「あ、あの、本当に?」
「私が言い出したんじゃないぞ。違うからな。これはこいつが……」
「ふふふ。心配いらないよ。さあ、ほら」
木陰に連れ込まれて、ハルタは下着ごとズボンを下ろされて下半身を露出していた。シャツをたくし上げるよう指示までされて、細い腹部とへそが露わになっている。
どこを見ればいいものか。というより、どこから見ればいいというのか。
A2は困惑した様子を隠せていなかったが、気付けば彼の下半身ときれいなへそを凝視しており、その状況を作り出したアネモネは素直に嬉しそうにしていた。
「別に私は、こんなことしたいなんて思っていないんだが……」
「本当にそうか? その割には断らないじゃないか」
「大体、こいつが本物の人間かどうかなんてわからないんだし」
「それならわかるさ。理屈じゃないんだ。見て会えばわかるんだよ、私たちは」
「そもそも私は戦闘タイプで、こういうことをする型じゃないし、ボディが……」
「心配はいらない。セックスは、体を一つにするだけがそれじゃない。手や口を使えれば十分に実践可能なのだよ」
ぐちぐちと文句を言い続けるA2だがなぜかハルタの前で座ったまま動かない。地面に膝をついて彼の体に近付いており、背を丸めている。
戸惑うハルタはともかく、くすくす笑うアネモネは勝手知ったる様子だった。
「むっ……別に、私は」
「そう言う割にはきれいに体を清めたじゃないか。清潔でなければ害を及ぼすかもしれないから、良い心がけだ」
顔色は変わらないが表情は変化する。A2は見るからに怒っている顔でアネモネに抗議した。
「ちがっ、これはただ汚れが気になったから落としただけで……!」
「今まで全く気にしていなかったのにか?」
「誰もハルタのためとは言ってないだろう!」
「私もハルタのためなんて言っていないぞ?」
「うぐっ……!」
あーだこーだと言い合いをしていたが、不意にアネモネが動き出す。
舌を伸ばして、はあと息を吹きかけ、ぴくんと反応したハルタを見ると勃起したペニスをゆっくり舐め上げた。玉がぶら下がる根本から上へ向かって、舌先に力を入れて裏筋を撫でて進む。
うっと声を漏らしたハルタは反応を隠せていなかった。
その表情を見たA2は、何も言わずにじっとしていた。
リアクションなど皆無。しかし見惚れているかのように視線を片時も外さない。
ちゅうっと小さな音が鳴る。
アネモネが赤々と膨らんだ亀頭に口付けして、わずかに吸っていたのだ。
ハッとしたA2は再びそこへ視線をやり、目が離せなくなる。
「触れる時は優しく、壊れ物を扱うようにだ。ただし時には刺激を強くする……」
「うっ……」
指先でそっと握って、舌先はぺろぺろと優しく触れ、ハルタが安堵するかのようにその行為を受け入れている。アネモネを見下ろす視線には愛おしさが感じられた。
それでいて彼を喜ばせるばかりではなく、時には手に力を込めてペニスを握り、亀頭の先端に口をつけてずぞぞぞぞっと強く吸い付くこともある。
与えられる刺激で一喜一憂し、ハルタはわずかに呼吸を乱して、時折小さく体を震わせた。
A2は顔色こそ変化しなかったものの、食い入るように見つめている。
アネモネがちらりと彼女の様子を確認して、ハルタのペニスに頬ずりしながら、まるで同様の行為を待ち望んでいるかのようなA2へ問いかけた。
「……してみるか?」
「は? いや、なんで私が……」
多くは言わずにアネモネがすぐにハルタへ向き直る。
右手で金玉を優しく揉みほぐし、ペニスの根本にキスをする。ちゅっと音を立てた後、舌を出して押しつけ、唾液を塗り付けてねっとり舐め始めた。
不満げだったはずのA2はその一挙一動を見ていた。まるで学習するかのように。
アンドロイドには必要ない機能のはず。彼女たちは戦うために造られて、地上へ送り込まれた。いくら人間が相手だからといってこんなことをする必要はない。
そんな思考の反面、A2の様子がおかしいのは火を見るよりも明らかであった。
再びアネモネがその気になって前戯を始める。
今度は一口にハルタのペニスを銜えて、唾液を絡ませて、唇をすぼめて顔を前後させる。じゅぽじゅぽという水音。このためにボディには分泌液を出す機能が追加されている。
右手で竿を握って上下に扱きつつ、先端を銜えて頭を動かし、刺激した。ハルタの顔を見上げながらそうして反応を楽しんでいた。
アネモネはひどく上機嫌に見えて、ペニスを銜える口元がわずかに笑みを作っている気がする。
ぎょっとすると同時、胸中に広がるのは羨望であった。動揺しているのも確かだがそれだけではないことを自覚せずにはいられない。
長らく他者との関係を断ち、孤独に生き続けていた状況に加えて、古い知り合いの初めて見る姿に驚いた。そして自らもまた忘れていたはずの欲求を覚えるのである。
ちゅぱっ、とアネモネが口を離す。
ペニスの先っぽを自分の頬に擦り付けて、A2へ振り返ると穏やかに笑いかける。
「もうわかっただろう? どうだ?」
不思議と不満そうにすら見える無表情であったが、A2はついに動き出した。
そっと近寄り、顔を寄せて、鼻先が触れそうなほど近くでペニスを見つめてみる。
生きたそれを見るのは初めてのこと。間違いなく人間の物だ。彼は人間だ。改めてその事実をびくびく動くペニスから感じ取る。
「別に……私がしたいわけじゃないぞ。お前が、物欲しそうな顔で見るからだ」
「えっと、ごめん……」
「うるさい。謝るな」
不格好に唇を尖らせて、恐る恐る近付く。勃起したペニスに弱々しく押し付けられる。
間近で見ていたアネモネは感心した様子でおおっと声を漏らした。
「初めてのキスがペニスか。口でもよかった気はするが」
「んなっ⁉ お前が導いたんだろう!」
「うん? 何を気にする。自分の意思ではないのだろう?」
「くっ……!」
悔しげに顔を歪ませたA2が勢いよく立ち上がった。
強引にハルタの唇に自分の唇を押し当て、キスをした。何か不満があったようで唇同士でのキスを望んだらしい。ただ押し当てるだけだが本人は中々離れようとしなかった。
戸惑いがちだったがハルタも受け入れようとし、唇を動かして応える。
小さなリップ音。応えられるとA2はわずかに驚くも、先程より余裕を持ってキスを続けた。
戦闘用のボディに快感など存在しない。しかし、なるほど、不思議と気分は悪くない。キスという概念を初めて知る。
A2は徐々に順応していき、彼の動きに応えて唇を何度も触れさせては離れ、やがて舌を出して彼のそれに触れてみた。
手は、自分の意思とは切り離されたかの如く勝手に動く。
ハルタのペニスを傷つけないようそっと握った。
奪われるみたいな状況だったがフッと笑ったアネモネも立ち上がり、彼に身を寄せる。
「ハルタ、私も……」
「う、ふんん……わ、わかっ」
「だめだ、こっち」
アネモネが顔を寄せておねだりするのだが、A2が認めずハルタは彼女とのキスを続ける。
不満そうだったとはいえ、仕方ないと思う気持ちもある。
キスを諦めたアネモネはペニスを握るA2の手に自分の手を重ね、彼女を導こうと、艶っぽい声で囁きながら動かそうとした。
「痛くしないように、優しく、そっとだ……」
声こそ出さないがA2は素直に従う。ハルタとキスをしたまま、舌を絡めて、右手はゆっくりとペニスを上下に扱き始める。
アネモネも協力し、自身の唇は彼の首筋へ押し当てて、ちろちろと舌で肌を撫でた。
「んっ、ふっ、んんっ……!」
「逃げるな、こら」
「我慢しなくていい。出したかったら出していいよ」
耳に息を吹きかけられて、舌は執拗なまでにA2に絡め取られ、強引に口の中まで入られる。
ハルタの呼吸は明らかに荒くなっていた。
そうと知りながら二人は一瞬たりとも離れようとはせず、そうした反応でさえ喜ぶ。辛そうにも見える彼の反応は間違いなく興奮が混じっていて、やめるどころかもっとしてあげたいと思う。
力では到底敵わない。二人に両側から押さえつけられて抵抗できなかった。
二人の手で握られてシコシコと擦られる。
割れ目からとろりと先走り汁が垂れてきて、二人の手を汚してぐちゅぐちゅと鳴っていた。
腰が勝手に動いているのがわかる。わずかに揺れる動作がいじらしく、さらに気分が高まる。
「あぁ、だめだ……」
「イクのか? A2、見ておいた方がいい」
キスから逃げるようにハルタが首を反らした。咄嗟にA2が彼の頭を押さえようとするのだがそれよりも早く察したアネモネが忠告する。
名残惜しそうではあるものの、A2は素直に従う。
何をとは言われずとも視線は自然に下へ向かって彼のペニスを確認した。
「うぅ、くっ……!」
「出るぞ」
「出るって、何が」
「イクっ……!」
直後、ハルタが射精した。
竿の律動に合わせて亀頭の割れ目から精液が勢いよく吐き出されていく。
勝手に動くペニスの感触に驚きを隠せず、そこから吐き出される白い液体を見るとなぜか気分が高揚する反面、不気味ですらあった。
A2は絶句してただ眺め、無言で彼のペニスをぎゅっと握った。
「うぅ、ふぅ……!」
「おっ、ん」
「ふふふ。人間の男にとってこれが最高の快感なんだ」
地面に吐き出された精液を見下ろしたまま、A2は動けずにいる。
アネモネは慣れた様子でハルタのペニスをさらに扱き、牛の乳から牛乳を搾るように、尿道に残る精液を出させてやっていた。
大きく息を吐いてハルタはぐったりした。その顔を見るA2は、わけもわかぬままキスをする。
「ん、んふぅ、ふっ……」
「気に入ったのか? ちょうどいい。ハルタはキスが好きだから」
声をかけても聞き入れられた様子はなく、どうやら熱中しているらしい。それも無理からぬことなのだろうと理解してやる。
仕方なさそうに苦笑したアネモネは再び地面に膝をついた。
先程より幾分力を失くして柔らかくなったペニスを口に含み、ちゅーちゅーと吸ってやる。
付着していた精液を舐め取ってわずかな快感。唇を塞がれるハルタは何も言えずに、気持ちよさそうにしている。
きれいにしてからちゅぱっと勢いよく口を離して、そういえばとA2へ言った。
「キスをするのは構わないが、あまり乱暴にするなよ。そのボディではハルタを傷つけかねない」
「んん、ちゅ、うるさいな……わかってる」
「もしその気があるなら、換えることは難しくとも機能を追加することはできるが」
何も言わなかったがA2がわずかに身じろぎした。
この場は何も言わなかったとはいえ、後での反応は大体予想できている。
アネモネは敢えて何も言わず、尚もキスに没頭するA2と受け入れるハルタを眺めていた。