公爵家次期当主好色物語 作:ルペッタ好き
メイドと風呂に入り、部屋に戻ってリュイの身体をさらに堪能し、そのまま抱いて眠った日の翌日のこと。
我らグレモリー家次期当主御一行さまは、車でグラシャラボラス家のパーティー会場へと向かっていた。
その内訳は、まずロイガン・ベルフェゴール。まだ正式に駒入れをしていない彼女は眷属扱いではないので一行の中でもっとも格が高い女性だ。
ベルフェゴール家の当主は辞したが、最上級悪魔の位は残っているからな。
ということでメイド服ではなく、ドレス姿だ。ちなみに彼女は俺のチンポに完堕ちした淫乱ご奉仕メイドのリュイ(愛称)でもある。もうすぐ『騎士』の駒をぶち込む予定だ。
次がこの俺、リヴラクス・グレモリー。グレモリー家次期当主にして、『王』をやっている。
今回俺がグラシャラボラス家を訪問するにあたって連れ出した眷属は、
右手に『女王』のレイヴェル・フェニックス。俺の婚約者である。可愛い系ドレス。かわいい。
左手に『騎士』のラティア・アスタロト。彼女も俺の婚約者である。派手で胸元がグッと出てるドレス。谷間。
正面に『戦車』の朱乃。彼女は俺の愛人メイドである。当然メイドなのでメイド服。
といった感じで車内に座っている。リュイは朱乃の隣だな。目線をどこに向けても眼福の隙の無い布陣だ。大変結構。視線がややラティアの谷間に向かいがちになり、レイヴェルをぷくーっとさせてしまったり、リュイから「しょうがないですね」といった視線を向けられてしまうのはご愛敬ということにしてもらいたい。ラティア自身はいつもの澄まし顔だ。
なお、『僧侶』の黒歌は置いてきた。礼儀作法の練習はさせているが、まだまだ社交の場には出せない。
本人も「お貴族さまの集まりなんて、堅苦しそうでいやにゃん」と言うので、無理をさせることもないと思ったからだ。嫌がる愛人を苦手な場所に引きずり出すのも可哀想ってものだしな。
数か月+20年後には理事長夫人として人間界で活動してもらわなければならないが、貴族の集まりよりは気が楽だろう。
本当は堕天使幹部バラキエルと血の繋がりがある朱乃も連れてきたくはなかったのだが、先方から「是非に」と言われたので仕方なくだ。
「辱めるつもりはないし、痛めつけることもない。ただ、強い光力の持ち主を貸していただきたい」と丁寧に頼まれてしまったので、本当に渋々ながらだが連れて来なければならなくなってしまった。
悪魔と堕天使は長年の宿敵。天界住まいの天使どもと違って、同じ冥界に住まう種族なので衝突も多い。今も軍事的に緊張感が高まっている真っ最中だ。パーティー会場なんかに連れて行ったら、いじめられやしないかとヒヤヒヤしてしまう。朱乃をいじめるのは俺だけでいいのだ。
おのれ、グラシャラボラス家次期当主クリューハ・グラシャラボラスめ。
なにが、「ボクの弟が十年をかけて、時の中で失われていた初代さまの御力を復活させたんだ。それを是非とも披露させてあげたくてね。幼稚舎でキミにやられて以来の努力の成果を示させてあげたいんだ。頼まれてくれるよね?」だ。
弟思いのお姉ちゃんっぽい言い方をされたら断りにくいだろうが、グレモリー的に。
ペタン娘、ボーイッシュ姉、両刀、男装、ナルシスチックで音楽家とか属性を大量に搭載しやがって。
というか、ゼファードルのヤツ。悪魔のクセに年齢の近い姉と妹がいるとか羨まし過ぎないか……?
悪魔は寿命が長いせいなのか、子作りは数百年単位でするものだ。それを考えると滅茶苦茶レアだぞこれ。9歳上の実姉と、2歳年下の実妹の両方が居る男性悪魔なんてレア中のレアと言っていい。
おのれ、ゼファードル・グラシャラボラス。自慢しやがって!
と、どうでもいい怒りが沸々と湧き上がってくるが、さすがにこんなことでキレたりはしない。
「レイヴェルはグラシャラボラス本家に行ったことがあるのだったな」
「ええ、何度かお邪魔させていただいたことがありますわ」
レイヴェルに改めてグラシャラボラス家についてたずねると、ちょっと得意そうな表情で語り出してくれる。自身が本家次女イリューカの同級生として知ったことだけではなく、各所に手を回して情報収集した成果を披露するのが嬉しいのだろう。色々としてくれているようで大変ありがたい。俺ってそういうの苦手だからね。
「再確認だったが、リュイの方で付け加えることはあるか?」
「特にはございませんが、強いて言えば……お話にあった初代グラシャラボラスさまの御力が気になります」
七十二柱の名門悪魔、その始祖の魔力特性の中には現代まで伝わっていないとされているモノもある。グレモリーのように秘匿している場合もあるのだろうが、本当にゼファードルが失われていたそれを復活させたとすれば、これは悪魔の国的にはともかくとして、御家的には大変な功績だ。
「初代グラシャラボラスさまは、自身や他者を透明にする力を持っていらしたと聞いたことがあるわ」
ラティアの言葉を受けて、朱乃に目を向ける。
「透明にする力だとして、それで朱乃を光力目当てで呼び出したなると……そういうことだよな?」
堕天使勢力との緊張感が高まる中、初代の持っていた『透明にする』特性を復活させたらしいゼファードル。その披露のためにバラキエルから光力を受け継いでいる朱乃を呼んだとすると、まぁ、そういうことなのだろう。透明とは明かりを透かすこと……明りとは光のことでもある。
「初代グラシャラボラスさまは、殺戮の達人、流血と殺しの総元締めとまで呼ばれたお方ですわ。光力を使う堕天使軍との緊張が高まる中、その御力が蘇るとなれば大変頼もしいですわね」
「そうだな。ゼファードルとはしばらく会っていないが、どうなっているのやら」
レイヴェルが言うように、味方の戦力が上がるのは良いことに違いあるまい。腹パーンのことまだ気にしているかな? 俺は心が狭いから、あんな目に自分があわされたら生涯忘れんが。
グラシャラボラス家の会場に着いたところでリュイとは一旦分かれた。彼女には、ロイガン・ベルフェゴールとしての挨拶周りがある。
「久しぶりだなァ、
「あれ以来だな、
そして、会場の広間に眷属を引き連れて入ったその直後にゼファードルに絡まれた。
ゼフィというのは、ゼファードルのことだ。学友をやっていた幼稚舎の頃はそう呼んでいた。
しかし、コイツ。レイヴェルから話は聞いていたが、申し訳程度に上着を羽織っただけでほとんど上半身裸じゃないか。
見えている部分は刺青だらけだから、鍛え上げた筋肉を魅せ付けていくディハウザー・スタイルともまた違った感じだ。
「なわけねぇだろうが! チッ、クソが。バカみてぇに魔力増やしやがって……」
「魔力量の豊富さがグレモリーのウリだからな」
「限度ってもんがあるだろうがよ」
まぁ、兄上が真の魔力量を封じ込めて過ごしている現状、こういった場で感じ取れる魔力量としては俺のものが最大級になるだろう。
忌々しそうに舌打ちするゼファードルだが、その点については認めるしかなかったようだ。
「その刺青、魔方陣ね。しかも、そのほとんどが防御用のもの」
「ハッ、相変わらずお高くとまってるようだな、ラティアはよ。そういや、お前。リアスの女になったんだってな?」
ラティアはいつも通りの冷たい口調だが、ゼファードルにはそれを気にした様子がない。
「ええ、それがどうかしたのかしら?」
「いや、なにも? あの頃もベッタリだったからな。ああ、そうなったのかと思っただけだ」
なんというか、久しぶりに会ったゼファードルには、どこか余裕を感じさせるものがある。幼稚舎でのあの一件以来の邂逅なので、普段のゼファードルの様子は分からないが、それでもこう自分に自信がある感じだ。
聞いた話の通りならば、失われていた初代の魔力特性を復活させたということになるのだから、それもまぁ当然か。ことによっては次期当主の交代すらあり得る功績だ。
「お久しぶりです。ゼファードルさま」
「おう、久しぶりだなレイヴェル。イリューカは後で姉貴と一緒に来るはずだぜ」
俺やラティアとはお互い距離感を測りかねているゼファードルだが、レイヴェルに対しては……うん、妹の友達に話しかけられたお兄ちゃんといった感じだ。
というか、レイヴェルとゼファードルの妹のイリューカは学校の同級生なのでそのままの関係性なのだが。
ちなみに、朱乃はメイドの恰好をさせているので俺に付き従う使用人扱いだ。使用人というのは用もなく貴族から話しかける相手ではないし、貴族の会話に混ざる立場でもない。他所の家の使用人に絡むのはみっともないことなので、朱乃が個別に話しかけられてどうこうってことは予防できるだろう。グラシャラボラス家に呼ばれると事前に分かっていれば、アガレス家に行ったときにシーグヴァイラによろしく頼んでおくことも出来たのだが。
義姉上や、今後のリュイのような貴族よりも(権力的な意味でも)強いメイドさんというのは……例外なのだ。
いや、朱乃もそこらの上級悪魔より武力だけなら強いけどな。朱乃の光力全開退魔術ミックス『戦車』特性上乗せ攻撃は、直撃したら大抵の悪魔が蒸発する威力がある。悪魔と光の相性的にかすっただけでも大ダメージ必至だ。
「とりあえず、そろそろ姉貴の演奏会だ。席に案内するからついてきな」
意外なことに、ゼファードルが俺たちを案内してくれるらしい。次期当主のクリューハが出し物で来れないとなると立場的に丁度いいのは確かだが……なんだろう俺ってもしかしてゼファードルより社交スキルが低いのだろうか?
美しいボクと美しい眷属たちの奏でる美しい音色に聞きほれると良い。
グラシャラボラス家次期当主クリューハ・グラシャラボラスの演奏会は確かに言うだけのものはあった。
俺は音楽には造詣が深くないので、細かいニュアンスまでは分からなかったが、さすがに眷属に音楽に関わる者を多く揃えているだけのことはあると思えたものだ。レーティングゲームでの勝敗を完全に度外視していることに関しては……まぁ、趣味が勝ることもあるよなとしか言いようがないが。
ああ、でもセイレーンや風精霊はそれなりに強いかもしれないな。
「やぁ、こうして実際に会うのは初めましてだよね? リヴラクス・グレモリー」
「そうだな、クリューハ・グラシャラボラス。会話自体、昨日の通信が初だったはずだ」
クリューハは俺より9つ年上だが、悪魔としては同世代だ。
「そうだね。リヴラクス、今までキミは損をして生きて来たってことさ」
「損を?」
クリューハと会話しながら彼女についてやって来た妹のイリューカの方に視線を向けると──なにやらキラッキラとした視線と目が合った。物凄く興味を持たれている感じだ。
「そうさ、何せこれまでの期間、ボクたちの演奏を聞くことが出来なかったんだからね」
自信満々に語りながら、グラシャラボラス家次期当主殿はおそろしく気障ったらしい仕草で席に着いた。やり過ぎなぐらいだ。
「それでね──」
このグラシャラボラスの長女クリューハ。話が長い。
「──というわけさ。すごいでしょ?」
実によくしゃべる。自慢話が多すぎる。そして高めで可愛い系の甘ったるい声をしていやがる。
この声で男装は無理があるでしょ……。
相槌を打つこっちの身にもなってほしいところだ。主に話しかけられているのは俺なので、どうしても相手をしなけりゃならんし。
誉めろ誉めろオーラをバシバシ放ってくる。どんだけ称賛を浴びたいんだこの女は。こういうタイプは、ほめ殺ししたら簡単に股開いてくれそう。
同席している弟のゼファードルですら、「なんかすまん」みたいな顔してるし……。
我が魔王計画のターゲットである次女のイリューカはというと、レイヴェルと話しているな。割とイイ性格をしているっぽい。
そして、ラティアは助けてくれない。というか、彼女はこういうときに余計なことを言わずに黙って聞いているタイプだ。
「おい、姉貴。そろそろ時間じゃねーか?」
「うん? あっと、そうだね。用意しなくちゃ。ゼフィの晴れ舞台だからね、ボクが盛り上げないと」
クリューハのおしゃべりに付き合わされてどうしようかと困っていた俺に、まさかのゼファードルからの助け舟。
なんだ、コイツ。実はイイヤツだったのか? まぁ、会うのも十年ぶりぐらいだしな。昔の印象はアテにならないか。
「じゃあね、リヴラクス。光力の件くれぐれも頼むよ?」
「ああ、分かっている。雷や魔力は混ぜないようにさせればいいんだろう?」
「そうそう、それじゃ頼んだよ!」
いちいちポースを決めながら立ち上がると、クリューハは準備があると去って行った。ほんとに、雑談・自慢話しかしていかなかったな……俺とは正反対な感じだ。
「んで、リアス。後ろのメイドが例のバラキエルの娘か?」
ゼファードルの目が朱乃に向いた。その目は堕天使の血を引いている証である黒い翼を注視しているようでいて、その実、朱乃の豊満なたわわにチラチラと泳いでいた。
俺も男だ。ゼファードルの気持ちは理解できる。だが、朱乃は俺のものだ。
「ああ、そうだ。やらんぞ」
「一晩貸せつっても頷きそうにねーなぁ?」
「当たり前だ。手を出したら、ぶっ殺すぞ」
「おー怖えぇ、怖えぇなオイ。堕天使なんぞに入れ込みやがって、グレモリーの次期当主はゲテモノ好きって噂は本当だったみたいだなァ」
コイツ、姉ちゃんがいなくなったら急に態度変えやがって。実はシスコンか。お姉ちゃん大好き侍か。
「は? ゲテモノ好き?」
「妙な女ばかりメイドとして集めてるって聞いてるぜ」
「ああ、そういうことか。あの良さが分からんとは可哀想な奴だな。趣ってものを知らんらしい」
「ああ゛ッ!? 喧嘩売ってんのか?」
「先に突っかかって来たのはそっちだろうが」
「やんのか、コラッ!」
ゼファードルが荒っぽく席を立った。ふん、短気な奴め。
「ハッ、勝てるつもりでいるのか?」
「見下しやがって、お前のそういうとこがムカつくんだよ! このトマト頭が」
「フフッ……。実際、下だからな。自然とそうなるのは仕方がないことだ」
こっちは席を立つまでもないな。座ったまま態度でふんぞり返って見下してやる。
俺は心の小さい男なので、さらりと受け流してやったりはしないのだ。グレモリーの髪色をトマト呼ばわりしやがって……ぶち殺すぞ!
―○●○―
わわわ、兄さんと龍帝さんが喧嘩になっちゃいそうだよ。これ、ボクが止めないといけないんだよね。兄さんとお客さんの問題だから。
でも、兄さんちょっと楽しそうかも?
「兄さん、兄さん」
「あん? んだ、イリューカ」
「兄さんもそろそろ行かないと、そっちのメイドの子の手も借りるんでしょ?」
懐中時計を取り出して文字盤を見せながらそう言うと、兄さんは「チッ!」と舌打ちする。ボクの兄さんは、ちょっとお行儀が悪いんだ。
「えっと、龍帝さんも……ね?」
学校でレイヴェルがよく話しているので、龍帝さんのことは会ったこともなかったのにちょっと詳しい。
だからボクは女の子大好きらしい龍帝さんに、「……ね?」って精一杯可愛らしく首を傾げてお願いしてみるんだ。
「ふん。まぁいい。時間ならさっさと行ったらどうだ?」
「はっ、テメーに言われなくとも……んじゃ、そこの堕天使女、借りてくぞ」
「ラティア、すまないが……」
「付いて行けばいいのね。心配し過ぎだと思うけれど」
あ、ラティアも付いていくんだ。そういえば、ラティア・アスタロトは龍帝さんの『騎士』になったんだっけ。
あのデッカイ龍の姿、テレビで観たけどすごかったな。頭から尻尾の先までがだいたい15㎞ぐらいじゃないかって言われてたけど、地面に足付けて立ち上がったら人間界の最高峰の山より大きいってことだよね龍帝さん。
「ゼフィだからなぁ……」
「いくらゼファードルでも、この場で無茶はしないと思うわ」
「うるっせぇんだよ、お前らは!」
兄さん、わざとらしく大股で歩いて行っちゃった。その後ろに、ラティアと堕天使メイドの子が付いていく。
怒ってる風だったけど、やっぱり兄さん、なんだか楽しそうに見えたかも。
「リアスさまもなんだか嬉しそうでしたわ」
その辺りをレイヴェルにこそっと聞いてみたら、龍帝さんもそんな感じみたい。ラティアは分からないけど。
「実は仲良いのかな?」
「それは分かりませんけど」
「幼稚舎の同級生って、ボクとレイヴェルみたいな感じだよね?」
でも、兄さんと龍帝さんって、すぐに学校行かなくなっちゃったからよく分からないな。兄さん学校行ってなくて友達いないからかな?
姉さんが教えてくれた話だと、兄さんとソーナ・シトリーを仲良くさせようって話があったみたいだけど……今じゃ全然交流ないしね。魔王輩出の名門四家に同い年の子が生まれたーって、当時は結構いろいろあったみたいだけど。
「ところでイリューカ、このままこの席にいたらいいのか?」
「あっと、そうだった。こっちにお願いします。ついて来てください、はい」
レイヴェルと違って同世代やその一つ上の世代くらいは気を遣わないボクだけど、龍帝さんにはついつい丁寧になっちゃう。
だって、大きいから。抑えてるみたいだけど、ブワッてしたら兄さんの100倍くらいありそう。もう、近くにいるだけでクラクラしちゃうよ。
心臓がドキドキしちゃうからなるべく意識しないようにしてるのに、ついつい視線がいっちゃう。レイヴェルが夢中になっちゃってるのもちょっと分かるかも。
レイヴェルって、学校ではいっつも龍帝さんの話ばかりなんだよね。もう胸ヤケしそうなくらい。
「どこの家でも闘技場があるんだな」
「大きい家はみんなそうみたいって聞いたような覚えがあるかな」
ポーカーフェイス、ポーカーフェイス、貴族の女の子は動揺を表に出したらダメなんだって。
レイヴェルは表情がコロコロ変わっちゃうけど、フェニックス家のヒトはだいたいそんな感じみたい。アスタロト家はラティアみたいになるし、シトリー家は味覚がおかしいからレヴィアタンさまの料理には気を付けろって評判みたい。バアル家は頑固者で、アガレス家は苦労性。
お家ごとにいろいろあって、悪魔って不思議だよね。
「それじゃあ、この席でお願いします」
ふぅー、もう困っちゃうな。なんとか案内できたけど、顔赤くなってないよね?
姉さんも兄さんもいないと、ボクが相手するのが丁度いいのは分かるけど、緊張しちゃうよ。
「若さまもこちらでしたか」
「ああ、リュイか」
って、わわ、ロイガン・ベルフェゴールさまだ。
龍帝さんと親しそうっていうか、「若さま」呼び? ランキング2位のロイガンさまが引退して龍帝さんの『騎士』になるみたいって噂があるけど、本当だったのかな。
「ねぇ、レイヴェル。リュイって?」
ボクって、気になったことはすぐに聞いちゃうんだ。
「ロイガンさまの……愛称ですわ。私も今後どう呼んだらいいのか困っていますの」
「じゃあじゃあ、やっぱりあの噂って──」
うわー、うわー……もうレイヴェルとしては隠すつもりもないのか、教えてもらえたけど……。
龍帝さん、どこでどう知り合ってロイガンさまと
ボク、まだキスもしたことないんだけど……もしかして遅れてるのかも? レイヴェルは、バッチリ経験済みみたいだし……。
「もうそろそろ始まるみたいですね。イリューカさんはそちらに座って下さいまし」
「あっ、ちょっとレイヴェル」
「ホストの役目ですわ」
龍帝さんの隣に座らされちゃった。龍帝さんを挟んで反対側はロイガンさま。
うわー、やっぱり大きい。右の龍帝さんと、左隣のレイヴェルとの差が物凄い。
『初めてお見かけした時に、この方だって思いましたの』
なんてレイヴェルが言ってたけど、こういうことなんだ……。
「それで、イリューカ。ゼフィはやはり初代グラシャラボラスさまの御力を蘇らせたのか?」
龍帝さんに説明するのボクの役割だよね。
「あ、えっと、そう。これからそれを皆さんに見てもらおうって、ことです。はい」
幼稚舎の頃に龍帝さんにお腹を吹き飛ばされた兄さんは、それから打倒龍帝さんを目指して頭おかしいって言われるぐらい頑張ってた。物心ついてから、熱心に研究したり、魔方陣を身体に刻み込んだりしている兄さんしかみたことがないくらい。
兄さんは我がグラシャラボラス家が輩出した魔王ファルビウム・アスモデウスさまみたいな、自動防御の魔方陣を身体に刻み込むつもりだったみたいだけど……。それがどう作用したのか、ご先祖様の特性である自分や他者を『透明』にする力に繋がっちゃったんだ。
アスモデウスさまの力は、もしかしたらご先祖さまの力が変形したものだったのかも? なんて話もあったっけ。全身透明になる代わりに突然変異的に防御術が染み付いたみたいな。グラシャラボラス家が防御の術に優れているのは、身体に作用するご先祖様のこの特性の名残じゃないかとか、いろいろ議論したんだよね。
「『
昔は特に呼び方決めてなかったみたい。
あ、姉さんが出てきた。演奏しに……。
「グラシャラボラス家は変わり者が多い」なんて他所の家から言われちゃってるみたいだけど、姉さんと兄さんについては……ちょっと否定できないかも。ふたりとも嫌いじゃないんだけどね。
姉さんが入場曲っぽい自作曲を披露する中、兄さんは凄く嬉しそうに登場。学校行かずに家に籠ってた兄さんのこと、姉さんは応援してたみたいで、ふたりは仲いいんだよね。ボクも妹なのに、ちょっと疎外感あるかも。
「朱乃とラティアも出てきたな」
反対側からラティアに付き添われて堕天使メイドの子が登場。
両者が配置についたところで、姉さんの演奏が切り替わった。人間のゲームの戦闘曲みたいかな。
「撃ってこいや、オラァッ!」
兄さんって、なんであんな話し方なんだろ。いいけどさ。
「朱乃、最大出力で撃ち込んでやれ!」
「はい!」
龍帝さんが魔力で拡声して指示を出してる。
朱乃が左手に光力で弓を形成して、って、うわ、堕天使の翼が四対に増えた!? 右手に生み出した『光の矢』に力が収束していって……。あれ? 物凄い威力がありそうな……。
兄さんと朱乃の直線ライン。その兄さんの背中側のところで闘技場スタッフが慌てて障壁を強化しようとしてる。
あんな光の矢。ボクが受けたら、かすっただけで死んじゃうかも。これが……龍帝さんの『戦車』。
「龍帝さん、あんなの撃たれたら兄さんが……」
ボクが袖を引っ張ってそう言うと、龍帝さんはちょっとこっちを見て──。
「手加減はいるか!? ゼファードル!!」
「いらねェ!! さっさとこいや! リヴラクスの下僕女ァッッッ!!」
あわわわ、兄さん受けて立っちゃったよ!
姉さんはって見ると、普通に演奏に集中しちゃってる!
「いい度胸だ。
殺れって、殺れって言ったよこの龍帝さん。さっきのこと、まだ怒ってたんだ!
「はい、ご主人さま! 撃ちます!!」
撃った。撃っちゃった……!
最上級悪魔クラスでも危なそうな矢が超高速で兄さんに向かって……ッ!
直撃する寸前、兄さんの姿が消えた。光の矢は兄さんが立っていた場所をそのまま素通りして、闘技場の防御障壁に激突。大爆発!!
「はぁー……良かった」
爆煙がおさまると、そこに無傷の兄さんがいた。分かってたけど、分かってたけど……ハラハラしちゃったよ!
「言うだけのことはあったみたいだな、ゼフィ!」
「当たり前だ、くそリアス! 天使と堕天使ぶっ殺しまくった殺戮者、グラシャラボラスさまをなめてんじゃねーぞ!」
兄さんは足元の土に円を描くと「オラァ! 俺はこん中から出ねぇ、もっとガンガン撃ってこいやァ!!」って言いだすし。
龍帝さんは、龍帝さんで「朱乃、パターンは全部見せて構わん。気が済むまで撃ち込んでやれ!」とか言っちゃうし。
闘技場内に上級悪魔クラスでも危険な光力がバリバリ飛び交って、そんな中で兄さんはオラオラ言ってるし、姉さんは平然と演奏してるし……もう無茶苦茶だよぉ。
闘技場での騒ぎが終わった後、パーティー会場はダンスの時間になっていた。
「ボク、龍帝さんのこと誤解してたかも」
「誤解?」
「そう、もっと怖いヒトなのかと思ってたけど、意外と子供っぽかったんだなって」
今、ボクは龍帝さんとダンスしてる。
「今日は少しはしゃぎすぎたな」
龍帝さんとは二回目。最初の一回目は緊張しちゃったけど、今は二回目だからちょっと余裕があるかも。
ボクとの一回目のあと、龍帝さんはレイヴェルと火の粉を散らしながら激しくしてるのを見て、ラティアとしっとりしてるのも見た。ロイガンさまと龍帝さんは、なんだかとってもいやらしい感じにしてた。
ん、背中に触れてる龍帝さんの手が……。
でも、龍帝さんすごく大きいからやっぱりちょっと怖いかな。今までボクが近くで感じた中で一番おっきいヒトはアスモデウスさまだけど、龍帝さんの方がもっと大きい。
「あの特性は、イリューカも使えるのか?」
「今は練習中。兄さんから習ってるところかな」
どこかで使い方が忘れられちゃってたみたいだけど、あの特性はボクらグラシャラボラスの血の中に流れているはず。
だから、兄さんはもう他人にもかけられるようになってるから、それを受けて感じを掴めばいけそうなんだよね。
「そうか、ゼフィの名がグラシャラボラスの歴史に残りそうだな」
「そうだね。うん、ホントにそうなりそうかも」
くるくるっと回って、ボクの腰に龍帝さんの手が添えられた。
結構身長差があるのに、龍帝さんは手慣れた感じ。
レイヴェルで慣れてるからなのかな。ボクの方がレイヴェルよりちょっと背が高いからね。
「イリューカは翼を出すのは出来るのか?」
「うーん、そっちは練習してないかな。レイヴェルみたいに目立つ翼じゃないから」
悪魔のダンスには、翼を出して飛んだり浮いたりするものもある。でも、ボクはそっちはあまり得意じゃない。
「なら、夏までに練習しておくか」
「なにを?」
「イリューカくらいの背丈の相手とのダンス」
「えー、夏の社交でもボクと踊るつもりなんだ?」
「クリューハとは踊れないだろう?」
「姉さん、踊るより演奏してる方が好きだからね」
そっか……また社交シーズンが来たら、ボクが龍帝さんのお相手するんだ。
「あれ? でも噂だと龍帝さんって他所の家のパーティーでは、レイヴェルやラティアとばかり踊ってたって聞いたかも」
「レイヴェルの友達とは、長い付き合いになりそうだからな」
そういえば、グレモリー家とシトリー家が懇意にしてるのは、当主夫人同士が学友だったからって聞いたかも。
ボクがどこかに嫁いだら、レイヴェルを通じてグレモリー家とそんな感じになることもあるのかな?
「あ、ボクだって夏までに背が伸びるからね」
伸び盛りなので。
「俺の方は、もっと伸びそうだな」
「そっか、ローゼンクロイツさまの件で」
「ああ、ちょっと20年くらい早回しで過ごしてくる。……そう考えると、次に会う頃には俺の方が身体年齢をいじれば済む話か」
「そうかも? 同い年ぐらいの身体になってもらったら丁度いいかな」
踊ってる間に問題が解決しちゃった。
それに、そろそろ曲もお終いになりそう。
「もう終わりか」
「そうだね」
ラスト10秒ぐらいのところで、龍帝さんが翼を出して大きく広げた。
ふわっと抱き上げられる。龍帝さんの翼がボクを覆い隠すように動いて…………。
「あら、イリューカさん。どうかされました?」
ダンスを終えて戻って来たボクの顔は、たぶん真っ赤になってると思う。耳も熱いし。
「ね、レイヴェル。龍帝さんって……えっちだね」
とられちゃった……ボクの初めて。唇にまだ感触が残ってるような気がするかも。
グレモリーの男のヒトは、女ったらしが多いって聞いてたのにな。
クリューハ:作者脳内での外見イメージは、ついてないユキくん
ゼファードル:幼少期から一心不乱に励めばどうにかなるさってことで、作者都合で強化されたヒト。腹パーンされてから頑張ってた。姉妹との仲は良好。
『透明』あるいは『不可視』:元ネタの悪魔グラシャラボラスから引っ張って来た、グラシャラボラス家の捏造特性。
光をすり抜けるとかは、紹介シーンを作るためだけに付け加えた設定。
悪魔グラシャラボラスは殺戮者とも言われているらしいので、ご先祖様は姿を隠して光力をすり抜けながら天使・堕天使を殺戮していたってことになった。
なんでわざわざこんなものを用意したかは「R18+透明人間」でご理解いただきたい。ホント、そのためだけです。
イリューカ:予定は未定ながら、作中で秋頃が収穫時期かも
クレーリア&八重垣の魂
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オリ主が頂いていく
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バアル家が確保する