※この作品はR-18です。

種付けファイター達也くん   作:minnie_remon

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5-5 お疲れモード

 試合後、ファンは敗れた清水の潔(いさぎよ)さを称賛した。もしラウンド間にタオルを投入していなければ試合は第2ラウンドへと進み、少なくとも達也の連続1ラウンドKO記録をストップさせる事はできた。そうせずに1ラウンドKO負けを受け入れた清水は素晴らしい、と。

 だが当の清水には、2ラウンドに進むという選択肢は1ミリたりとも無かった。1ラウンドが終わった時点で既に心身共にボロボロでとても戦い続ける気力は残っていなかった、ただそれだけなのである。実際、試合後清水はまともに歩く事もできず、1週間超の入院生活を余儀なくされる事になる。そして試合前の言葉通り、ひっそりと現役を引退をした。

 そして実は、達也に敗れた事がきっかけで現役を去った男は清水だけではなかった。達也がスターダムに昇り詰めるきっかけの相手となったベテランファイターの石井幸三は、達也に完敗を喫した事で引退を決意した。また、達也がデビュー戦で戦った中村は、達也との試合以降深刻なパンチ恐怖症に陥ってしまい、以降はリングに上がっていない。プロのリングにおいて、勝者と敗者のコントラストはあまりにも残酷だ。達也の栄光は、ライバルたちの屍の上に存在しているのである。

 清水戦後も、達也には様々なオファーが舞い込んだ。テレビ出演やCMだけでなく、企業のイメージキャラクターや雑誌の表紙といった広告塔としてのオファー、さらにはプロ野球の始球式や消防署の1日署長などイベント色の強いものまで。それらのオファーを達也はスケジュールの許す限り快諾し、そして求められる仕事を一つ一つ丁寧にこなしていった。ややもすれば過剰なメディア露出はアンチを生む要因にもなるが、爽やかで全く嫌みの無いキャラクターの達也に関しては、メディアに露出すればするほど好感度が増していくような状況だった。

 

………………………………………

 

 ギシギシとベッドが揺れる。呼応するように、アンアンと女性が喘ぐ。

 この日も達也は、子どもを産みたいと願う女性を組み敷き、膣奥に命の息吹を吹きかけるべくガシガシと腰を送っていた。

「んあんんっ…あっ…はああぁっ…あっ、ああっ…あっあっあっあっ…いぁぁっ…」

 下腹部に連打される強烈な責めに、たまらず女性が体をくねらせる。それを達也がガッチリと押さえつける。

「あぁっ…あっ…ああぁっ、あっ、あっ、ああぁっ…」

 無意識に女性は体を逃がそうとするが、鍛え抜かれた達也の肉体の前では、女性の力など無に等しい。女性の体がズレないように、自分がモノを抜き差ししやすいよう固定して、隙あらば逃げようとする体を完全制圧すべく、力強く腰を送る。

「はあぁぁっ、あっ、ああっ、あっ、あっ、んあっ、あっ、あっ、あっ、はあぁっ…!」

 すると少しずつ、女性の体が大人しくなってゆく。体自身が逃げられない事を悟ったのか、それとも逃げる必要はないと理解したのか、いずれにしても達也の動きに対して、少しずつ従順になってゆく。

 それを感じて、心の中で達也は小さく息をつく。もう力を緩めてもいい頃合いか…と。

 そしてなお、マシンのように小気味よく腰を送り続ける。今度はどちらかというと自分のため、射精に向けて自身の感度を高めるために。

 そんなリズミカルな動きがしばらく続いて、女性の喘ぎ声をたっぷりと絞り取って。

「はおおおおおおうううううぅぅぅぅっっっっっっ………っ!」

 最後に、トドメの一撃とばかりに、モノを最奥まで思いっ切り突き刺して。

 射精。ドクドクと、子種が濃縮された白濁の液体を注ぎ込む。

 力が抜けていきそうになるのをぐっと堪えて、女性の腰をガッチリと引き付ける。できる限り奥に射精するために、快感に身が溺れそうになるのを耐えながら。

 タプタプと、膣内が精液で満たされていくのをペニス自身が感じる。達也の1回の射精量は常人の数倍、狭い穴では収まりきらずに射精しながらトロトロと外へ溢れ出てしまう事だって珍しくない。

 それでも、受精する確率を0.1%でも高めるために、最後の一滴まで惜しみなく吐き出して。

「はぁっ……っ」

 無事に射精を完了し、達也が息をつく。まるで全力ダッシュの直後のような、大きな息を。

(あー……やば……)

 射精特有の圧倒的な快感と、それにも勝る疲労感。気を失いそうになってしまうのを、必死に振り払って。

「…終わりましたよ。お疲れさまでした」

 もうほとんど意識を手放している女性に、優しく告げて。

 額に滲む自身の汗を手で拭って、また一つ、息をついた。

 

………………………………………

 

     ―達也―

 長めのシャワーを浴びて、部屋に戻る。

(はあ…)

 また一つ、心の中でため息をついてしまう。認めたくないけど、体は相当に疲れていた。試合よりも種付けの方が疲れる…ってのは種付けを始めた当初からの実感だけど、最近はそれが特に顕著だ。

 正義感…って言うとカッコつけ過ぎかもしれないけど、今の俺を種付けへと駆り立てているのは、紛れもなく正義感に他ならなかった。責任感…と言った方がいいかもしれない。俺は選ばれた男だ…俺は恵まれない女性に子宝を授けてあげるという責任を託された男だ…そう思う事でかろうじて自分を保っている。そもそも種付けは無報酬、どれだけ頑張っても懐が潤う事もなければ、社会的に認められたり褒められたりする事もない。女性を抱けると言っても、大半がアラフォー前後の女性。こんな言い方をすると本当に失礼だけど、モノを勃たせるのに一苦労の女性だって珍しくない。そして今日のように行為の最中にじっとしてられない女性の時は、押さえつけるのに結構な力も必要とする。只でさえこっちは睡眠不足に耐えて頑張ってるんだからせめて行為の最中ぐらいは無駄な体力使わせないで欲しいものだけど、そんな事も言えないし。

 傍から見りゃ、沢山の女性に種付けしてる俺の立場を羨ましいと思う男は多いかもしれない。でも、そんな事を思ってる奴には一度種付けをやってみろと言いたい。断言するけど、中東半端な奴には種付けは絶対に務まらない。現に俺の前任者も、たった1人の女性への種付けすらロクにできずに逃げ出してしまったらしいし。ましてや俺なんて、メディア対応や格闘技までキッチリこなしてるんだぜ?

(あ”ーー……ねむ……)

 本気で眠かった。本当は今すぐにでも眠りこけたかった。何せ明日も朝早くから、特殊詐欺撲滅キャンペーンの啓発イベントとかいうよく分からない仕事が入ってるし…

 でも、まだ落ちてしまう訳にはいかない。

 妊娠ポーズでじっとしている女性とコミュニケーションを取るのも、種付けの一部だから。

「大丈夫ですか?痛い所とか無いですか?」

 眠さと疲労を押し殺して、仰向けになっている女性に聞いてみる。

「はい、今はとても楽です」

「ツラくなったら遠慮なく言ってくださいね。俺が体勢を変えてあげますから」

 そう告げて、ベッドの端に腰掛ける。

(ふぅ…)

 ぼんやりと目の前を眺めていると、ちょうど窓ガラスに自分自身の体が写っているのが目に入った。呼吸する度に割れた腹筋が蠢(うごめ)くように上下しているのは、何だかちょっとグロテスクにも見える。

 自分で言うのも何だけど、よく鍛えられた体だと思う。 ホントによくここまで鍛えたよなと思う。

 とはいえ、数か月前に比べると筋肉の質が劣化したように見えなくもない。

 というか、残念ながらその感覚は間違っちゃいないんだろう。何せ最近、ほとんどまともにトレーニングできていないんだから。それに俺はもうすぐ22歳。まだ十分に若いとは思うけど、体が成長する時期はとっくに過ぎ去った。それはつまり、ちょっとサボれば体はすぐに衰えてしまう段階に来てしまった事を意味している。

(はあ…)

 歳を取るって嫌だな…いつかこの筋肉も全部剥がれ落ちてヨボヨボになっちゃうんだよなあ…それこそ女子高生にも腕相撲勝てなくなって、「おじいちゃんカワイイ」なんて言われる日が来るんだよなあ…ぼんやりとそんな事を思ってしまう。

「あの、達也さん」

 その時、女性が口を開いた。

「ぼんやりして、何か考え事ですか?」

「え、ああ、ちょっと窓に写る自分の体を見てまして」

 すると女性も、窓の方を見て。

「本当に、凄く逞しくてセクシーな体ですよね」

「いえいえい、ショボい体で恥ずかしいと思ってた所ですよ」

「な、何を仰ってるんですか。達也さんがショボい体なんて言ったら、日本中の男性はみんな恥ずかしくて顔上げられませんよ」

「はは…」

 まあ、今は確かにそうかもしれないけど…

「それはそうと達也さん、一つ聞いていいですか?」

「どうしたんですか?」

 女性がこちらに視線を戻して。

「この前の試合、もしかして手加減してあげたり…したんですか?」

「手加減?」

「最後、無理にKOを狙わなかったようにも見えたんですけど」

「ああ…」

 清水選手との一戦、ダウンを奪った後の事を言ってるんだろうとすぐに理解する。

 確かに、再開後にラッシュをかけてればKOできてた可能性は高かっただろう。というか、できてたと思う。

 でも敢えてあの時攻めなかったのは、清水選手が応戦してきて激しい打ち合いになるかもしれない…ってのを少しだけ懸念したからだった。まあ、打ち合いになっても問題なかったとは思うけど、あの日の俺の調子はかなり悪かったから、万が一を避けてリスクを徹底的に避けたというのが事の真相だ。

 でも、今ここでそんな事をつらつらと述べる必要は全く無いから。

「こう見えて俺、何十人という子どもを持つ父親ですからね。優しいパパでありたいんで、可愛い子どもたちにバイオレンスなシーンは見せたくないですから」

「そ、そんな事を考えてらしたんですか…?」

 …まあ、本当はそんな事一瞬たりとも考えちゃいないけど。

 というか、何十人の我が子たちはまだ誰一人として物心も付いてないし。

「でも、連続1ラウンドKO記録がかかってるじゃないですか?」

「別に狙ってる訳じゃないですからね」

 今現在、俺がプロデビューしてから全ての試合で1ラウンドKO勝利中だというのは、メディアでも盛んに言われて世間にもすっかり認知されるようになっていた。何年か前に中学生でプロになった将棋の棋士がデビュー以来無敗の連勝記録を作って話題になったけど、その時と状況はそっくりだ。

 ただ俺自身は、ハッキリ言って連続1ラウンドKO記録なんて大して気にしていなかった。というか、弱い相手とばかり戦って作った記録みたいに思われそうで、ちょっと鬱陶しく感じたりもする程だった。

 だから、清水選手との試合ではようやく記録が途切れたと思ったけど…結局途切れなかった。

 そこに一抹の寂しさというか…虚しさを覚えたりもする。

 あの試合、俺は間違いなく調子が悪かった。全然まともに練習できなかったし、睡眠不足で疲労も抜けていなかった。体にキレが無かったのはよく覚えている。

 対して清水選手は、間違いなく絶好調だった。試合前のコメントもそうだったし、対峙した時に感じた体の仕上がりも申し分なかった。

 でも、試合は俺の勝ち。しかも一方的な内容で。

 清水選手はあの試合に全てを懸けてきた。でも、まともに練習もせずに楽してローキックを連発するだけの俺に全く歯が立たなかった。もっと言えば、清水選手の努力は俺の足の長さの前に全くの無力だった。

 足が長いから勝った…なんて単純なものではないけど…

 人生を懸けて向かってきた清水選手に対して、俺は真っ向勝負で迎え撃とうとせずに楽して勝つ道を選んでしまった…そう思うと申し訳なさも感じるし、何より虚しかった。そんな風にして1ラウンドKOを重ねる事に意味はあるのかと…

「でも、本当に凄いです。これで19戦連続1ラウンドKOなんですよね」

「あ、もう19戦にもなったんですか」

「えっと…もしかして把握されてないんですか?」

「そうですね、どうでもいいと思ってるんで」

「凄い…ほとんどの選手は1ラウンドで勝ちたくても勝てないのに…」

 確かにそうだよな、と思いながら。

「ふああ…俺の前で3分立ってられるような相手に、早く会ってみたいですよ」

 そんな全く思ってもいない事をつい口にしてしまうくらい、眠かった。

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