公爵家次期当主好色物語 作:ルペッタ好き
「……事象の可能性を想定外の現象に変化させられると聞いていますが……」
【
【少なくとも『
【今度は、その鎌が整備不良
「チートって奴よね」
【違うよ。それは他の神滅具所有者のことだ。──これはバグさ。神滅具が神器のバグと呼ばれているんだし、ちょうどいいんじゃないかな】
「『蒼き革新の箱庭』と『究極の羯磨』、このふたつは現在共にあります。では、そのふたつの神滅具が揃うとどうなるのか。答えは──『最悪』です。『蒼き革新の箱庭』で創り出された世界は、『究極の羯磨』の能力によってあらゆる事象にあり得ない選択肢が生まれることが多い。奇跡の産物から、悪魔の所業とも思えるものまで、千差万別、あり得ないことがあり得ないタイミングで起こります」
25巻より
あり得ないことは、あり得ない。起きるはずのないことは、起きない。発生しない事象は、発生しない。
それは当たり前のことだ。
明らかに直撃したはずの攻撃が、距離が届かず空振りしたことになる。重要な作戦の前に歴戦の戦士が命を預ける武器の整備を怠る。
そんなことはあり得ない。
ある人間がコンクリートの壁に体当たりをしたとして、激突せずにそのまま壁をすり抜けてしまうことは──あり得る。
人間を構成する最小単位の構成要素と、コンクリート壁を構成する最小単位の構成要素。これらが互いにぶつかり合うことなくすれ違う可能性は、極わずかだが存在するのだ。
そんなことは普通発生しないが、絶対に起きないわけではない。
もしも、あり得ない
もしも、そのタイミングで、
こういったことも──あり得るのだろう。
東京ドームひとつ分の真っ白の空間。その中心にポツリと建つ
それが少女のすべてだった。
少女の年齢は十代の半ば、多感な時期だ。そうだというのに、少女は
忙しい兄はなかなか顔を出してくれない。従弟の少年は学校に通っているし、家の課す修行もある。
だから、多くの時間を少女はひとりで過ごしていた。
ゲーム、マンガ、小説。アニメ、ドラマ、映画。
独りきりの時間を潰すためのものは多く与えられているけれど、寂しい気持ちは抑えられない。
少女の記憶の中には、現実の世界が存在しない。この何もない場所で、空想の中の物語を追いかけ続けている。
ゲームの主人公は、どうしてこう思ったのだろう? 少女にはそれがよく分からなかった。他人を知らないから。世間を知らないから。
マンガの中に良く描かれている学校というものは、実際どういう場所なのだろう? 話には聞くけれど、通ったことがないから分からない。
小説で、アニメで、ドラマで、映画で、様々な媒体の中で描かれている恋愛というものは、どんなものなのだろう? 何も分からない、知らない。
いつになったら、外に出られるのだろう? この真っ白な、何もない場所から色づいた世界に出て行けるのだろう。
どうしてこんな場所に閉じ込められているのだろう? 兄は何も教えてくれない。
ここは結界で閉ざされ隔離された空間。余計なものが排除された少女を閉じ込めるための檻。
あり得ない選択肢を、存在してはいけない可能性を生み出してしまう少女に、余計な思考をさせないための場所。
本当ならば、少女を封じるもっと良い方法があったのかもしれない。一番簡単なのは、殺すこと。命を奪ってしまえば忌まわしき力を遠ざけることが出来る。あるいは術で意思を消してしまってもいい。一切の情報を与えず、何もない空間に放置して精神を壊してしまうという手段。冷凍しておくのもいいかもしれない。
この空間で、不便で、不自由で、退屈で、つまらなくて、寂しく、孤独であっても、それでも少女が生きていられるのは、ある程度の娯楽を与えられてるのは、少女の兄の想いであり愛だった。
だけど、少女にはそれが分からない。比較する対象を知らないから。何も教えてもらえないから。
他者を知ってしまえば、理由を聞いてしまえば、少女の力がどのような事象を引き起こすか分からないから。
ネットも繋がらない、テレビの電波は届かない、話せる相手は少しだけ。
手元にあるヒマつぶしは、ゲーム、マンガ、小説、アニメ、ドラマ、映画などのひとりで楽しめるものばかり。
生まれてこの方そんな環境で、ずっと過ごして来た少女はオタクだった。オタクであることを強いられていた。
少女は圧倒的な非リア充だ。そうでしかいられない。
そうだというのに、最もよく話す相手である従弟は三つ年下で性別も違う。そして圧倒的にリア充なオーラを放っていた。
正直、話が合わないところが多い。コミュニケーション能力を磨く機会など一切存在しない少女に対して、従弟の少年はその反対。外の世界の話を聞けば、羨ましい話ばかりが出てくる。
そして、少女には無駄な知識だけはあった。何故って一日のほとんどをひとりで楽しめる娯楽に浸って過ごしているから。
そんな少女が、話し相手を求めて何が悪いだろう?
誰か、他のヒトとも会ってみたいと思ってしまうのはおかしいだろうか?
趣味の話の出来る相手が欲しくなるのは当然ではないだろうか? ディープな話がしたいのだ。語り合いたいのだ。
同性の子がいいだろうか? きっといい。きっと楽しい。
でも、男の子とも会ってみたい。話してみたい。出来れば同年代、もしくはちょっと年上。ついでに少女に許された趣味・娯楽の話を熱く語れたら素晴らしい。
出来ればカッコイイと良い。アニメの声優さんみたいな、良い声のヒトがいい。
様々な媒体で、いろいろな物語で、いつも目にする度に憧れてしまう叶わぬ想い。叶うはずのない願い。
こんな誰も来ない場所で、ずっと過ごしていては
少女は──出会いが欲しかった。
そして、その願いが、あり得ない選択肢を無理矢理生み出し、夢見る少女のもとに『最悪』の可能性を呼び寄せてしまう。
「
ある日、従弟が雑誌を持ってやって来た。顔を横に向けながら、ぐいと少女に紙袋を突き出す少年の名は
黄葉とは少女の名である。名字は竜太と同じ百鬼。
「何か頼んでたっけ?」
「ゲームの雑誌が読みたいって言ってたでしょ?」
「ああ、そういえば」
こんなことは、あり得ない。
少女の目に触れる物は、普段は事前に調べられている。エッチなゲームの雑誌なんて、少女がゲーム好きだとしても手元に来ることは無い。少なくともあと数年は確実に来ない。
だけど少女は気になっていたのだ。元はエッチなゲームだったけれど人気があったので全年齢版に修正されて発売されるゲームというのは結構ある。
少女はその全年齢版ゲームをかなりやり込んでいた。そして、別の雑誌でそのゲームの続編が発売されるという情報を見てしまったのだ。
気になる。当たり前だ。でも成年向けだ。でも、続きは気になる。
だから少女は、もしかしたらの可能性にかけて従弟に頼んでいた。そして従弟は、まず
「うわぁ~えっちだ」
お礼も言わず、少女はさっそく雑誌を読み始めた。そのとき、エロゲ雑誌を包んでいた紙袋はポイと脇に放り捨てられてしまう。少女も、従弟の少年も紙袋の中身には興味があっても、その入れ物にはまったく興味を抱いてはいなかったのだ。
「恥ずかしかったんだからな」
従兄の竜太少年は小学校高学年。とっくにエッチなものへの興味を抱き始めているお年頃。同時に羞恥心もガンガンにあった。こんな成年向けの雑誌を小学生の竜太が書店で買えたのは……あり得なくもない話だ。店員さん次第である。
「なに? 竜太も読みたいの?」
「帰る」
従姉からかうような視線を向けられた竜太少年は、カッと顔を赤らめると足早に去って行った。お年頃の童貞なのだから、仕方がない。
従姉のお姉さんと一緒にエッチな雑誌を読むなんてイベントは、いくらリア充オーラを纏う竜太少年であってもまだ耐えられないのだ。
「はぁ……」
従弟が去った後も、少女は雑誌に夢中だった。少女は十代も半ば、こういったことに興味が湧いてくる時期だ。
そうだというのに、彼女の真面目な兄は「18歳まではダメだ」とこういった物を少女から遠ざけていたので、のめり込んでしまったのも仕方がない。
お年頃なのだ。身体はもう出来ているのだ。雑誌を見ていると、下腹部がムラムラムズムズとして来てしまう。
「ふぁ……」
気が付けば深夜。雑誌をねちっりと読み終えた少女は、熱っぽい吐息を漏らした。
コレは兄に見つかってはならない代物だ。隠さなければ。
そう考え、とりあえず雑誌がここに持ち込まれた際に包装に使われていた書店の紙袋を探した。隠すにしても抜き身でというのは不安だったのだ。少女の兄は鋭いのだから、うっかり見られてしまう可能性もなくはない。
なお、少女が考える隠し場所候補は、彼女の下着を仕舞っているタンスの引き出しの中だった。兄に見られる可能性は限りなく低い。まずあり得ない。少女の兄は、妹の下着を見聞するような変態ではないのだ。
ただし、少女の知らないところで、少女の兄は
古から日本を守って来た退魔の名門、百鬼家。五大宗家の筆頭である百鬼家、その当主として『黄龍』の名を受け継いだ者としては
「あれ……? なにこれ?」
そんな兄の行動など知らない少女は、エッチな本を隠そうと紙袋を広げ──その中に入っていた紙を見つけた。
書店で本を買った際に、紙袋に広告などが入れられていることはままあることだが、少女はそんなことは知らなかった。買い物の経験が無いので。
でも、その広告がどこかおかしいことだけは分かった。
『あなたの願い叶えます!』
そう書かれたいかにも妖しい魔方陣の描かれた紙切れが一枚。どういうわけか他のチラシの中に紛れ込んでいたのだ。
それは悪魔のチラシだった。悪魔が「お客さん」を増やすために配っているチラシだ。それがどうして従弟が書店でもらった袋の中に入っていたのか?
たまたま駒王町に立ち寄った人がいた。その人がたまたまチラシを受け取り、たまたま竜太少年がエッチな本を購入した書店まで移動し、そこでたまたまチラシのことを思い出して取り出し、たまたま手から落として、「まぁ、いいか」と捨て置き、たまたまそのチラシが他の客の動きによって舞い上がり、たまたま書店の広告チラシの中に紛れ込み、たまたま竜太少年の本を入れる袋に入れられ、少女の手元に届いた。
そんな偶然だって、あり得なくはない。
少女が身に宿す神器は、あり得ない選択肢を無理矢理生み出す力を持っている。だから、あり得ないことなんてほとんどない。
「あなたの願いを叶えます……?」
少女はオタクである。オタクであることを強いられてきた。
近頃のオタクである少女にとって、悪魔とはそれほど怖いイメージがない存在だ。ゲームで、マンガで、アニメで、二次元の世界の悪魔たちは様々な様相を見せてくる。真に邪悪なこともあれば、親しみやすいことだってあるのが近頃の悪魔のイメージ。
百鬼家の生まれであることを考えれば、異形の存在とその危険性について教育されていてもおかしくないが、その身に宿す神器のこともあり、少女はあまりその手の情報を与えられていなかった。
悪魔のチラシに書かれた文言を読めば、なるほど悪魔らしく願いを叶えるには対価が必要だと書かれてはいる。だけど、こんなチラシなんて形で勧誘してくる悪魔が恐ろしく思えるだろうか、少なくとも少女はなんとも思わなかった。
そもそも本物かどうかも怪しいものだ。というより十中八九、本当に悪魔がやって来ることなんて
ただ、少女は世の中には不思議なことがあることだけは知っていた。本当の意味で世の中なんて知らない、経験したことなんてないけれど。
なにぶん、真っ白結界空間の中で暮らしているのだ、自分が普通でないことぐらいは分かる。
「えーっと……」
だから、ものは試しとやってみた。悪魔の召喚をしてしまった。エロゲ雑誌を読みふけった余韻を身体に残したまま──。
少女の暮らすこの白い空間は、五大宗家筆頭百鬼家が秘伝の結界術を十も重ねて厳重に構築した『
そんな結界の中で悪魔のチラシを用いたところで、召喚のメッセージが悪魔に届くことなんて
そして、百鬼家などという悪魔にとっても危険極まりない場所からの召喚に応じる悪魔なんて
さらに言えば、仮に「とんでもないところから、エッチな雰囲気になってる美少女からの寂しいよ~ってお願いが来た。これは興味深い」などといった反応をする強大な悪魔が居たとして、『勾陳結界』を通り抜けることなんて不可能だ。力尽くで通ったとしても、結界を展開した術者に知られずになんてことは、
普通は──。
「俺を呼んだのは、お前か?」
だが、悪魔はやって来た。あり得ないことに、するりと『勾陳結界』を透り過ぎてやって来た。
「やば……なにこの美形……」
少女の召喚に応じてやって来た悪魔は、美形だった。物凄い美形だった。
ついでに、アニメで二枚目悪役系が得意な声優さんみたいな声をしていた。少女は声だけでも萌えられる訓練をしていたので、たまったものではない。
お布団の中で、良い声を聞きながら「ふぇ~」と頭を蕩けさせることだってよくしたものだ。することがなくて暇なので、毎日がつまらないので。
「違うのか? どうなんだ?」
「ふぁっ!」
頭の中がボワンとなって、返事の出来ない少女に悪魔は顔を寄せてきた。近い、近い、近い。
顔が耳が熱い、汗が吹き出しそうになる。兄や従弟相手では起こしたことの無い現象だ。
はっきり言って、少女は男性どころか他人に対する免疫が一切ない。
「そう、そう、私が、呼んだの!」
なんとかかんとか返事をすると、悪魔は距離をそのままにジッと見つめながら問いかけてきた。
「それで、願いはなんだ?」
「あの、その……ホントに、来るって、思って、なくて……だから、えっと……」
従弟が相手なら割と上から目線で話せる少女だが、初対面の美形イケボ悪魔相手に言葉が上手く出てくるはずもなく──。
慌てたのか少女は周囲を手で探り、たまたま掴んだものを悪魔に見せた。とくに意味があっての行動ではない。何かを考えていたわけではない。たんにパニックになっていただけ。
「これ……が?」
「ふぁっ、えっと、だから、その……」
ナニを悪魔に見せたのか気付いた少女はさらに頭を混乱させた。だって、それはエロゲ雑誌だったのだから。
「なるほど、触手プレイがお望みか……。たしかに悪魔が必要な願いだな」
その雑誌の裏表紙には、触手系エロゲの広告が載っていた。ぐっちょんぐっちょんのヤツだ。人間相手では叶えられそうにない絵面である。
「ちがッ! ちがくて……」
「じゃあ、どんなプレイがいいんだ?」
「プレ! プレイじゃなくてッ!」
少女をからかいながら、悪魔はさりげなく、それでいて大胆に少女の身体に腕を回していた。
「冗談だ。召喚を受けたときに願いの内容はおおよそ伝わってきている。……寂しかったんだろう?」
「うん……」
慣れた手つきで、優しく甘やかすように髪や頬、首筋を撫でられ、少女はコクリと頷いてしまう。
「退屈で、楽しいことが無くて、つまらない。そんなところか?」
「うん……」
素直にうなずく少女の様子を満足そうに眺めると、悪魔はさらりと寝室の場所を聞き出した。そして、少女を抱え上げると流れるようにそちらへと足を運ぶ。
お姫様抱っこ初体験の少女は、これまで画面か紙面で見たことしかなかった現象が自分に発生していることに嬉し恥ずかし混乱し、そのまま運ばれて行ってしまった。
「なら、俺の悪魔としての仕事は、お前を慰めることだな」
「慰めてくれるの……?」
「ああ、きっと気に入る」
初回代金は、処女である。
五大宗家関係の女性陣
姫島朱乃:両親のことがあり人里離れた場所で親と親戚の朱雀くらいとしか交流なく育つ、学校行ってない。母親を殺され、親類に殺されそうになりながらの放浪サバイバル生活。
真羅椿姫:神器の関係で閉じ込められて育つ。両親以外の親類からは迫害される。学校は行ってない。中学生の年齢で悪魔と取引したことで追放される。
百鬼黄葉:神器の関係で隔離されて育つ。兄や従弟など数人の親族からは大事にされている。学校は行ってない。後に「あっち」に行ってしまう。
五大宗家は大変だなって
レイヴェルの話を書きかけ、イリューカの話を書きかけ、ラティアの話を書きかけ、どれも中途半端なところで、ふとそのうち『電蜂』もハイスクールD×Dユニバースでスラッシュドッグみたいにリメイクする予定なんだろうなと思ったら、また寄り道をしてしまいました。
テロスカルマを引っこ抜くことで、この世界の『XxX』さんたちは途中退場してもらうことに。アジュカと敵対してるらしいですが、現在の情報ではさっぱりわからんので。