※この作品はR-18です。

公爵家次期当主好色物語   作:ルペッタ好き

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DX-4-10 援助交際の饕餮 -SLASHDØG-

 グレモリー家が所有する次元間移動列車には寝台車が設置されている。

 俺は今その一室で、青紫髪の上級な女性悪魔を抱いていた。

 

「はぁ……♡ ああぁ♡」

 

 彼女の見た目の年齢は高校生程度だが、悪魔の見た目の年齢は自由自在なので実年齢はあまり関係ない。

 また、生まれながらの上級悪魔は基本的に美形なので、彼女ももちろん美少女である。

 そんな彼女は、昨晩大変辛い目に遭っていた。聖剣使いの教会戦士によって眷属諸共皆殺しの憂き目に遭わされてしまいそうだったのだ。

 それで大変落ち込んでいたので、見るに見かねた俺は、ここは一つ是非とも慰めてあげなければなるまいと考えて事に及んでいた。

 

「はぁんん……♡」

 

 寝台車の一室というと前世の庶民感覚では狭そうなイメージがあるが、そこはお貴族様仕様のグレモリー家所有列車。ベッドだって普通に広い。ヤルことヤルのに困りはしない。

 

「龍帝さまぁ♡」

 

 乱暴なのが好みってわけではなさそうなので、やわらかく、やさしく、やらしくを心掛けて愛撫を続けていたところ、彼女の瞳は既にハートマークが浮かんでいるような状態。

 そろそろいただいてもよろしい感じだ。

 

「挿れるぞ」

「ああっ、挿れてぇ♡!」

 

 女にぶち込んでぐっちょぐっちょとし、「イイッ♡」「すごいわ♡」なんて言われるのは男冥利に尽きるというもの。

 彼女の御家事情を考えると一期一会になりそうだが、この機会にうんと堪能しておくとしようじゃないか。

 

「はっぁん、あっ♡ アアッ♡ んっ、もっと、ああっ♡ もっとシテぇ♡!」

 

 どうして俺がイタリアに縄張りを持つ彼女とこうなったのかと言えば、それはシグネとイタリア旅行に来たからだ。

 せっかく『神曲』なんぞを読ませて予習もさせたことなので、冥界に連れていく前にちょいと作者の故郷を観光してみるのも悪くない。そんな気持ちで、現地に縄張りを持つこの青紫髪の女性悪魔にコンタクトを取り、ガイドを依頼していたのだ。

 で、現地について連絡を取ろうとすると何故か魔方陣通信が繋がらない。どういうことかと事前に聞いていた彼女が拠点にしているという学校に向かってみれば、教会形式の結界が張られているではないか。

 これはマズイ! と、即座にバランスブレイクして結界をぶち破って突入。

 見習い教会戦士らしき白髪少年が校門付近で立ち塞がったので、これを問答無用で消滅魔力+フェニックスの風=『滅びの風』で消し飛ばす。

 風を斬り裂いたり操ったり出来ず、消滅魔力を相殺するだけの力も持たない弱者にはこれが一番。回避不能・防御不能の広範囲攻撃になるからな。  

 で、魔力の反応を頼りに彼女の居るだろう地点に向かって、校舎の壁を消滅させながら急行。

 間一髪、聖剣使いに殺されそうになっていたこの女性悪魔を救出したって寸法だ。

 いや、実に危なかった。あと少し遅れていたら、貴重な美形女性悪魔の命が失われてしまうところだった。

 

 彼女にとっての俺は、まぁ、命の恩人的な立場にもなるのでこのぐらいの役得は許されるだろう。絶対絶命のピンチを救ってメイクラブなんて話、物語でもありふれていることだしな。

 

 しかし、心臓への『譲渡』で全身から血を噴いてくたばったあの聖剣使いのおっさん。あいつが持っていた剣が何気に『ガラティン』なんて有名な一振りであったことだし、多少は功績も積めたと考えておこう。

 なかなか出来そうな面構えの渋いおっさん戦士だったが、所詮は儚く脆い人間。超高血圧にされてはひとたまりもなかったようで、あっさり一撃で決まったしな。異形相手だったらこうはいかなかったところだ。学校の建物内だったので建造物への被害の少なそうな方法を選んだ結果だが、なかなかグロい絵面だったなあれは……。

 まぁ、ぶち抜いた壁は許せよ学校経営者。

 しかし、眷属を失って凹みまくりの彼女には災難だっただろうが、ヴァチカンの近隣に縄張りを構えていた時点で危険度MAXだったわけだしな。本人の命が残っただけ幸運だったと思ってもらうしかない。

 俺は日本が縄張りで良かったよ。

 

「ああっ、もっと、もっと突いてぇ♡♡」

 

 さーて、じっくりとっぷり味わわせてもらうとしようかね。

 

 

 

 ―○●○―

 

 

 

「イタリアのこと聞かれたらどうしよっか?」 

 

 人間界から冥界悪魔領へと入国する際の正式な移動手段の一つである次元間移動列車。

 その客席の一つで、シグネはポツリと呟いた。つぶやきの相手は、膝の上に乗せた「ポッくん」。独立具現型神器『饕餮』によって生み出された、四体のシグネの分身の中の一体だ。

 

 夏休み前日。終業式の日に、休み中の予定をクラスメイトから尋ねられたシグネは、「彼氏とイタリア旅行に行く」と答えていた。

 まさか、実は駒王学園理事長リヴラクス・グレモリーの正体は悪魔で、シグネはその眷属になったから冥界に挨拶に行って来ますなんて言えやしない。

 といって、休み中も寮に居るとも言えない。実際には居ないのだから、訪ねて来られたら困ってしまう。

 じゃあ、あの転校前に住んでいた家は──と考えてもみたけれど、やっぱりよろしくなさそうだった。寮生の中にはあの街の近隣から来ている子もいるので、「じゃあ、あっちで会おうよ」なんて言われてしまいかねない。

 そこで、前々から聞かれて困っていた「例の彼氏」と出かけるということにしたシグネだった。嘘ではない。先生とお出かけするのは本当の事だから。

 

「楽しみにしてたのにな……」

 

 それならと先生が冥界に行く前にイタリアを観光して行こうと言ってくれて、そのためにネットで観光ガイドを見たりしてわくわくしながら前夜を過ごしたシグネだったのに、現地に着いてみたらいきなりの修羅場だったのだ。

 現地に着いてみれば、ガイドを頼んでいた悪魔さんが教会の戦士に襲われて眷属を全員殺されてしまっていたという大惨事。『王』であるガイドさん自身も先生が駆けつけるのがあと僅かに遅かったら……という状態だったらしい。

 襲撃されたガイドさんはとても落ち込んでいて、先生は慰めてくると言ったきり戻ってこない。観光なんて言い出せる状況ではなくなってしまった。

 

 それもこれも空気を読まずに襲撃なんて仕掛けてくる教会の連中が悪い。折角、海外旅行デートだったのに! 

 

 自己中心的な悪魔になったせいか、弱者を甚振り強者に媚びる『饕餮』の性か、近頃性格が異形よりに変わりつつあることを自覚しているシグネ。

 そんな彼女は教会勢力ではあっても人が二人亡くなったことを気にも留めず、むしろその二人への怒りをプンスコと沸き立たせ、ポップコーンをぐわしと掴んで口の中に放り込んだ。

 もちろん、ポッくんにも食べさせている。

 

『悪魔の駒』によって転生悪魔となった者、特に元が人間の場合、人型生物を殺害することへの忌避感が低下するのではないかと言われている。

 開発者であるアジュカ・ベルゼブブさまから公式に明言されてはいないが、元々『悪魔の駒』が悪魔の戦力補充のために作られたという経緯を考えればこれは十分にあり得るものだ。

 もしくは転生することによって成った悪魔という種族自体が、他者を害することを気にしない種族なのかもしれない。邪で悪いのが悪魔なのだから、当然と言えば当然なのだけれど。

 

 先生から聞かされたこの仮説を、シグネは素直に信じていた。そして、そのことで後悔もしていなかった。

 なぜって、あの日あの夜に「先生のためなら、なんだってする」と決めてしまっていたから。先生から誰かを「殺せ」と言われたら、きっと自分は一切の躊躇をしないのだろうと思っていたし、それでいいとも考えていた。

 堕天使。教会とはまた別の敵対勢力。そこに身を寄せたらしいと聞かされた元同級生たちとだって戦える。殺し合える。

 

「ううん、戦いは圧倒的で一方的じゃないとダメなんだよね。先生そう言ってたよね?」

『ポォー』

 

 殺し合うなんて下の下。圧倒的な武力を背景にして、対話と取引で好条件を勝ち取るのが上策。いざ戦となれば、こちらだけが一方的に攻撃し、相手の反撃は一つたりとも許さない。

 出来る限りそうありたいと先生は言っていた。 

 

 厳しい世界なのだ。これまでシグネが生きてきた平和な日本はもう存在しない。

『聖書の神』によって災いの神器を植え付けられてしまったシグネの暮らしていける世界は、悪魔に変わっていなくてもそんな殺伐とした世界しかなかったのだから。

 ポップコーンを貪り食いながら、シグネが決意を新たにしていると、列車の前の方の扉が開いた。

 

「退屈させて悪いな」

「先生! 前の方に居なくて良かったの? あと、あのヒトは?」

 

 座席から跳ねるようにして立ち上がったシグネを手振りで座らせ、先生はその隣に座った。

 

「前には分身を置いてきた」

 

 悪魔の列車は上級悪魔と下級悪魔、主と眷属などの身分で座る席や車両が異なっている。本当は席が指定されているのだ。

 これは、貴族とそれ以外の身分の者を隔離することでトラブルを防ぐといった目的があるらしい。

 ただ、今の乗客はシグネと先生、あとは急遽冥界に帰ることになったガイドさんだけ。そしてこの列車グレモリー家所有なので、ある程度は先生が好きにしても構わないとのことだった。

 

「あと、彼女は落ち着いてきたようだから寝かせている」

「そっか……。いきなり剣を持ったヒトが襲ってくるなんて怖いな……」

 

 とシグネがちょっと不安そうな声で甘えて見せると、先生は肩を抱いてくれた。たぶん、分かってやってくれているのだろうけれど、それでも嬉しくなってしまう。

 こてんと先生に頭を預けるシグネを見つめる先生の瞳は、ちょっとえっちで、でも優しいものだった。

 

「イタリア旅行だが……夏休みの終わり頃に予定を空けておくから、宿題は終わらせておけよ」

「え、あ、うん。そんな……小学生じゃないんだから、始業式直前になって慌ててやったりしないよ」

「本当か? 冥界は初めてで珍しいだろうから、そっちに気を取られて忘れないようにな」

「一応、あっちに行ってる分身を通して冥界も見てるから!」

「そういえばそうだったな。父上や母上、レイヴェルはシグネと直接会っていないが、シグネはもう知ってたな」

 

 シグネは分身との同調を高めることで、分身たちの見ている光景を見ることが出来るようになっていた。短期間でのこの成長は、彼女の好奇心と類まれな才能のなせる技だ。

 先生のお父さんとお母さんってどんなヒトだろう、そう思っていたら出来てしまったと言うのが真相である。

 

「なら、冥界の話は地獄門に着いてからでいいか。実際に見ながらの方が良さそうだ。予習もしているようだしな」

 

 先生はそう言って、シグネが横に置いていた本を手に取った。ダンテの『神曲』だ。

 現在の冥界は、この本に描かれた『地獄』の影響が大きいと、先生は考えているらしい。

 実際の冥界はこの本に描かれているようなおどろおどろしいものではなくて、緑の木々もあれば太陽も月もあり、きれいな水の流れる川もあり、ほとんどお城に居る分身たちはまだ見たことがないけれど湖だってあるらしいのだけれど。

 

「そうなると、出発まではまだ時間があるから……そうだなシグネの話でも聞かせてもらおうかな」

「私の?」

「ああ、シグネの祖父……日本の方のおじいさんは、七滝(ななだる)の近くに暮らしていたんじゃないか?」

「うん、名字の七滝はあの七つの滝が由来だって聞いたことがあるわ」

「その七滝には龍というか、大蛇の伝説があるのは知ってるか?」

「あ、聞いたことがあるような……。たしか……」

 

 むかしむかし、天狗の妻が池のほとりで七つの首を持つ大蛇を目にした。妻は家に帰るとそのことを夫の天狗に話し、これを聞いた天狗は池の近くに強い酒を入れた樽を七つ置いた。

 天狗が隠れて見ていると、やがて大蛇が姿を現し、この酒を飲んで酔って寝てしまった。天狗は寝込んだ七頭蛇にそろりと近づき、えいやと剣を振るって七つの首全てを斬り落とした。

 すると大蛇の身体は川となって流れ出し、斬られた首の切り口は滝となった。

 これが今ある七つの垂水(たるみ)──七滝(ななだる)の始まりである。

 

「あれ、悪魔や天使がいるのだから、この大蛇の話も本当だったりするのかな?」

「さあな。ただ、もしかしたら、もしかすると、七滝のご先祖様はその七頭の大蛇だったりするのかもしれないぞ?」

「えー……」

 

 シグネの家系は代々大食いだ。異形の存在が実在していたことを知ってしまった今になってみると、先生の話も本当ではないかと思えて来てしまう。自分自身の身に宿った神器のこともあるので尚更だ。

 

「実は、日本各地に残っている天狗伝説のいくらかは天使や堕天使の目撃例ではないかって話があってな。その話の天狗も、もしかしたらその類かもしれない。特に烏のような翼を持った烏天狗は堕天使だった例が実際に報告されているからな。と、考えるとその七滝伝説の天狗も堕天使だったのかもしれないな」

「じゃあ、堕天使は七滝のご先祖様の仇だったりするのかな?」

「分からんが、もしかしたらそういうこともあったのかもしれないと思えば、堕天使相手にヤル気も湧いてくるだろう?」

 

 なお地質学的には、七つの滝を形成したのは火山活動によるところが大きいと考えられているらしい。シグネは知らなかったけれど、何故か先生が知っていた。

 七滝は、伝説的には池の大蛇の死骸から生まれた滝であり、科学的には火の山の産んだものということになる。

 その後もシグネのお祖父ちゃんの家の話をして過ごしたのだけれど、親に連れられて何度かそこに訪れたことのあるシグネよりも、冥界暮らしの悪魔の先生の方が詳しいことが多かった。

 

「先生って、前世は日本人だったって言ってたけど……実はご近所さんだったりして?」

「さあな。まだ前世の知り合いや血縁者が生きているかもしれないから、誰にも教えないようにしているんだ。今の俺は立場も金もあるんでな。知られてしまうと、よくない輩が寄り付いてしまうかもしれない。まぁ……七滝の辺りに詳しかったのはたまたまだ」

 

 そう言うと、先生はシグネの髪をくしゃくしゃにするほど頭を撫でてくる。これをやったのが先生でなかったら、いくらシグネでもムッとしてしまうところである。

 男からは簡単にやっているように見えても、女の子は髪のセットにかなり気を遣っているのだ。特に最近のシグネはその辺りには気合いを入れていた。

 その気合を入れている原因が先生なので、許されているだけなのである。

 

「はい、先生!」

「なんでしょう、シグネくん」

「予習の本に書いてあったんですが、『聖書の神話』の世界では転生ってあるんですか? 地獄に落ちたらもう終わりで救いはなく未来もない。神に救われる者は最初から決まっていて~みたいな内容だったんですけど」

「ああ、それか。そこのところはよく分かっていないんだが、少なくともジャンヌ・ダルクは転生しているぞ」

「は!? え、ジャンヌ・ダルクって、あのジャンヌ・ダルク?」

「映画にもなっているし、書籍もたくさん、日本の漫画やアニメにもよく出てくるあのジャンヌ・ダルクだ。今は冥界で悪魔をやっているがな」

「ええー!?」

「ちなみに知り合いだ。サイン貰ってやろうか?」

「あ、ちょっと欲しいかも……」

 

 話題がシグネの祖父の住んでいた町の話から、実際にあった転生の話に切り替わった。転生悪魔の転生者ではなく、生まれ変わりの話だ。

 先生の話によると、転生する者は歴史に名を残した偉人や、伝説の人物などがほとんどらしい。

 

「お祖父ちゃんの家の近くで……有名人……。あっ、先生の前世ってもしかして、伊豆の踊子を書いたヒトとか?」

「違う、違う。俺は文豪じゃない」

「でも、文豪が転生するみたいな話があったような?」

「あったような気がするな。それで何故か戦っていたような気もする。とにかく、俺の前世は大したことの無い男だったよ」

「じゃあ、先生はどうして転生したの?」

「あー、そのうち話すこともあるかもしれないか。まだハッキリとはしていないんだが、ある魔女からそれっぽいことを聞いていてな。どうも俺は前々世でとんでもないことをやらかしたらしい」

「とんでもないこと?」

「世界史に途轍もない影響を与えたみたいだな。ただ、俺自身はそんな自覚はなかったし、死んだときも、それからかなり長い間も大したことのない男扱いで、凡人が送られる死後の世界……当時のハーデス神の冥府で暮らしていたらしい。前々世をハッキリ覚えていないのは、ハーデス神の下に向かうときに忘却の川の水を飲んだからだろう」

「えっと、レテの川だったかな……たしか、『神曲』に出てきたコキュートスとかもギリシア神話の地下世界に流れる川の名前だったような」

 

 現在「コキュートス」は地獄の最下層の呼び名になっているが、元々はギリシア神話に出てくる川の名前だった。それをアダムとイブを誘惑し、罪に引きこんだ『堕天使の蛇』が封じられている地獄の最下層の名前として用いたのが『神曲』である。

 といったようなことまでは、予習として渡された本を読みつつネットで検索して軽く調べるまではしたシグネでも知っていることだ。

 

「その川だ。そうだな、シグネも俺の眷属だ。場合によっては聖遺物の類とぶつかることがあるかもしれないか……『饕餮』も大概だが、『赤龍帝の籠手』も因果な代物だからな。もしかしたらのときのために教えておくが──おそらくだが、俺には聖槍、聖十字架、聖杯の類を無効化する力がある……のかもしれないと覚えておいてくれ。少なくとも、聖十字架の神滅具『紫炎祭主による磔台(インシナレート・アンセム)』は大したことがなかった。本当はハーデス神に会って確認した方がいいのだろうが、ハーデス神は聖書の神話に属する者を嫌っていると聞くから、なかなかその機会がない」

 

 そう言って、先生はため息を一つついた。

 

 

 

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