※この作品はR-18です。

公爵家次期当主好色物語   作:ルペッタ好き

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ダブルエックスの章は、時系列適当な思い付きを投稿していきます。原作の短編集的に。本編中でそれらしき場所にきたら、まえがきにでも、ここでDXの何番が入ってますとか書く予定。
R18なネタが出て来たけど書かないうちに忘れちゃうと困る。でも、書き上げると保管しておけなくてすぐに投稿したくなってしまうんだ。



アンケ結果

イリナ認識改変&ゼノヴィア触手1264 / 68%
上の逆592 / 32%


DX-2-1 DQ:十字架×危機(クロス×クライシス)

 諸事情あって、魔王アジュカ・ベルゼブブにいくつかの借りのあったリヴラクス・グレモリー。彼はアジュカの紹介で引き合わされた、とある龍王からの依頼を引き受けざるを得なくなった。

 

『まずは吸血鬼の国からにするか……』

『スマン……スマン……』

 

 俺に謝っているのは、赤龍帝ア・ドライグ・ゴッホ。

 それはとある龍王──『天魔の業龍(カオス・カルマ・ドラゴン)』ティアマットからの依頼内容の原因が、ドライグだからだ。

 

『というか、ドライグとティアマットって仲良かったのか?』

『いや、別にそんなことはない』

『ほーう? 俺の認識では、ドラゴンってヤツは自分のお宝を恐ろしく大事にして執着しているものだと思っていたんだが』

『ああ……普通は、そうだ……』

『そうだよな? で、お前はどうしてティアマットからお宝を借りたりできたんだ? 相当仲が良くないと、そんなもの貸してくれないだろ』

『ぐっ……』

『なるほどなー。そうか、そうか、やっぱデキてたのか。いやー、良かった、良かった。俺の神器に宿っているドラゴンさまが、童貞じゃなくて良かったなー』

『ええい! うるさい! 俺とヤツはそんな関係ではない!』

『男のツンデレとかな……。というか、いいのかドライグ?』

『だから違うと! 何がだ……』

『いや、ベルゼブブさまとティアマットって……なんていうか、怪しい感じじゃなかったか? いいのか? お前、封印されてる間に取られ……』

『しつこいぞ! だから、何度も謝っているだろうが!』

『いや、いいだろ、ちょっとからかうぐらい許せよ。お前が借りたまま喧嘩に夢中になって、封印されたりしたせいだろうが……』

『そうだがなぁ……』

 

 ティアマットからの依頼の内容は、ドライグが神器に封じられる前に彼女から借りていたお宝の返還。ドライグが借りたものを返す前に封印されてしまったため、彼女のお宝までもドライグのお宝と一緒に盗賊に奪われ、世界中に散らばってしまったらしいのだ。

 

「封印されているドライグから回収できない以上、その力を借りている『赤龍帝の籠手』の所有者に請求させてもらう」などと言われても、リヴラクスにしてみれば知ったことではない話なのだが、世話になっているアジュカを間に挟まれると断り辛い。

 

 さらに父であるグレモリー公爵ジオティクスからも、「丁度良い機会だから、世の中を見てきなさい」と言われてしまっては、もう仕方がないというもの。

 俺としては、これも社会見学の一環として一人旅も悪くないと思うしかない。幸いなことに、いつでもどこでも話し相手はいるのだから。

 

『まぁ、吸血鬼の女は美形が多いと聞くしな……それだけが楽しみか』

『高慢で狭量、同族以外は見下す連中だぞ』

『俺はそういう女を組み敷いて、とろっとろに蕩けさせるのが好きなんだよ』

『好き者が……』

『安心しろドライグ。俺はお前の彼女には手を出さないから』

『だから違うと言っているだろうが!』

『というか、赤龍帝と龍王と魔王の三角関係とか、関わり合いになりたくない』

『お前はすぐにそうやって邪推するのだな!』

『そういうお年頃なんだよ、俺は。……封印されてからもずっと追いかけて来てくれたんだろ? お前と来たらそれから逃げ回ってばかりだったみたいなのに、愛想尽かすわけでもなく……いい女じゃないか』

『だからだな……!』

『はいはい。……早く自力でどうにかできるようになるといいな』

『ああ……そっちは期待している』

『努力はするさ。期限は切れないが』

 

 目的地である吸血鬼の国は、ルーマニアの山奥にあると言われている。

 

『やっぱ適当に飛び回っても見つからないな』

『その程度で見つけられるなら、とうの昔に教会の連中が戦争を仕掛けているだろうな』

 

 吸血鬼と悪魔は似たところがそれなりに多い。ともに教会の連中から目の敵にされていて、光や聖なるものに弱いなどといった弱点にも共通したものがある。

 だが、教会の連中の中でも特に血の気の多い者。武闘派の戦士たちは、どちらかというと悪魔よりも吸血鬼を敵視しているという。

 なぜなら、悪魔は人間を誘惑し堕落させ、契約を持ち掛けてその欲望を啜るのだが、吸血鬼は物理的に血を啜る。教会としての倫理などではどちらも人間の敵なのだが、現代人の価値観で言えば吸血鬼の被害の方がより凶悪に思えるらしいのだ。

 

『兄上たちの政策で、悪魔はだいぶマイルド仕様になったらしいからな、ここ数百年で』

 

 昔は魂を頂くことがメインだったが、最近の悪魔の取引はほとんど便利屋のような形態だ。この資本主義が蔓延る世の中、契約して欲望を叶え、その対価として金品を受取る現代的な悪魔のやり口は、人間からの敵意をさほど稼ぐものではない。人間同士がやっていることと大差ないぐらいだ。

 無論、中には好き勝手をする者もいる。それに『はぐれ悪魔』はそういった配慮などしない者が多い。

 

『吸血鬼は食事にうるさいからな』

『被害者の親族なんかが、教会の戦士になっていたりするんだったか』

 

 たしか、ディオドラがそんなことを言っていた気がする。

 と、噂をすればそのディオドラからの通信だ。

 

『やぁ、同志アクジョスキー』

「よぉ、同志シリシカレー」

『なんだい、その呼び方は?』

「いや、ラティアから聞いたんだが、お前、嫁さんの尻に敷かれてるらしいじゃないか」

 

 通信映像の中のディオドラは、その話題は聞きたくないと嫌そうに顔をしかめた。

 

『しょうがないだろ! あっちの方がボクより強いんだからさー、聖剣とか刺されたら、ボク死んじゃうよ!』

「なんか、眷属も乗っ取られたとかどうとか」

『あーあー、聞きたくなーい。はぁ……なんかね、ボクよりもあっちの命令の方を優先しがちな気がするんだよね……ボクが「王」なのにさー』

「眷属の大半を聖女やらシスターで固めた弊害だな」

『ま、そうなんだけどね。やっぱ、権威があるらしいよ。なんともね』

「そういう割には、まんざらでもなさそうに見えるとも聞いたんだが」

『実際、そう悪くないんだけどさ。実益を兼ねていれば、ボクの趣味もオッケーだしね。彼女、前世にいろいろあったのと、今生でもアレだったろ?』

「聖剣計画だったか、教会もエグいよな」

『そそ、思い詰めてボクなんかと契約しちゃうくらいだからね。生き残り連中も含めて、大層な教会嫌いになってるからね。あれかな、元は深く信じていた分、裏切られた反動ってヤツ?』

「その点、俺ら悪魔は気楽だな。悪いことして当たり前、ちょっと優しくすると妙にイイ奴扱いされるっていう」

『そうそう、前にキミから借りた人間たちの漫画にあった、不良が捨て猫理論みたいな』

 

 天使や教会の連中は善行して当たり前なのに、悪魔は悪いことをするのが自然。そのせいなのか、対価ありの取引でも結果が人(・)間(・)か(・)ら(・)見(・)て(・)良ければやたら感謝されることがある。

 やはり日頃の行いが大事ということだ。悪魔の平民どもも、人間とそう変わらないし。

 俺なんか、普段「クソ平民」「平民なんぞ必要ない」「奉仕種族ども」とか言いまくっているのに、たまーにちょっと助けてやると「普段はあんなだけど……実は……」みたいなこと言われるのに対して、サイラオーグはいつも助けてやったりしているのに、ちょっと失敗するとボロクソに言われたりして凹んでいるのだ。

 貴族なんて強くて怖いと思われておくのが一番楽だろうに、いちいち平民の顔色なんぞ気にしてうかがっているからナメられるのだ。

 

「で、実際どうなんだ? 聖処女さまの感想は?」

『いいよね……。普段はアレだけどさー、ベッドじゃヒンヒン言わせてるし。ま、ボクの魔力触手にかかれば大概の女はそうなるんだけど』

 

 どこかで聞いたようなセリフだな。……ああ、父上か。ディオドラにまでグレモリーがうつったのだろうか。

 

「お前っていうか、アスタロト家はそういう器用なの得意だよな」

『制御のそれが極まったのが、ベルゼブブさまだしね』

 

 ディオドラは魔力の操作がおそろしく精密だ。魔力で蛇やら触手のようなものを作って、細かく動かしたりを簡単にやってのける。触手の先端を尖らせて、鎧の隙間に突き刺したりとかを戦闘中の動いて避ける敵に命中させるからな。ラティアもそうだが、魔法も得意だしなこの家系。

 アスタロト家出身のベルゼブブさまともなると事象を式に変換して操作するとかどうとか、意味の分からないことをするらしい。なんだそれ……。

 

 俺にはああいう細かいのは出来ん。普段ならともかく、戦いとなると大威力広範囲でまとめて薙ぎ払うのが手っ取り早い。それでほぼ勝てるのだけれど。

 エロ利用なら結構細かいことも出来るんだがなー、布の繊維にしみ込んだ色々な汁だけを「消滅」させて綺麗にしたりとか。着替えがないときの野外ックスに大変便利。

 

『さって、それで頼まれてた吸血鬼の国の行き方の件だけど』

「お、分かったのか」

 

 吸血鬼はその王国全体に結界を張り巡らせているらしく、入り方を知らないと入国が難しいらしい。場所さえ分かっていれば、魔力量に任せた強引な突破も出来なくはないようなのだが。

 

『いや、分かってない』

「分かってないのかよ。ベルゼブブさまなら知ってそうだし、教えてくれたらいいのにな」

『そこも含めて勉強しろってことじゃないかな? で、代わりに教会に吸血鬼の情報があったよ。I国のT市で吸血鬼が暴れてるってさ』

「ああ、そっちに聞けってことか。さすがだな」

『まあね、本当は代価をもらいたいところだけど、ベルゼブブさまから頼まれてるから今回はなしでいいよ』

「吸血鬼の二大派閥の一つ、『ツェペシュ派』のマインスター家から追放された上級純血吸血鬼……ね。これなら確かに自分の住んでいた国のことは知っているだろうな」

『そそ、そいつを捕まえて吐かせればいいんじゃない?』

 

 こいつは、本当に教会の情報引っ張ってくるのがお上手だ。俺には出来そうもない。

 と、とりあえず褒めておくとディオドラは得意げな顔をして、

 

『ボクはキミみたいに正面切って暴れるのは向いてないみたいだから、こっち方面で身を立てて行こうかと思ってるんだよ。だから、まぁ、アレだ』

「聖剣計画のときみたいに、暴力担当だけしろってか? あれ、お前が呼び出すのがもう少し早かったら、全員助かってただろ?」

『嫌だな、そんなに早めにキミを呼んでいたら、そっちに持っていかれちゃうだろ? あのぐらいのタイミングで良かったんだよ。おかげで生き残り連中の教会への恨みも大きくなってるしさ』

「そういうものか?」

『そういうものさ。全員生かしていたら、きっと良心がどうこう言いだしてた。全滅させてたら、自棄になっていたかもしれない。適度に生き残らせたから、そいつらのタメって言い訳ができて……こっちに堕ちて来たんじゃないか』

「相変わらず、口の上手いヤツだな、お前は」

『ハハハ、まあね! ああ……そうだ、その吸血鬼のマインスターだけどさ、もう討伐命令が出てたみたいで、教会が最初に送ったエージェントを全滅させたらしいんだよね』

「こいつらは……?」

 

 ディオドラが通信魔方陣の画面に、教会の戦士と思われる女二人──年齢は俺と同じくらいか? ──の映像が映る。

 

『その全滅を受けて、教会が追加で送ったAクラスのエージェントらしいね。聖剣の素質があるみたいで』

「エクスカリバーの欠片持ちか、縁があるな。デュランダルも……か」

『ま、キミなら楽勝でしょ? 先代のデュランダルならともかく、そのゼノヴィアって子はまだまだみたいだし』

 

 紫藤イリナにゼノヴィア。人間にしては、悪くない顔つきをしている。

 

「しかし、この教会の戦士の恰好はなんなんだ……悪魔を誘惑してるのか、これ?」

 

 パツンパッツンでボディラインくっきりの教会戦士の恰好は、女の子が着ると、こうなかなかそそるものがある。

 

『案外そうかもよ? 鼻の下のばしたところをバッサリとか。ああ……ついでだしさ、試してみたら? ボクはちょっと戦士系はもういっぱいいっぱいだけど、教会女もいいものだって知って欲しいしさ。食わず嫌いはもったいないよ?』

「もののついでにそういうのも……アリ、か」

 

 ふむ、ディオドラから話は聞いているが、俺はコイツほど口が上手くないからな。上手くやれるとも思えんが、ま、物は試しだ。失敗してもこちらに損はない。

 

『あ、そうそう。その子たち、もう現地に向かってるみたいだから、急がないと吸血鬼かその子たちか、どっちか死んじゃってるかもね』

「それを早く言え!」

 

 

 

 ―○●○―

 

 

「──ペトロ、バシレイオス、ディオニュシウス、そして聖母マリアよ。我が声に耳を傾けてくれ」

 

 上級にして純血の吸血鬼マインスター。それと対峙するイリナの視界の隅で、ゼノヴィアの伸ばした右手の先の空間が歪んでいく。

 

「この刃に宿りしセイントの御名において、我は解放する」

 

 空間の歪みの内から現れたのは、一振りの巨大な剣と、それが纏う極大の聖なるオーラ! 

 

「──デュランダルッ!!」

 

 その名に驚き見つめるイリナの前で、ゼノヴィアが構える聖剣が暴力的で攻撃的なオーラをまき散らす。

 吸血鬼との決戦の場となったホールの天井、床、散乱する長椅子などが、デュランダルの放つオーラによって刻まれ、砕け始めていた。

 

「伝説の……デュランダルだと!?」

 

 エクスカリバーの欠片から作られた聖剣に対して余裕を見せていた吸血鬼も、デュランダルの放つ波動の前には驚愕と恐怖を覚えているようだ。

 

「お、おのれ、神の下僕どもがぁぁぁ……! この、私が……こんな、ところでぇぇ!!」

 

 デュランダルの威容に臆し、狂乱の態を見せる吸血鬼に向かって、ゼノヴィアは振りかぶった暴威の聖剣を振り下ろす! 

 あまりにも強大な聖なるオーラ! 聖剣のオーラが放つまばゆい輝きに、イリナは目を覆った。

 

「な……に?」

 

 戸惑うゼノヴィアの声に手を退かすと、そこには無傷の吸血鬼と、その前に立って片手をかざすイリナとそう年齢の変わらなそうな少年の姿があった。

 

「吸血鬼マインスターだな?」

「ああ……お前は?」

「悪魔だ。少しばかり吸血鬼の国に用のある、な」

 

 深みがあり、艶やかさと華やかさを備えた声色の悪魔の少年は、イリナたちに視線を向けたまま吸血鬼に話しかける。

 金髪碧眼、悪魔にはよくある容姿だ。少年から感じる波動は、上級悪魔のそれ。

 状況が掴めず様子見に回ってしまったイリナと、必殺のデュランダルをかき消され半ば呆然としているゼノヴィアを他所に、悪魔と吸血鬼の会話が続く。

 

「悪魔……か。いや、ははは、助かったぞ。丁度いい、ここはどうだ、共闘といかないか? そこいる小娘共は、我ら共通の敵である教会の雌狗だ」

「共闘? お前、今死にかけていただろう」

「はは、なに、あの程度のオーラなど、この私ならばどうとでも出来たとも」

 

 マズイ。イリナの心を焦りが覆う。

 純血の吸血鬼だけでも苦労していたのだ。そこにどういうカラクリか分からないが、あのデュランダルのオーラすらかき消す術を持つ上級悪魔などが加わったら……。

 

「そこの教会女ども、俺はコイツに用があってな……。このままさっさと尻尾を巻いて逃げかえれば、生かしておいてやってもいいぞ? 負け犬を追うほど暇でもないしな」

 

 悪魔の少年は、どうやらイリナたちとの戦闘を避けたい様子。

 デュランダルのオーラ砲を防いだのは、何らかの使い切りの手段だった? 

 どうするべきか。同時に相手取るのは無茶だ。しかし、初めて見たデュランダルの力はあまりにも頼もしかった。ゼノヴィアは、アレをあと何度放てるのか? 

 イリナの判断には迷いが生まれた。悪魔と吸血鬼は、神の敵だ。討てるものなら討つべき存在である。

 

「ゼノヴィア……!?」

 

 イリナとゼノヴィアが組んで任務をこなすようになって数か月経っているが、デュランダルのことを知ったのはついさっきのこと。判断材料を求めてゼノヴィアへと視線を向けると、そこには再びデュランダルを振りかぶり、莫大な聖なるオーラを放とうとしている彼女の姿があった。

 いける! 仲間が攻撃の体勢に入っている。ならば、自身のすることはそのサポートだ! 

 イリナは手にした擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)を細く長く伸ばして振るい、悪魔と吸血鬼の周囲に渦巻かせた。

 これで、逃げられない……はず! 

 

「受け取れ、悪魔! 吸血鬼!」

 

 再び放たれたデュランダルの聖なるオーラ砲撃に、慄き逃げようと狼狽える吸血鬼。

 もう一方の悪魔の少年は、その端正な顔に三日月のような笑みを浮かべた……。

 

「一応、言ってやったぞ」

 

 一言、少年のその一言と共に、紅と紫の混じる魔力が渦巻き、漆黒の防壁を出現させた。

 デュランダルの威光がその防御壁へと叩きつけられ──あっさりと消えてなくなる。そう、聖なるオーラが、あの途轍もない威力を感じさせた暴力的なまでの聖剣波動が、抗う様すら見せずに闇に飲み込まれたのだ。

 

 黒い「滅び」の防御壁が消え、その向こうから姿を現した少年悪魔の容姿は変化していた。

 血のような紅の髪。

 

「あ、ああ……」

 

 イリナは我知らず奥歯をカタカタと震わせていた。

 傲慢さと自負のにじむ、紫の瞳。

 

「まさ、か……」

 

 吸血鬼と対峙した時にも、住民たちが変じたアンデッドを斬る時にも、冷静さと強気を保っていたゼノヴィアの声にも、動揺がうかがえる。

 

「がぁぁぁぁッ!」

 

 吸血鬼が、純血にして上級の吸血鬼、マインスターが、目に見えない力──紅髪の悪魔の魔力──によって宙に吊り上げられている。

 

「マインスター、お前はそこで大人しくしていろ。今、魔力で標(しるし)を刻んだ。逃げても無駄だ。なに、大人しくしていれば命は取らん」

 

 あの吸血鬼が、イリナとゼノヴィアに対して傲慢な態度を最後の最後まで見せていたマインスターが、何度も首を縦に振り、紅髪の悪魔への恭順を示している。

 それだけの力の差があるのだ。異形の者たちの共有する絶対的な価値観。『強さ』の差が。

 

「俺の中にもな、僅かばかりは人間をやっていたころの良心やら、倫理観の名残があるんだが。まぁ、あれだ、こっちに剣を向けて殺しに来たんだ。……何をしても、構わんよな」

 

 イリナが恐怖を覚えるほどだった、デュランダルの聖なるオーラ。それが今はちっぽけに思えてしまう。

 それほどの魔力の波動を目の前の紅髪の悪魔は放っていた。

 

「『紫紅の龍帝』……」

 

 イリナのつぶやきを拾ったのか、悪魔はその腕に神をも殺すと恐れられる神器の一つ『赤龍帝の籠手』を顕現させた。

 

「バカな……こんな、大悪魔が……」

 

 ルシファーの弟にして、赤龍帝。純血にして神滅具持ちの悪魔。その脅威度は、魔王のそれに等しい。

 こんな大悪魔の中の大悪魔の相手をするぐらいならば、百の上級悪魔に囲まれた方がまだマシだ。

 あのゼノヴィアの声に諦めの色が、混ざっているのが辛い。だが、それも仕方がないことなのかもしれない。直に浴びせられているこの魔力の波動は、それだけで何もかもを消し飛ばしてしまいそうなほどなのだから。

 

「やはり教会の戦士にも知られているのか、俺も有名になったものだ」

 

 悪魔が近づいてくる。ゆっくりと、散歩をするような気楽さで。

 後ずさろうとして、イリナはそれが出来ないことに気付いた。身体が動かない。首から上を残して、全身が固定されてしまっている。

 魔力だ。この悪魔は、術式も何もない、悪魔のよくやる少し離れた場所にある物を魔力で掴んで取り寄せる魔力の使用法。それだけで、イリナとゼノヴィア、そして吸血鬼をまとめて縛り上げていた。

 

「たしか、教会の信者どもは自殺が出来ないんだったか? なら、舌を噛まれることもないか」

 

 悪魔がついと指を動かすと、離れた場所にいたイリナとゼノヴィアが肩をくっつけ並んで立つような形にされた。ついで、指を無理やり開かされてしまい、二人は剣を手放してしまう。

 脇から飛んできた長椅子が、床に落ちた聖剣を巻き込んでホールの端まで飛んでいく。鍛えた戦士の足でも、一息にはたどり着けそうにない位置だ。

 

「どちらも人間にしては悪くない」

 

 悪魔は左右の手で二人のあごを掴むと、しげしげと瞳の奥までも覗き込むようにして無遠慮な視線を注いでくる。

 至近で見る悪魔の顔は、美しかった。負のオーラを放ち、死人や人形を思わせる吸血鬼のそれとは違い、恐ろしいまでの活力に満ちている。そして、同じくらいの傲慢さと嘲りにも。

 その悪魔の瞳に、イリナは色欲の火が宿るのを見た。垂れ流されるだけで心を崩されそうなオーラに、こちらを嬲ろうとする意志が加わり、ぞわぞわとした怖気が全身を撫でまわしていく。頭の中をかき回されているようだ。

 

「お前ら、美形の女で良かったな。生かして返してやろう、ただし、どちらかが俺に処女を差し出せ」

 

 何を、言っている。そんなことが出来るはずがない。

 

「ああ、殺せ、なんて言うなよ。生かして返してやると言っているんだ。わざわざ自殺を願うことは無いだろう? それに……」

 

 悪魔はホールの端へと目を向けた。そこには、さっき吹き飛ばされていった聖剣がある。

 

「あの剣、俺にとっては忌々しい代物でしかないが、お前らには大事なものだろう? お前らが俺の提案に頷かず、死んでしまったら。あれはどうなるんだろうな?」

 

 イリナ、そしてゼノヴィアと、悪魔は瞳を合わせて問いかけてくる。

 

「実は俺の知り合いに、聖剣を心の底から憎んでいる連中がいてな。そいつらへの土産にしてやろうか。粉々にされるか、それとも火山の火口にでも沈められるか。いや、どうなるんだろうな?」

 

 エクスカリバー、デュランダル。これらの聖剣の価値はイリナの命よりも重い。少なくとも、信仰に生きてきたイリナにとってはそうだ。

 

 私か……ゼノヴィアか……どちらかが、犠牲になれば……。

 

 悪魔が約束を守るとは限らない。ただ、悪魔は比較的約束事を守る傾向の強い異形だ。契約にこだわるからだろうか。

 

 ほんの少し前のことが思い出される。吸血鬼との戦い。その中で、イリナは元は人間だったアンデッドたちを平然と滅ぼしていくゼノヴィアに恐怖を抱き、距離を置いてしまった。差し出された手を避け、悪いのは自分の方なのに、彼女に謝らせてしまった。

 

「私が、私……を」

 

 決意しても口にするのは、はばかられる。

 

「やめろ、イリナ!」

「いいの、私が……だから」

 

 悪魔の手がイリナのあご先にのび、顔を上向かされた。

 初めての口づけを、悪魔に奪われた……。それに気づいて涙を浮かべるイリナを、悪魔は見下して、

 

「献身というヤツか? 仲間のために身を差し出したお前は、俺が相手をしてやろう」

 

 イリナを抱えあげると、悪魔は破壊が吹き荒れたホールの中でまだ無事な姿をとどめていた長椅子へと横たわらせた。

 

「そして、ゼノヴィアだったか? お前の相手はコイツだ」

 

 パチリと悪魔が指を鳴らすと、魔方陣が出現し、その円の内よりおぞましいものが湧きだしてくる。

 

「冥界でも最下級の魔物。種族の名前すらない、ただの触手だ」

「約束が違うわ! わた、わたしが……しょ、処女を差し出せばって……」

「ああ、ちゃんと守ってやるさ。この触手には、ゼノヴィアの処女の穴には挿れさせない。ただ、まあ、コイツの主食は女の分泌物でな。汁をあふれさせたら、入り口付近を啜るぐらいはしてしまうかもしれない……。といっても敬虔な神の信徒が、こんな最下級のおぞましい代物に弄り回されて、愛液を滴らせるなどあるはずもないか」

 

 触手が、動きを封じられているゼノヴィアへと絡みついていく。戦士の着る、身体にピタリと張り付いた戦闘服の、足や腕、首などの露出部分の隙間から内側へとぐねぐねと入り込んで、ゼノヴィアの胸や股の間の敏感箇所、そして尻穴などへと吸い付いて……。

 

「こんなものでッ!」

 

 口内へと侵入しようとした触手を、ゼノヴィアは食い千切った。口の中に広がる異臭とえぐみにむせながらも、彼女は悪魔を睨みつける。

 

「なかなか元気だな。それなら、こうしてやるか」

 

 悪魔の片腕に宿る『赤龍帝の籠手』が力の増大に続いて「Transfer」と音を発した。

 

「これでソイツは魔王級の力をもった、最下級の魔物だ。存分に楽しんでくれ」

「この悪魔ッ!」

 

 再び口を犯そうとする触手を退けようとして、まったく歯が立たなくなっているゼノヴィアの姿。悍ましい存在に悶えさせられている仲間の姿を見せられ、イリナは当たり前のことを叫んでいた。

 

「悪魔? 違うぞ……俺は天使だ。そう……天使の長、ミカエルだ」

 

 何を言っている……の……。悪魔の瞳を見ていると、頭に添えられた悪魔の手に撫でられると、イリナの認識が歪んでいく。

 

「ミカ、エルさま……」

「そうです。戦士イリナ」

「これは、一体……どういう」

 

 イリナは何らかの儀式の場に居た。いつの間にこうなったのか、その経緯はまったく分からないが、自分を抱きかかえているのが天(・)使(・)長(・)ミ(・)カ(・)エ(・)ル(・)であることだけはハッキリと分かる。

 

「戦士イリナ。貴女は選ばれたのです」

「えら、ばれた……私が?」

「ええ、天使と人間の子供。その母となる者として、貴女は選ばれたのです」

 

 なんという栄誉なのか! イリナの心は喜びに満ち溢れた! 

 

 




DQ(ドラゴンクエスト、龍の探索):
二天龍ドライグが龍王ティアマットから借りパクした宝物を、現赤龍帝のオリ主が探して回る。時系列は、聖剣計画序章の後くらい。
放っておくとお家でパコパコしてるだけのオリ主には、強制的に原作リアスちゃんのような旅に出てもらった。



イリナちゃんはミカエルさま()と絶対に色欲を抱いてはいけないックス
ゼノヴィアは、みなさんのご要望で、触手にお尻を開発されてしまうことに





ジャンヌ:テロリスト堕ちには理由があるだろうと、神器の『聖剣創造』絡みでバルパーのせいで「救えなかった……」していたことに。
ここではディオドラがそこに介入した結果、悪魔堕ちしている。

イザイヤくん:予定変更により、生き残った。ディオドラが同士の三分の一くらいの命の恩人になる。
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