※この作品はR-18です。

遊戯王Cruel 猟奇的殺人デュエルと少年少女の破綻   作:胡麻野すり子

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おまたせ致しました!
新しいエピソードの始まりです!

今回はデュエルはないです!



令嬢ダンジョン攻略編
第8話 おやつは500円まで


 

 

 ボクの朝は遅い。

 基本的に夜型なのもあるし、オフの日くらいはゆっくり寝ていたいからだ。

 

「ふぁ………いたた」

 

 硬い床から起きて、痛む体を動かす。

 首、肩、腰からポキポキと音が鳴った。

 

「………布団で寝たいなぁ」

 

 毛布代わりにかけていたカーディガンを蹴飛ばして、上体を起こす。

 そのまま眠い頭を抑え、意識が覚醒するのを数分待つことにした。

 

 昨晩は何してたんだけっかなぁ…………あぁ、デッキの調整してたんだっけ?

 【ハネクリボーLV9】を抜くか抜かないかで本人とかなり揉めた気がする。

 で、結局ボクが折れて、【ハネクリボー】はデッキに入れたままにしたんだったかな。

 

「…………グリアー」

 

 床に転がっていたデッキに触れて、一声かける。

 するとどこからか怪蟲が現れ、机の上に置いていた櫛を持ってきてくれた。

 【グリア】はそのまま触手を器用に動かして、ボクの髪を櫛で梳(す)いてくれる。

 

 あー……最終的に、今のデッキはどんな感じにしてたかな。

 面白半分で儀式ギミックを大量に入れたような……

 うーん、『孤児院』の子たちと遊ぶ分にはいいが、仕事で持って行ったら死ぬな。

 

「サイドデッキ……どこやったかな…………あっ、ありがとね、【グリア】」

 

 髪を整えてくれていた【グリア】が、部屋に転がっていたカードの束とバレッタを持ってきてくれる。

 

「えーと、シャツはどこに……………っと、ごめんね【シャインブラック】」

 

 着替えを探そうとしたそのとき、どこからか現れた【シャインブラック】が白いシャツを持ってきてくれた。

 受け取ると、【シャインブラック】は力強くサムズアップしてくる。

 なんか、特撮ヒーローって感じだなぁ。

 いや、特撮ヒーローなんだろうけど。

 

「んん……目が覚めてきた」

 

 伸びをして、部屋を見渡す。

 あいも変わらず、殺風景な部屋だ。

 

 備え付きの机と、床に放置された服、あとはカードの山くらいしかない、ボクの部屋。

 あまりにも生活感のない空間だ。

 こんなところでよくもまぁ7年も暮らせてきたなぁ。

 

「あー……昔は相部屋だったか……」

 

 冴えてきた脳に、昔の記憶が浮かび上がってくる。

 

 

 ──好きだったあの人のこと

 

 ────ボクを守ってくれたこと

 

 ───壊れてしまったあの人のこと

 

 ──────あの人に裏切られたこと

 

 

「…………うげぇ。朝から嫌なこと思い出したぁ…」

 

 フラッシュバックを沈めたくて、頭を軽く振る。

 ちくしょう、朝は嫌いだ。

 緩んだ脳みそが、楽しくない過去を見せてくるんだから。

 

「起きよ起きよ。今日はたぶんイイ日だ、うん」

 

 なんの根拠もないが、今日はイイことがあると思いこむことにする。

 憂鬱な朝を起きるための、ボクなりのおまじないだ。

 

 受け取ったシャツのボタンを止め、バレッタで髪をまとめる。

 そのまま、蹴飛ばした灰色のカーディガンを羽織って、床に転がっていたデッキとデュエルディスクを拾う。

 

「行くかー」

 

 扉の前に並んでいた靴を履いて、ドアノブに手をかける。

 

 "いってきます”はいらない。

 "いってらっしゃい”を言ってくれる人は、もういないのだから。

 

 そうしてドアを開いて、ボクはまた、クソみたいな日常を始めることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「楽しそうなことやってるなぁ」

 

 広間に着いて一言。

 目の前に広がる光景を見て、思わず零してしまった。

 

 そこにいたのは二人の少女。

 ひとりは、ふわふわとしたドレスに身を包んだ、薄紅色の少女。

 白とピンクで彩られ、フリルとレースで飾られた、童話めいた狂人(おんなのこ)。

 

「ん、おはよう、だね。廻理くん」

 

 兎ノ宮殺那(うのみやあやな)というボクの友人は、クスリと笑う。

 

「あっ……お、おはようございます……!」

 

「おはよう。殺那、ベニアちゃん」

 

 そしてもうひとり。

 もうひとりは、黒髪交じりの白髪の少女。

 先日知り合って、そのまま仲間になった女の子。

 ベニアちゃん……なのだが。

 

「その格好、ゴスシック・ロリータって言うんだっけ?」

 

 そう。今日のベニアちゃんは、なにやら雰囲気というか……格好がいつもと違った。

 右目には黒薔薇を模した眼帯に、身にまとうは漆黒の衣装。

 殺那の着ているそれと似たフリル付きの黒いドレスを、彼女は身にまとっていた。

 

「あ、えと……これはですね……殺那さんに、お借りしたというか……」

 

「ふふっ。似合う、かなって、思って」

 

 なるほど。殺那の着せかえ人形にされてたわけか。

 ベニアちゃんが自分から着させてほしい………と言うとは思えないな。

 大方、暇していた殺那がベニアちゃんを捕まえて、所持していたドレスを着せたのだろう。

 

「いいね、とっても似合ってるよ」

 

「わっ……あ、ありがとう、ございます……」

 

 それはそれとして褒めてみれば、ベニアちゃんは照れたように身じろぎする。

 ちなみに、ゴスロリ衣装の彼女は実際似合っていた。

 たぶん、ベニアちゃん自体が儚げな雰囲気をしているからだろうなぁ。

 黒い衣装の隙間から覗く、病的に白い肌がよく映えている。

 

「ふふっ。それで、廻理くんは、どうしたの?私を、探してた、感じに、見えた、けど」

 

「あぁ、うん。仕事のことでさ」

 

 立ち話もなんだし、彼女たちの近くの椅子に腰掛ける。

 壊れかけの椅子が軋み、ギシリと音を立てた。

 

「ほら、館のサイコデュエリストの話。殺那も一緒に来るんでしょ?」

 

「うん。私も、一緒。廻理くんと、ベニアちゃんと、一緒、だよ」

 

「あっ…殺那さんも来てくれるんですね……」

 

「ふふっ。私、頑張る。新しい子に、カッコイイところ、見せるよ」

 

 殺那が自信あり気な顔で、軽くファイティングポーズを取る。

 彼女も張り切っているようだ。

 

「…………そう言えば……詳しく話を聞いていませんでしたけど、どんなお仕事になるんでしょうか……?」

 

「いい質問だね、ベニアちゃん。というわけで、はい。資料をどうぞ」

 

 そう言って、懐から紙の束を取り出し、ベニアちゃんに見えるように机に置く。

 

「あ。そう、いえば、ベニアちゃんは、文字、読めるの、かな?」

 

「えっ……?は、はい。読めますよ?カードのテキストだって読めますし」

 

「そっか。なら、うん、よかった」

 

「………………???」

 

「あははっ。カードテキストし(・)か(・)読めない子もいるからさ」

 

 事実、『孤児院』には文字がほとんど読めない子もいる。

 かくいうボクも昔はカードテキストしか読めなかったクチだ。

 今でこそ多くの文字を読めるようになったけど。

 

「な、なるほど……私は一応、義務教育と同じくらいの教養はありますから……」

 

「「えっ、マジ?」」

 

 ベニアちゃんの発言を聞いて、ふたり揃って驚いてしまった。 

 

「すごい。エリート、だね」

 

 学があるのは強いなぁ。

 いやぁ羨ましい。

 

「え、えへへ…………じゃなくて…あ、あの……お仕事の、話…………」

 

「ん……あっ!ごめんごめん、話が脱線しちゃったね」

 

「ごめん、ね。反省、する」

 

 ベニアちゃんに促されて、ボクらは仕事の話に戻る。

 

「えーと、ちょっと前に触りだけ話したっけ?」

 

「あ、はい……なんか、どっかの館の地下に迷宮とか……サイコデュエリストとか…」

 

「あははっ。いやぁ、うん。カオスだよねぇ」

 

「聞いた、だけじゃ、意味、分からない、よね」

 

 三人して頷く。

 とはいえ、本当にその内容で仕事が来てるんだから仕方がない。

 

「えーと…………あれ?か、廻理さん……ざっと資料に目を通しましたけど……あんまり情報、書いてなくないですか…?」

 

 資料をペラペラと捲っていたベニアちゃんが、眉間にシワを寄せて呟く。

 

「だね。詳しく教える気がないのか、依頼したヤツに詳しく伝える気がなかったのか。

 その辺は分からないけど、明らかに情報が欠けてるよ」

 

 ボクも事前に読んでいたから知っているが、この紙束にある情報量は明らかに少ない。

 書いてあることを要約すればこうだ。

 

 1.とある館の地下が、迷宮と化している。

 2.その地下迷宮には、サイコデュエリストがいる。

 3.そのサイコデュエリストを殺せ。

 

 以上である。

 

「なに、なに…………あ、仕事先の、家。資産家の、お家、だね」

 

「『鳴金(なりがね)家』ね。まぁ、裏デュエル界のギャングになんか頼むくらいだから、ロクな家じゃなさそうだけど」

 

「はえー……えと、それで…そのお家の地下にサイコデュエリストがいて、迷宮が……?」

 

「フィールド魔法、とか、かな?」

 

「じゃないかな?そのサイコデュエリストとやらが地下に引きこもって、何かしらのカードを実体化させてるんだろうね」

 

「でも、なんで……資産家のお家で…?そもそも、このサイコデュエリストさんは、何者なんでしょうか……?」

 

「それは、分からない、ね」

 

「だねぇ。どこにも書いてないし」

 

 殺那とふたり揃って肩を竦める。

 それに関しちゃお手上げだ。

 なんにも聞いていないし、書かれてもいないのだから。

 

「うぅ……不親切です………」

 

「ボクらみたいなクズには、一から十まで情報を与える必要はないってことだろうねぇ」

 

「あるいは、『鳴金家』が、教えるのを、渋った、とか?」

 

「あー、ありそう」

 

 完全に偏見だが、金と権力があるヤツらには隠し事が多い。

 それこそ、人に話せないような……真っ黒な隠し事が。

 

「い、イヤな予感がします…………」

 

「まったくだね。これ絶対ヤバいタイプの仕事だよ」

 

「でも、拒否権は、ない。悲しい、ね」

 

 そう、今後やらされることがどれだけ危なくても関係はない。

 ボクらみたいなクズ奴隷は、黙って従うしかないのだから。

 

「とりあえず、無事に済むことを祈るかー」

 

「ひぇぇ……」

 

「テンション、上がって、きた」

 

 怖がるベニアちゃんと、気合充分といった感じにデッキをシャッフルしだす殺那。

 まぁ、ふたりとも問題はないだろう。

 

 ベニアちゃんは普通に戦えるし、やるときは殺ってくれるはずだ。

 殺那も、その性(・)質(・)的に勝手に暴れ回ってくれる。

 

 不安要素はあるが、期待の新人と最古参が投入されているんだ。

 頑張ればどうにかはなるだろう。

 

「さて、出発は、明日、かな?」

 

 資料を覗き込む殺那が、仕事の日を確認する。

 

「そうだね。各自デッキの調整をすること。

 あとお菓子はみんなで分け合えるやつにしてね」

 

「私、お金、ない。最近、有り金、はたいて、プチプラ、買った、から」

 

「それ言ったらボクも200円しか持ってないよ」

 

「しけてる、ね」

 

「遠足のノリじゃないですか…………」

 

 そんな馬鹿なことを言い合いながら、この日は盛り上がった。

 

 結局みんなお金を出し渋ったので、お菓子はなしになった。

 

 

 

 

 

 




読んでいただき、ありがとうございます!

次の話は、7~10日以内に投稿したいです……!
頑張ります……!
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