※この作品はR-18です。

遊戯王Cruel 猟奇的殺人デュエルと少年少女の破綻   作:胡麻野すり子

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こちらは、過去に一般で上げていたエピソードです。
一部加筆修正し、R18に改めて組み込みました。
楽しんでいただけると嬉しいです!


廻理とベニア編
第27話 魔法の副作用


 真っ暗な夜の郊外に、煌々と炎が上がる。

 オレンジ色の熱が周囲を照らし、その中心では男の野太い悲鳴が鳴っていた。

 

 あぁ、人間焼きか。

 センスのない野蛮な殺しに辟易しながら、私はその主催者たちに声をかける。

 

「随分楽しそうなことしてるじゃない?

 私がセキュリテイやら裏の連中やらを殺している間にするキャンプファイヤーはどう?」

 

「ヒョヒョヒョ、誰かと覚えば最逝(さいけ)のお嬢ではありませんか」

 

 キモい笑いと共に、男が振り返る。

 痩せぎすで不健康そうな、いかにも人を殺してそうな、程度の低い馬鹿面だ。

 取り巻き(ゴミ)を従えて半グレデュエル集団を組織しているそうだが、上がこれならお察しね。

 

「その様子だと……ハズレでしたかな?」

 

「ええ。誰かさんが精度の低い情報を寄越してきたからね」

 

 自慢の赤銅色の髪を払い、近くの椅子をぶん取る。

 男の取り巻きが先に座っていたが、邪魔なので射殺してやった。

 

「……あまり私(あたし)の可愛い部下を殺さないでいただきたいのですが」

 

「5件。なんの数字か分かる?

 アンタが私にガセネタ掴ませてきた回数よ」

 

「ヒョヒョヒョ……それに関しては悪いとは思っていますが……貴方のオーダーが難しいことは、理解していただきたいですね」

 

 頬杖をつき、続きを促す。

 

「貴方のお姉様を殺したデュエリストを探せとのことですが……

 失礼ながら候補が多すぎましてね。

 その……お姉様はギャングのボスという、恨みを買いやすい方だったそうですし」

 

「役立たずが……」

 

 舌打ちと共に、使えないカスに悪態をつく。

 が、私は何故こいつらがこんなにも使えないのか、その理由を失念していた。

 

「テメェ!兄貴をバカにしやがったな!」

 

「いくらなんでも許せねぇ!死ねクソアマ!」

 

 男の取り巻き共がイキり立ち、凶器を持って襲いかかってくる。

 本当に嫌になる。どいつもこいつも頭が悪すぎる。

 

「【メンタルスフィア】」

 

 瞬間、馬鹿共が肉片になって四散する。

 馬鹿は死んでも治らないというが、死ねば取り巻き共は静かになった。

 焚き火と悲鳴の静寂の中、広がる血の海を眺めて、私は椅子に深くもたれかかる。

 

「上下関係が分かってないわけ?」

 

「ッ……とんでもありません。貴方には感謝していますよ」

 

 一応は組織のトップだけあり、男は即座に頭を下げる。

 正解の対応だ。振り上げた拳は下ろしてやろう。

 

「アンタらがサイコデュエリストになって、『街』で暴れられてるのは誰のおかげ?

 私が信濃井(しなのい)のクソ医者に紹介してやったからよね?」

 

「それはもちろん!貴方には感謝してもしきれませんよ!」

 

「なら、どうしてアンタらは、姉さん殺したクズを未だに見つけられないわけ?」

 

 殺気を放ち、頭を垂れる男を威圧する。

 男は唾を飲み込み、必死に脳みそを回転させているようだった。

 

「……正直なところ、今まで調べた連中……ギャングや殺し屋、裏デュエルファイターが、貴方のお姉様を殺した犯人だと思ったのですよ。証拠が、あまりにもなかったので……」

 

「証拠不足。言い訳はそれでいい?」

 

「ですが、私(あたし)は思い違いをしていたのです。証拠不足こそが、証拠であることに」

 

「…………へぇ」

 

 殺すのは待ってやることにした。

 毛先を弄りながら、続きに耳を傾ける。

 

「この手慣れた証拠隠滅の具合を考えるに、貴方のお姉様の仇は、プロです。

 それも、とんでもない手練の。

 そして、諸々の条件に合致する組織がひとつ、ありました」

 

「それは?」

 

「『孤児院』。そう呼ばれる、サイコデュエリストの子どもたちの殺人集団です」

 

 その組織の名には、聞き覚えがあった。

 確か、姉さんも生前、チェックしていたのだったか。

 

「ですが……『孤児院』に喧嘩を売るのは……オススメしません」

 

「は?なんで?」

 

「いいですか、これは純粋な善意からの進言です。

 とにかくあの組織に関する悪名や、構成員の悪辣さは酷いのですよ」

 

 自分も詳しく調べるのを躊躇うほどです、と男は付け加えてくる。

 くだらない……と呆れるところだが、この男の様子を見て、その考えが変わる。

 コイツはゴミだ。相手の実力もろくに測れないゴミだ。

 それがこんなに怯えているということは、本当に不味い悪評ばかりが出てきたのだろう。

 

「あそこのガキ共は粒ぞろい……どれも狂人ばかりです。

 たとえば『兎ノ宮殺那』。たとえば『揺貝礼々』。

 先程の2名には劣りますが、充分な怪物と噂される『田中鬼陽子』など……」

 

 それから一拍、間が置かれ、男は最後にひとりの名前を吐き出す。

 

「そして――――『遊針廻理』」

 

 その名前は、やけに耳に残った。

 何故かは分からない。

 ただ、得体の知れない確信のようなものがあった。

 

「他にも何人も、倫理も人心もなにもない残虐なガキどもが所属して、日夜人間を殺して回っているそうですよ……」

 

「そう……なら、調べる必要があるわね」

 

 私はその『孤児院』とやらに興味を惹かれていた。

 姉さんを殺したあのクズは、そこにいるんじゃないか、と。

 

 そして子どもたちの集団というのが、一番気になった。

 もしかしたら姉さんが飼っていたあのアバズレは、そこに拾われているかもしれない。

 

「資料を寄越しなさい。どうせろくに調べてないんでしょうけど」

 

「ええ、まぁ……関わるべきでないと思ったので……。

 構成員の顔も分かっていませんよ」

 

「ホンットに使えないわね」

 

 データ化された資料を受け取り、席を立つ。

 気づくと、焚き火の中の悲鳴は聞こえなくなっていた。

 

「そこで燃えてたの……そういや誰だったの?」

 

「あぁ、アレは威月(いつき)さんのお父さんですよ」

 

「威月……アンタがストーカーしてた女か。それの父親をぶっ殺したわけね」

 

「えぇ、私(あたし)と彼女との仲を認めてくださらなかったので」

 

「ハッ!アンタは暇でいいわねぇ」

 

 鼻で嗤ってやって、踵を返す。

 このまま帰ろう、と思ったところで、私はひとつアドバイスをしてやることにした。

 

「そこの焼死体の頭をかち割って、脳みそに箸をぶっ刺してやりなさい。

 それを娘のとこに送り返してやったら、いい悲鳴が聞けると思うわ」

 

「ヒョヒョヒョ!流石は最逝のお嬢。酷いことを考えられる」

 

 男は上機嫌そうに刃物を容易し始める。

 本当に、暇で羨ましい。

 

 私は心底呆れながら、この場を後にする。

 心の中で、確かな高揚を覚えながら…………。

 

 

 

 

 

 

 

 遊戯王Cruel

 

 『廻理とベニア編』

 

 

 ――――開幕

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 仕事帰りの午後7時。

 やや痛む身体を伸ばして、『街』の外れを歩く。

 疲れた社会人や、部活終わりの学生とすれ違うが、誰もボクらを見やしなかった。

 

「あ~~~疲れたぁ~~」

 

「お、お疲れ様です……廻理さん」

 

 伸ばした腕を下ろして息を吐く。

 そんなボクの一歩後ろから、ベニアちゃんの声がした。

 

「ちょっと、苦戦してましたね…………今回のターゲット、強かったですか……?」

 

「んー、そこそこ」

 

 なんの気なしに右腕を見る。

 そこには、ざっくりと走る赤い傷跡があった。

 

「今日は怪我して疲れたし、さっさと寝よ」

 

「で、ですね……あたしも、疲れちゃいました……」

 

「あははっ、お疲れ様。よく頑張ったね」

 

「い、いえいえ!あたしなんて全然……」

 

 なんて話しながら道を歩く。

 そうしていると、ふとベニアちゃんが足を止めた。

 

「ありゃ?どうかしたかな?」

 

「あっ、いえ、その……ラーメン屋さんがあるなぁ、って……」

 

 ベニアちゃんの視線を追ってみれば、確かにそこにはラーメン店がある。

 こじんまりとしていて、少し寂れた雰囲気の店だ。

 人気店というよりかは、地元の一部のお客さんに親しまれている感じのお店かな。

 

「か、廻理さんって、ラーメン食べたことありますか?」

 

「子どもの頃にカップ麺を食べたことはあるけど、お店のは食べたことがないなぁ」

 

 7歳くらいの頃はカップ麺ばっか食べてたなぁ。

 母さんは料理とか作ってくれなかったけど、インスタント食品を買い溜めるくらいはしてくれてたし。

 

「ベニアちゃんは食べたことある?」

 

「あ、あたしは、1回もないです……!」

 

「ふーん……食べたい?」

 

「い、いいんですか!?」

 

 そんな食べたそうな顔をされるとことわれないなぁ。

 こういうのにはどうにも弱くていけない。

 

「いいよ。先輩らしく奢ったげる」

 

「さ、流石廻理さん!あたし、廻理さんの後輩で良かったです!」

 

「あははっ、それは良かったよ」

 

 笑いながらポケットの中を漁る。

 所持金は1200円か。

 確かボクの食べてたカップ麺が98円だったかな。

 となると人件費やら手間賃やらを加味して……ラーメン1杯200円くらいかな?

 うん、それくらいなら余裕だね。

 

「それじゃ、仕事帰りの初ラーメンと行こうか」

 

「は、はい!行きましょう!」

 

 そうしてボクは、ニコニコ笑顔のベニアちゃんを連れて、ラーメン店の扉を開けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ガラっ、と扉を開ければ、寂れた店内がボクらを出迎える。

 お客さんは0人。流れる有線放送がむしろ虚しい。

 

「ぁ…………い、いらっしゃいやせーっ!!」

 

 奥の方から快活な、けれど震えた声が響く。

 そちらを見れば、エプロン姿のこれまた快活そうな少女の姿があった。

 

 17歳くらいだろうか?

 頭に巻いた白タオルからはみ出す金の髪と、大きな茶の瞳が特徴的な少女だ。

 ついでに言えば胸元も特徴的だ。随分ご立派な胸をしていらっしゃる。

 

「2名様ですか?ご案内しますねー!」

 

 元気いっぱいに、少女はボクらを空いていたカウンター席に案内してくれる。

 けれど……彼女の足取りが僅かにふらついていたのが、嫌に気になった。

 

「す、空いてて良かったですね……」

 

「だねぇ。混んでて食べられないとかだったらどうしようかと思ったよ」

 

 言いながらメニュー表を手に取り、ベニアちゃんの前に置く。

 どれも美味しそうだ。メニューを見ているだけでお腹が空いてくる。

 

「な、なに頼んでも、いいんですか……?」

 

「いいよ、好きなのを好きなだけ食べなよ」

 

「あ、ありがとうございます!じゃあ、えっと……す、すいませーん!」

 

 ベニアちゃんがメニュー表から顔を上げ、大きな声で店員を呼ぶ。

 するとすぐに、少女は伝票とペンを持って、こちらにやって来た。

 

「はぁーい!ご注文お伺いしますねっ!」

 

「え、えと、この、チャーシュー麺を1つと、チャーハンを1つ、お願いします……!」

 

「はい、かしこまりしたっ!そちらのお客様は、いかがなさいますか?」

 

 ふむ、ボクはどうしようか。

 メニュー表を覗いて考えてみる。

 

 ちなみにベニアちゃんが頼んだチャーシュー麺は900円。

 チャーハンは250円、合計1150円だった。

 

「あっ、ボクはお冷で」

 

 ラーメンって高いんだなぁ。

 ボクは少しだけ賢くなった。

 

 さて、店員の少女は注文を聞き終えると、小走りで厨房に消えていく。

 その足取りは、相変わらず怪しかった。

 

「あの店員さん……大丈夫ですかね……なんか、ふらふらしてますけど……」

 

 どうやら、ベニアちゃんも違和感に気づいたらしい。

 彼女の紅い瞳は、どこか不安そうな色をしていた。

 

「なんかあったのかなぁ……?」

 

 軽く店内を見渡す。

 この店には、人がいない。

 お客さんもいなければ、あの少女以外の従業員もいない。

 その上、内装は嫌にボロっちい。

 

「見た感じ、経年劣化のボロさじゃないね。これは最近ついた傷じゃないかな」

 

 そっとテーブルを撫でる。

 つぅと木の板に指を這わせれば、やがて指先が小さなクレーターに触れた。

 

「……テーブルは、ヒビが入ってますし……窓も割れてますね。

 床や壁にも、なんか傷がありますし……」

 

「ちょっと怖いね」

 

 メニュー表を片付け、頬杖をつく。

 隣のベニアちゃんは、警戒からか背筋をピンと伸ばした。

 

「あっ……も、もしかして、お客さんを食べてたりとか!?

 あたし、昔そんな小説を呼んだこと、あります……!」

 

「うーん……この『街』は治安が悪いしなぁ。ないとは言い切れないねぇ」

 

「いや、ないですよっ!?」

 

 横から声がして、咄嗟にボクはベニアちゃんと一緒に飛び退く。

 反射的にデュエルディスクを構えて……下げる。

 そこにいたのは、できたてのチャーハンを持った少女だった。

 

「うちは普通のラーメン屋ですっ!そんなヤバいお店じゃないですよ!」

 

 少女はぷりぷりと起こりながら、コトリとチャーハンを置く。

 

「お待たせしました!チャーハン1丁!

 食べてもらえれば、うちがちゃんとやってることは分かるはずですっ!」

 

「は、はい……す、すいません……」

 

「いやぁ疑って悪いね……」

 

 申し訳ない気持ちになりつつ、ベニアちゃんと共に席に座り直す。

 まぁ冷静に考えれば、いくらこの『街』の治安が悪いからってここが殺人ラーメン店だなんて考えるほうがおかしいか。

 ちょっと経営難なラーメン店ってほうが余程納得できる。

 出されたチャーハンも香ばしい匂いがしてとても美味しそうだし、変に疑うほうが悪いだろう。

 

「どうぞ、冷めないうちに召し上がりくださいっ!」

 

 傍に立った少女が、にっこりと笑う。

 それにつられてか、ベニアちゃんはレンゲを手に取った。

 

「じゃあ…………いただきます」

 

 レンゲでうっすら茶色に色づいた米粒を掬い、そっと口元へ運んでいく。

 ベニアちゃんがそれを口にする――――

 

 ――――その瞬間、入り口から破壊音が鳴った。

 

「っ!?」

 

「なにさなにさどうしたのさ?」

 

 明らかな異常事態。その原因を確かめようと入り口の方を見る。

 するとそこには、黒い革ジャンを着たいかにもな風貌の男が3人いた。

 鉄パイプを持った、悪人面でガラの悪い男たちだ。

 

「こんばんはぁ~威月(いつき)ちゃんいる~?」

 

 男たちはにやにやして、無遠慮に店内へ入ってくる。

 それを見て、少女はびくんと震えだす。

 

「なにしに、来たの……っ!」

 

「なにしにって、威月ちゃんが一番分かってるよね?

 意地張ってないでそろそろウチに来て欲しいんだわ」

 

 威月と呼ばれた少女が、一歩後ずさる。

 対する男たちは、そんな彼女へと足を進めていく。

 

「おぉう、こいつはエライことになっちゃったね」

 

「ですね」

 

 この輩たちを放っておくと、まぁ不味いことになりそうだ。

 席から立ち、男たちと少女の間に入り込む。

 

「あぁ?なんだテメェら」

 

「ただのお客さんだよ。食事中だから、静かにしといてほしいんだけど」

 

「はぁ?調子乗ってんじゃねぇぞテメェ」

 

「怪我したくなけりゃとっと失せろ」

 

 男のひとりが鉄パイプの先を向けてくる。

 

「お前らには分からないかもしれねぇけど、俺らはいわゆる半グレデュエル集団の一員なんだわ。

 分かるか?悪いこと色々やってるし、何人か殺したこともあるんだぜ?」

 

「死にたくなけりゃヒーローごっこはよそでやるんだな」

 

 笑いながら男たちが脅しつけてくる。

 なんとも安い脅しだ。なら、こちらの返答は決まっている。

 

「ヤダよバーカ」

 

「だったら死ねオラァッ!!」

 

 男どもの判断は、殊の外早かった。

 ボクが退かないとみるや、即座に凶器を振り抜いてくる。

 

 直撃したら頭が割れるな。

 でも、これくらいならどうとでもなる。

 デュエルディスクを盾にして、鉄パイプを防ぐ。

 

「ベニアちゃん!」

 

「了解です!」

 

 合図を出せば、ベニアちゃんが即座に椅子を持ち上げ、男の頭をぶん殴った。

 鈍い音がして、思いっきり殴られた男は呆気なく床に倒れる。

 

「ナイスだよ!押さえとくから追撃して!」

 

「任せてください!顔面めちゃくちゃにしてやります!」

 

「ぎゃっ!?ぐえっ!?やめっ、やめろっ!?やめろぉぉ!!」

 

 椅子が持ち上げられ、振り下ろされる。

 その繰り返しに、ガラの悪い男はついに泣き出してしまった。

 

「加減はしてあげなよ!惨たらしく殺すほどじゃないからね!」

 

「分かってます!二度と大通りを歩けない顔にしてやるだけです!」

 

「クソっ!コイツらいかれてやがる!!」

 

 残った2人が、ボコボコにされている男を救助し距離を取る。

 惜しい。この調子で全員気絶さえようと思っていたのに。

 

「事後確認になっちゃったけど、アイツらってぶん殴って良かった?」

 

「っ……」

 

 振り返り、店員の少女に聞いてみる。

 しかし彼女は混乱しているのか、自らの身体を抱いて震えるばかりだった。

 

「テメェらぁ、よくもやってくれたなぁ……!

 俺たちはそこのクソメスに用があるってのによぉ……!」

 

「それは合法的な用事かい?」

 

「ハッ!そいつは兄貴のお気に入りでなぁ」

 

「俺たちの兄貴が欲しがってんだ。黙って兄貴のオンナになってりゃいいんだよ」

 

「へぇ。どう思う、ベニアちゃん?」

 

「ろくでもないことになるかと。

 …………あたしの、経験からの予想ですが」

 

「これ以上なく信頼できる意見だね」

 

 なんにせよ、いきなり店の扉を破壊して、人に暴力を振るうような人間がマトモとは思えない。

 こいつらが半グレ――裏の世界に親しい人間だというのならなおさらだ。

 

「放っとくわけにはいかないね」

 

「はい、ぶちのめして、追い出してやりましょう」

 

 ベニアちゃんと並んで、デュエルディスクを構える。

 そんなボクらを、男たちは鼻で笑う。

 

「俺たちとデュエルだと?笑わせるぜ!」

 

「裏の人間舐めんじゃねぇ!いいか、俺たちはサイコデュエリストだ!

 俺たちとのデュエルではカードが実体化し、ライフへのダメージはそのまま肉体へのダメージになるんだぜ!」

 

「いいね、サイコデュエル。親しみ深いデュエルだよ」

 

 生憎とボクもベニアちゃんもサイコデュエリストだ。

 この手の殺し合いには慣れている。

 

「……どうやら、バカには理解できないみてぇだなぁ……!」

 

「俺のデュエルで目にもの見せてやるよ、クソガキども!」

 

 余裕なボクらの態度が気に食わないのか、ガラの悪い男2人がディスクを構え、怒号を発する。

 ひとり気絶しているから、2対2。タッグデュエルか、丁度いいね。

 

「生まれてきたことを後悔させてやる!」

 

「覚悟しやがれゴミ野郎!」

 

「行こうか、ベニアちゃん。準備はいいかい?」

 

「はい!いつでも殺れます!」

 

 

 

 

「「「「――――――決闘(デュエル)!!」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて。デュエルディスクを見て、順番を確認する。

 えーと、ベニアちゃん→男A→ボク→男Bの順番か。

 

「では、いきます…………あたしのターン!

 まずは魔法カード【サイバネット・マイニング】を発動です!

 手札を1枚捨て、デッキからレベル4以下のサイバース族を手札に加えます!

 そのまま手札に加えた【ROMクラウディア】を通常召喚です!」

 

 ROMクラウディア

 レベル4/ATK1800

 

「【ROMクラウディア】は召喚された時、墓地のサイバース族を手札に呼び戻します!

 あたしはさっき捨てた【レイテンシ】を手札に加え、その効果を発動!

 このカードが効果で墓地から手札に加わった場合、このカードを特殊召喚します!」

 

 レイテンシ

 レベル1/DEF0

 

「通常魔法【カード・アドバンス】を発動です!

 デッキトップ5枚を操作し、アドバンス召喚の権利を追加で獲得します!

 続けて【ROMクラウディア】をリンクマーカーにセット!

 【レイテンシ】もリンクマーカーにセット!

 召喚条件はどちらもレベル4以下のサイバース族モンスター1体!」

 

 ベニアちゃんの頭上に、藍色の門が2つ。

 それぞれに電子世界のモンスターが飛び込めば、門に赤い光が点灯する。

 

「来て、信奉者たち!リンク召喚!【リンク・ディヴォーティー】!【リンク・ディサイプル】!」

 

 リンク・ディサイプル

 リンク1/リンクマーカー:下 ATK500

 

 リンク・ディヴォーティー

 リンク1/リンクマーカー:上 ATK500

 

 現れるのは、電子の信奉者と門弟。

 2体のサイバースは跳ねるように、ベニアちゃんの周りを舞う。

 

「リンク素材にされた【レイテンシ】の効果発動。デッキから1枚ドローします!

 さらに永続魔法【冥界の宝札】を2枚発動です!」

 

 仕込みを終わらせ、ベニアちゃんが周囲を一瞥する。

 彼女の目に映るのは、ガラの悪い男たちと、傷の入った店の内装。

 

「…………ここは、ちょっと狭いですね。外に行きましょうか」

 

 ゆったりとカードがデュエルディスクに置かれる。

 瞬間、2体のサイバースの姿が解ける。

 

「【リンク・ディヴォーティー】と【リンク・ディサイプル】をリリース。

 アドバンス召喚。来て、【龍大神】!」

 

 白い靄(もや)が店内を満たす。

 澄んでいて、そしてどこか神秘的な靄が。

 

「なんだこの白いの…………がぁっ!?」

 

 白い靄に包まれた男たちが奇声を上げ、店の外に吹っ飛ばされる。

 靄は、仮のカタチ。白い靄は確かな力を持って外へ流れ出し、やがて実体を結ぶ。

 

 男たちに続いて外へ出てみれば、そこにいるのは狼に似た姿の神霊。

 うっすらと光る霊が、夜の中に佇み、男たちを見下ろしていた。

 

 龍大神

 レベル8/ATK2900

 

「いきなり攻撃力2900の大型モンスターだと……!

 テメェみてぇな脳みその足りなさそうなガキが、どうして……」

 

「流石にそれは舐めすぎですね。これくらい誰だってできますし、できなきゃこの世界で生きてけませんよ」

 

「クソ生意気な……!だが、これでテメェの手札は尽きた!もうテメェは何もできねぇ!」

 

「生憎ですが、【冥界の宝札】の効果を発動です。モンスター2体以上をリリースしたアドバンス召喚に成功した場合、デッキから2枚ドローします。

 このカードは2枚発動しているので、倍の4枚ドローです」

 

「なっ!?だ、だがいいカードが引けなきゃ意味がねぇ!」

 

「お忘れですか?あたしは【カード・アドバンス】でデッキトップ5枚を見ています。

 いいカードがあるのは確認済みです。

 さらにリリースされた【リンク・ディヴォーティー】の効果発動。

 相互リンク状態のこのカードがリリースされた場合、自分フィールドに【リンクトークン】2体を特殊召喚します」

 

 リンクトークン

 レベル1/DEF0

 

 リンクトークン

 レベル1/DEF0

 

「魔法カード【二重召喚(デュアルサモン)】を発動。あたしはこのターン、もう1度だけ通常召喚を行えるようになります」

 

「リリースできるモンスターが2体に、通常召喚権の追加……!?

 ま、まさか……まだなんか出す気か!?」

 

「当然です!【リンクトークン】2体をリリース!

 アドバンス召喚!来て、【クラッキング・ドラゴン】!」

 

 夜から浮上するように、漆黒の機竜が現れる。

 機竜……クラッキング・ドラゴンは緑の電子光を淡く光らせ、敵対者を睨みつけた。

 

 クラッキング・ドラゴン

 レベル8/ATK3000

 

「アドバンス召喚に成功したことで4枚ドロー!

 さらに手札の【ダークネス・シムルグ】の効果発動!

 闇属性のアドバンス召喚に成功した場合、このカードを特殊召喚します!」

 

 黒い機竜に続くように舞い降りるは、黒い神鳥。

 禍々しいほどの黒の翼を羽ばたかせ、巨鳥はベニアちゃんの傍に降り立つ。

 

 ダークネス・シムルグ

 レベル8/ATK2900

 

「これでお終い……カードを2枚伏せて、ターンエンドです!」

 

 

 ベニア

 LP:4000

 手札:3枚

 場:龍大神

   クラッキング・ドラゴン

   ダークネス・シムルグ

 伏せ:2枚

 魔法・罠:冥界の宝札

      冥界の宝札

 

 

 彼女の場に並ぶのは、狼の神霊、電子の機竜、黒い神鳥……いやはや、壮観だ。

 大型モンスターがこうも並ぶと、圧がまぁ凄い。

 

 あまりにも暴力的で、大雑把。

 小細工抜きの単純な力の壁。

 高攻撃力の物量戦術。

 

 木っ端なデュエリストなら、ぶち当たるだけぶち当たって砕け散るだけだが……はたして。

 

「く、クソ……なんでサイバース族のデッキでこんな事になってんだよ……!」

 

「日和んな!どうせ攻撃力が高ぇだけだ!

 突破できねぇとこのまま負けるぞ!」

 

「そ、そうだよな……!俺なら……俺ならいける!

 うおおおおおおお!俺のターン!ドロー!」

 

 仲間の鼓舞でどうにか持ち直したのか、はたまたから元気か。

 ガラの悪い男は勢いよくカードを引き、ターンを始める。

 

「フィールド魔法【鋼鉄の襲撃者(ヘビーメタル・レイダース)】を発動!

 さらに【BM―4ボムスパイダー】を召喚だぁ!」

 

 BM―4ボムスパイダー

 レベル4/ATK1400

 

 召喚されたのは、ランチャーを背負った蜘蛛型の機械。

 蜘蛛機械は勇むようにアスファルトを踏みしめ、ベニアちゃんに標準を合わせる。

 

「よぉし!【ボムスパイダー】の効果……」

 

「今、モンスターを1体のみ召喚しましたね?

 【クラッキング・ドラゴン】の効果発動です!」

 

「なにぃ!?」

 

 機械の蜘蛛が動く……よりも早く、機械の竜が駆動する。

 

「相手がモンスター1体のみを召喚、特殊召喚した場合、そのモンスターの攻撃力をターン終了時までそのレベルかける200ダウンさせ、ダウンさせた数値分のダメージを与えます!

 よって【ボムスパイダー】の攻撃力は800ポイントダウンし、貴方に800ダメージです!」

 

「は、はぁ!?ふざけんな!!」

 

 クラッキング・ドラゴンが淡く光はじめ、やがて緑の閃光を迸らせる。

 溢れた緑光は数本の線となり、夜闇を裂いて男たちに降り注いだ。

 

 BM―4ボムスパイダー

 ATK1400→600

 

 ガラの悪い男

 LP:4000→3200

 

「がぁぁぁああぁぁぁぁ!?い、いてぇぇっ!?」

 

「う、腕が!腕がぁ!?焼けやがったぁぁぁぁ!?」

 

 緑の光線に貫かれた男たちが、地面をのたうち回る。

 その身体からは湯気が立ち上っており、肉体のダメージの深さを想像させた。

 

「ち、きしょぉ……!ちくしょうがぁぁ!!うぁあああぁぁあ!!

 【ボムスパイダー】の効果発動ぉ!自分フィールドの機械族・闇属性モンスターと、相手フィールドの表側表示のカード1枚を破壊する!

 【ボムスパイダー】と、そのクソッタレな【クラッキング・ドラゴン】を破壊だぁぁ!!」

 

「させません!カウンター罠(トラップ)【無償交換(リコール)】を発動!

 相手がモンスターの効果を発動した時、その発動を無効にして破壊し、その後相手に1ドローさせます!」

 

「ああぁぁぁあぁああああああああ!!」

 

 ボムスパイダーが自爆覚悟でランチャーを発射する。

 弾頭はクラッキング・ドラゴンに着弾するが……黒い機竜は壊れない。

 壊れたのは、蜘蛛の機械だけだった。

 

「お、おい!しっかりしろ!お前がちゃんとやらねぇと俺まで酷い目に遭うんだぞ!」

 

「分ぁってんだよ黙ってろ!【ボムスパイダー】が破壊されたことで手札の【デスペラード・リボルバー・ドラゴン】の効果が発動ぉ!

 自分フィールドの機械族・闇属性モンスターが効果で破壊された場合、このカードを特殊召喚する!!」

 

 デスペラード・リボルバー・ドラゴン

 レベル8/ATK2800

 

 蜘蛛機械と入れ替わるように、銃で造られた鉛色の竜が現れる。

 竜は銃声のような咆哮を上げる…………が。

 

「今!モンスターを1体だけ特殊召喚しましたね!

 【クラッキング・ドラゴン】の効果発動です!」

 

 ……どうやらこの男は、周囲がよく見えていなかったようだ。

 

「しまっ――――」

 

「【デスペラード・リボルバー・ドラゴン】の攻撃力を1600ポイント下げ、その分のダメージを与えます!食らってください!」

 

 再び、緑の光が走る。

 その光は先程よりも強く、熱く。

 男たちを貫き、焼き焦がした。

 

 デスペラード・リボルバー・ドラゴン

 ATK2800→1200

 

 ガラの悪い男

 LP:3200→1600

 

「ぎゃああああぁああぁぁぁぁああ!?

 なにやってんだぁぁああああぁぁああぁぁ!!」

 

「うるせぇえっ!こんな、こんなはずじゃなかったんだよぉ!!」

 

「ついでに【龍大神】の効果発動です!

 相手がモンスターを特殊召喚した場合、相手のエクストラデッキのカード1枚を墓地へと叩き落とします!」

 

「ッ!?ク、ソ、がぁぁぁあ!!いちいちウゼェんだよクソメスがぁぁ!!

 バトルフェイズ!【デスペラード・リボルバー・ドラゴン】の効果発動ぉぉ!

 コイントスを3回行い、表が出た数までフィールドの表側表示モンスターを破壊するぅ!!」

 

「ギャンブルカードですか……!」

 

 デスペラードの弾倉が周り、銃口がベニアちゃんの場へ向けられる。

 何発当たるかは運任せ。

 自らの運の良さがものを言うが……。

 

「表の数は……2つ!【クラッキング・ドラゴン】と【龍大神】を破壊だぁぁぁぁ!!」

 

 残念ながら、2発命中。

 銃口が火を吹き、黒い機竜と白い神霊が撃ち抜かれる。

 

「くっ……!どうにもツイてないですね……!」

 

「うおぉぉお!【デスペラード】が効果でカードを破壊したことで【鋼鉄の襲撃者】の効果発動!

 手札から機械族・闇属性モンスターを特殊召喚するぅ!!」

 

「それはさせません!【ダークネス・シムルグ】の効果発動です!

 魔法・罠カードの効果が発動した時、自分フィールドの鳥獣族・風属性モンスターをリリースし、その発動を無効にして破壊します!

 あたしは【ダークネス・シムルグ】をリリースし。【鋼鉄の襲撃者】の効果を無効にして破壊します!」

 

「邪魔しやがってぇ!!大人しく死んでろよぉ!!」

 

 男が吠え、苛立ちをぶつけてくる。

 だが、それだけだ。

 【デスペラード】は自身の効果を使ったターンは攻撃できない。

 どれだけ吠えたとしても、あの男にこれ以上はないのだ。

 

「クソっ!メインフェイズ2だ!

 永続魔法【機甲部隊の最前線(マシンナーズ・フロントライン)】を発動!

 カードを2枚伏せてターンエンドぉぉ!!」

 

 

 ガラの悪い男

 LP:1600

 手札:1枚

 場:デスペラード・リボルバー・ドラゴン

 伏せ:2枚

 魔法・罠:機甲部隊の最前線

 

 

 かくして男のターンが終わる。

 終わってみれば、ベニアちゃんの独壇場だったな。

 

「よくやったね、ベニアちゃん」

 

「いえいえ!これくらい余裕ですよ!」

 

「あははっ、余裕かぁ。じゃ、ボクのこれくらいやんなきゃね」

 

 デッキに指をかけ、引く。

 さぁ、死にぞこないにトドメを刺そう。

 

「行くよ、ボクのターン!ドロー!」

 

 さて、相手の場にはバトルフェイズ時にコイントスでモンスターを破壊する【デスペラード・リボルバー・ドラゴン】。

 さらに機械族が戦闘で破壊された時に、そのモンスターより攻撃力の低い機械族をデッキから特殊召喚する【機甲部隊の最前線】。

 手札は【鋼鉄の襲撃者】を使おうとしたことから考えて適当な機械族。加えて謎の伏せカードが2枚か。

 

「どうにでもなるね。フィールド魔法【星遺物に差す影】を発動。

 その効果により、手札の【クローラー・デンドライト】を裏側表示で特殊召喚。

 でもって【太陽の書】を発動。裏側表示の【デンドライト】を表側攻撃表示にするよ」

 

 クローラー・デンドライト

 レベル2/ATK1600

 

「リバースした【デンドライト】の効果発動。デッキからモンスター1体を墓地へ送る。

 ボクは【ゴキポール】を墓地へ送り、その効果を発動。

 デッキの【G戦隊 シャインブラック】を手札に加え、特殊召喚する」

 

 G戦隊 シャインブラック

 レベル4/攻撃力2000

 

「攻撃力2000……!それで俺の【デスペラード】を破壊しようって魂胆か!?」

 

「いやいや、ただ出しただけだよ。

 続けてチューナーモンスター【シャドール・ファルコン】を通常召喚」

 

 シャドール・ファルコン

 レベル2/チューナー/ATK600

 

 現れるは、怪蟲の1匹、害虫のヒーロー、影糸の鳥人形。

 どれもそこまで強そうじゃない、凡百なラインナップだ。

 当然、これでトドメを刺すなんてできっこない。

 だけど、これがトドメを刺すのにどうしようもなく必要なわけで。

 

「悪いけど、こっからは完全塩試合だよ。

 レベル4の【G戦隊 シャインブラック】に、レベル2の【シャドール・ファルコン】をチューニング!」

 

 影の鳥が光の輪となり、シャインブラックがその中へと飛び込む。

 そうすれば、光輪は眩い光となって、害虫のヒーローと共に姿を変える。

 

「シンクロ召喚、レベル6!織り廻れ、【地底のアラクネー】!」

 

 光の中から現れたのは、蜘蛛だった。

 そして、女性だった。

 アラクネーの名に違わぬ、半人半虫。

 それは巨大な蜘蛛に人間の上半身がくっついたような怪物。

 地底のアラクネーは獲物を求め、8つの足と2本の腕を伸ばす。

 

 地底のアラクネー

 レベル6/ATK2400

 

「クソ!気持ち悪ぃカードを使いやがって……!」

 

「女性に滅多なことを言うものじゃないよ。酷いことになるからね。

 というわけで【地底のアラクネー】の効果発動!相手フィールドのモンスターを装備カード扱いで装備する!」

 

「なにぃ!?ということは、まさか――――――」

 

「あははっ!キミの【デスペラード・リボルバー・ドラゴン】を頂戴するよ!」

 

 アラクネーが蜘蛛の糸を広げ、デスペラードを絡め取る。

 哀れな虫が蜘蛛の巣に捕まるように、無慈悲に。

 銃は蜘蛛の元へと引きずり込まれた。

 

「俺のモンスターが……!

 い、いや、だが!まだ俺に伏せカードがある!」

 

「【地底のアラクネー】の効果。このカードが攻撃する場合、相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠カードを発動できない」

 

「は?」

 

「今ならまだ対応できるけど、発動できるものはあるかい?」

 

「ま、待て……やめろ……!俺が負けちまうだろ!?」

 

「あははっ!ないなら死ぬしかないねぇ!」

 

「やめろぉぉぉぉぉぉおおおぉぉぉ!!!」

 

「バトルフェイズ!【地底のアラクネー】でダイレクトアタック!」

 

 蜘蛛が糸を手繰れば、絡め取られた銃竜が動き出す。

 銃という機能を忘れるほどに、グシャグシャに丸められた鉄塊が、糸に吊られて宙を浮く。

 そのまま鉄屑になったデスペラードは振り回され、慣性に従い夜を舞い、三日月に似た起動を描いて…………

 

「ぎゃああぁぁああああぁぁああああああぁああああぁぁぁあああ!?!?」

 

 槌のように、男たちに叩きつけられた。

 

 

 ガラの悪い男

 LP:1600→0

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 電子音が鳴り、デュエル終了を告げる。

 土煙が晴れれば、そこには満身創痍の男たちの姿があった。

 

「ク、ソ…………絶対……絶対に、許さねぇ……!」

 

「兄貴を、呼んできてやる……!覚えて、やがれ……!」

 

 ボロボロになった男たちが、仲間を引きずって逃げていく。

 口だけは元気だが、その足は遅く、背中は惨めなほど小さく見えた。

 

「い、いいんですか……逃しても……」

 

「いいよ。殺すような連中でもないし」

 

 敗走する男たちを見送って、ひとつ伸びをする。

 あー、疲れた。肩が凝っちゃうよ。

 

「――――――――あのっ!」

 

 身体を解していると、背後から声をかけられる。

 振り返ってみれば、そこにはあの少女がいた。

 

「助けてくれてありがとうございますっ!

 私、怖くて……本当に、助かりました!」

 

 少女……たしか、威月と呼ばれていたか。

 威月ちゃんは目に涙を溜めて、深く頭を下げた。

 

「あははっ。ボクはただ適当にデュエルしてあげただけだよ」

 

「はい!チャーハンの邪魔だったので!」

 

 そう返すと、威月ちゃんは頭を上げて、明るく笑う。

 けれど、満面の笑みではない。

 彼女の笑顔は、まだ不安で陰っていた。

 

「ま、アイツらお礼参りに来るって言ってたし、まだ終わりじゃないだろうね」

 

「ですね……兄貴とかいうヤツも、引きずり出せてませんし……」

 

 ベニアちゃんを見ると、彼女も不安そうな顔をしていた。

 その視線の先には、明るく笑う少女の姿。

 どうやら、威月ちゃんが心配なのは、彼女も同じのようだ。

 

「悪いけど、色々聞かせてもらってもいいかな?

 キミの事情を知らなきゃ、いい感じの対応ができないからさ」

 

「へっ?も、もしかして……助けて、くれるんですかっ!?」

 

 威月ちゃんが茶色の瞳を見開く。

 そんな彼女に、ボクは微笑みかける。

 

「そりゃ放っておいたら絶対ヤバいし。できることをやらせてもらうよ」

 

「はい!絶対ヤバいですからね!」

 

 ベニアちゃんもやる気充分。

 仕事じゃないけど、ちょっとくらいはいいだろう。

 人助けって、素敵なことだしね。

 

「~~~っ!ありがとうございますっ!本当に、本当っ!」

 

「えへへ、全然大丈夫ですよ!ねっ、廻理さん!」

 

「そうだねぇ。じゃあまぁとりあえず…………」

 

 目線を威月ちゃんから、お店のほうに動かす。

 

「割れたガラスの片付けからやろうかな」

 

 そうしてボクらは、ひとまずお店の掃除をするのだった。

 

 

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