公爵家次期当主好色物語 作:ルペッタ好き
「──フェニックス家のレイヴェルだ」
ふ、と口から息が漏れ、肩が下がったのを自覚した。
安堵によるものか、嬉しさによるものか。どちらにせよ、相手がレイヴェルならば悪くはない話だ。彼女とは知らない仲ではないし、性格も酷いものではないと知っている。
なにより可愛いし。
彼女は俺よりも少し年下だが、万を超えるという悪魔の寿命から考えると誤差と言っていい範囲だ。人間に換算したら、同年同月に一日か二日の差で生まれた程度ではないだろうか。
と、そこで父上の顔が変わった。威厳ある公爵家当主としてのものから、ニヤニヤと息子をからかう親父の表情へと。
「最近、よくフェニックス家に出入りしているようだな?」
「はい。ライザーさんから上級悪魔の男性としての心得を教えていただいています」
「そうか。まぁ他家との交流を図るのも悪くはない。ライザーくんはお前と年齢も近いことだしな。若い者には若い者同士の付き合いというものがある」
「ライザーさんにはよくしていただいております」
「先日フェニックス卿とこの婚約の件で会ったが、随分と気を良くしていたぞ。お前とライザーくんのことはな」
ハーレムキング先輩ことライザー・フェニックス。実際にハーレム形成を成し遂げた偉大なる
いつかは、そんなライザーさんと肩を並べて歩めるようになりたいものだ。このまだ始まってすらいない長い長い悪魔的ハーレム道を!
というにじみ出る我が尊敬の心に気を良くしてくれているのか、はたまた貴族的打算か。彼には本当に世話になっている。主に若手貴族的な付き合いってヤツで。
前世だったら絶対に近づけなかったようなタイプの男なんだけどね。ライザーさん。
オス的な勝負なら完敗だが、戦闘的なことならまず俺の勝ちが確定というのがいいのかもしれない。前世で一時期、『コミュ強になりたい? ならばまず武術を修めろ!』って本が流行った覚えがあるが、あれに書かれていた「手前の武力に自信があると付き合える人種が増える」という記述は本当だったようだ。
「それがあって、あちらからレイヴェルとの婚約の話が出たと?」
「ん、いや? そうとぼけなくともいいだろう」
テーブルの向こうからこちらへとやや顔を寄せてくる父上。そのニヤニヤ親父度が深まった。
「本当はレイヴェルくんに会いに行っていた。違うか?」
「そのようなことはありませんよ」
「別段、隠す必要はないぞ」
「父上は俺が前世でいくつまで生きたのかご存じでしょう? まさかそんな子供相手にどうこうなど」
俺はロリコンではない。現在の俺はまだ大人の身体への成長途中であり、そんな俺よりも年下のレイヴェルの身長など人間なら小学生サイズだ。
前世でまがりなりにも成人し、一応社会人として生きていたことのある大人がそんなことあるはずが……まぁ、ないとはいえない。
俺はロリコンではない。ただし、それはリアルロリコンではないということだ。二次元的な方面でなら、むしろ好物の一つであった。限定条件はあるが。
足はスラリと長く、腰もくびれている、胸は控えめなれど、全体的な体系は童顔スレンダー美人。そんな二次元ロりならばイケる性質なのが俺だ。私見だが、あれは三分の二スケールくらいのスレンダー美少女だろう。美少女フィギュアに少しでも「ムフ」となる輩であれば、そんなの股間の勃起がおっきするに決まっているだろう!
本当の現実の子供のお子様体形に欲情など覚えないし、接し方もどうしていいかわからない。なので、むしろ小さい子からは逃走していたくらいだ。
だから、俺はロリコンではない。
「前の年齢を合わせたとしても、大差ないではないか」
貴様などこの千年を越え生きてきたこのグレモリー公爵の目から見れば、まだまだお子様よ。父上の眼がそう言っている。
そうですね。超長寿の悪魔からしたら、命儚き人の子の一生などあってないような短いものでしょうとも。
つまり俺はまだお子様年齢なので、ロリコンではないということだ。ショタがロリに行為をしたくなっても、それをロリコンとは言うまい。父上のお墨付きを頂いたので、これが公式判決です。
「気になっていなかったと言えば、嘘になってしまいます」
「そうか、あちらの使用人の勘違いではなかったようだな」
フェニックス家でライザーさんと話していると、レイヴェルとも席を同じくすることがあった。男同士で、(主に)下の話題で盛り上がっているところ遠目でチラチラと見てきて、その後ちょこちょこちょこっと寄ってくるのだ。
で、そうなると女が混じってはそれまでの話題を続けづらくなるので話題が途切れてしまう。そうして会話のメインはライザーさんとレイヴェルの兄妹二人のものになり、俺は時々振られる内容に答えるだけ。やや手持無沙汰となったその時間に、レイヴェルをチラチラと見てしまっていたのは確かだ。
それは別に人間だったら中学生未満の少年の外見にふさわしい恋心だとか、そういったものではない。前世オタ男の欲棒反応範囲にレイヴェルがひっかかっていただけだったりする。
人外の悪魔という種族だからなのか、フェニックス家のお嬢様は「この子って背は低いけど、体形は大人の女性を小さくしただけですよね」という前世では二次元でしかお目にかからなかった姿をしていたのだ。前世でもそういう子はいたのかもしれないが、すくなくとも俺は会ったことがない。
それを勘違いしてしまったらしいフェニックス家の使用人の方々、実は薄汚れた大人の男の下劣ななめまわすような視線ですまない。レイヴェルを見ていて視線が合った時などに慌てて視線を逸らしたりしていたのは、照れていたわけではなく、己の下種思考が見破られたのではないかと恐れていただけなんです。うう、でもまたついつい見てしまう。この行動、今は悪魔的美少年の容姿だからいいが、前世なら「うわ、キモ」とか言われていたことだろう。
思わず俯いてしまう俺と、それをニマニマと見る父上。
「ところで、だ。話は少し変わるが、お前もそろそろ女への興味が抑えきれなくなる年頃になったようだな」
と、父上はグラスに酒を注ぎながらそんなことを言ってきた。
俺の睡眠中の暴発の処理は、ここの使用人がやってくれている。当然、俺が白いマグマを女に注ぎ込みたい! そういつも考えてしまう盛りのついた年頃になったことを父は知っているだろう。
「お前は我がグレモリー家の次期当主。妙な女に入れ込まれても困る。耐性を付けさせるためにもそれについて教える教師を、と見繕っていたところだったのだが……それより早く婚約が決まった」
「それは、その! 年上の慣れた方から手取り足取り教えていただくといったような?」
女教師! そういうことか! しかも『おせっせのせんせい』! なるほど! 貴族男子ともなれば、そういう教育も受けるのか!
食い気味に返した俺に向かって、父上は苦い笑みを返してくる。
「ああ、その予定だった」
「だった……?」
過去形? 予定は否定? なくなってしまったということか、素敵なお姉さんからあんなことやこんなことをねっちょりと教えてもらうピンクな授業が。
おせっせ授業はなぜ死んだ。婚約が決まったからか?
なんということだ。
なんということだ。
なんという、ことだ!
婚約者といえば、婚約破棄もの。前世で愛好していたサイトでの一大ジャンルのひとつ。あれによれば婚約者がいながら他の女とキャッキャウフフギシギシアンアンしているような浮気者の貴族の男は、後に断罪&没落ざまぁいい気味ね、されて苦しみの沼に沈められるのが定番。
つまり、レイヴェルとの婚約が決まってしまった時点で見られるはずだった桃源郷にはもうたどり着くことができないというのか。そういえばレイヴェルって悪役令嬢っぽいところあるわ。緩めだけど金髪ドリルついてるし。
いやしかし、あんまりだろうそれは。婚約ということは、それはつまり結婚の約束ということで、たぶんきっと婚前交渉なんてNGだろう。その上、他の女もダメなんてなったら、俺のこのもてあますリビドーはどこに吐き出したらいいのだ。
前世だったら、美少女婚約者!? やったぜ! その時が来るまでは自分で慰めとこ。
となるところだが、基本的に今の俺の周囲には常に使用人がいる状態。見られながら自慰って済ますとかそんな高度なことは出来そうにもない。
一体、どうすれば……。
「分かっているぞリアス、お前が今なにを考えているのか」
「父上……」
分かっているのならばなぜ……。
「これはフェニックス卿からの許可も出ている話だが……構わんぞ。正式な結婚より前でも」
そう言って、我が今生の父親は指で卑猥なジェスチャーをしてみせた。悪魔社会でも通じるんだなそれ。
というか、マジか。いいのか、ヤちゃって。いいのか。マジか……。
「というかだな、すでに面識はあるだろうが形式として今度両家の顔合わせの予定がある。その日に、ヤってしまえリヴラクス」
「そ!! それは……当主命令ということでしょうか?」
「そうだ。……元人間の転生悪魔等から聞くところによると、人間の男は最初の女というものに深い思い入れを抱きやすいらしいな?」
「ああ、ええ、そういった話を聞いたことはあります」
前世の俺の初体験は、オタ仲間連中と一緒に「二十歳前には済ませときたいよな」と出かけた風俗店なのでそんなことはなかった。でも、高校生ぐらいに恋愛交際の末に──という展開だったならばそういうことになっていたかもしれない。ちなみに初恋は、当の相手から「アイツ、キモいよね」的な陰口を言われているのをうっかり聞いてしまい木っ端みじんになっている。未だにあの日を思い出すと泣きそうになる。
「悪魔にもそういう男はいる。理解できる話だ」
上級悪魔男性のその辺りの事情は、ライザーさんのように広く多くを愛せるタイプと、我が兄上のように少人数への執着が凄まじいタイプに二分されるらしい。ソースはライザーさん。
「お前がどういった傾向にあるのか分からんが、その相手が正式な婚約者であり、未来の正妻となればそれ以上の結果はない。お前もあちらを気に入っているようだしな」
「ですが、その問題は……ないのでしょうか? 体格的にと言いますか、その」
ヤルことがヤれるなら、俺はまったくもって構わない。むしろ内心はやったぜ!! の連呼でしかない。でも相手のいる話だ、一応確認しておいたほうがいいだろう。
「ふむ、悪魔の肉体、特に生まれながらの上級悪魔の身体は己の魔力の影響を受けやすい。これは知っているな?」
「はい」
悪魔の寿命はとてつもなく長いが、その老いもまたとんでもなく遅い。これはどちらも魔力の影響が大きいらしい。
母上の年齢はかなりのものになるのだが、見た目は大学生のお姉さんといった風情だ。見た目は若いのに、大人の色気と落ち着きを備えているので、息子は息子が勃ちそうになることがあって困っています。
「そして魔力の行使に重要なものが何か分かるか?」
「己の意志と、それを叶えるための道筋をイメージする力ですね」
「そうだ。お前のソレがやや早熟だったのも、その影響があるのかもしれん。前の生のイメージがあるのだからな」
「なるほど」
今生の俺が前世よりも早くヤリたい盛りになっているのは、前世の頃のイメージが頭の中にあるからだったのか。イメージに左右される魔力が肉体に影響を与えて、はやくキモチイイコトしたいよってなったワケか。
「相手の方もだな。どうやらフェニックス卿は以前からお前を娘の婚約者候補として考えていたらしく、そのことを伝えてもいたようだ」
ああ、それでレイヴェルと会うことが多かったのか。俺がライザーさんを訪ねることが多かったのは、フェニックス卿にしてみれば実に都合の良いことだったわけだ。
「フェニックスはその自身の肉体を再生、再構築する魔力の特性もあってか、魔力が肉体に与える影響も大きかったのだろう。婚約とその後をイメージし、意識した結果なのか、あちらも既に子を宿せる状態になっているらしい」
え、それってなんか、とってもえっちじゃないかな。レイヴェルが頭の中で婚約者とのあんなことやこんなことを妄想してしまったために、身体の方もそのイメージに合わせてエッチ対応にするように変化したってことだろう?
なんだ……このエロ種族。上級悪魔はエロも上級なのか。同志シスタスキーとか、ハレキン先輩のことを考えると、間違ってなさそうな気がする。
というか悪魔だしな。悪魔と言えば人間を誘惑して堕落に誘ったりする存在なのだから、むしろエロいのが普通か。
「あと体格がまだ小さいことを気にしているようだが、上級悪魔の子が出来る確率は低い。サーゼクスも子を得るまでに随分と時が必要だった。その上、お前の相手は不死身のフェニックス。なんの問題もない。むしろ早々に出来ることがあれば、両家を上げての祝宴になるだろう」
そうか、レイヴェルは不死鳥フェニックス。頭部を吹き飛ばされても平気で再生してケロリとしている一族だ。小さな身体だから出産に耐えられない、なんてことはあり得ない。
ただでさえ上級悪魔の子供は出来にくいのだから、むしろ両家の親推奨でガンガンやらせて子供が出来るようならラッキーという話か。
俺はヤリたい盛りの男だし、あちらは婚約・結婚のイメージでそうなっちゃうようなエッチな女の子。正式な結婚は政治的・制度的な都合により後になるとしても、婚約とともに性的に仲良くさせておけば、勝手により仲良くなっていくことだろう。少なくとも俺はそうなると思う。
そしてそうなれば、政略的にも子孫繁栄的にも万歳万歳ということで、両家の現当主としては良いこと尽くめというワケですね。
いやー、考えてるなぁ。
「お前は前世の経験があるのだから、入れる穴を間違えるようなことはないと思うが……問題ないな?」
「はい! 大丈夫です! 問題ありません!!」
「そうか……では励めよリアス」
「ハッ! 全力を尽くします!」
テンションが上がって思わず敬礼してしまった。
父上はそんな俺を見て笑うと──呆れられているようにも見えるが。
「リヴラクス、この婚約の日をもってお前の『悪魔の駒』の使用を許可する」と言った。
『
一つの『女王』、各二つの『戦車』と『僧侶』と『騎士』、そして八つの『兵士』の駒。上級悪魔は自身を『王』とし、これら十五の駒を己の配下となるものに与え眷属と成す。
この駒の効果は凄まじく、悪魔ではない種族の者であってもその種族に悪魔の性質を追加し、さらに『女王』の駒ならば全体的な能力の向上を、『戦車』ならば攻撃力と防御力を、『僧侶』は魔力を増し、『騎士』には素早さを与える。『兵士』の駒にも特殊な効果がある。
この『悪魔の駒』によって、他種族から悪魔の一員となった者を転生悪魔と呼ぶ。俺も転生して悪魔になった者だが、生まれながらの上級悪魔なので転生悪魔とは言われない。精神的には彼ら彼女らに近い存在のような気がするのだけれど、扱いは違うのだ。
「ようやく、俺も眷属を持てるのですね」
眷属でハーレムを作っている『
「実は、我慢できなくなったお前があの堕天使の娘に手を出してしまうのではないかと心配していた」
「朱乃ですか。かなりなつかれていますので、正直なところ結構我慢していました」
「だろうな。だが、あれは堕天使」
「正確には堕天使と人間のハーフですが」
「それでも扱いは変わらん。堕天使と悪魔は、古くから争い続けてきた種族同士。どちらも冥界に拠点をもつため、天使よりも敵対する機会の多い敵だ」
「はい、それは心得ています。旅行先から朱乃を拾ってきた後の皆の反応でそれを思い知りました」
赤龍帝発覚騒動から僅かの頃、俺はかなり参っていた。そんなときに父の眷属悪魔の一人が、俺を気晴らしの旅行に誘ってくれたのだ。
その旅行先で偶然出会い、なにやら人間たちに殺処分されそうになっていたのが、堕天使と人間のハーフである朱乃だ。可愛い女だったので、「それを殺すなんてとんでもない! いらないなら俺にくれ」とグレモリー家に連れ帰ったのはいいのだが、どうにも使用人たちの朱乃に対する態度が冷たい。塩どころではなくアイスエイジって感じだった。
転生悪魔たちはそうでもないらしいのだが、純粋な悪魔にとって堕天使の血筋というのは忌むべき仇敵のもの。態度が冷たくなるのは仕方のないことだった。
かといって、じゃあやっぱりイラナイやと捨てるわけにもいかず、現在彼女は俺の所有物あるいはペット扱いとして我が家で飼っている状況だ。
最初の頃はいろいろあったのだが、今は堕天使の持つ悪魔にとって有害な光の力を抑えつけるための拘束具や、脱走防止のために鎖付きの首輪に手枷足枷なども「つけてつけてー!」と嬉しそうに俺にせがんでくるまでになった。
なんか、俺が何をしても喜ぶんだよな、あの子。妙に色っぽい声も出すし……。
たぶん、押し倒したら即OKというか、たぶん大悦びすると思う。だけど残念ながら朱乃は堕天使の血筋を持つ者。
そんな子に手を出した日には、「グレモリー家の次期当主は、堕天使と仲がよろしいそうよ?」「あら、いやだ。もしかしたら悪魔を裏切るのではない?」「まぁまぁ、それは困りますわね。魔王を輩出したグレモリー家がそのようなことでは」
などなどの批判を浴びかねない。そんなことになってはグレモリー家次期当主の地位が揺らいでしまう。
という事情から、泣く泣く我慢していたのだ。最近は、会うとどうしてもムラムラきてしまうので世話を使用人に任せているところだ。あの子の発育が良すぎるのが悪い。
「もし、我慢できず手を出すのなら、先に婚約者の了承を得なさい。そんなことで揉めると困る」
「あっ、はい」
「それから、その際には堕天使には手を出さないようにしなさい。分かるな?」
先の『悪魔の駒』の許可と合わせると、つまり堕天使はダメだけど転生悪魔にしちゃえば問題ないということか。
「承知しました」
「あれは堕天使の幹部バラキエルの血筋、将来的には強力な駒になるはずだ。上手く使え。話は以上だ、下がっていいぞ」
「はい、では失礼します」
レイヴェルよし、朱乃も条件付きだが許可が下りた。やったぜ!
まったくもって今日は良い日だ。その日が待ち遠しくて、寝付けないかもしれない。