※この作品はR-18です。

種付けファイター達也くん   作:minnie_remon

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4-6 冷静な判断

 金田悠希との試合を打診された達也だが、受けるかどうかの結論はまだ出ていなかった。

 本音としては、できれば試合を受けたいと思っていた。やはり何と言っても莫大なファイトマネーは魅力的で、一生食うに困らないような大金を目の前にぶら下げられながらみすみすそれを見逃すのは男としてどうなのよ?という思いは小さくなかった。加えて、今後REALで戦っていくからには総合格闘技への挑戦は避けて通れないというのも何となく感じていた。残念ながらキックボクシングはマイナー競技、どれだけ勝っても大して稼げないのは目に見えている。

 とはいえ、向こう見ずに総合格闘技のリングに上がればどんな悲惨な結果が待っているか分からないというのもまた事実。何せ達也は総合格闘技の練習など1秒たりともした事がないのだから。大金に目がくらんで安易に試合を受けたが最後、それこそ金田に歯を全部へし折られて総入れ歯生活になってしまうかもしれない。だから試合を受ける方向で前向きに考えつつも、最終的な決定は依然として下せないままだった。

 

 

 とりあえずは回答を保留したまま、しかし試合を受ける事を見越して、達也は金田戦の対策に取り組む事にした。

 その手始めはやっぱり、金田の試合映像を分析する事である。

 荒々しいファイトスタイルが有名な金田だが、単に荒いだけではなく優れた技術を有したファイターである事はREAL無敗という戦績からも明らかだ。実際、達也が金田の試合をじっくりと観察して抱いた率直な感想は、普通に強い選手だな…というものだった。

 パターンとしては打撃で優位に立てる相手には打撃で押し込み、そうでない場合には低く鋭いタックルを仕掛けてテイクダウンを狙う。そして一度テイクダウンを奪えば、後は強烈なパウンド(相手の上になった状態から振り下ろす打撃)の嵐。多少体勢が不完全でも強引なパウンドで相手の体力を削り、隙あらば関節技や締め技へと移行する。それら一連の流れは力強く、REALという最高峰の舞台で不敗を誇っているのは伊達じゃないと達也は素直に思った。

 そして、何試合か確認した中で最も印象的だったのが、やはり自身と同じ立ち技の選手である木山肇との試合だった。空手の実力者である木山の打撃に対して金田は全く怯む様子はなく、むしろ自ら仕掛けてあっさりとテイクダウンを奪ってしまった。

 そこからは、あまりに一方的だった。

 反吐が出る…達也は本気でそう思った。テイクダウンを奪ってから決着までの数分間に試合としての価値はなく、それは金田が木山を嬲(なぶ)るだけの残酷なショーに過ぎなかった。殴る者と殴られる者、圧倒的優位な立場に立った者が無力な者を一方的に殴り続けるその光景は、もはや格闘技ではなかった。

 なぜこんな残忍な事ができるのか…達也は怒りにも似た感情を覚えずにはいられなかった。金田の実力があってグラウンドであれだけ有利な体勢を築けば、簡単に関節を極める事ができた筈だ。それをせず、ただ延々と殴り続ける…それは万が一にも逆転を許さないという意味においては決して間違った戦略ではないのかもしれないが、達也の価値観とは絶対に相容れないものだった。

 そして試合後のマイクパフォーマンス。金田が相手を侮辱するような発言を繰り返しているようなイメージは達也も持っていた。ただ、具体的にどんな発言をしてきたかという事は全く知らなかった。

 

――空手など話にならない

 

 腹が立った。無性に腹が立った。空手家の偉大な先輩が一方的に殴られ続け、最後は締め落とされて血を吹きながら失神し、挙げ句の果てに空手を侮辱し罵倒される…それは空手と共に歩んできた達也にとって、これ以上なく悔しく、そして許せない光景だった。やり返したい、空手家の意地とプライドをかけて金田をKOしたい…そう思った。

 だが、少なくとも総合格闘技におけるグラウンドの攻防においては、空手の打撃が全く無力だという事は厳然たる事実だった。空手の世界選手権で準優勝という実績を持つ木山がテイクダウンを許して以降、全く反撃できず一方的に殴られ続けた姿が、その事実を如実に証明していた。

 悔しい…でも勝てる保証は全く無い。むしろ勝てないだろう…

 それが、金田の実力を分析して達也が得るに到った、冷静な結論だった。

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