「私たちは罪を犯した」
「正確には、私たちの同型機が大昔にね」
双子のアンドロイド、デボルとポポルが寂しげな表情で呟いた。
髪型こそ違えどどちらも赤毛で、顔がよく似ており、双子と言われて納得する。髪には白い花のコサージュが対照的な位置に付けられていた。
彼女たちは、アンドロイドのメンテナンスと治療を専門とするアンドロイドだ。専門の機能が備わっているらしく、その機能は人間には使えないが、型が古いために人間への対処も心得ているだろうと、彼の健康に関するチェックを任されたのだと説明された。
特別な機械を用いるわけでもなく、手を握られただけでチェックを終えられ、体は健康だと診断された後の会話である。
二人にはどうやら大きなトラウマがあったらしい。かつて、アンドロイドである彼女たちが大昔と表現するほどの過去に、同じタイプのアンドロイドが大きなミスを犯し、そのことが今でも他のアンドロイドの怒りを買っているのだろいう。迫害されているらしいと知って、ハルタは表情を歪めずにはいられなかった。
レジスタンスキャンプにいるアンドロイドたちのことは好きだ。だがそれとこれとは話が別だと思い、キャンプの隅で所在なさげにしている二人の姿を思い出し、あんなことがあっていいのかと怒りを覚える。
元よりハルタは他人の悪意を必要以上に感じ取り、たとえ自身に向けられたものではなくとも敏感に受け取って、自らの気分を害したり、居心地が悪いと表情を変えることがあった。
過去によっぽどの出来事があったのかもしれない。けれどそれは大昔の話であって、水に流す機会があってもいいはずだし、同タイプの別個体だというならなおさら理不尽だと思ってしまう。
同じタイプであっても、別の個体ならここにいるデボルとポポルには関係ないではないか。憤りを覚えるハルタは今すぐにでも動き出そうとしていた。
今まで朗らかだった表情が険しくなり、心配してくれている。彼の変化に気付いている二人はそれだけで嬉しく思っていた。
「そんなの、二人には関係ないじゃないか。ここにいるデボルとポポルが悪いことをしたっていうなら、その場合でも良くないと思うけど、同じ型のアンドロイドの別の誰かなんだったら、二人が責められることないと思う」
「そうかもしれない」
「でもそれだけ大変なことだったの」
「俺、みんなに話してみるよ。俺を助けてくれたし、みんなのことは好きだけど、そんないじめみたいなことしてほしくない」
衝動を我慢せず言葉にして、怒りを滲ませたハルタに二人は微笑んだ。
そんな必要はない。彼女たちは考えもせずにそう口にする。
「いいのよ。私たちのことは気にしないで」
「でも」
「みんな何かに縋るしかなかったんだ。生きる理由が必要だった。地上から人間がいなくなって何をすればいいのかわからなくて、私たちに怒りをぶつけていたのも、ある意味では自分たちを守るためだったんだと思う」
「そんなの……だからって」
ハルタは納得し難い、複雑な表情を浮かべていたが、二人の笑顔を見ると何も言えなくなる。
「そう言ってくれただけでいいわ。あなたが認めてくれたことが、私たちにとっての救い」
「それにあいつら、人間がいるって聞いたら目の色変えてさ。今更私たちに構おうなんて奴もいないし、お前がいるだけで状況は変わったんだ」
「ありがとうハルタ」
「私たちのことで気に病むな」
本人がいいと言うのだから。そう納得しようとするも、胸中は複雑なままで、とても良い気分にはなれそうにないハルタの表情は晴れない。
話さない方が良かったのかもしれない。気に病む様子を見て少し後悔する。彼が暗い顔をしているだけで彼女たちまで悲しい気持ちになってくる。
悲しい顔は見たくない。
デボルが手を伸ばしてハルタの顔に触れる。指先で頬を撫でて、くすぐったそうにする彼の表情が緩んだのを見て安心した。
「そんな顔するなよ。私たちは嬉しいんだ」
「ええ、そう。生きた人間に会えたから」
「ハルタに、会えたから」
ハルタの頬に触れる手が、明らかに変わる。彼を元気付けるためでなく、愛おしそうに、離れ難いと伝えるかのようにするりと肌を撫でる。
こんな日が来るとは思っていなかった。
生きている。アンドロイドとは違う。人間に似せて作ったボディではない。この手に触れているのは偽物ではない。本物の人間。
この感情はなんだろう。感動はなぜだろう。
ただ触れているだけで今までにはなかった感覚が生まれている。どこのパーツにも設定されていない、メディカルチェックをすれば異常だとしか判断されないだろうもの。
二人はハルタを気遣っていたわけではない。彼に対しては常に本心を明かしていた。隠し事をするつもりは毛頭なく、隠す必要がないと感じ、全幅の信頼を置いている。
何よりも尊く、他を差し置いた絶対。
人間であるハルタは今の地上において、誰にとっても神に等しい存在だ。
名残惜しそうに目元を撫でた後、デボルの指が離れていく。
顔を近付けて覗き込まれ、ポポルがハルタへ言った。
「一つだけ、お願いをしてもいい? あなたが私たちを想ってくれるのなら」
「何?」
「もうわかってるはずよ」
ポポルがハルタの隣へ移動した。体を寄せて座って、膝の上に置かれた手へ自身の手を重ねる。優しく包み込むように握って、さらに近くで顔を覗き込んだ。
目つきからしてうっとりしている。アンドロイドを相手にした時、よく見る目だ。
手を握る力は決して強くない。けれど離そうとしない確固たる意志を感じた。
わかってるはずだと言われて、ハルタは顔を赤くする。
つい先日のことだ。初体験を終えて、良い思い出として残っている。彼とて思春期の男性、美しい女性に誘われて断る理由などない。
敢えて言葉にするのは恥ずかしいのか、頷いたのを返事にする。
受け取ったポポルは笑みを深めて、彼のズボンに手をかけ、ゆったりした動作で脱がせる。ベルトを外して尻を上げさせ、下着と同時に足首まで下ろさせた。
当然、彼のペニスが外気に晒される。ぴくんと反応して、今は大人しいが、確かに勃起しようとしているのが伝わってきた。ポポルは微笑み、デボルはわずかに羞恥心を見せて、少し緊張した面持ちで二人の行動を見ている。
「私たちは、あなたが幸せだと感じているならそれで幸せなの。こういうことも、喜んでもらえると思うのだけど」
「え、えっと、まあ、確かに……」
「もちろん、私たちがあなたとしたいからって理由もあるのよ。うふふ」
顎に手を添えて上を向かせ、唇を合わせる。触れるだけの優しいキス。少しだけ触れて、すぐに離れて、首の角度を変えながら何度も短いキスを繰り返す。
やがてポポルの舌が出て、ハルタの唇を撫でた。彼はあっさり受け入れて、興奮している様子だがポポルの愛撫を受け入れている。
デボルは見ているだけだったが、見ているうちにもじもじと落ち着きがなくなっていく。
ポポルが口を離した時、全く躊躇わずに彼のペニスを握っていて、キスで勃起したのを確認すると竿を手で扱き始める。
ハルタが小さな声を漏らして、デボルの体がびくっと跳ねた。
「デボル、舐めてあげて」
「え? そ、そうか……わかった」
おずおずと動き出したデボルがパンパンに膨らんだ亀頭に顔を近付け、赤々とした色を間近で確認すると、思わず息を呑んだ。
ポポルのような余裕はないが、嫌だという気持ちは微塵もない。
舌を伸ばして触れてみる。ハルタが深く息を吐き出したのがわかって、気持ち良さそうだと認識したことが彼女を大胆にした。
キスをしながらポポルが手コキをして、デボルが亀頭に舌を這わせる。
双子ならではなのか、協力してハルタを満足させようとしている。嫉妬は皆無なようで、いざその時を迎えても彼を挟んだ二人がいがみ合う様子はなかった。
あいにくハルタに堪え性はない。
あっと一際大きな声を発して、ぴゅっと精子が飛び出た。デボルがきゃっと可愛らしい悲鳴を発して顔を背けるのだが、頬には彼の精液が付着している。それを自覚したデボルは嫌がるどころか興奮した面持ちになって、ポポルは羨ましそうな顔をする。
「まだまだこれから……ね?」
ポポルが耳元で囁いた。ごくりと息を呑み、ハルタは頷く。
これが自分の役目だと聞いている。だから受け入れるのは良いことなのだ。まるで言い訳をするように、気付けばそう言い聞かせていた。