遊戯王Cruel 猟奇的殺人デュエルと少年少女の破綻 作:胡麻野すり子
後編になります!
「さぁてと、どの盤面から崩すかな………」
改めて、展開されているフィールドを確認する。
現在の状況は、と…………
汚らしい男A
LP:4000
場:ギガプラント
手札:2
伏せ:0
汚らしい男B
LP:4000
場:ギガプラント
妖精弓士イングナル
妖精王オベロン
手札:3
伏せ:0
汚らしい男C
LP:4000
場:ギガプラント
ヘル・ブランブル
手札:1
伏せ:0
うーん………召喚にライフコストを要求する【ヘル・ブランブル】が一番邪魔だな。
その次くらいに、攻守を上昇させる【妖精王オベロン】が厄介か。
じゃあ、この2体を処理するところから始めようかな。
「あははっ!それじゃまずは、邪魔な植物たちを黙らせよっか!
手札から速攻魔法【皆既月蝕の書】を発動!
手札を1枚捨てて、フィールドのモンスター2体を裏側守備表示に変更する!
【ヘル・ブランブル】と【オベロン】には眠ってもらおうねぇ!」
月が欠けるように、2体のモンスターの姿が消えていく。
そして、妖精王が消え去ったことで、場の植物たちに与えられていた力も霧散していった。
ギガプラント
ATK2900→2400
妖精弓士イングナル
ATK2900→2400
「さて、これでライフを気にせず展開できるようになったね。
それでは手始めに、フィールド魔法【星遺物に差す影】を発動!
効果により、手札から【クローラー・グリア】を裏側表示で特殊召喚するよ!」
路地裏の影に、赤い光が点々と灯る。
それは、蠢く怪蟲の眼。
夜の闇のなかに、何体ものクローラーが潜んでいた。
「続けて墓地に仕込んでいた【ADチェンジャー】の効果発動!
このカードを墓地から除外し、フィールドの【グリア】を表側表示に変更するよ!
これによりリバースした【グリア】と、ついでに手札の【星遺物─星鎧】の効果を発動!
モンスターが反転召喚に成功した時、手札から【星鎧】は特殊召喚できる!
そして【グリア】の効果で墓地の【クローラー・デンドライト】を特殊召喚するよ!」
クローラー・グリア
レベル2/ATK700
クローラー・デンドライト
レベル2/ATK1300
星遺物─星鎧
レベル7/ATK2500
【ADチェンジャー】は前のターンの【手札断殺】で。
【デンドライト】はさっきの【皆既月蝕の書】で墓地に仕込んでおいた。
いやはや、備えあれば憂いなしというやつか。
「まだまだ行くよ。特殊召喚した【星鎧】の効果発動。
デッキから【星遺物】カード、【星遺物の醒存】を手札に加えて、そのままセットしようかな」
聖鎧。クローラーの巣。
暗い青色の巨大な鎧から怪蟲が湧き出し、そのうちの一匹がカードを渡してくれる。
「さぁて、飛ばすよ!【クローラー・グリア】と【クローラー・デンドライト】をリンクマーカーにセット!召喚条件はリバースモンスター2体!」
2匹の怪蟲が宙に浮かび、藍色の門のカタチを成す。
門の向こう側からは、唸るような声が響いた。
「いくよ────リンク召喚!おいで、【サブテラーマリスの妖魔】!」
藍色の門から現れるは、地底世界の幻竜。
【サブテラーマリスの妖魔】は、その桃色の髪を揺らして、咆哮を上げた。
サブテラーマリスの妖魔
リンク2/リンクマーカー:左下 右下/ATK2000
「【サブテラーマリスの妖魔】の効果発動。デッキからリバースモンスターを墓地に送り、手札からモンスターをリンク先に裏側守備表示で特殊召喚するよ。
ボクはデッキの【
妖魔が叫び、地を殴りつける。
その衝撃は、デッキに潜む機怪蟲を墓地に叩き落とした。
『グルゥゥゥゥゥ…………アァァアァァァ──ッ!!』
その代わりとでも言うように、【サブテラーマリスの妖魔】が地中から新たなるモンスターを引き上げる。
地下から抜き取った妖魔の手の中には、禍々しい気配をたたえた壺があった。
「魔法カード【太陽の書】を発動!【メタモルポット】をリバースし、【メタモルポット】の効果発動するよ!全てのプレイヤーは手札を墓地に送り、デッキから5枚ドローする!」
妖魔の手にある壺から、嘲笑が響く。
壺の内側の闇から、両目をぎらつかせ、歯を見せて【メタモルポット】は笑っていた。
メタモルポット
レベル2/ATK700
「うん、これでまだ動けるね」
【メタモルポット】の効果で手札を交換し、不敵に笑ってみせる。
悲しいことに、ボクのデッキは火力に乏しい。
ベニアちゃんみたいに大型モンスターをバンバン出せるようなデッキじゃないのだ。
だから、どうしても手札が必要になる。
3人を一気に潰そうとするなら、手数で圧倒するしかない。
「悪いけど、汚いソリティアに付き合ってもらうよ!
【サブテラーマリスの妖魔】のリンク先の【メタモルポット】がリバースしたことで効果が発動!墓地からリバースモンスター、【機怪神エクスクローラー】を手札に加える!」
妖魔が手に持っていた【メタモルポット】を投げ捨てる。
『あぎゃっ!?』
「おっと危ない」
ポイっと投げ捨てられた【メタモルポット】が小さく悲鳴を上げる。
すかさずキャッチしてあげれば、壺の魔物は目を細めて、感謝するように壺の中からカードを吐き出した。
「ありがとね、助かるよ」
そう言うと、【メタモルポット】はケラケラと笑う。
【サブテラーマリスの妖魔】は少し照れくさそうにした後、鼻を鳴らしてそっぽを向いた。
「それじゃ、手札から【
墓地のレベル3以下の昆虫族、【ゴキポール】を特殊召喚するよ!」
B・F─早撃ちのアルバレスト
レベル4/ATK1800
ゴキポール
レベル3/1000
飛来するは、ボウガンのような腹を持つ1匹の蜂。
【アルバレスト】は、墓地に眠っていた【ゴキポール】を連れてフィールドに飛んできた。
「まだまだ!【メタモルポット】と【ゴキポール】をリンクマーカーにセット!
召喚条件は地属性モンスター2体!頼むよ【エクスクローラー・シナプシス】」
腕の中の壺と、支柱の蟲が藍色の門となり、怪蟲を呼び起こす。
現れるは、鋭角的な青い装甲に身を包んだ、這いずる蟲。
エクスクローラー・シナプシス
リンク2/リンクマーカー:左 右/ATK1800
「さて、墓地に送られた【ゴキポール】の効果で2体目の【シャインブラック】をサーチし特殊召喚!そして【ゴキポール】の効果で【妖精弓士イングナル】を破壊するよ!」
G戦隊 シャインブラック
レベル4/ATK2000
爆発と共に、黒光りするスーツに身を包んだ戦士が颯爽と登場する。
そのまま【シャインブラック】が手元のデバイス的な物を弄り、ポーズを決めると……
『ハァァァァァァァァァァッ!!』
【シャインブラック】が天高く飛翔し、勢いをつけて【イングナル】に飛び蹴りをぶち込んだ。
可憐なる弓使いの首はへし折れ、蹴りの衝撃で頭が飛ぶ。
『グッ!』
惨殺された【イングナル】が大爆発を起こし、赤い炎の中で【シャインブラック】がサムズアップする。
「ありがとう。けどさっき見たよ」
【タレイア】を殺したときと同じ演出。
コスト削減のために演出を使いまわしたか。
はたまたコレしか演出がないのか。
ふむ、もう少し彼らに予算を割いてあげるとしよう。
「お、おぉ……おで、おでのモンスターががが……!」
黒光りするヒーローに惨殺された弓使いを見て、汚らしい男の1人が震える。
はて、ここにきてようやく危機感を覚えたのだろうか?
だとしたら、あまりに遅すぎるね。
「次はキミらがこうなる番だ……なんてね。
手札から【B・F─連撃のツインボウ】を特殊召喚。
【ツインボウ】と【シャインブラック】をリンクマーカーにセット。
さあ、地より這い出せ──【エクスクローラー・ニューロゴス】!」
這いずり出るは、四本の指に似た器官を持つ、細長い怪蟲。
クローラーが神経が一つ、【エクスクローラー・ニューロゴス】。
エクスクローラー・ニューロゴス
リンク2/リンクマーカー:左 右/ATK1900
「【ニューロゴス】と【シナプシス】はリンク先にいるクローラーの攻撃力を300ポイント上げる。この2匹は相互リンク状態だから、互いに300ずつアップするよ」
エクスクローラー・ニューロゴス
ATK1900→2200
エクスクローラー・シナプシス
ATK1800→2100
「そんでもって、伏せていた【星遺物の醒存】を発動!
自分のデッキの上からカードを5枚めくり、その中にクローラーか星遺物カードがあった場合、その内の1枚を選んで手札に加え、残りのカードは全て墓地へ送るよ!
ボクは星遺物カード、【星遺物を巡る戦い】を手札に加え、残り4枚を墓地へ送る!」
これで、必要なパーツはすべて揃った。
良かった良かった。ここで引けなかったら、このターンで倒しきれなかったからね。
「長らくお待たせしたね。もう終わるから安心してよ。
墓地の昆虫族モンスター、【デンドライト】と【シャインブラック】を除外して特殊召喚!
おいで、【デビルドーザー】!」
地面を砕き、コンクリートの下から巨大な蟲が這い出してくる。
大きな口に、数多の足。芋虫のように太り、ムカデのように不気味な巨蟲。
デビルドーザー
レベル8/ATK2800
「な、がい…………長い……!」
「長い……!」
「ひとりでデュエルしてる…………!」
「喧しいよ」
文句を垂れる浮浪者たちにぴしゃりと言い捨てる。
はいはいはい。もう終わらせますよ。
「待たせしてごめんねぇ。あと3分くらいで終わりだよ。
あぁ………………キミ達がね?」
口角を上げて、手札から1枚のカードを発動する。
その途端に、四方八方に青白い光のラインが走り、世界は上書きされていく。
「フィールド魔法【
これにより、ボクの場の昆虫族モンスターの攻撃力は300ポイントアップする」
デビルドーザー
ATK2800→3100
エクスクローラー・シナプシス
ATK2100→2400
エクスクローラー・ニューロゴス
ATK2200→2500
B・F─早撃ちのアルバレスト
ATK1800→2100
「じゃ、終わらせるね。
バトルフェイズ、【星鎧】で【ギガプラント】を攻撃」
巨大な鎧の腕が、振り下ろされる。
その先にいたのは、植物の怪物。
鎧は機械のように一切の躊躇いもなく、その体の木々を折り、蔦を握りつぶして、圧殺した。
汚らしい男A
LP4000→3900
「ぐぁ……!?だだだ、だが………1体倒した、だけ……」
「そう、まだ1体だけだね。
続けて【シナプシス】で【ギガプラント】を攻撃」
「ぎぎ【ギガプラント】とぉ……【シナプシス】の攻撃力は、おお、同じぃ………相討ち……」
「相討ちじゃないよ。速攻魔法【星遺物を巡る戦い】を発動。
【星鎧】をリリースし、その攻撃力だけ【ギガプラント】の攻撃力を下げるよ」
「な、なななな、なに……?」
ギガプラント
ATK2400→0
「だ、だだ、だが………ライフは残るぅ……」
「残念!【ニューロゴス】には効果がある!
このカードのリンク先のクローラーが戦闘で与えるダメージは倍になるよ!」
「な、に……!?ぐぁぁあああぁぁあ!?」
厚い装甲に身を包んだ怪蟲が一気に加速し、【ギガプラント】に突撃する。
その勢いは止まることなく、背後にいた浮浪者を巻き込み、木々の怪物を粉々に砕き尽くした。
汚らしい男B
LP4000→0
「そうそう。さっき破壊された【ギガプラント】に寄生していた【パラノイド】の効果発動。
装備カード扱いのこのカードが墓地へ送られた場合、手札からレベル7以上の昆虫族を特殊召喚できる。ボクは手札の【機怪神エクスクローラー】を特殊召喚」
機怪神エクスクローラー
レベル9/ATK2000→2300
世界を覆う青白いラインを上書きするように、赤い線が走る。
その線の中心に在るは、クローラーの中枢神経。
根を張るように神経を伸ばす怪蟲は、爛々と赤い目を蠢かせた。
「次いくよ。【アルバレスト】で裏側表示の【ヘル・ブランブル】を攻撃して破壊だよ。
その瞬間に手札の【B・F─追撃のダート】を墓地へ送り効果を発動。
【B・F】モンスターが戦闘でモンスターを破壊したとき、そのモンスターの攻撃力分のダメージを与える」
「ば、ばば、馬鹿なぁ……!?」
汚らしい男C
LP4000→1500
【アルバレスト】が【ヘル・ブランブル】を撃ち抜けば、それに続いてダーツみたいな蜂が汚い男に突き刺さる。
【追撃のダート】、その名の通りの見事な追撃だった。
「さてと。【デビルドーザー】で最後に残った【ギガプラント】を攻撃。
ほら、好きなだけ食べていいよ」
そう合図を出せば、【デビルドーザー】は待ってましたと言わんばかりに飛び出していく。
向かう先には、緑の生い茂る怪物。
巨蟲は大きな口を開けて、【ギガプラント】を貪り尽くしていった。
「お、おお、おで、おで達の………もも、モンスターがぁ……!?」
汚らしい男C
LP1500→800
「うん。これでキミ達のフィールドはがら空きになっちゃったね、
そしてここで問題です。ボクの場にいる攻撃可能なモンスターの攻撃力の合計は、いくつでしょうか?」
サブテラーマリスの妖魔
ATK2000
エクスクローラー・ニューロゴス
ATK2500
機怪神エクスクローラー
ATK2300
「ごご、合計……6800……」
「対して、キミ達のライフは?」
汚らしい男A
LP3900
汚らしい男C
LP800
「…………合わせ、て……4700……」
「そういうこと。それじゃあ負けようね。
【サブテラーマリスの妖魔】【エクスクローラー・ニューロゴス】【機怪神エクスクローラー】でダイレクトアタック」
妖魔が吠える。
怪蟲が走る。
赤い神経が伸びる。
3体の異形は、哀れな獲物に飛びかかり────
汚らしい男A
LP3900→0
汚らしい男C
LP800→0
────操られている男たちを、沈黙させた。
──────────────────────────────
路地裏に、汚い男たちのこれまた汚い悲鳴が響く。
ボクはそれを無視して、クローラーに指示を飛ばす。
「はーい、腹ん中の【精神寄生体】を引きずり出しましょうねー!」
クローラーの赤黒い触手が、倒れる男の口に突っ込まれ、中に潜んでいる【精神寄生体】を引きずり出す。
デュエルで勝ったはいいが、放置すればコイツらはまた襲いかかってくるだろう。
それに、無関係の人を巻き込むのは、いくらボクでも心が痛むのだ。
そういうわけで、これはアフターケア。
拷問めいたアフターケアだとは思うが、そこは我慢していただこう。
「さて…………ベニアちゃんの方はどうなったかな」
まぁ、大丈夫だとは思うが、ほんの少しくらいは不安もある。
一通り【精神寄生体】を処理してから、彼女の様子を見ると……
「【セグメンタル・ドラゴン】でダイレクトアタックです……!」
「う、うばああぁああああぁぁああああぁあ!!」
閃光が夜を照らし、大きく爆ぜる。
それは丁度、男のライフを0にしたことを表していた。
ふむ。不安に思う必要はなかったようだ。
「お疲れさま。よく頑張ったね」
優しく見える笑顔を浮かべて、ベニアちゃんに労いの言葉をかけてみる。
すると彼女は、ふにゃりと顔を崩した。
「え、えへへ……頑張りました……!」
「うん。偉いよ。とってもさ」
「えへ……えへへへ……」
褒めてみると、彼女は照れくさそうに身をくねらせて、下手くそに笑う。
耳まで真っ赤にして、困ったように笑うしかできないあたり、褒められることに慣れてないんだろうな。
これからたくさん褒めてあげよ
心の中で決心し、ひとつ頷く。
「ぁ、えと……お仕事は、これで終わり……です?」
「ん?あぁ、まだ終わりじゃないね。ちょっと浮浪者とデュエルしただけだよ」
そう、まだ仕事は終わりじゃない。
一応、被害者をレイプしていた男たちを倒しはした。
しかし、彼らが標的である『殺人犯』かと言われると、それは違うだろう。
「レイプしていたのが彼らだとして、それじゃあ何故、彼らは操られていたんだろうね?」
「……その、操っている誰かが……『殺人犯』、ですか?」
「そういうことになるね」
この場合、浮浪者たちは凶器だ。
少女を壊し、殺す凶器。
ならば、それらを振るう者にこそ罪がある。
「はてさて、ターゲットをどうやって見つけるか…………」
まぁ、現場検証していけば証拠の1つでも見つかるかなぁ。
なんて考えながら伸びをして……固まる。
「…………?廻理さん…?」
固まったボクを見て、ベニアちゃんが不安そうに声をかけてくる。
それに対して、ボクは路地裏の一角を指差してみせた。
「……あそこ、誰かいるね」
「えっ?……あっ!?ホントです!」
指を差した方向には、黒いフードを被った小柄な人物がいた。
体格からして女性……それも17歳くらいか?
そんな黒フードの人物が、ボクらを路地の影からじっと観察している。
「っ……!」
「あぁ!?逃げちゃいました!?」
見つかったことに気づいたのか、黒フードは暗い路地の中に消える。
とはいえ、こっちも逃がすわけにはいかない。
「追うよベニアちゃん!アイツは重要参考人だ!」
「は、はい!」
逃げる黒フードを追い、夜の道を駆け抜ける。
幸い、黒いフードの人物は足が遅く、このまま走れば十分に追いつけそうだ。
「ぜぇ……ぜぇ……!き、きつい……!」
……ベニアちゃんには、しんどそうだけど。
「頑張ってベニアちゃん!もうちょっとで追いつけそうだから!」
「は……はい、ぃ……!」
などとベニアちゃんを応援していると、道の先から悲鳴が聞こえた。
少女特有の、甲高い悲鳴。
続いて、「助けて」といった叫び声が響く。
「「……………………」」
ボクとベニアちゃんは顔を見合わせて、それから叫び声のした方へ走り出す。
その方向は、あの黒フードが逃げたのと同じ方向だった。
「チッ!またレイプかな!?」
舌打ちをして、曲がり角の先へ進む。
暗がりの中からは、ずっと悲鳴が上げられている。
目を凝らしてみれば、そこには制服姿の少女と、汚い格好の浮浪者がいた。
少女は壁際に追い詰められていて、彼女は浮浪者に捕まりそうになっている。
丁度、襲われる直前といった光景だった。
「あぁぁ──!また襲われそうになってますぅ──!!」
隣にいたベニアちゃんが声を上げる。
それに気づいたのか、襲われそうになっている少女もまた悲鳴を上げた。
「た、助けないとヤバくないですか……!?」
「んー……ちょっと待って」
ワタワタと慌てているベニアちゃんに対して、あくまで冷静に。
距離を保ったまま、少女と浮浪者を眺める。
「なんかさぁ、もっと勢いがあるんだと思ってたんだけど。レイプってさ。
女見つけたらすぐに飛びかかって、覆いかぶさったり、服剥ぎ取ったりとかさ」
ボクらは何もせず、ただじぃっと見ているだけ。
少女を襲うなら絶好のタイミングのはずだが……男はただ、その場で呻くだけだった。
「あぁ、服は脱いだのかな?
───黒いフードを、1枚だけ」
その言葉に、助けを叫んでいた少女が沈黙した。
やっぱりか。
ため息をついて、更に言葉を紡ぐ。
「騙すつもりなら徹底的にやりなよ?ねぇ、『殺人犯』」
にっこり笑ってやる。
すると壁際の少女──殺人犯はキッと睨んできた。
「…………サイテー」
「女の子を何人も輪姦させて殺してるキミより上等さ」
「……死ね」
完全に取り繕うのをやめたのか、その女は不機嫌さを全面に出す。
そして八つ当たりみたいに男の腹を蹴り飛ばし、唾を吐き捨てた。
「え?えぇ!?もしかして……あの女の人がターゲットの……!?」
「そうなるね。いやはや、強姦魔みたいだったから男性かと思ってたけど、まさか女の子だったとはなぁ」
まぁ、犯人が男なら、わざわざ浮浪者を操って少女をマワす必要もない。
自分でレイプすればいいだけのことなのだから。
一応、輪姦趣味の変態の可能性も考えていたが、なんてことはない。
犯人は女性だった。だからレイプするために男の体が必要だった。
それだけの話だ。
もっとも、この女が異常性癖の持ち主であることには変わりないが。
「よくやるよ。キミってアレ?レズってやつ?」
「……はぁ。ふざけたこと言わないで。
私はそういうのじゃない。
言うなれば……蹂躙者よ」
殺人犯の少女は口元に両手の指を当てる。
指の奥の口は、三日月みたいに大きく、嗤っていた。
「調子に乗ってるメスをぐちゃぐちゃに汚して、壊して…!
内側も外側も汚ねぇ男の精液で穢し、尊厳を破壊して蹂躙し尽くす…!
それが、最高に興奮して……最高にスカッとするの…!」
恍惚とした表情で、殺人犯はいけしゃあしゃあと、そんなことを言い捨てる。
倫理だとか、良心の呵責なんて一切ない。
ただひたすらに、女を蹂躙することに悦びを見出しているようだった。
「あはは。頭イッてんね。
どう思う?ベニアちゃん」
「ぶっ殺すべきだと……思います」
「同感」
怒ったようなベニアちゃんと共に、デュエルディスクを構える。
こんなクズは生きてちゃいけない。
早急に、ぶち殺すべきだ。
「……私、戦う気とかないんですけど」
殺人犯の少女が、2枚のカードをディスクにセットする。
すると路地裏に、緑の怪物が2体、出現した。
「……後片付け、よろしく。【ギガプラント】」
そう言い残して、殺人犯は路地の向こうへと逃げていく。
追いかけようとすれば、ボク達を阻むように【ギガプラント】達が蔦を伸ばしてくる。
「邪魔を……してきますか……!」
「やれやれ、って感じだねぇ」
これは追いつけないな。
仕方がない、諦めて植物を潰すとしよう。
「おかわりだよ、【デビルドーザー】」
「焼き尽くして、【ジュラック・タイタン】…!」
巨大な蟲と、燃え盛る恐竜。
召喚された2体が吠え、植物に食らいつく。
その光景を眺めながら、あの殺人犯をどう殺すかを、ボクらは考えていた。
読んでいただき、ありがとうございます!
次のお話は、なるべく早く投稿したいと思います…!
次回も、よろしくお願いします!