公爵家次期当主好色物語 作:ルペッタ好き
前世におけるひいじいさんは、結婚式の当日まで嫁さんに会ったことがなかったそうだ。それで式終了からそのまま初夜という流れであったという。子供は七人。
ばあちゃんはお見合いで一度だけ会ったきりで、次に会ったのは式の日でそのまま初夜。子供は三人。
昔は娯楽も少なかったので、夜になったらヤルことは一つだったのかもしれないが、傍から見ている分には夫婦仲は良好に見えた。
しかし、昨今の自由恋愛尊重の風潮が広がる環境にあって、既婚率は年々減少傾向。夫婦が成立したとしても作る子供の数も少ない。さらに離婚率も上がっていたはずだ。
つまり恋愛は偉大であるという信仰こそが、少子高齢化を促進する最大の元凶だ。もちろん反論はあるだろう、望まぬ縁談で涙を流すという例も多かったことだろう。
だがまぁ、それはそれとして、人という種の数を増やしていくことを最大の目的とした場合、ほんの数十年ばかり前の結婚形態の方が現在の主流よりも優れていたことは確かだと考える。
なにが言いたいのかというと、婚約って制度サイコー!! ということだ。
浮かれているという自覚はある。周りの俺を見る目が生暖かいですらなく、なにやら微笑ましいものを見るような悪魔らしからぬものになっていることも気づいている。
俺はコミュ力に自信がない。一からレイヴェルを口説き落として結婚まで持ち込め等といわれたら「無理」と即答だったと思う。
「こんなにいい環境に転生させてくれてありがとうございます」
俺はこの幸運を感謝して神に……祈ろうかと思ったが、悪魔なのでそれはおかしいと気づいた。
ならば魔王かとも考えたが、魔王はうちの兄上だ。兄は関係ないだろうコレ。
『ありがとうドライグ。お前のお陰だ』
なので赤龍帝さまに祈りを捧げておくことにした。俺の今の待遇には、この龍を宿した神器の能力の影響が大なることは間違いない。
『なぜ俺に祈りを捧げる』
『いや、たしか前に赤龍帝になった者は、異性との縁に恵まれるとかなんとか言ってなかったか? だからこの縁もその縁結びパワーなのかと』
『たしかにドラゴンのオーラと強大さは好むと好まざるとに関わらず強く異性を惹きつけると言ったが』
『ああ、だから今回レイヴェルがどうもその気になってくれているのも、出かけた先にたまたま偶然に朱乃がいたのもその縁結びの龍帝さまのご利益だろ?』
ありがたや、ありがたや。ご利益てきめん。これは毎日《赤龍帝の籠手》を磨いて祈りを捧げなければ。
全自動で美女・美少女と縁を結び、さらに相手からの好感度を上げてくれる上に、悪魔社会で最重要の戦闘能力もピカイチときている。神様も実によい贈り物をくれたものだ。悪魔だから素直に感謝してやれなくてすまんな。この店、
『そうなる……のか?』
『そうなるだろ? 前世の俺にはそんな縁はなかったし、まったくモテたことがないからな』
情けない話だが、事実なのでしょうがない。
『ふん、勝手にしろ。俺は神器の機能の範囲でしか手を貸さんがな』
『ああ、勝手にする』
ふん、ツンデレドラゴンめ。こんなことを言いいながらちょくちょくアドバイスをくれたりもするのだこの龍は。
基本的に最強クラスのドラゴン目線での意見なので弱者など塵程度にしか思っていないような助言なのだけれど。これが結構、母方の祖父辺りと意見が合ったりすることがあるのが面白い。龍と上級悪魔、生まれついての強者同士で上から目線な考え方が似てくるのだろうか。
ああこの母方の祖父、「祖父」と言っても「一族の祖たる父」の略なので、俺の思考言語が日本語な上に略しているからなだけだが。でも、一度間違えてそう言った時に、本人からは否定されてないんだよな。曖昧に微笑まれただけで。
実はバアルの叔父上が、叔父さんではない可能性。精子レベルで在りえる?
龍の帝王と神器を介して魂が繋がっているらしい関係なのか、一時期祖父から教育を受けていたからなのか、俺の性格にもそういうところが出ているような気がする。けれどこれを他者のせいにはするまい。
最強チート系異世界転生者にありがちな、俺つえーイキリムーブなだけかもしれないのだから。まぁ、元凡人が急に最強クラスに強くなったら性格変わるのは当たり前だろう。
『男は強くなければイキれない。ヤラなきゃ生きてる甲斐がない』とか言う名言パロの迷言もあった気がするし、これはこれで良しとしよう。
俺は急激に強くなったことで調子に乗りまくっている、元凡人非モテオタのおバカな男だ。それを自覚したうえで、このやってきている都合の良い波に乗りまくってヤリまくるのだ。ぶるんぶるん。
そして、ついに卒業式の日がやって来た。出会いとお別れの時だ。炎の翼が桜の花を散らし、俺の俺がついに交り合うべきものと出会い、短くも長かった童の期間とお別れする日がやって来たのだ。
さっぱり眠れなかった。明日には! と想いが渦巻いて股間がギンギンで痛くて寝付けなかったのだ。目を閉じれば浮かび上がるのはレイヴェルのあられもない姿ばかり。寝ることも出来ず、君の姿ばかりが浮かんで他のことが何も考えられない。君とああしたい、君とこうしたい、ああ、シタいシタい、イタシたい。
これは一体どういう状況なのか。もしや、恋か? まぁ、ただの情欲だ。
ただの情欲に違いないが、俺の中に彼女への執着が生まれていることも確かだ。これでもし、「やっぱりやめた」などといわれた日には、俺は父上でもぶっ殺しかねん。そうなれば、そのまま赤龍帝と父上の眷属との戦だ。そして戦禍は拡大し、国が傾くに違いない。これは警告だ、彼女を傾国にするな。レイヴェル入荷絶対厳守を要求する。
「顔には出ていないな」
「眠れませんでしたか」
「ああ」
鏡に映るのは、紅髪紫眼という派手な色合いをした美少年。このまま順当に育てば、将来は乙女ゲームのワガママ俺様系王子っぽくなりそうな顔付だ。
ただしその美少年の股間は、未だに治まっていない。義姉さん、あんたのせいだよ。
「しかし、困りましたね。これでは着替えができません」
だから見ないでくれませんかね。ピクピクしちゃうから。
メイドが着替えさせてくれるのはいいんだよ。俺の身支度整えるのも仕事の内、俺が「自分でやるからいい」と拒めば彼女らの仕事が減って給料も減ってしまうからな。
だが義姉さん、あんたはダメだ。これが別のメイドさんだったなら、
「このままではダメだな、どうにか鎮めるしかない。よし、お前がやれ」
「え? 何を……」
「その口を使えって言ってるんだよ! 俺の物が鎮まるまでなぁ!」
「うぐぅ! ぐっ、げほ……。う……はい、若様」
「ちゃんと飲み干せよ」
「むく、うっく……ぐすん」
といった展開もあったかもしれないというのに。義姉さんでは手出し出来ない。
「グレイフィア」
「はい」
「出ていけ」
「いえ、しかしお着替えを」
「出て行けと言っている! お前の中の俺は、いつまでもオムツを替えていた赤子のままか?」
「そのようなことは」
義姉さんは俺を男扱いしていないのだろうな。
前世を合わせても、相当年下なのは確かだろうし、生れたころから知っていて世話もしてくれていたから。
「義姉さん、俺はもう子供を作れるようになったんだ。あまりお子様扱いしないでくれ」
「リアス……いえ、失礼しました。まだ時間はありますので、後ほど」
「ああ、あとで呼ぶ」
「失礼いたします」
まったく失礼な義姉さんだ。盛り上がったモノを見つめるなら、そのまま「その、良かったら鎮めようか? 手、だけど、いっぱい出して」くらい言ってくれてもいいだろうに。
微妙に期待してしまって、余計にカチカチなるわ。ああ、これが反抗期ね、とか思われてそう。
さて、股間のコレをどうにかしなければいくらなんでも恥ずかしくて部屋から外に出られない。
鎮まれ、鎮まるのだ、俺の如意金箍棒。純血の上級悪魔はその豊富な魔力で永遠の若さを保っている、ならばその魔力でもってコレを硬軟伸縮自在の棒とすることも出来るはずだ!
なんとか猛りを静め、義姉さん以外のメイドに用意をさせた。まったくあの義姉ときたら、魔王の妃モード、兄嫁モード、メイドモードの三段変形でギャップ演出してくるので股間に痛くて困る。
こう、なんだ、たとえるのなら勤め先でいつも上から小言を言ってくる美人女上司が、家に帰るとメイドとして働いていて「私などは呼び捨てにして、どうぞなんなりとご命令ください」って感じだ。エロ本にありそうでその後の展開まで想像できてしまう。実際にはデキないけれど。
さてレイヴェルとの婚約が本決まりとなった後、無駄に広い我がグレモリー邸に新しい区画が用意された。俺とレイヴェルが過ごすための場所だ。
その中に、いくつか大きなベッドがデデンと設置されている部屋がある。いわゆるヤリ部屋だな。
本日俺に与えられたミッションは、ここにレイヴェルを連れ込んでベッドの上でくんずほぐれつして気持ちよくなること。実に素晴らしい、ヤリ甲斐しか感じられない任務だ。ブラボー!
そして今、俺は使用予定の部屋の下見に来ていた。昨日も見に来たが、やはり下見は入念にしなければならない。
部屋の中の家具の配置を見る、どこに置くのが良さそうか。小奇麗に装飾されたビンを手にして、あっちへウロウロ、こっちへフラフラ。しかし、広い部屋だ。俺の寝起きしている部屋もそうだが、無駄に広いと拡散して効果が薄れてしまう可能性が高い。もっと数を揃えるべきだったか。
「リヴラクスさま、その手にされている物が何かお伺いしても?」
今日の義姉さんは俺について回る担当らしい。重要イベントだからだろうか。
「失敗はしたくないからな。そちらの気分が盛り上がる香りの出る代物らしい。どこで聞きつけたのか、献上してきた者がいる」
「少し確認させていただいても?」
やや不機嫌になりながら、メイドのグレイフィアにそれを手渡す。すると彼女はビンの蓋をあけ、手で仰ぐようにして匂いを確かめた。
聞いたところによると、冥界の未開拓領域で最近発見された植物から抽出された香り成分を配合した香料らしい。とってもハッスルできるそうな。
「これは魔力に恵まれた上級悪魔には効果がありませんよ。魔力量の低い者には意味があるのでしょうが、リヴラクスさまのような魔力の持ち主や、自己保存能力の高いフェニックスの方ですと……」
魔力が肉体に影響を与える以上、魔力の多い悪魔はそれだけ耐久性能も高くなる。ましてや俺のように幼くして魔王級に至るような者の毒物抵抗ときたら。
「そうか、やはり道具に頼るべきではないか。ところでグレイフィア、詳しいな?」
「確認しましたので」
「確認した?」
「はい、確認しましたので」
そうかー、自分たちで試したのね。そりゃ俺の所より魔王ルシファーのところに届く方が早いよね。長い悪魔生、マンネリの打破は永遠の課題らしいからな。ちくしょう。
うん、そうか。手元に来た時に嗅いでみたけど、別にムラムラしなかったものな。半分ぐらい分かってたさ。
なんだかよく分からない気落ちを抱え、俺は部屋を後にした。あとは到着を待つのみ。
こちらの両親、あちらの両親、俺とレイヴェル。六人での会話はつつがなく終了し、お見合いにありがちな「あとは若い二人で」という状況になった。
邸内の庭の一つで横長の椅子に二人並んで腰かけ、目の前のテーブルには茶と菓子の類。レイヴェルとの距離は、まぁ近い。肩が触れるくらいだ。
しかし、未だに冥界の空にはなれない。空が紫色をしている。人間と悪魔では空色と言われて思い浮かべる色合いが異なるだろう。
「リヴラクスさま……私と一緒ではつまらないですか?」
上に向けていた視線を隣の声の主に移す。隣の彼女からは、どこかで覚えのある香りがしていた。
「そんなことはない」
別にレイヴェルは偉そうに話さなければならないメイドではないのだ。普通に話してもいい。自分でも分かるが緊張している。
「それでしたら、よいのですけれど」
「レイヴェルは緊張しない?」
声と話し方を、普通にしようと努めながら、レイヴェルの瞳をじっと覗き込んだ。油断すると声が上ずりそうだ。あとぶっきらぼうな話し方になってしまう。
はい、俺は女の子と話すのが得意ではありません。兄姉の関係で会うことのあるソーナ・シトリーくらいキツイ相手なら、こちらもカチンとくるので逆に話しやすいのだけれど。
今のレイヴェルのように、好意的というか、仲良くなれそうな子だと、緊張してしまって上手く話せなくなってしまう。
メイドとか朱乃みたいに上下関係が明確なら、それはそれで余裕が持てるので問題ない。こっちの立場が上で、逆らってこない相手にならグイグイいける小心者なのだ。
レイヴェルの場合は、同じ名家生まれの純血上級悪魔。しかも、この後には卒業式が待っているのだ。緊張するに決まっている。あと油断すると股間も緊張して盛り上がりそうなので、これを抑えるのも大変なのだ。
「それは、そのもちろん私も、緊張しておりますけど。……その、この後ですよね?」
「ああ、うん」
「リヴラクスさまは、ライザー兄さまと仲がよろしいので、そういったことには慣れていらっしゃるのかと思っておりましたわ」
「いや、実は初めてなんだ。だから、上手くできなかったらごめん」
「私もそうですので、お互い様ですわね」
そう言った後、レイヴェルは両手を胸の前に持ってきて軽く握ると両の肩を少し上げてからストンと落とした。なんかカワイイ。
「意識してしまって、身体がギュッとなってしまいますね」
「俺もやってみるかな」
レイヴェルの仕草を真似てやってみると、「ふふ」と笑われてしまった。男がやっても気持ち悪いか。
「いえ、なんだか可愛らしくて」
「可愛かったから真似してみた」
そう言ったら、また笑ってくれた。うん、可愛いな。
こんな子にこれからするのかと思うと、なんだかもう我慢できそうにない。いっそ、もっとくっついて距離を詰めた方が良い気がしてきた。
彼女の視線がこちらの股間に向かうとマズい。
「あっ……」
後ろから手をまわして腰を抱え、ぐっと引き寄せる。互いの顔がくっつきそうなほど近くなって、彼女の瞳の中に映る俺の顔が見えた。
もともと紅潮していた頬がより紅くなっていくのが分かった。自身のことは頬の熱で、彼女の方は見たままだ。
「これ、この匂いって」
「新しく見つかった植物の香りのようですわ。えっと、こういうときに、とても良いものと聞きまして……」
なんだかたまらなくなって、気が付くと俺はレイヴェルを抱きしめていた。お互いの頬が触れ合うような位置。
「リヴラクスさま」
「リアスがいい。親しい人はそう呼ぶ」
「リアスさま……」
彼女の手が俺の背中に回ったのが分かった。心臓の鼓動がハッキリと分かるくらい、身体と身体をくっつけ合った。
「もし俺が女として生まれていたら、リアスって名付けるつもりだったかららしい。でも、父がジオティクスだから、男なら名前の後ろ二つの音は父のそれに合わせたかったんだって。兄もサーゼクスだろう?」
「お二人のお名前は、お義母さまが決められたのですか?」
「うちは女の意見の方が強い家系らしいね。昔からそうだったって聞いた。入り婿でも嫁取でも、どっちでもそうなるらしい」
レイヴェルの感触を全身で楽しむ。上級悪魔には効果のない媚香を、肺いっぱいに吸い込んだ。
「あら、でしたら。私たちもそうなるのでしょうか?」
「そうなれるといいと、今すごく思っている」
レイヴェルはとっくに気づいているだろう。なにせグイグイと押し付けるような形にいつの間になってしまっていたのだから。
「でしたら、リアスさま……んぅ」
言わせる前に彼女の口を塞いだ。ここまでくれば男は度胸だ。
唇と唇が合わさる感触が気持ちいい。それを夢中で味わっていると、その味が変わった。ああ、彼女の舌が俺の唇を嘗め回している。絡め合おうと誘ってくる。
「んっ、ふぅ、ちゅっ」
服の上から身体をまさぐりあい、互いの口内の形を覚え合った。
股間の棒が欲に濡れてきた、よだれが滲んでしまっているのが分かる。彼女はどうなんだろうか。
「はぁ……♡」
一息ついて、舌をほどき、唇を離し、零れ落ちそうになった唾液をなめとって、顔の距離を少しだけ取る。
なんてえっちな顔をしているんだろう、この子は。そしてこの子の瞳の中の俺の顔のいやらしいこと。
「間違って、香水をつけすぎてしまったようですわ。本当は、私、こんな風ではありませんの」
レイヴェルはこの香りに効果がないことを知らないのだろうか? 知らないで付けているのなら、それを教えたらどうなるのだろう。
そんな興味を抱きながら、吐息のかかる近さで見つめ合っていると、彼女の唇の端がツッと上がるのが見えた。
俺はまたたまらなくなって、レイヴェルを抱きしめていた。抱きしめて、彼女の耳の後ろ付近、一番香りの強い場所で深く息を吸う。
「俺も、これにあてられちゃったみたいだ。もう我慢できそうにない」
「……部屋に参りませんか」
「そうだね。なんだか、もうそうなってるみたいだ」
「もう?」
「グレモリーの夫婦の話」
彼女はこの香りの効果がないこと知っている。
でも、俺と彼女がこんなになっているのは、間違いなくこの香りのせいだ。
次回『焼き鳥令嬢に串をさす』