※この作品はR-18です。

遊戯王Cruel 猟奇的殺人デュエルと少年少女の破綻   作:胡麻野すり子

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大変お待たせしました……!
今回は短めです!
では、始まります!


第18話 ふうせんかずら

 酷く気持ちの悪い感触と共に、意識が浮上する。

 

「ん……ぅん……」

 

 目を開けてみればそこにはなにも変わらない、アタシの現実が広がっていた。

 

 固く閉ざされた、鉄の扉。

 ぶ(・)よ(・)ぶ(・)よ(・)と(・)し(・)た(・)肉(・)の(・)床(・)と、肉(・)の(・)壁(・)。

 そして、私(・)の(・)四(・)肢(・)を(・)飲(・)み(・)込(・)ん(・)で(・)固(・)定(・)す(・)る(・)肉(・)の(・)柱(・)。

 

 ……気持ち悪い。

 手足に感じる、肉の温度。

 伝わる脈動に、身動き取れない拘束感。

 その全てが不愉快で、仕方がない。

 

「……いま、いつ?何度目の、おはよう……?」

 

 かすれた声が漏れた。

 ああ、よかった。

 まだ、アタシの声帯は生きているらしい。

 

 もう閉じ込められてどのくらい経つかも分からない。

 声を枯らすほどに叫んでも、アタシは自由になれなかった。

 だから声を出すことさえも止めた。

 

 けど、声が出せなくなるのは困る。

 アタシはまだ、梨々花の名前を呼びたいのだから。

 

『…………い……やば……さぁ』

 

『……ひぇ……後ろ……めっ……来てま……!』

 

「…………?」

 

 ふと、扉の向こうから、なにか音が聞こえた。

 迷宮内のモンスターの足音がかと思ったが、それとはなにか、雰囲気が違う。

 

 不審に思っていると、その音はどんどん大きくなっていく。

 

『ぎゃあああーーー!!廻理さぁぁーーん!!モンスターの大群が来てますーーー!!』

 

『こいつは困ったねベニアちゃん!!』

 

 ドタドタといった足音と、悲鳴。

 それは間違いなく、この地下迷宮にアタシの知らない"誰か”がいるという証明。

 

「ッ!?」

 

 うそ。誰か、いるの?

 知らない声、知らない人が、ここに?

 

『あっ!?なにこれ……扉?』

 

『行き止まりですか!?』

 

『鍵かかってるね……!けど、逃げ道はここしかないな……!』

 

『こ、壊しますか!?』

 

『壊しちゃったら後ろのモンスターも入ってきちゃうね!』

 

『じゃあどうするんですかぁーーーー!?』

 

『ダメ元で鍵開けするよ!罠カード【盗賊の七つ道具】を発動!頼むよ開いてくれ!』

 

 ────ガチャン

 

 重たい金属音がした。

 固く閉ざされた扉が、馬鹿みたいに簡単に開けられた音がした。

 

「あ、開きましたぁぁーー!!」

 

「よしきた!入ってベニアちゃん!」

 

 解錠された扉から2つの人影が雪崩込む。

 ひとりは、簡素な白いワンピースを着た、ボロボロの少女。

 片目が潰れ、ところどころ白く変色した黒髪の、痛々しい女の子だ。

 

 そしてもうひとりは、少女……いや、少年だろうか。

 それは、紫色の髪を髪留めで後ろにまとめた、美しいナニカだった。

 

 傷だらけの人と、得体のしれない生き物。

 そんなふたりが、飛び込んできて、そしてわちゃわちゃとしていた。

 

「か、廻理さん!扉閉めてください!モンスター来ちゃってます!」

 

「ちょっと待ってちょっと待って!ベニアちゃん全体重かけて抑え込んどいて!えーとカードカードどれだどれだ!?」

 

「あああああああ!あっち側からかなり押されてますぅーー!!」

 

「やばっ!えーと切り抜けられるのか分かんないけどとりま【光の護封剣】を発動!」

 

 ふたりが押さえていた扉に、幾本もの光の剣が突き刺さる。

 光の剣はパズルみたいに複雑に絡み合い、扉を二度と開かないように固定した。

 

「これで一安心、かな?」

 

「し、死ぬかと思いました……」

 

 力が抜けたのか、少女がへたりと座り込む。

 

「…………あれ?なんかこの床、生暖かいような……」

 

「うん?……うわ、なにこれ、肉でできない?」

 

 ふたりが辺りを見渡していく。

 扉から、床。

 床から、壁。

 肉造りの異質な内装を、ふたりが観測していく。

 そして、その目線はやがて、アタシを捉える。

 

 目と目が合った。

 アタシと、ふたりが。

 

「黒い髪に、焼けた顔……もしかしてキミが……」

 

 紫色の髪の少年が、目を見開く。

 そして彼は、その口で、その名前を口にした。

 

「────キミが、鳴金葛さん?」

 

 彼が呼んだのは、間違いなくアタシの名前だった。

 

「…………ええ、そうね」

 

 アタシはただ、静かに。

 そう言って頷いてみせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その少女──鳴金葛さんを見て、ボクはただ驚いた。

 だって、明らかにマトモな状況じゃなかったからだ。

 

 葛さんは、裸の状態で、肉で作られた柱に固定されていた。

 拘束された四肢は異様に細く、胴に目を向ければ浮いた肋骨と凹んだ腹が見えた。

 

「……それで、貴方たちはどなた様?」

 

 葛さんが、警戒心をむき出しにし、睨んでくる。

 

「あぁ、ごめんね。自己紹介が先立ったかな。

 ボクは遊針廻理。裏デュエル界のクズ奴隷デュエリストだよ」

 

「えと……あたしは、ベニアっていいます。その……後輩、ですかね……」

 

「裏デュエル界……?クズ奴隷……?」

 

 ボクらが自己紹介をすると、葛さんは焼けた顔を傾げる。

 

「どうして、そんな人たちがここにいるの?そもそも、なんでアタシを知っているの?」

 

「あー……色々あって梨々華ちゃんと知り合って、それで話を聞いたっていうかさ」

 

「梨々華さんに、あなたを助けてほしいって、頼まれました」

 

「梨々華が……?」

 

 妹の名前を出した途端、葛さんは大きく目を見開いた。

 それから強張っていた彼女の顔が、やや柔らかくなる。

 

「そう……貴方たちは、梨々華のお友達なのね?」

 

「ボクは勝手にそう思ってるよ」

 

「ベスト・フレンド・フォーエバー……ってヤツです……!」

 

「そうなのね…………」

 

 ボクらがそう答えれば、葛さんは納得したように1回頷いた。

 

 さて、ある程度の警戒は解けただろうか?

 それなら、今度はこちらの番だ。

 彼女には聞きたいことがいくらかある。

 

「それでなんだけどさ、まずこの部屋は一体何かな?

 これ、肉で出来てるし、普通じゃないでしょ」

 

「さぁ…………なんらかのカードの実体化、だそうよ。よくは分かってないわ」

 

「んん?よく分かってないって、キミがやってるんじゃないのかい?」

 

「………………答えないわ」

 

 いまいち要領の得ない答えが返ってきた。

 …………どういうことだ?

 これは葛さんは関与していない、ということか?

 だとしたら、どうしてこんなことになっているんだ?

 

「……………………」

 

 葛さんはそっぽを向いたまま黙っている。

 どうしたものか。頬を掻いて考える。

 

「と、とりあえず…………葛さんの手足、どうにかしますか……?

 なんか、埋まってますし……開放しないと、梨々華さんのところに帰れませんし……」

 

「うーん……うん、そうだねベニアちゃん」

 

 まぁ悩んでも仕方がない。

 答えないっていうなら、現時点じゃ聞いたって無駄だ。

 とりあえずできそうなことをやってみてから考えるとしよう。

 

 そう結論づけて、ボクとベニアちゃんは葛さんに近づく。

 

「っ!?ダメ!来ないで!」

 

「えっ?」

 

「こ、来ないでってどういう…………」

 

 疑問符が浮かんだ、瞬間。

 葛さんを拘束する肉の柱から、触手のようなものが飛んできた。

 

「…………ッ!」

 

 速い。銃弾とほぼ同速か。

 触手は槍のように、一直線にベニアちゃんを狙って迫る。

 

 先端がベニアちゃんの胸板を貫く……その前に、彼女を押し倒して回避する。

 

「危なっ!下手したら死んでたじゃん!」

 

「ひ、ひぇぇ…………!」

 

 肉の床に転がったまま、触手を観察する。

 すると触手は、緩慢な動作で柱へと返っていった。

 どうやら追撃するつもりはないらしい。

 

「一応聞くんだけどさ、これはキミの意思でやったことじゃないよね?」

 

「…………そうね。信じてもらえるかは、分からないけど」

 

 

 彼女は、”来ないで”と警告した。

 仮にボクらを殺すつもりだったなら、そんなことをする必要性はない。

 ということは、あの触手は葛さんの意思とは関係なく、ボクらを攻撃したきたことになる。

 

「あははっ、信じるよ」

 

 ただそうなると、最高に困る仮説が浮上してくる。

 

「じゃあもういっこ聞くんだけどさ。誰(・)が(・)、こんなことをしているのかな?」

 

「…………………………答えないわ」

 

 葛さんは、ボクの問いかけに答えなかった。

 それはすなわち、なによりも雄弁な答えだった。

 

 もしもこれが葛さんのサイコデュエリストの力が暴走してるとかなら、『自分』と答えられる。

 彼女に悪意があったのなら、そもそも警告するような真似もしない。

 けれどそのどちらでもない。

 

 なら、それから考えられる真実は────第三者の犯行か。

 

(なにがあったのかは分からないけど、何者かが葛さんを捕らえてこんなことをしているのか)

 

 それは、最高に困る。

 なぜなら、現時点で葛さんを開放する手段が存在しないからだ。

 

 別に、彼女を縛り付けている肉柱をどうにかするのは簡単だ。

 触手を躱しながら、適当なモンスターをけしかければいい。

 

 問題は、縛り付けられている葛さん自体が触手を避けられない、ということだ。

 もしも彼女の背中から触手が突き出てきたりしたら、ボクらにはどうにもできない。

 いつでも口封じに殺せる状況である以上、一切の手出しができないのだ。

 

(一旦戻ろうにも、出口はあの有様だしね……)

 

 扉の前にはモンスターの大軍が待ち受けていることだろう。

 今出ていったりしたら、ちょっと無事では済みそうにない。

 

「あれ?もしやこれは……詰んじゃった?」

 

「か、廻理さぁーーーん!?」

 

 ボクの下で寝転がってるベニアちゃんが叫ぶ。

 当のボクは、解決手段がパッと思い浮かばなくって、困ったように笑うしかできなかった。

 

 




呼んでくださりありがとうございます!
今回は短めでしたが、生存報告がてら投稿させていただきました!

あと息抜きにCruelの外伝を書きました。
廻理が野球殺人鬼とデュエルして焼き殺されかけたりしてます。

では、また次回でお会いしましょう!
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