※この作品はR-18です。

種付けファイター達也くん   作:minnie_remon

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4-11 前日会見

 小野達也vs金田悠希。

 試合が正式に発表された直後からファンは沸き立った。パク・チャンミンを倒して一躍ヒーローとなったキックボクサーと空前絶後の悪役にして実力的にも日本最強クラスと目される総合格闘家が、大晦日に異種格闘技のような形で相まみえる…それは格闘技ファンのみならず、格闘技に興味が無いような人たちの興味も大きくそそる、これ以上無いと言い切れるような好カードだった。

 人々が応援するのはもちろん達也の方である。絶大な人気を有する両雄だが金田はあくまでも悪役、つまりはアンチに支えられた人気であり、真の意味での人気という点においては圧倒的に達也が上。ファンは誰もがパク戦の再来を、達也が金田を粉砕するシーンを期待した。

 しかし、支配の勝敗予想という点においては、金田有利の声が圧倒的多数だった。その理由はやはり、総合格闘技という試合のルールにあった。総合格闘技のリングは甘くない、それはこれまで金田自身が己のキャリアで証明している。元関取の朝ノ富士や世界レベルの空手家である木山が金田を相手にほとんど何もできないまま無惨に敗れ去った事はファンもよく知っている。小野達也は多額のファイトマネーに目が眩んで死刑台に上がった…そんな声すら上がるほどだった。

 

 そして、前日会見の日がやってきた。

 達也と金田の試合は、全14試合中の第11試合だった。なぜ最注目であるこの一戦がメインではなく第11試合という微妙な試合順に設定されているのか、それは中継局であるフジテレビの意向が大きく反映されていた。というのも、この第11試合の開始予定時刻は午後9時前なのである。だから何?と思うかもしれないが、実はREALと視聴率を争うNHK紅白歌合戦が、午後8時55分から午後9時まで5分間のニュースを放送するのだ。言うまでもなくその間はNHKからチャンネルを変える視聴者が多い。紅白歌合戦から一時離脱した視聴者をガッチリと捕まえるために、大晦日のREALでは午後9時前後の試合に事実上のメインカードを配置する事が恒例になっているのだ。

 会見に先立って、試合のルールが確認された。5分3ラウンドの総合格闘技ルール。目つぶし、金的、後頭部への打撃は禁止。4点ポジション(体の4カ所以上または背中がマットに密着している状態)の選手への踏み付け・膝蹴り・サッカーボールキック(頭部への蹴り)は禁止と、ここまではREALで行われる普段の試合と全く同じである。

 しかし今回の試合には、たった一点、ある特別なルールが定められていた。

 それは、両者共に格闘技用のシューズを着用する、というルールである。

 実はこの格闘技用シューズの着用こそが、達也が今回の試合を受けるにあたって唯一提示した条件だった。そこにはもちろん、達也の明確な狙いがあっての事なのだが…

 しかしルール確認に続いて行われた会見では、記者たちは誰もシューズの件については触れようともしなかった。というよりそんな些細な部分は見逃していた、と言った方が正しいだろう。記者たちが注目するのは、翌日の大一番に向けて金田と達也の口からどんな発言が飛び出すのかだけだった。

 そして会見では、記者たちの期待通り、金田のビッグマウスは健在だった。達也を「人気だけの選手」「リアルファイトは素人レベル」とこき下ろして、

「小野くんはまだ若いし総合も初挑戦らしいから忠告しといてやるけど、タップは強めにしないと気付かないぞ?」

 タップが少しでも遅れたら容赦なく腕を折ると金田は宣言した。事実、かつて金田はREALの舞台でタップが遅れた相手選手の腕を折った事がある。まさしく恐怖の予告だった。

 だが達也は、そんな腕折り宣言にも全く動じる事なく、いつも通りの余裕を携えた表情で。

「金田選手の試合は見ましたけど、打撃では自分の方が余裕で上だと思いますね」

 と、金田を逆に挑発するような事を言ったかと思うと。

「金田選手ってリーチも足も短いですよね。だから遠めの距離からのローキックで、こっちが逆に金田選手の足を破壊してやろうと思ってます」

 と、金田の体型を軽くディスりながら、戦い方を示唆する発言まで飛び出した。

 とはいえ達也が距離を取って戦うべきなのは、ワザワザ口に出すまでもない事だった。組み付かれては達也の勝機は薄い…というより皆無だ。そういう意味においても、達也が言ったようにリーチの差は重要なポイントだった。会見に先立って行われた計量では、身長では達也が8cm、リーチでは15cmも達也の方が上回っていた。足の長さは測られてはいないが、おそらく10cmは達也の方が長いだろう。このサイズの差をフルに活かす事は、達也が勝つための絶対条件と言えた。

 それを自認するように、達也は会見を通じて『距離』という言葉を何度も口にした。距離感を常に意識したい、相手の距離にならないようにするのが大事、タックルに入られない距離を…と。

 

 実は、達也の作戦はこの時から既に始まっていた。

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