―達也―
少しばかり…いや、少しじゃなく、かなり気が重かった。
亜美さんの膣内(なか)に射精した直後に覚えていたはずの充実感は、驚くほどにアッサリと消えた。そして残ったのは、後悔と自責の念だった。
亜美さんのイキ顔は、今でもハッキリと思い出す事ができる。わずか数日前の事だから忘れる訳はないんだけど、それにしてもリアルに、記憶の真ん中にぴたりと貼り付くようにして。
哀れだと思った。見ず知らずの男に体を捧げ、逃げられないように力強く押さえつけられながら、無理やり膣内に精液を注がれた女性の心情を思うと…そして何より、そんな惨(むご)い仕打ちをしたのが他ならぬ自分だという事実に、強烈に心が痛んだ。
しかも俺は、亜美さんに中出ししながら、確かな快感を覚えていた。この女を征服してやった…そんな愉悦に浸っていたと…
亜美さんはきっと、俺から種付けを受けた事を後悔しているだろう。俺の事を憎んでいるに違いない。だって俺は、ある意味ではレイプと変わらないような酷い仕打ちを亜美さんにしてしまったのだから。
もう、辞めよう。俺に期待してくれている玲奈さんには申し訳ないけど、もうとても種付けを続けようという気持ちにはなれなかった。これ以上続けても、俺は種付けの度にレイプ魔と化して、その度に俺を憎む女性が増えていくだけだから…
そう決心した俺は、その日の内に玲奈さんの元を訪れた。もう種付けは辞めますと伝えるために。
「あら、いらっしゃい」
そんな事情を知らない玲奈さんは、明るく俺を迎えてくれた。その笑顔すらも、今の俺には重く感じられた。
「どうしたの?連絡も無くいきなり訪ねて来るなんて初めてじゃない」
「ええ、どうもすみません…」
玲奈さんが冷たいお茶を用意してくれる。どうやら未華子ちゃんは不在、言うまでもなく俺にとってはありがたかった。
「この間の種付け、ご苦労様」
「え、あ、はい」
機先を制するように言われて、どう返そうか困っていると。
「なかなか素晴らしい仕事っぷりだったと聞いてるわよ。初めてなのにやるじゃない」
「いえいえそんな」
聞いてるって一体誰からだよと思ってしまう。まあ、玲奈さんなりの言い回しで褒めてくれてるだけなんだろうけど。
「それで、今日はどんな用があって来たの?」
「…えっと、実はどうしてもお伝えしたい事がありまして」
「ふうん、初めての種付けで何かあったんだ?」
「え、あ…」
ストレートに聞かれ、言葉に窮してしまう。
どう切り出すべきかな…そう思いながら少しばかり思案していると。
「実は、私からも達也くんに伝えておかなきゃいけない事があるのよ」
「へ?」
「はい、これ」
と、俺が何か言う前に渡してきたものは。
「…アンケートの回答結果?」
「HFPでは種付けの度に、女性にはアンケートに答えてもらっているの」
見てみると、アンケートの回答者は亜美さんだった。
「言うまでもなく、アンケートの目的はサービスの向上よ。アンケート結果は男性スタッフ…つまりは達也くんにしっかりと確認してもらって、次回以降の種付けに役立ててもらう事になってるの」
「はあ…」
次回以降なんて言われても、もう辞めるつもりなんだけどな…そう思いながらも、とりあえずアンケート結果を確認する。
どうせ散々な言われようだろうな、そう覚悟しながら…
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Q.種付けを務めた男性スタッフの態度や口調はいかがでしたか?
A.とても優しく、紳士的な方でした
Q.男性スタッフの容姿や、接してみての印象はいかがでしたか?
A.爽やかで、すごく清潔感のある方という印象でした
Q.男性スタッフは依頼者様のご要望にどの程度お応えできていましたか?
A.行為の最中、私が何度も無理を言ってしまったのですが、達也さんは嫌な顔一つ見せる事なく、丁寧に私の希望に対応して下さいました
Q.種付けの最中、苦痛は感じませんでしたか?
A.感じませんでした。達也さんが一生懸命そうして下さったのだと思います
Q.今回の男性スタッフが提供した種付けについて、10点満点での採点をお願いします。
A.10点(満点)
Q.最後に、男性スタッフに対して不満に感じた点や改善すべきと感じた点、その他男性スタッフにお伝えしたい事などがございましたら、ご自由にご記入下さい
A.不満なんて何もありません。達也さんはとても優しく紳士的な方で、素晴らしい対応をして下さいました。本当に感謝の気持ちしかありません。
今回、実際に種付けを受けてみて、子どもを産みたいという思いが一層強くなりました。もし今回は残念な結果に終わってしまったとしても、できる事なら妊娠するまで何度でも達也さんに種付けして頂きたいです。達也さんのように優しくて立派な殿方の子どもを産みたいです。はしたない希望だとは分かっていますが、どうかお願い致します。
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「……………」
全く予想していなかった回答に言葉が出なかった。感動してしまって言葉が出なかった、と言った方がいいかもしれない。
「やるじゃない。妊娠するまで何度でもなんて、そんな事滅多に書かれないわよ」
「いや、恥ずかしいですね…」
マジで恥ずかしかった。でも、恥ずかしさより嬉しさの方が圧倒的に勝った。まさか亜美さんが、ここまで満足してくれていたなんて…
心を覆い尽くしていたはずの罪悪感が、少しずつ氷解していくのを感じた。自分は亜美さんに酷い事をしてしまったと思ってたけど、でも実は全然そんな事はなくて、むしろ亜美さんはこんなにも俺に感謝してくれていたんだ…
俺を憎むどころか…俺を求めてくれて…
「で、達也くん、どうする?」
そんな俺の感動を見透かしたように、玲奈さんが。
「クライアントのそんな切実な声を聞いても、やっぱり種付けを辞めるって言うの?」
「えっ…!?」
その問いかけに、思わずドキッとしながら。
「や、辞めるなんて一言も言ってないですけどっ…?」
「あら、そうだっけ?」
「い、言ってませんよ。ていうか突然何言ってるんですかっ?」
「なーんか、達也くんがそう言いたそうな顔してるように見えたんだけど」
「っ…」
そんな顔してたのか…そう思うとまた恥ずかしさが込み上げてくる。
「初めての種付けで色々考える所はあったと思うけど、でも亜美さんの思いはそのアンケートある通りよ。言ったでしょ、世の中には達也くんの力を必要としてる女性が沢山いるんだって」
「そう…ですね」
もう一度アンケートに目を落とす。そして玲奈さんの言葉を再度噛みしめる。
俺の力を必要としてる女性が、この世にはまだまだいるんだと…
「種付けっていうお仕事、やり甲斐あるでしょ?」
「…ですね」
自分自身の意思を確認するように言うと、玲奈さんは安心したように小さく微笑んだ。
妊娠するまで何度でも種付けして欲しいとアンケートには書かれていたけど、その必要はなかった。
なぜなら、種付けから少しして、亜美さんが無事に妊娠したという知らせを聞く事になったから。
2章終了です。
3章からは格闘技メイン、たまに種付けの展開になります。
引き続きよろしくお願いします。