどなるほど!分かったよ、ベニアちゃん」
なにがあったのかと一瞬不安になったが、なんてことはない。
そういうワケなら、彼女を置いていく必要もないだろう。
「じゃあ、一緒に行ってみようか?行けるところまでさ」
「っ!は、はい!」
死体遺棄と、ついでに迷宮探索。
いや、迷宮探索のついでに、死体遺棄って感じにしようか。
「報連相は大切だから殺那にはメールを残しておくとして……うん、目標は葛さんの発見かなー」
「み、見つかりますかね……?」
「為せば成るさ。根性論を信じるとしよう」
ハッチから、真っ暗な地下へと身体を滑り込ませる。
それから少し遅れて、ベニアちゃんも降りてきた。
さて、ここにいるであろう葛さんを見つけられれば重畳。
駄目だったら、そのとき考えるとしよう。
「やるだけやるかな」
ポケットに入れていた懐中電灯を点けて、暗闇を照らす。
そうしてボクらは、細い地下通路を進み始めた。
────────────────
「えーと、つまりあの執事は人を殺してるって?」
鳴金屋敷、地下深くの迷宮にて。
ベニアちゃんから返してもらったカーディガンを羽織りつつ、ボクはベニアちゃんからある話を聞いていた。
それは、ボクが殺那と一緒にチンピラとデュエルしていた頃のこと。
丁度その頃に起きたことを、彼女はこと細かく話してくれた。
「はい。おそらくですけど…………た、たぶんです」
「ふーむ、なるほどねぇ」
「その…………証拠らしい証拠は、ないですけど……」
そう言うと、ベニアちゃんは目を伏せた。
確かに、確固たる証拠があるかと言われれば、ない。
それはあくまでも、ベニアちゃんの所感でしかないからだ。
「いずれにせよ、あの野郎は要注意かなぁ」
頭の中で、クソ執事をぶち殺さなければいけない要素をまとめる。
1.ベニアちゃんの直感。
2.梨々華ちゃんになにかしようとした。
3.ベニアちゃんを殴った。
4.あとついでにボクらへの態度が悪かった。
ふむ、4冠達成だ。許しちゃおけないな。
「でもなぁ……人殺しであって欲しくはないかなぁ」
「えと、それはどうして……?」
「だってほら。執事までカスだったら鳴金屋敷はお終いじゃん」
屋敷の主である鳴金雄太郎はマジカス。
その奥さんは現在失踪中。
浮気相手のメイドは暗殺されてる。
娘の葛さんは虐待されて地下に幽閉。
もうひとりの娘である梨々華ちゃんは精神的に負担を掛けられてる。
その上執事の男が誰かしら殺ってるって?
「家庭崩壊ってレベルじゃないって。そこまで行ったら終末だよ終末」
「梨々華さんが可哀想ですね…………」
ベニアちゃんの言葉に、うんうんと頷く。
梨々華ちゃんがなにをやったっていうんだ。
「…………っと、死体はこの辺に遺棄するかな」
気づけばかなり深くまで降りていた。
ここは、地下10階層くらいか。
うん、これだけ下なら、この屍を捨てても問題はないだろう。
そういうわけで、かつてチンピラだった者たちを投げ捨てる。ポーイ。
「にしても、これはどれだけ深くまで続いているんだ……?」
改めて周囲を見渡してみる。
真っ暗な石造りの通路が、そこに広がっていた。
「これも、カードの力なんですか……?」
「だろうね。たぶん【迷宮壁─ラビリンス・ウォール─】とかを実体化してるんじゃないかな?」
ぱっと思いつく迷路のカードを挙げてみる。
レベル5岩石族、守備力3000の通常モンスターだ。
フレーバーテキストによると、出口のない迷宮を作るらしい。
「そういえば、どうして葛さんはサイコデュエリストになったんでしょうか……?」
ふと、ベニアちゃんが首を傾げる。
「葛さんって、サイコデュエリストになったそうですけど…………人知れず改造されたとか、でしょうか?」
「それもないとは言えないけど、おそらくは突然変異だろうね」
「突然変異、ですか?」
不思議そうにしている彼女の疑問に、ボクは答える。
「極稀にだけど、後天的にサイコデュエリストになるケースっていうのはあるからね。
葛さんは、その超低確率の貧乏くじを引いちゃったんじゃないかな」
滅多にあることではないが、人はサイコデュエリストになることがある。
なんの前触れもなく、ある日突然にだ。
「細胞がどうとか組織がなんとかかんとか……詳しくは知らないけどなんかなってサイコデュエリストになるんだって」
「はえー…………」
うろ覚えのサイコデュエリスト発生プロセスを解説してみたが、全く伝わらなかったようだ。
その証拠に、ベニアちゃんはポケーとした顔ですっごい適当な返事をしてくる。
「後天性の可能性が高いのは分かりましたけど…………
じゃあ葛さんは、なにが目的なんでしょうか?」
気の抜けた顔ベニアちゃんの顔が、再び不思議そうな顔に変わる。
今度は、葛さんの目的についてか。
「その、サイコデュエリストって言っちゃったらなんでもアリじゃないですか?
クソみたいな父親をぶち殺すことだってできるはずなのに……どうして葛さんは、地下に引きこもっているんでしょう?」
「どうして引きこもっているのか、ねぇ」
確かに、それは謎ではある。
ベニアちゃんが言った通り、葛さんはその気になればムカつくヤツをどうにでも出来るのだ。
現状を打破する力を持ちながら、彼女は未だに虐げられる側の立場に立ち続けている。
幽閉された地下室に迷宮を作り、その姿を隠しているのだ。
「いくらかの仮説は思いつくけどね。例えば、葛さんの心が恐怖で折れてるとか、人を殺せる精神性をしていないだとか。
ただ、これはあくまでも仮説だ。実際にどうなってるのかなんて、会ってみないことには分からないね」
「…………かもしれませんね」
予想をすることはできるが、確信することはできない。
今は、どこまで言っても想像の話しかできないのだ。
(とはいえなぁ…………凄い嫌な予感もするんだよなぁ)
なんというか、一筋縄ではいかない感じというのだろうか。
この鳴金葛という人物に関しては、どうにも
「それはそうと、なんかスムーズに進んでるなような…………」
「えっと……?スムーズ、ですか……?」
かなり深くまで、ボクらはこの迷宮を進むことができた。
前に来たときはかなりしんどいことになったのに、今回は余裕を持って進めている。
「ほら、前に3人で潜ったときはモンスターの妨害とかヤバかったじゃん。
なのに今回は、そこまでキツくないっていうかさ」
「あー……確かにですね。トントン拍子、って感じです」
妨害がなかったわけではないが、それでも以前と比べてその頻度は格段に減っていた。
そのおかげで、かなり下まで降りることができたのだが……
「………………………………」
「………………………………」
なにか違和感を感じて、ふたりで後ろを確認する。
……するとそこには、モンスターがいた。
通路を埋め尽くすほどの、モンスターの群れが、いた。
「あっ、ヤバいねこれ」
「ですね」
ひとつ頷き合って、全力で走り出す。
その後ろから、怨嗟の合唱と無数の足音が追いかけてきた。
「ひ、ひぇぇ……!なんでこんなことに……!」
「罠にかかってしまったみたいだね!戻れないところまで誘い込んで、そのまま追い詰めるつもりだよ!」
もしも、侵入者を確実に殺すことを考えたなら、なにが最適解だろうか?
答えは、
後戻りが困難な地点まで進ませて、入り口に帰れないように後ろから殺到する。
それをされると、ボクらが地上に帰還するのは大変難しくなる。
この後ろから迫ってくるモンスター軍団をどうにかしないと、帰ることができないからだ。
「ピ、ピンチじゃないですかぁぁーーーーー!?!?」
ベニアちゃんの悲鳴が迷宮に木霊する。
実際ヤバい。後ろから迫るモンスターの数は10や20じゃきかない。
あれらを突破するのは、ほぼ不可能と言ってもいい。
「けど悪いことばかりじゃない!後ろに固まってるってことは、奥は手薄になってるってことだろうからね!たぶん!」
確かに、戻ることは不可能だ。
だが、進むことは可能。
奥側が薄くなっている今が千載一遇のチャンス。
というかチャンスであってくれ、じゃないとボクら死んじゃうからね!
「ぜぇ、ぜぇ……!走るの、きっつい……!」
「頑張ってベニアちゃん!」
息を切らすベニアちゃんの手を引っ張って、迷宮を駆け抜ける。
奥深くの地図はない。最適なルートは分からない。
行き止まりに当たったらアウト。
迷って追いつかれてもアウト。
「ヤバいか……!なら、お願い【シャインブラック】、【デンドライト】、【スパイン】…!」
カードを数枚取り出し、実体化させる。
湧き出した怪蟲たちが、背後から迫るモンスターたちに襲いかかっていく。
「これで少しは時間が稼げる……!」
ボクのモンスター達は優秀だ。10分は保たせるだろう。
10分、それだけの時間があれば十分だ。
そうして全速力で走り続ける。
しばらくすると、後方が静かになっていることに気づいた。
どうやら撒けたようだ。
「逃げ切れたか…………でも、帰り道に陣取ってるだろうな」
ボクらを逃さないように、連中は帰りのルート上に固まっていることだろう。
行きはよいよい帰りは怖い、というやつか?
まったく、冗談じゃないね。
「げほっ!ごほっ!足、しんどい、ですぅ……」
ベニアちゃんがむせながら、膝に手を置く。
「よく頑張ったね、偉いよ。少しは余裕ができたし、ゆっくり行こうか」
「ひぇぇ……休ませてくださいぃ……」
「ボクだって休ませてあげたいけど、そういうわけにはいかないよ」
今が安全だからといって、その1秒後が危険でないとは限らない。
動ける時に動く、止まるべきでなければ止まらない。
彼女もそれは分かっているの、文句を言いつつも足を動かし始めた。
奥へ向かおうと、近くの角を曲がる。
そのまま進もうとして…………足を止めた。
「廻理さん…………?」
後ろからついてきていたベニアちゃんが、怪訝そうにする。
そんな彼女も同じように角を曲がれば、ボクと同じように停止した。
曲がり角の向こう側。
そこには、人がいた。
女の人だ。
一瞬葛さんかと思ったが、違う。
見せてもらった写真に写っていた少女とは、似ても似つかない。
その人は、背中にかかるくらいの金色の髪の、大人の女性だった。
成熟した綺麗さを湛えたその人物は、白いドレスを纏い、佇んでいる。
ただ、その女性の姿は、どこか普通ではなかった。
まず、肌の色。彼女の肌は、血が通っていないかのように青白い。
そして瞳。その瞳は虚ろで、ちょっとの光さえ灯っていない。
人によく似せた人形のような、人のカタチをした肉が動いているような、そんな異質さ。
明らかに普通じゃない何者かが、そこにいた。
「これは驚いた。こんなところで人と会うとは思わなかったよ」
軽快さを装って、女性に話しかける。
「……………………」
返答はなし。
彼女は虚ろな目で、ボクらを眺めるだけだ。
「あははっ!お喋りは嫌いな感じ?さて、そんなお姉さんは一体何者なのかな?」
「……………………」
こちらも返答はなし。
だが、動きはあり。
女性が腕に装着していたデュエルディスクを展開し、構えを取る。
「お話はデュエルで、ってこと?いいね、分かりやすくって」
どうにも、戦いは避けられそうにないな。
ボクもまたディスクを左腕に着けて、構える。
「ボクらは先に進みたいからね。邪魔するっていうなら、打倒するよ」
「…………………………」
相変わらず、彼女からの返答はない。
ただ、目の前の女性は、一歩たりとも退こうとはしなかった。
それはつまり、ボクらに立ち塞がるってことだ。
なら、倒さないといけないな。
「廻理さん……ここは2対1で、一気に…………
と、思ったんですが…………」
ベニアちゃんが、ボクの背中に隠れたままもぞもぞと話し出す。
「あたしの使うモンスターって……大きいですよね?」
「え?うん、大きいと思うよ?」
「ですよね。それで……ここの通路って狭いじゃないですか?」
「まぁ、そうだね」
「しかも……サイコデュエルって、モンスターが実体化するじゃないですか」
「…………………うん」
「通路崩れてぺしゃんこ、っぽくないです……?」
「うーん……そだね」
「すいません、あたし、今回見学でいっすかね……?」
ベニアちゃんが頭に手を当てて、半笑いで平謝りする。
まぁ、この地下通路で彼女が好む大型モンスターを召喚すると、ここは間違いなく崩落する。
流石に生き埋めは苦しそうなので、ベニアちゃんにはこのまま見学していてもらおう。
え?ボクも【熱核竜】とか巨大なモンスター使うだろうって?
ボクは念の為に地下で戦う用の小型モンスター中心のデッキを組んできているとも。
「今度一緒に、ちいさくて可愛いモンスターのデッキ組もうか」
「うぅ……デカくて強くて豪快なヤツを頼みます……」
などと軽口を叩き合いつつ、金髪の女性と向き直る。
「さてと、それじゃあやり合おうか」
「……………」
目の前にいるこいつが何者かとか、なんでここにいるのかとか、色々疑問はある。
だが、その疑問の答え合わせは、今はまだできない。
(不可解なことはあるけど……今はやることをやるだけだ)
答えが出ないことは、頭の片隅にでも追いやっておく。
こいつが誰であろうが、邪魔をするなら倒す。
それだけの簡単なことをとりあえずはやればいい。
「さぁ、始めようか────」
「…………………………」
「「──────
────────────────
はてさて先行は…………ボクからか。
順番を確認し、その次に手札を確認する。
「完璧な手札だ。じゃあ行くよ、ボクのターン!」
意気揚々と声を上げ、ターンを開始する。
「まずはモンスターをセットして、それからカードを3枚伏せるよ!」
「わぁ……ガン伏せ……」
横で見ていたベニアちゃんがちょっと引いた風にぽつりと言った。
いいじゃんか別に、ガン伏せだって立派な戦術なんだからさぁ……
「手札から【命削りの宝札】を発動!手札が3枚になるようにデッキからドローする!」
ボクの手札は現在0。よって3枚のドロー。
大量ドローだが、それには重い代償が伴う。
まず、【命削りの宝札】を発動するターン、自分は特殊召喚を行えない。
その上、発動後はターンが終わるまで相手にダメージを与えられない。
さらにエンドフェイズになったら手札を全て捨てないといけないわけで。
ふむ、まさしく命削りの馬鹿げたドローだ。
まぁそんなデメリットは全て踏み倒すが。
「手札から永続魔法【大樹海】を発動し、さらにカードを1枚伏せる。
そのままエンドフェイズに移行し、【命削りの宝札】の効果で残った手札を全て捨てるよ。
でもって、捨てた【ゴキポール】の効果発動。デッキから【B・F─早撃ちのアルバレスト】を手札に加える。
はい、これでボクのターンはおしまいだよ」
廻理
LP:4000
手札:1枚
場:???
魔法・罠:大樹海
伏せ:4枚
やるだけのことはやったかな。
自らが作り上げた盤面を見て、上出来だと頷く。
さて、この張り巡らされた罠の中で、彼女はどう動くだろうか。
金髪の女性を注視すれば、彼女はデッキに指をかけた。
「…………私の、ターン。ドロー」
機械のように精密に、あるいはガラクタのようにぎこちなく。
彼女はターンを開始する。
(発声はできると……けど、そこに自分の意志は感じられないな。
これは…………操り人形、ってところだろうか?)
彼女には、意志がない。意識も見られない。
空っぽの人形が無理矢理に動かされているような、そんな感覚。
(というかコレ、
女性の目には、光がない。
肌の色も、血が止まってるみたいに青白い。
その有様は、死体のソレによく似ている。
いや、それは最早、死体そのものだった。
(誰かの死体を人形みたいに操ってるのか。悪趣味極まるな)
前に殺り合ったあの殺人犯と同様に、何者かが彼女を操っているのだろう。
それも生きた人間ではなく、意志なき死体を、だ。
流石のボクもそういうのはどうかと思うなぁ。
反吐が出るって感じだ。
そうこう考えていると、死体の女性がデュエルを動かし始める。
「【儀式の下準備】……デッキから【原初の叫喚】【輝神鳥ヴェーヌ】を…手札に加える」
「儀式デッキか。なんだか最近よく当たるなぁ」
無感情にデュエルを行う姿に、梨々華ちゃんを思い出す。
彼女もまた、儀式デッキの使い手だった。
この短期間で2回も儀式使いとデュエルをするのは、なんとも珍しい。
「梨々華さんも儀式でしたね…………」
「うん、儀式が今流行ってるのかな?梨々華ちゃんと言い…さ……?」
梨々華ちゃんの名前を出した瞬間、ふと気づく。
思えば、梨々華ちゃんも綺麗な金髪だった。
梨々華ちゃんも、儀式召喚を使っていた。
そして目の前の女性をよく見れば、その顔立ちはどこか、梨々華ちゃんに似ていた。
「おいおいおい……ちょっとやめてよ……!」
じっとりと嫌な汗が流れる。
最悪な想像が描かれる。
そしてその想像は、彼女の次の一手で、現実に変わる。
「私は────【サイバー・エッグ・エンジェル】を通常召喚」
「ッ!?サイバー・エンジェルですって……!?」
暗闇から、卵の天使が舞い降りる。
その姿には見覚えがあった。
だってそれを使う少女と、少し前にデュエルをしたのだから。
「召喚に…成功した、【サイバー・エッグ・エンジェル】の……効果を発動。
デッキから……【機械天使の儀式】を、手札に加える」
それは、彼女──
同じ機械天使を、梨々華ちゃんに似た誰かが、淡々と操っていた。
梨々華ちゃんがこの人を操っている……んじゃない。
自分と同じデッキを操り人形に使わせるなんて、自分が犯人だと自白しているようなものだ。
流石に梨々華ちゃんもそこまでの馬鹿じゃないだろう。
なら、なぜコイツが梨々華ちゃんと同じテーマを使っているのか?
「梨々華さんと同じデッキ……!?で、でも、どうして……」
「……きっとこの人も、【機械天使】の使い手なんだ」
元々使っているデッキを、操られている状態で使わされている。
梨々華ちゃんが犯人でないなら、答えはこれだろう。
だが、それなら…………元々【機械天使】を使う彼女は、何者なのだろうか。
「梨々華ちゃんと同じデッキ、同じ髪色、似た容貌……」
その条件に当てはまる人物。
そんな人物が、ひとりだけ存在する。
「…………鳴金梨々華の、
梨々華ちゃんの失踪した母親。
それが、目の前の女性の正体。
そんな彼女が、死体になって誰かに操られている。
「勘弁してくれよ……」
鳴金家の家庭崩壊は、思っている以上に深刻だったようだ。
頭を抱えて見せても彼女の表情はなにひとつ変わらない。
ああクソッタレ。
失踪した母親の死体がここにいる理由を、最高に考えたくない。
そして、ソレをこれからどうしなければならないかなんて、気づきたくない。
知れば知るほど最悪になっていく、そんなクソみたいな家庭事情。
こんな仕事をくださりやがった飼い主様と、こんなことになっちまった鳴金家に吐き捨てる。
「…………ファッキュー」
ホント、クソみたいだ。
嘆いてみたが、なにかが変わることはなかった。
読んでくださりありがとうございます!
というわけで、次回に続きます!
デュエルパートは現在執筆中ですが、今回はかなりボリュームのある仕上がりになるんじゃないかなぁと思います!
次回も楽しんでいただけるよう、頑張ります!