3-1 二刀流
かくして、キックボクシングと種付けという二刀流生活を送る事になった達也だが。
種付けは順調にこなすのに対して、本業である筈のキックボクシングの方は活動が停滞気味だった。
だが、決して種付けにかまけてキックボクシングへの取り組みをおろそかにしていた訳ではなかった。種付けのペースは週1~2回に抑えてジムには基本的に毎日顔を出しているものの、肝心の試合相手が中々見つからないのだ。
実力者の石井幸三を1ラウンドで粉砕した衝撃は相当で、『knock out』の範疇ではもはや達也と対等に戦えそうな相手は存在しないというのが実情だった。『knock out』の運営が他ジムの選手に対戦のオファーを出しても、達也の名前が出るや否や「ウチの選手を潰されてはたまらない」と話を打ち切られる始末。まともな対戦相手を見つけられそうな気配は皆無だった。
そんな状況にはFAILYのオーナーである晴香もかなり責任を感じていたのだが、当の達也は。
「気にしないでください。ま、俺が強すぎるのがいけないんですよね」
と、全く気にしていない様子。だが本心では、早いとこ適当な試合を組んで欲しいとも思っていた。玲奈から「達也くんが種付けをするに相応しい男である事を証明するために、もっと試合して連勝して欲しいの」と言われまくっていたのだ。
そして、種付けをしている事自体に関しては充希以外の誰にも伝えていなかった。まあ、当たり前といえば当たり前の話である。
「ボクシングか総合格闘技に転向してみる気はない?」
ある時、晴香は達也にそんな提案をしてみた。キックボクシングはボクシングや総合格闘技に比べて競技人口が圧倒的に少なく、したがって試合を組むのが難しい。それは日本のみならず世界的な潮流だった。
だが達也は、ボクシングも総合格闘技も全くやる気は起きなかった。達也が最も得意としているのは長い足をフルに活かした蹴り技であり、キックを封印されたボクシングルールで戦う姿は自分自身全く想像できなかったのだ。
そして総合格闘技に関しては、ボクシング以上に抵抗を感じていた。なぜなら(これはあくまで達也の中にある偏見なのだが)、総合格闘技はお互いの体が密着するから気持ち悪い…というのが達也の持つイメージだった。相手が女性ならいいけど、何が楽しくて筋肉質の野郎と密着して肌をこすり合わせなきゃいけないんだ、と。
結局、ボクシングや総合格闘技への転向の話はやんわりと拒否して、これまで通り東南アジアから選手を呼んでキックボクシングでの試合を行う事になった。達也のプロデビューからちょうど1年となる9月25日開催の『knock out』に無理やり試合を組み込むような形で、達也のプロ9戦目が行われた。石井幸三戦以来、約2か月半ぶりの試合である。
相手はタイの選手だった。だが急遽呼び寄せた選手という事もあり実力・調子ともに今一つで、達也の相手を務めるのは完全に力不足だった。試合は開始直後から達也が前に出て、圧力で相手を圧倒。左右の連打であっという間にコーナーへと追い込み、最後は強烈なリバーブロー(肝臓を狙ったボディ)を叩き込んでKOした。ハイキックで華麗に決めてやろうと思ってリングに上がった達也だったが、キックを出す前に試合は終わってしまった。
そしてその日の夜、達也は試合後に行われるFAILY恒例の打ち上げ食事会を欠席した。
理由は言うまでもなく、彼が担っているもう一つの仕事をこなすためである。
………………………………………
某高級タワーマンションの一室。
数時間前にリング上での試合を1ラウンドで終わらせた達也は、舞台をベッドに変えて『第2ラウンド』を戦っていた。
「ああんんんっ、あっ、あはぁっ、はぁぁぁぁっ…!!」
長大なモノを容赦なく抜き差しされ、女性の嬌声が響く。やはり第2ラウンドも、第1ラウンド同様に達也のペースで事は進んでいた。
試合直後の種付けなど通常ならまず考えられないが、達也にとってはあくまで当初からの計画通りの進行に過ぎなかった。試合の日程は変える事ができないし、女性の排卵日も当然変える事はできない。ならばキックボクシングと種付けのダブルヘッダーをこなす以外に方法はない。そのためには第一の仕事であるキックボクシングを無傷で乗り切る必要があるのだが、達也にとってそのくらいは朝飯前。前代未聞とも言うべきミッションをあっさりとこなしてしまう辺りは、さすが玲奈が『史上最高の逸材』と評するに相応しい男だった。
「あっ、あっ、あっ、あっ、あっ、あっ、あああっ…!」
後背位から、女性の腰をガッチリと捕んで腰を前後させる。そのリズミカルな動きは、まるで試合後のクールダウン代わりの運動のようだ。
腰を押し込む度に、モノの先端が女性の最奥をググッと押し上げる。その都度、女性の喘ぎ声が上がる。
「大丈夫ですか?」
腰を動かすペースは変えずに、達也が尋ねた。
「は、はいっ…あっ、あうっ、大丈夫っ、ですっ…」
「痛かったら言って下さいね。緩めますから」
ここまでの雰囲気からも十分感じられるように、達也はもうかなり種付けに『慣れ』ていた。デビュー戦で亜美を相手にした時のように衝動に負けてしまうような事もなく、今では種付けという任務に誇りを持って女性と対峙する事ができていた。目の前の女性に子どもを授けてあげられるのは自分しかいない…彼女の幸せは自分の頑張りにかかっているんだ…と。
ちなみに、達也がこの女性に種付けするのは今日が2回目。ちょうど1か月前にも種付けしたのだが、残念ながらその時の結果はハズレ、妊娠には到らなかった。なので達也の巨根は既に経験済みなのだが…
「だ、大丈夫ですからっ、どうかっ、遠慮なくっ…あぁうぅっっっ!」
大丈夫と言いながら実際はそこまで大丈夫でもなく、女性の感覚には確かな痛みが混在していた。だが、それもある意味当然だった。達也の巨根は1度や2度で慣れられるようなレベルではないのだ。
だが達也自身は、女性が痛そうな素振りを見せても、正直言ってあまり気にしていなかった。これもまた、経験を重ねる事で培った『慣れ』である。いたずらに女性を痛がらせるつもりはないけれど、ある程度のスピードで動かなければ無駄に長引いて、結局は女性をより苦しませてしまう事になってしまう。ならばある程度の痛みは我慢してもらうしかないだろう…それにもし出産に到ればその時はもっと痛いんだから、ぐらいに考えるようになっていた。
もう少しすると気持ち良くなる筈だからちょっとだけ我慢してくださいね…そんな気持ちで達也は遠慮なく腰を振り続けるのだった。
………………………………………
シャワーを終えて達也が部屋に戻ると、女性はベッドの上で頭の位置を低くし、仰向けになって寝そべっていた。
実はこの体勢こそが、種付け後に女性が取るべきとされているポーズ、通称『妊娠ポーズ』である。仰向けになって安静にする事で精子を子宮に流し込むための姿勢だ。
「あっ、達也さんっ…」
達也が戻ってきた事に気付いて、女性が一瞬体を起こそうとするが。
「ダメですよ、そのままの体勢でじっとしてないと」
それを制して、達也はベッドの端に座る。第2ラウンドでしっかりと女性を『KO』して膣奥に大量の精液を注いだペニスは、今はだらりと下を向いていた。
とはいえ、全く力の篭(こも)っていない状態でも、常人の全力時を軽く上回るサイズを誇っているのだが…
「あの…達也さん」
「はい?」
その時、女性が言った。
「今日は…本当にありがとうございました」
「いえいえ、当然の仕事をしたまでですから」
「でも、大事な試合の直後だったんですよね…?」
「ああ…」
大事な、という修飾語に達也は思わず苦笑いしつつ。
「そういや試合なんてありましたね。すっかり忘れてましたよ」
「ご、ご冗談を…」
「ホントですよ。現に相手の顔はもうあんまり覚えてないですから」
それは半分本当で、かすかに憶えているのはリバーブローを叩き込んだ直後の悶絶している表情だけだった。
「俺にとっては、キックボクシングよりも種付けの方がずっと大事な役目だと思ってますから」
「そ、そんな…」
「何せこっちは人命がかかってますからね」
実際、達也にとっては第1ラウンドよりも第2ラウンドの方がよっぽど体力を必要とするラウンドだった。現に第1ラウンドはたった48秒で終わらせたが、第2ラウンドは30分近くも戦ったのだから。
「その…試合の方は…勝ったんですよね?」
女性が恐る恐る聞く。達也の答えは簡潔で。
「まあ、負けたら流石にここには来ないですよ」
それを聞いて、女性がくすっと微笑んで。
「達也さんって、常に自信満々って感じですよね」
「そうですか?」
「はい。凄く素敵だと思います」
「どうもありがとうございます」
「私、絶対に子どもを産みます。達也さんみたいな、強く逞しい男の子を産みたいです…」
「そうですね、でも焦らないでください。もし今回ダメだったとしても、成功するまで何度でも協力しますから」
「はい…お願いします…」
仰向けになりながら、女性は小さく顔を前後させた。
その健気な姿に、達也の男心は試合に勝った時以上に満たされるのだった。