※この作品はR-18です。

遊戯王Cruel 猟奇的殺人デュエルと少年少女の破綻   作:胡麻野すり子

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お待たせ致しました。
今回も読んでくださり、ありがとうございます。
楽しんで貰えましたら、嬉しいです!




第6話 給料200円の仇討ち

 あの殺人少女を逃してから十数分。

 とりあえず【ギガプラント】を始末したボクとベニアちゃんは、路地裏の開けた場所にいた。

 

 改めて周囲を見渡せば、そこには倒れた浮浪者たち。

 そして、凄惨に犯された少女の姿があった。

 

「……あの、廻理さん。追いかけなくっていいんですか…?」

 

 おずおずといった様子で、ベニアちゃんが聞いてくる。

 ふむ、至極まっとうな質問だ。

 現状、ボク達は標的を見失っている。

 本来なら、あの殺人犯を追いかけるべきなのだろう。

 

「うん、追いかけなくっていいよ。

 今、ボクのモンスターに探させてる。

 しばらくしたら見つけてくれるよ」

 

「そ、そうなんですね……!」

 

 納得したように、ベニアちゃんが返事をする。

 それを見てから、ボクはデュエルディスクを操作して電話をかけた。

 

 別になんてことはない、セキュリティに通報しただけだ。

 電話は嫌いだからかけたくなかったが、流石にこの現場を放置するわけにはいかないし。

 

「電話…………セキュリティ、ですか…?」

 

「ん、そうだね。事後処理はあっちに押し付けたほうがすんなり行くだろうしさ」

 

 こういうゴタゴタの始末は、セキュリティ──この街の治安維持組織に任せたほうがいい。

 セキュリティは公的機関であり、正義と秩序を守ってくれている組織だ。

 少なくとも、ボクらが勝手なことをするよりも、この現場を上手く収めてくれるだろう。

 

「そ、そうですか…………」

 

 それだけ言って、ベニアちゃんは目線を宙に漂わせる。

 どこかソワソワしていて、落ち着いていない様子だ。

 

「どうかしたの?なんか、不安なこととかある感じ?」

 

「…いえ………その……なんか、モヤモヤしちゃって……

 あの、あたしも……ひどい目に、あってきましたから……」

 

 あぁ、なるほど。ベニアちゃんは、ちょっと重ねちゃってるのかな。

 被害に遭った少女と、違法組織に虐げられていた自分を。

 

「その……セキュリティが来たら……あの殺人犯(クソアマ)は、逮捕されるんですか?」

 

「いいや?セキュリティじゃ、アレは捕まえられないよ」

 

 まぁ、証拠もなにもないし。

 あの女が何人もの少女を毒牙にかけたのは確かだが、直接やってるわけじゃない。

 あくまで、浮浪者たちを操り、犯させ、殺してるだけだ。

 

 サイコデュエリストの犯罪を立証するのは難しい。

 だからこの事件も、迷宮入りになってしまう可能性が高い。

 

「そうですか………………よかった、です」

 

 逮捕できないという事実を聞いて、ベニアちゃんが胸を撫で下ろす。

 

「あっ、い、いえ……喜んでたわけじゃないんです……そんな、不謹慎な……」

 

「あははっ。いいよ、喜んで。

 だって、自分の手でぶっ殺してやりたいもんね?」

 

「……え…えへへ………すいません……」

 

 照れくさそうに頭を掻いて、ベニアちゃんは下手くそにはにかむ。

 

「レイプって、めっちゃ痛くて、辛いんです……

 だから、やっぱり……生まれてきたことを後悔させてやらないと、って……」

 

 時々どもりつつも、彼女はろくろを回して熱弁する。

 

「こう……酷く殺したいですけど……どうしましょう……

 えと、お腹掻っ捌いて、腸を1センチずつチョキチョキするとか……

 うぅ……廻理さんなら、どうしますか……?」

 

「胎(ナカ)に虫を数十匹入れて、身体のなかで蠱毒するかな」

 

「な、なるほど……!さすがです……!」

 

 うん、薄々感じてはいたけど、この子だいぶヤベーな。

 

(これほどの逸材が、何故チンケなギャングの奴隷になっていたんだ……)

 

 世界には存外、原石が転がってるものなんだなぁ。

 しみじみとボクはそんなことを思った。

 

「まぁ、いいや。それくらい元気なほうが長生きできるよ……っと」

 

 ぐっ、と伸びをして、コンクリートに倒れている少女を見る。

 そこには変わらず、裸に剥かれ、無残に犯された女の子がいた。

 

「ホント、惨いったらないよ。

 こりゃやっぱ、ぶっ殺さないといけないなぁ」

 

 改めて見た少女の姿は、悲惨としか言えなかった。

 綺麗な茶色の髪は粘液でべっとりと汚れ、その瞳は虚ろでどこも見ていない。

 元は、可憐で、元気な女の子だったんだと思う。

 でも、今は……絶望しか、彼女にはない。

 

 はたして、この子はどれだけ、悔しくて辛い思いをしたことだろうか。

 いや、この子だけじゃない。

 殺人犯(あの女)は、既に7人もの少女を壊している。

 尊厳さえ犯されて、命さえ奪われて。

 その無念は、はたしてどれほどのモノだっただろうか。

 

「……あたし達が、アイツをぶっ殺したら……少しは、この子も救われるんでしょうか……?」

 

「無理だろうね。壊れた心は治らないよ」

 

 一度壊れたモノは戻らない。

 身体にせよ、心にせよ。

 この先の未来でなにが起きたとしても、壊れた過去が書き換わることはないのだ。

 

「まぁ、やることは変わらないさ。

 ボクらに人権はないし、飼い主さまの命令を果たせなきゃ死ぬしさ」

 

 ボクらに大義名分はない。

 これからやるのは復讐でもなんでもない。

 ただの仕事、ただの殺人だ。

 

「ぶっ殺してやろうよ?200円もらえるし」

 

 それがちょっと気分が晴れって、お金が出るってだけでね?

 

「え、えへへ……そういえば……そうでしたね……!」

 

 やる気が出てきたのか、ベニアちゃんが鼻息を荒くする。

 ぱあぁっ、と笑って、とても張り切っている様子だった。

 

「……おっと、サイレンの音。セキュリティの到着だ」

 

 大通りの方から、けたたましいサイレンの音がした。

 セキュリティの所有する車両やDホイールの音だ。

 

「それじゃ、ここは正義の味方に任せて、ボクらはクソみたいな仕事をしよっか」

 

 踵を返して、仕事に向かう。

 内容は、調子に乗ってる殺人犯をぶっ殺せ。

 報酬は、ボクらの命と、200円。

 それとほんのちょっとの気晴らし。

 

「はい!あたし、頑張ります……!」

 

「いいね、殺(や)る気バッチリで…………っと、そうだ」

 

 立ち止まって、最後にあの少女の姿を見る。

 

「そういうわけだから、期待しててよ。

 明日のニュースじゃ、女の惨殺事件が報道されてるだろうからさ」

 

 それだけ言い残して、路地裏を後にする。

 

 あの女に尊厳を踏みにじられた少女たち、その無念を勝手に背負って。

 最高に自分勝手で、自分たちのことを棚に上げた報復戦を、ボクらは始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私は、最悪な気分だった。

 理由は単純、私の『おたのしみ』を、どこの誰とも知らない連中に邪魔されたからだ。

 

「ムカつく……ムカつく……!

 なんなのよ、アイツら……!」

 

 思い返すのは、あの路地裏でふたりのこと。

 

 ひとりは、紫の髪をバレッタで留めた人物。

 たしか、『廻理』と呼ばれていたか?

 一見すると少女のようだが、立ち振舞いと言葉遣いからして、アイツは男だろう。

 艷やかな紫髪に、潤んだ金の瞳。

 雪のように白くきめ細かな肌に、細い手足と、下手な女子よりも余程美しい、少年。

 

「…………不気味」

 

 完璧なまでの綺麗さと、完成された少女らしさ。

 その容貌と性別の乖離が、酷く気味が悪い。

 

「アレが女だったとしても……食指は働かないわ……」

 

 私は、綺麗な女を汚すのが大好きだ。

 調子に乗ってるメスをぐちゃぐちゃにすることにどうしようもない快感を覚える。

 

 が、アレは駄目だ。

 本能が訴えている。

 廻理と呼ばれているアレに触れると……ロクなことにならない。

 

「その点、隣にいたあの子は良かったわ……!」

 

 あの子は『ベニア』といったか。

 黒髪と、変色した白髪が混じった、16歳くらいの弱々しい女。

 片目には包帯、そして折れそうな細い身体。

 虐げられるためだけに存在しているかのような、生粋の弱者。

 

「あのメスをぐちゃぐちゃにしたら……どんなに気持ちがいいか……!」

 

 汚ない男どもに群がれて、臭い口で身体の隅々まで舐めしゃぶられて。

 最奥を男性器で犯されたら、どんな悲鳴を上げてくれるだろう。

 穴という穴を精液で穢して、絶望するまで犯し抜いてやりたい。

 そうやって尊厳が砕かれる様を満足するまで愉しんで、絞め殺してやって。

 最期に、人目に付く場所にその裸体を晒してやる。

 

「ふふ、ふふふ……!最っ高…!」

 

 私は殺人犯。

 否、蹂躙者。

 今まで、7人ものメスを蹂躙してきた。

 

 私が思うに、これ以上の娯楽は、この世界には存在しない。

 だってそうでしょう?

 女が、泣きながら必死に許しを請う表情。

 女の大切な部分が、容赦なく汚されていく様。

 女がやめてやめてと泣き叫ぶ光景ほど、ゾクゾクするものはない。

 

「サイコデュエリストになって良かった……

 こんな快楽、普通に生きてちゃ味わえない……!」

 

 改めて、そう思う。

 女を蹂躙する快感は、私からあらゆるストレスを消し去ってくれる。

 勉強しろって煩いパパとママのことも、学校の下等生物(バカ)のことも、キモい担任のことも、全部忘れさせてくれる。

 

 それに、ニュースで私の蹂躙した女の話題が上がる度に、気分が高揚するのだ。

 私は、テレビに話題が上がるほどの有名人。

 誰もが私の所業を知り、怖れて慄く。

 

 無能なセキュリティなんかじゃ捕まえられない。

 専門家とやらは的はずれなことばかり言っている。

 

(あぁ、みんなに言ってやりたい……!

 私が殺人犯で、バカな大人どもさえ手玉に取っているんだって……!

 私は凄くて、強くて、偉大なんだって……!)

 

 ……まぁ、言わないけれど。

 逮捕されるような馬鹿な真似は、私はしない。

 けど、告白すれば、みんな驚くのだろう。

 

「……そういえば、あの二人はどうなったかしら」

 

 廻理と、ベニア。

 去り際に【ギガプラント】をけしかけたし、今頃殺されているとは思うが……

 

「生きてたら、始末しないといけないわね」

 

 私の正体を知る者は、この世にいてはならない。

 運良く生き延びていたとしたら、今度は確実に殺す必要がある。

 

「生きてるわけないか」

 

 なんて考えながら、夜の街を歩く。

 誰もいない街は静かで、心地がよかった。

 

「………………?」

 

 そうしてしばらく歩いていると、ふと暗い道の先に、誰かがいることに気づいた。

 デュエルディスクを装着した二人組が、街灯に照らされていて……

 

「……ッ!?」

 

 そこまで観察して、気づく。

 コイツらは、この少女と少年は────

 

 

 

 

 

 

 

「ハロー殺人犯。ぶち殺しに来たよー」

 

「殺す、殺す、殺します……!」

 

 

 

 

 

 

 

 ──あの路地裏にいた、二人。

 廻理と、ベニア。

 その二人が、私の前に佇んでいた

 

「嘘……生きてたの……!?」

 

「あはは!モンスターに襲われたくらいで死ぬわけないじゃん!」

 

 そう言って、少年は笑う。

 その身体には、傷一つない。

 

「サイコデュエリスト舐めすぎだよ。それとも、キミがモンスターに襲われただけで死ぬクソザコだから、大丈夫だって思っちゃったのかな?」

 

「っ!お前……!」

 

 笑い声を響かせて、廻理と呼ばれていた少年は挑発してくる。

 

「私がザコ……?ふざけたこと言わないで、殺すわよ」

 

「だってさ、ベニアちゃん。ボクらが殺されると思う?」

 

「いいえ…………ぶっ殺されるのは…アイツです……!」

 

 毅然として、ベニアと呼ばれた少女が答える。

 その少女の眼光は鋭く、ただひたすらに私を睨みつけていた。

 

「調子に乗んな、クソメスが……!

 私はねぇ、弱っちい女に歯向かわれるのが大ッ嫌いなの……!」

 

「いやぁ、キミのこととか知らないよ。ボクらはキミを殺したいだけだし」

 

「ホンット、いちいち癇に障る……!」

 

 少年も少女も、その一挙手一投足が私の神経を逆撫でしてくる。

 ムカつく、ムカつく……!

 私の愉しみの邪魔をして、あろうことか馬鹿にしてくるなんて……!

 

「おっと。そっちもやる気みたいだねぇ。

 じゃあ、サイコデュエリストらしいやり方で殺し合おうか」

 

 笑いながら私を見ていた少年が、デュエルディスクを構える。

 

「そう…………そんなに死にたいなら、殺してやる」

 

 上等だ。デュエルで殺してやる。

 私もまたディスクを装着し、構える。

 

「オーケー。じゃ、やろっか。ベニアちゃん」

 

「了解です……!」

 

 ……すると、隣りにいた少女もまた、デュエルディスクを構えた。

 

「は?ちょっと、何のつもり?

 なんで、そこのメスまでディスクを構えてるの?」

 

 おかしい。廻理とかいう男が私とデュエルするんじゃないの?

 なのにどうして、ベニアとかいうメスまで構えているわけ……?

 

「え?そりゃあキミ、2対1でボコボコにするからだけど」

 

「はぁ!?」

 

 嘘でしょう…!?

 コイツら、正々堂々デュエルする気がないわけ…!?

 

「ボクらは仕事でやってるんだからさぁ、慈悲とかないよ?

 ねっ?ベニアちゃん」

 

「はい……確実に、やりましょう……!」

 

「しくじったらボクらは飼い主さまに殺されるからね!」

 

「それは……すごく、イヤです……!」

 

「待ちなさい!」

 

 多対一はマズイ。

 私は浮浪者の群れを使って一人の少女を襲っていたからよく分かる。

 多人数を相手にするデュエルは、非常に不利だ。

 勝負を受けた時点で負けが確定するようなもの。

 そんなデュエルを受けるわけにはいかない……!

 

「デュエルするなら……こうしましょう。

 アンタたちはタッグでデュエルをする。

 そしてハンデとして、私は二人分のライフ……つまり、ライフ8000で始める。

 あと、手札も倍の10枚でやらせてもらう。

 どう?これならフェアでしょ?」

 

 我ながら完璧なバランス調整だと思う。

 これなら、私は不利にならない。

 アイツらも、二人がかりという有利を失う。

 この条件のデュエルなら、勝てる……!

 

「うーん、フェアさなんて求めてないけど……まぁいいや。そのルールでデュエルしたげるよ」

 

「え……?いいん、ですか……?」

 

「いいよ。苦しむ時間が伸びるだけだからね」

 

「なるほど……!了解です……!」

 

 二人がなにやらコソコソと話しているが……関係ないか。

 アイツらは、この条件を飲んだ。

 つまり、私は有利なルールで、デュエルできるということ。

 

「ふ、ふふ、ふふふ……!いいわ、殺してあげる……!

 いや、簡単には殺してあげない……!

 今まで殺してきたメス共と同じように……汚し尽くして殺してあげる……!」

 

「やれるもんでしたら……!」

 

「死ぬのはキミだけどね!」

 

 

 

 

 

 

「「「──────決闘(デュエル)!!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁて、ボクが一番手か」

 

 紫髪の少年──廻理からデュエルは始まる。

 奴は5枚の手札を確認し、数秒悩んでから動き始めた。

 

「ボクのターン。モンスターをセット。

 続けてカードを2枚伏せて、ターンエンド」

 

 廻理

 LP:4000

 場:???

 伏せ:2枚

 手札:2枚

 

 余りにあっさりとターンが終わる。

 紛いなりにも命がけのデュエルだというのに、コイツは数十秒で自分の手番を終わらせた。

 

(舐めてる……いや、これがコイツの基本戦術と見るべき……?)

 

 私は、コイツらと浮浪者とのデュエルを見て、知っている。

 廻理のほうはセット主体の昆虫族デッキ。

 つまり、この戦い方が奴の最も得意なやり方なのだろう。

 

「ほら、キミのターンだよ?早くしなよ。

 それとも、怖気づいた感じ?」

 

「チッ…………いちいちムカつく……!」

 

 落ち着け。挑発に乗るな、私。

 こうやって冷静さを奪うのが、奴の目論見だ。

 クールに、そう、クールにいこう。

 

「私のターン、ドロー!

 まず、手札から【アロマージ─ジャスミン】を召喚する!」

 

 私がディスクの上にカードを置けば、銀髪の小柄で可愛らしい少女が出現する。

 

 アロマージ─ジャスミン

 レベル2/ATK100

 

「ふーん、【アロマ】か。女の子を犯すことに興奮を覚えるから、可愛い女の子のカードを使ってるのかな?」

 

「正解。サイコデュエリストはいいわね。

 モンスターを実体化させて……何度でも愉しめるから……!」

 

 ジャスミンの肩を、ねっとりと撫でてやる。

 すると彼女はビクリと震え、怯えた始めた。

 

「あはは!デュエリストの風上にも置けないね!

 自分のカードにまで手を出したってのなら、マジで生かしちゃおけないなぁ!」

 

「私のカードなんだから、私の好きなようにしていいでしょ?

 手札の【アロマージ─ローリエ】の効果発動。

 私のライフが相手より多い場合、このカードを手札から特殊召喚する」

 

 アロマージ─ローリエ

 レベル1/DEF0

 

「ライフが多い場合……?まさか、そのために……自分のライフが多いルールで……!」

 

 ベニアとかいうメスがそんなことをほざくが、全ては手遅れ。

 そう、私のデッキはライフが相手より多い場合、有利になる。

 だからこそ、私のライフは8000の状態で、デュエルをスタートさせた。

 本当に、我ながら完璧なバランス調整だ。

 

「ハッ、今更気づいたってもう遅い。

 手札から永続魔法【アロマガーデニング】を発動。

 そして【ジャスミン】の効果、私のライフが相手より多いなら、もう一度通常召喚を行える。

 私は手札の【アロマージ─カナンガ】を通常召喚」

 

 アロマージ─カナンガ

 レベル3/ATK1400

 

「【カナンガ】……となると、ここだな。

 トラップ発動!永続罠【星遺物の傀儡】!」

 

「なに……!?」

 

 金の髪に、眼鏡をかけた男のモンスターが出現すると同時に、廻理は罠を発動させた。

 それを合図に、地面を這うようにして一匹の怪蟲が出てくる。

 

「【星遺物の傀儡】は、自分フィールドの裏側表示モンスターの表示形式を変えることができる。

 セットしていた【クローラー・デンドライト】を表側攻撃表示にし、リバース効果を発動!

 デッキからモンスターを1体墓地に送る!ボクは【ADチェンジャー】を墓地に送るよ!」

 

 クローラー・デンドライト

 レベル2/ATK1300

 

 リバースした【デンドライト】の効果により、モンスターが墓地へ送られる。

 その動きを見て、私は首を傾げた。

 

(どうして、このタイミングでモンスターをリバースした……?

 それも、墓地を肥やすことしかできないモンスターを……)

 

 そう、この動きは意味がない。

 放っておいても、私は【デンドライト】を攻撃していた。

 つまり、勝手にあのモンスターはリバースし、効果が発動していたわけだ。

 

 だというの、奴はわざわざ伏せカードを使ってまで、【デンドライト】の表示形式を変更した。

 その行動の真意が、私には分からない。

 

(【カナンガ】が出た瞬間に発動したところを見るに、奴は【カナンガ】の効果を知っている。

 【カナンガ】は、相手の魔法、罠1枚を手札に戻すことができる。

 つまり、伏せカードを除去されることを怖れた……?

 となると、奴のもう1枚の伏せカードに何かあると考えるべき……?)

 

 ……分からない。

 これに何か意味があるのか。

 そもそも、ただのミスなのか。

 

 廻理の様子を伺ってみるが、奴はただニコニコと笑っているだけだ。

 紫色の髪を揺らして、金の瞳を細めて、品定めするように私を見つめて、微笑んでいる。

 

「…………ッ」

 

 ゾクリ、背筋に悪寒が走る。

 

 不気味。

 ただただ、気味が悪く、得体が知れない。

 まるで獲物を狙う虫のように、奴は貼り付けたみたいな笑顔を浮かべていた。

 

「あれ?どうかしたかな?固まっちゃってさぁ」

 

「くっ……永続魔法、【アロマガーデニング】の効果発動…!

 1ターンに1度、【アロマ】モンスターの召喚・特殊召喚に成功したとき、私はLPを1000回復する…!」

 

 殺人犯

 LP8000→9000

 

「ライフが回復したことにより【ジャスミン】【ローリエ】【カナンガ】の効果が発動…!

 【ジャスミン】の効果により、デッキから1枚ドロー。

 【ローリエ】の効果で、このターンの間【ジャスミン】をチューナーとして扱う。

 最後に【カナンガ】の効果で、アンタの伏せている魔法・罠カードを手札に──」

 

「──それを待ってた!【カナンガ】の効果にチェーンしてトラップ発動!【星遺物の交心】!」

 

「なっ!?」

 

「【星遺物の交心】は、自分の場に【クローラー】が存在し、相手がモンスターの効果を発動した時に発動できる!

 そのモンスターの効果を、『相手フィールドの表側表示モンスター1体を選んで持ち主の手札に戻す』効果に書き換える!

 これにより、【カナンガ】の本来の効果を無効化し、上書きするよ!」

 

 カナンガが杖を振るえば、緑葉の舞う風が生まれる。

 緑の風は、廻理の場に仕掛けられたカードを戻そうとしたが、その風はあらぬ方向に吹いた。

 風は罠ではなく、這い回る怪蟲を吹き飛ばし、手札に戻す。

 

「【カナンガ】の効果が無効化された………!?

 いや、それよりも……な(・)ん(・)で(・)わ(・)ざ(・)わ(・)ざ(・)モ(・)ン(・)ス(・)タ(・)ー(・)を(・)バ(・)ウ(・)ン(・)ス(・)さ(・)せ(・)た(・)……!?」

 

 そうだ。効果を打ち消すだけなら、他にもっといいカードがあるはずだ。

 なのにどうして、アイツは効果を上書きするようなカードを使っているのか?

 

「【クローラー・デンドライト】の効果発動!

 表側表示のこのカードが相手の効果でフィールドから離れた場合、デッキから【クローラー】モンスター2体を裏側表示で特殊召喚する!」

 

「っ!?そういうことか……!」

 

 これが、奴が不可解な行動を取っていた理由。

 奴は最初から、【デンドライト】の効果を使い、モンスターを増やすことを狙っていたのだ。

 

 【星遺物の交心】の発動条件を満たすには、モンスターが表側表示で存在しなければならない。

 そのために、奴は【星遺物の傀儡】を使って【デンドライト】の表示形式を変更した。

 【カナンガ】が召喚されたタイミングでリバースさせたのは、【カナンガ】の効果が発動した瞬間だと【交心】の発動条件を満たせないからか…!

 

「さぁて、ボクはデッキから【クローラー・グリア】と【クローラー・レセプター】を裏側表示で特殊召喚するよ。

 ほらほら、2体に増えちゃったけど、そっちは3体いるんだからどうにか出来るって」

 

 煽るように、男が嗤う。

 完全に、私を下に見てやがる。

 

(っ…………落ち着け、落ち着け、私。

 クールにやれば、余裕で勝てるんだから……)

 

 そう、たしかに奴の場にモンスターは増えた。

 しかし、増えただけだ。なんら問題はない。

 

 それに、私のライフは9000。

 奴らとのライフ差は5000もある。

 どこにも負ける要素なんてない。

 

「ふぅ……私はクールに行くだけ……

 【アロマージ─カナンガ】と【アロマージ─ローリエ】をリンクマーカーにセット」

 

 上空に藍色の門が作られ、2匹のモンスターが吸い込まれていく。

 それを合図に門は開かれ、新たなるモンスターが姿を現す。

 

「リンク召喚。リンク2───【アロマセラフィ─ジャスミン】」

 

 出現するのは、翅を生やした銀髪の少女。

 姿の変わった【ジャスミン】だった。

 

 アロマセラフィ─ジャスミン

 リンク2/リンクマーカー:左下 右下/ATK1800

 

「【アロマセラフィ─ジャスミン】の効果発動。

 このカードのリンク先のモンスターをリリースし、デッキから植物族モンスター1体を守備表示で特殊召喚する。

 私は【アロマージ─ジャスミン】をリリースし、【姫葵(ひまり)マリーナ】を特殊召喚」

 

 銀髪の少女が枯れ、代わり向日葵の姫が咲く。

 

 姫葵マリーナ

 レベル8/DEF1600

 

「フィールド魔法、【アロマガーデン】を発動し、効果を使用。

 私のライフを500ポイント回復し、次の相手ターン終了時まで自分フィールドのモンスターの攻守を500ポイント上げる。

 さらにライフが回復したことで【アロマセラフィ─ジャスミン】の効果発動。デッキから植物族モンスター、【アロマージ─ジャスミン】を手札に加える」

 

 

 殺人犯

 LP9000→9500

 

 アロマセラフィ─ジャスミン

 ATK1800→2300

 

 姫葵マリーナ

 DEF1600→2100

 

 

「バトルフェイズ……!

 【ジャスミン】でセットモンスターを攻撃……!」

 

「攻撃された【レセプター】の守備力は1200だから破壊される。

 けど、リバース効果は発動するよ。

 【レセプター】はリバースした場合、デッキからクローラーを手札に加えられる。

 さて、ボクは2枚目の【グリア】を手札に持ってこようかな」

 

 ジャスミンに叩き潰された蟲が、死ぬ間際に触手を伸ばし、カードを投げる。

 廻理はそれを受け取り、カラカラと笑った。

 

「あははっ!害虫対策はしといたほうが良かったねぇ!」

 

「ハッ……手札が1枚増えたくらいで、よく喜べるものだわ」

 

 問題はない。奴は嘲笑っているが、なにも問題はない。

 

「随分、調子に乗ってるみたいだけど……アンタ、誰を相手にしてるか分かってるの?」

 

 そうだ。冷静さを取り戻した今、目の前で嗤う男など敵ではない。

 意趣返しとして、ニヤリと笑ってやる。

 

「いい?私は殺人者であり、蹂躙者。

 何人もを汚して、壊して、殺してきた……!

 アンタがどこの誰かは知らないけど、7人も殺してきた私に勝てるわけないの!」

 

 あぁ、はたしてこの街に、私より人を殺した者がいるのだろうか?

 いや、いるわけがない。私が、最も人を蹂躙してきた。

 そんな私に、コイツらが勝てるわけがない。

 

「ふふ、ふふふ……!さぁ、サレンダーするなら今のうちよ?

 ま、降参したらグチャグチャに犯して殺してやるけど……!」

 

「「……………………………」」

 

 獰猛に笑って見せれば、二人はただシン、と黙ることしかできないようだった。

 

「……廻理さん……あの人、哀れですね……」

 

「哀れっていうか超痛いよ」

 

 コソコソと口元を手で隠して、奴らがなにやら話している。

 逃げる算段でもつけているのだろうか?

 だとしたら無駄だ。私は逃しはしないのだから。

 

「メインフェイズ2、カードを3枚伏せる。

 これで、私はターンエンドよ。

 せいぜい、いい悲鳴を奏でて頂戴?」

 

 

 殺人犯

 LP:9500

 場:アロマセラフィ─ジャスミン

   姫葵マリーナ

 伏せ:2枚

 手札:5枚

 

 

「耳塞いでよっかな……ベニアちゃんのスタンバイフェイズ時に【星遺物の傀儡】を発動。

 裏側表示の【クローラー・グリア】を表側守備表示に変更。

 そして【グリア】のリバース効果発動。墓地のクローラー、【レセプター】を特殊召喚するよ」

 

 クローラー・レセプター

 レベル2/ATK900

 

「はぁ……これでいいかな、ベニアちゃん?

 モ(・)ン(・)ス(・)タ(・)ー(・)を(・)2(・)体(・)用(・)意(・)し(・)た(・)けど」

 

「……はい。ありがとうございます」

 

「じゃ、任せるよ。好きなだけ暴れちゃって」

 

「了解です……っ!」

 

 ベニアと呼ばれていた少女が、デッキに指をかける。

 そのまま目を閉じて、深く呼吸をしたかと思えば─────

 

「───あたしのターン!ドロー!」

 

 ────高らかに叫び、強くカードを引いた。

 

「っ!?」

 

 その力強さに、私は思わず圧倒されてしまった。

 けれど、ベニアとやらはそんな私を目にも留めず、デュエルを進めていく。

 

「手札から、永続魔法【冥界の宝札】と【アドバンス・ゾーン】を発動します!

 そして、廻理さんの【クローラー・グリア】さんと【クローラー・レセプター】さんをリリースし、アドバンス召喚!来て、【パラレルエクシード】!」

 

 パラレルエクシード

 レベル8/ATK2000

 

「アドバンス召喚に成功したことで、【パラレルエクシード】、【冥界の宝札】、そして手札の【ダークネス・シムルグ】の効果が発動します!

 まず、【ダークネス・シムルグ】は風属性モンスターのアドバンス召喚成功時に、手札から特殊召喚されます!

 さらに【パラレルエクシード】の効果で、デッキからもう1体の【パラレルエクシード】をレベルと攻守を半分にして特殊召喚!」

 

 ダークネス・シムルグ

 レベル8/ATK2900

 

 パラレルエクシード

 レベル4/ATK1000

 

「【冥界の宝札】により2枚ドローし……通常魔法【カードアドバンス】を発動!

 デッキトップ5枚を好きな順序に並び替え、召喚権を増やします!

 そのまま【パラレルエクシード】2体のリリースして、アドバンス召喚!

 来て……!【デュアル・アセンブルム】…ッ!」

 

 ノイズを纏い現れたのは、紅と蒼の電子龍。

 電影の翼を羽ばたかせ、デュアル・アセンブルムは咆哮する。

 

 デュアル・アセンブルム

 レベル8/ATK2800

 

「アドバンス召喚に成功したことで、2枚ドローです!

 そして、【デュアル・アセンブルム】の効果発動!

 手札を1枚除外し、このカードの攻撃力以下のモンスター1体を除外します!

 【アロマセラフィ─ジャスミン】を除外!やって、アセンブルム!」

 

「っ、トラップ発動!【ブレイクスルースキル】!

 ターン終了時まで、【デュアル・アセンブルム】の効果を無効にするわ!」

 

 【デュアル・アセンブルム】の両翼から、光が迸る。

 その紅と蒼の光は、雷のように【ジャスミン】を貫こうと迫る。

 が、銀髪の少女を守るように障壁が発生し、それにより光は阻まれる。

 

「無駄です!【ダークネス・シムルグ】の効果発動!

 このカードをリリースし、【ブレイクスルースキル】を無効にし破壊します!」

 

「なっ……!?」

 

 漆黒の巨鳥が、大きく羽ばたく。

 その翼が生んだ風は、障壁を吹き飛ばし、【ジャスミン】を露わにする。

 阻むものが消えた閃光は、その勢いのまま銀髪の少女を貫いて、焼き尽くした。

 

「やるねぇ、ベニアちゃん。よく【デュアル・アセンブルム】の効果を通したね。

 【アロマセラフィ─ジャスミン】は戦闘じゃ破壊できないモンスターだから、ここで除外できたのは偉いよ」

 

「え、えへへ……!でも、まだ終わりじゃないです…!

 墓地の【パラレルエクシード】2枚を除外し……手札の【デグレネード・バスター】を特殊召喚します…!」

 

 デグレネード・バスター

 レベル7/ATK2500

 

「【デグレネード・バスター】のもうひとつの効果発動です…!

 このカードより攻撃力の高いモンスターを、エンドフェイズ時まで除外します……!

 これにより、【姫葵マリーナ】を除外です……!」

 

「くっ……【姫葵マリーナ】は、破壊され墓地に送られたとき、相手フィールドのカードを破壊できるけど……」

 

「あははっ、除外されたんじゃ墓地に行かないからねぇ。

 残念無念、【マリーナ】の効果は使えない。

 ベニアちゃんのほうが、一枚上手だったみたいだね」

 

 クスクスと笑う男を無視して、目の前に広がる光景を眺める。

 

 夜空に舞う、蒼紅の電子龍。

 包帯を巻いた少女を守るように立つは、紅色の電子超人。

 

「……本当なら、このターンでぶっ殺したかったんですが……仕方ありません。

 バトルフェイズ。少しでも削っておきます……!」

 

 そうして、少女はモンスターに命令を下す。

 

「お願い…!【デグレネード・バスター】でダイレクトアタック…!」

 

 【デグレネード・バスター】の手の中に、赤いエネルギーの塊が形成される。

 すると電子の超人は私めがけて、光球をぶん投げた。

 

 超高速で投げられたエネルギー球は、風を切って突き進む。

 これに当たったれば、無事では済まないだろう。

 

 …………当たれば、ね

 

「バーカ!トラップ発動!【ドレインシールド】!」

 

「あっ、そのカードは…!?」

 

「げぇ!?【ドレインシールド】!?」

 

 薄緑のバリアが展開され、光球が阻まれる。

 それは、破壊を癒やしに変える、吸収の盾。

 

「【ドレインシールド】は相手モンスターの攻撃を無効にし、その攻撃力分だけライフポイントを回復する!

 【デグレネード・バスター】の攻撃力は2500!よって私のライフは………」

 

 殺人犯

 LP9500→12000

 

「私のライフは、12000となる…!

 アンタらの実に3倍よ!」

 

 勝った。

 これはもう、事実上の勝利だ。

 ここまでのライフ差を覆せるはずがない。

 最早、奴らに勝ち目はない。

 

「さぁ、諦めなさい!アンタらに逆転なんてない!

 ここでサレンダーするだったら、楽に殺してあげる!」

 

 あぁ、気分がいい。

 弱者を嬲り殺しにするのは、気持ちがいい。

 蹂躙。強者にのみ許された娯楽。

 私は今、その快楽に浸っている。

 

「ほらほら、絶望するといいわ!

 これから二人揃ってグチャグチャにされるん………」

 

「あ、【デュアル・アセンブルム】でダイレクトアタックです」

 

 ベニアが雑に攻撃宣言をする。

 それにより、【デュアル・アセンブルム】が二色の光を蓄え始めた。

 

「ふーん……惨たらしく殺されたいの?」

 

「もう黙ったほうがいいですよ…………

 恥ずかしい思いを、したくないんでしたら……」

 

 憐れむような目で、女は私を見てくる。

 同時に電子の龍が咆哮を上げる。

 

 そして、蒼と紅の電光が夜を照らして。

 二色の光は、眩い雨のように。

 

 

「────え?」

 

 

 

 ────────私を、焼き貫いた。

 

 

 

 

「ぎゃあああああぁぁあぁぁぁあぁぁぁあああぁぁぁあぁぁっぁああぁああああ!?!?

 あついあついあついあついあついあついあついあついぃぃぃぃぃぃいいいぃっ!?!?」

 

 気づくと私は、地面をのたうち回っていた。

 熱い!熱い!熱い熱い熱い熱い!

 電に撃たれ、身体中が焼けている。

 服は焦げて、肌は焼けただれていた。

 

「あ、ぁあ……あぁぁ……!?

 あつ、い……!?あつい、よぉ……!!」

 

 わけがわからない。

 なんで、なんで……なんで、こんな……?

 痛いよ、どうして、私はこんなに、痛い目に……?

 

「おっ、その様子だとサイコデュエルでダメージを受けたのは初めてかな?」

 

 地面の上に倒れる私に、男が声をかけてくる。

 

「さて、キミは2800のダメージを受け、ライフが9200まで削られた。

 そのダメージを食らった感想はどうかな?」

 

「い、たい……いたいぃ、ぃぃ……!」

 

 激痛。そうとしか表現できない、純粋な痛み。

 

 電撃を食らった瞬間、ショックで心臓が一瞬止まった。

 光雷の熱は、私の身体を駆け巡り、全身を焼き焦がした。

 

 歯がカチカチと震える。

 熱いのに、全身から血が引いたみたいに寒い。

 怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い。

 

「死ぬっ……しんじゃう……!」

 

「そりゃ殺しにきてるからね」

 

「ですね。メインフェイズ2、あたしはカードを2枚伏せて、エンドフェイズに移行します」

 

 なんともなさそうに、デュエルが続いていく。

 けど、恐怖と痛みに震える私は、そんなことを気にする余裕はなかった。

 

「エンドフェイズ、【デグレネード・バスター】が除外していた【姫葵マリーナ】が戻ります。

 そして永続魔法【アドバンス・ゾーン】の効果が発動です。

 これは、あたしが1ターンの間にリリースしたモンスターの数によって効果が発動します。

 まず、2体以上の効果でデッキから1枚ドロー。

 そして3体以上の効果により、墓地の【ダークネス・シムルグ】を手札に加えます」

 

 ベニア

 LP:4000

 場:デュアル・アセンブルム

   デグレネード・バスター

 伏せ:2枚

 手札:2枚

 

 

 私も場に、もう一度向日葵の姫が咲く。

 今となっては使えもしない、なんの役にも立たないゴミカード。

 【デュアル・アセンブルム】も【デグレネード・バスター】も処理できないカス花。

 

 なんて、頼りない。

 なんで、私を助けてくれない。

 

 理不尽だ、どうして、私だけがこんな目に……

 

「これで、あたしはターンエンドです。

 …すいません、廻理さん……見苦しかったので、早く黙らせたかったんですけど……」

 

「いやいや、上出来だよ。これだけやれれば大したもんさ」 

 

 男が、笑ってる。

 それにつられて女も照れた笑いを浮かべる。

 そんな二人の姿は、まるで悪魔のよう。

 

「あ、そういやキミ、7人殺したとかなんだとか言ってたね?」

 

 向き直った“ソレ”は、妖しく微笑む。

 

「まー、人殺しとか誇るもんじゃないよ。なんの自慢にもなんないからさぁ」

 

 人間に作れる表情じゃない。

 無邪気で、おぞましく、底抜けに明るく、どこまでの仄暗い。

 異常としか言えないような歪な笑みを、“ソレ”は向けてくる。

 

「あぁ、ちなみにだけど……ボクの殺害人数は、4967人だったかな」

 

 笑顔とともに紡がれたのは、絶望だった。

 

「ぁ……ぁあ……」

 

 『怪物』

 目の間にいる“ソレ”は、正真正銘の怪物だった。

 

 笑みを貼り付け

 息をするように人を殺すような

 人間じゃないなにか

 

 そんな怪物が、私の目の前にいた

 

「さぁ、キミのターンだよ。そんだけライフがあれば勝てるんでしょ?

 だったらほら、デュエルを続けなよ」

 

 勝てるわけがない。

 こんなにも全身が痛いのに、デュエルなんてできるわけがない。

 そもそも、相手がこんな化け物だとは思ってなかった。 

 

「……もっと、苦しんでください。

 ライフが尽きるまで、精一杯、痛めつけますから────」

 

「いやぁ、良かったねぇ?ライフがたくさんあれば、死ぬまでに時間がかかるからさぁ────」

 

 

「「────さぁ、デュエルを続けようよ(ましょう)!」」

 

 

 

 2匹の悪魔が笑って、ようやく私は気づく。

 ここはとっくに、絶望の地獄だったのだ。

 

 この先に起こる苦痛を理解して、私はただ泣くことしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

今回は、この作品「らしい」お話だったのではないかなと思ったりしています

次回は、できれば10日以内に投稿したいです……!
頑張ります…!
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