公爵家次期当主好色物語 作:ルペッタ好き
2-1 ナベリウスからの手紙
前世の俺は一応仏教徒の端くれだった。うろ覚えだが、般若心経をだいたい唱えられたりする。
先祖代々の墓は田舎の寺にあったし、仏壇前のなんだか叩くやつをチーンと鳴らしてご飯を盛った足の着いた皿? のようなものとお茶をお供えしたりもしていた。
まぁ、そんな程度の話だ。日本人らしく神社にも行ったし、クリスマスに独り寂しくケーキを食べていたりもしたわけだ。
で、葬式なんかに出かけると、最後の方に坊さんのお話があったりすることがある。他所は知らないが、実家が檀家に入っていた寺の坊さんは大体いつも同じ話をしていた。
人は死んだら閻魔さまに裁かれて、生前の罪に応じた場所に送られると。六道輪廻? だかなんだかそんな話で餓鬼だの修羅だのそんな地獄に送られたり、もう一度人間やってこいやと言われたり、お前の来世は畜生こそ相応しい、あるいは結構厳しい天国にいけるなんて感じな話だったように思う。詳しくは知らないが。
で、最後にお亡くなりになった方はこの儀式によって戒名を授かって坊さんの弟子扱いになるので、輪廻の輪から外れて解脱? だかどうとかで仏様の場所にいけるんですよー、お布施お願いします。みたいな結びだったように思う。いや、我ながらひねくれているとは思うが。
さて、このお話が正しいとすると、今生の俺は冥界送り、つまり地獄に落ちたわけだが、普通に楽しくやっている。というか宗教違うんだが……。
結局それがどうしたって話なんだが、よく分からないし記憶にもないが、もし閻魔様から悪魔やってこいと言われてここに生まれたのだとしたら、出来る限り悪魔らしく、グレモリーらしくやっていきたいなと思うのだ。いや、だって、前世と比べたら天国だからね今の生活。ちょっとバイオレンス入るけど。
こんなイイところに送ってくれたのだ、期待に応えようじゃないか。
ちなみにお経唱えても別に頭は痛くならない。ディオドラから聞いた話では、元シスターの転生悪魔なんかは、聖書の神に祈りを捧げてしまって頭キーンとなることがあるらしいが。
仏は心が広いということだろうか……。お釈迦様の悟りを妨げようとして結果的に助けちゃったとか言う、煩悩の化身マーラ様的なポジションでも目指そうかな。恩返しっぽく。
魔王サーゼクス・ルシファー様、つまり兄上の城に『女王』で婚約者のレイヴェルと『戦車』の朱乃を連れて挨拶に行ってきた。
兄上はたいそう喜んでくれて、俺が朱乃の今後の計画『侍ガール風メイド』つまり黒髪ポニー和風メイドの話をしたらノリノリで刀を一本くださった。なんでも昔、鬼の姫が持っていた刀なんだとか。
まぁ、朱乃のメインウェポンは雷光槍なので、飾りのようなものになってしまうけれど。だが、コスプレははかどる! やはり持たせるだけにしてもそれなりのモノじゃないと格好がつかないしね。
しかし、俺とレイヴェルには祝いの言葉だけであった。
いや、なんか寄こせとは言えないけど、兄上は朱乃のこと好きすぎない? なんなの、寝とる気なの? それとも俺と同じで黒髪ロング好きなのか……。グレモリー家は日本贔屓なところがあるしな。どっちにしても危険である。
せっかくもらったので、今後しばらくは朱乃にはあれだ、袴ブーツとかハイカラさんとか、女子大学生の卒業式というか、あんな感じの格好をさせてみよう。
外出はそれで、家では和服メイドっぽいあれらを付けさせるのだ。
我が家の既存のメイドさんは洋風だからな。和風はあの振袖? あの部分がたまらないのだ。うんうん、兄上は分かっていらっしゃる。伊達に正妻をメイドとして働かせているわけではない。
でも、もう見せてはあげない。黒髪ポニー袴ブーツ帯刀堕天使メイドは俺のものだ。兄上にやらせはせん。ヤラせはせんぞ!
「若様、お手紙が届いております」
グレモリー家に戻ると、角メイドのリュイがどこぞからの手紙を預かっていた。
なんというか、いつの間にやら完全に俺付のメイドのトップのようになっているな。
「ああ、そういえばリュイはしばらく休暇だったか」
ただ、このメイドは我が家に居ない日が結構ある。それでも、立場が高いというのは気になるところだが。
いや、リュイがいないと朝一の鎮静フェラがどうにも物足りない感じになる。今のところ俺が体験した限りでは一番口の技が上手い女なのだ。
「はい、度々お休みを頂いてしまい申し訳ありません」
「構わないが……何か忙しいのか?」
「いえ、その……」
「いや、いい。余計なことを聞いた」
気に入っているとはいえ、メイドの事情など本人から聞き出すものではないか。父上にでも聞いてみるか。
俺宛の手紙を預かっているとなると、父上からもかなり信用されていることになる。貴族から届いた手紙を勝手に読まれたり、すり替えられたり、紛失したりなんてことになったら困るからな。
受け取った手紙の差出人は、エダーギ・ナベリウス。知らない名前だ。ナベリウス家はさすがに知っているが、その一族すべてを知っているわけではない。
「朱乃は義姉上……グレイフィアに言って、さっき話した衣装を用意させろ。ついでに兄上が、
さて、奥様に旦那さんが若い堕天使に色目使ってますよーとチクったところで、レイヴェルと連れ立って歩く。
最近、会議室のように使っている部屋に入ると、レイヴェルに差出人の名前を見せた。ちなみに俺は他の女に色目使いまくりである。
「ナベリウス家の分家の方ですわ。たしか、眷属の育成に力を注いでいらっしゃる方だったかと」
「レーティングゲームに熱心な方か」
椅子の背もたれに背を預けながら、封を切る。術式で圧縮していたのだろう、中から外観から感じたよりもかなり多くの紙が出てくる。
「ご自身はゲームには参加されず、育てた眷属をトレードに出して対価を受け取られていたはずです」
「つまりこれは、売り込みか」
手紙にザっと目を通すと、『都合の良い日に、レーティングゲームの練習試合をしませんか? こちらにはこんな眷属がいて、それぞれの眷属の能力はこのようなものです』といった内容のようだ。
「リアスさまは有名ですからね。眷属に採用されたとなれば箔が付きますし、自身の育てた眷属が注目の集まる場で活躍すれば──」
「その後の商売も順調と…………ん?」
今後を商機拡大を見据えた一手ということか。レーティングゲームの試合の練習という形をとって、自分の育成能力と『駒』の性能を見せてくれると。
流し読んだ部分をレイヴェルに渡して目を通すように促し、売り込み商品(眷属)を一名ずつ詳しく紹介している部分に注目する。
男は除外して……ほう、と思わず声が出た。
元猫妖怪の黒髪ネコミミ着物美少女『僧侶』、なかなかいいじゃないか。エダーギ殿は良い趣味をしておられる。
出来れば自分のモノと駒で下僕にしたい俺だが、そこを妥協しても良いかと思える程度のものはある。惜しいのは、転生させる際に使用された駒の数が『僧侶』二駒というところか。しかし、転生させた際の年齢から考えると、種族的な資質だけでそれだけの駒価値があったということになるが……ふむ、猫又の中でも希少種の猫魈という種族なのか。レア者だな。多少コネを使ってでも拾う価値はありそうな気がする。
ほう、備考……白髪の妹がいる……だと! おおっ、かなり小さいが、将来性は高い……しかもまだ駒入れ前……くっ、エダーギ・ナベリウスめ、できるッ! 光源氏計画的なアレができるかもしれないということか……ぐぅぅう。大きくなるまで、じっくりと仕込みながら育てて、最後に「もらってください」とかいわせながらパクリと……。黒髪姉と白髪妹を並べて姉妹丼……。
なんという、悪魔的な。
どうしよう、すごく欲しい。この仙術、妖術というのも気になる。俺が『僧侶』に期待しているものの一つになるかもしれない。
「リアスさま、良さそうな人材がいまし……」
俺の手元を覗き込んできたレイヴェルが、アッと何かを察した顔になった。
何かとはナニだ。言うまでもない。
「まぁ、その、な」
「いえ、分かっておりますわ。ただ……その、やはり大きい方がお好きなのでしょうか?」
レイヴェルは自身の胸に手を当てた。まだ全然育つから気にする必要はないと思うのだが、朱乃はデカイが年上だし。
「いや、それは相手による。似合うか似合わないか、それと俺がその相手毎に求める好みの問題で……な」
椅子を引いて膝上を叩くと、レイヴェルがその上に座ってくる。で、彼女のお腹に腕を回して、あごを肩にのせる。これが俺的レイヴェルとのベストポジション。えっちのときは、レイヴェルの向きを変えて対面が良い。背面+鏡も捨てがたいが。
「俺がレイヴェルに求めているのは、この感じなんだ。いや、全然大きくなってくれても構わないけど、今はこれが落ち着くから」
「成熟すれば身体の年齢は操作できますからね」
「たとえば、俺が八歳くらいになって、そっちが二十歳ぐらいというのはどうだろう」
ピクンとレイヴェルが反応した。
「それは……なんというか、とても興味深いですわ」
歳の差、身長差、胸囲の調整。見た目年齢の操作で、その辺りはわりとどうにでもなる。三十年も経てば俺が父上のようなダンディおっさんになって、今の年齢の姿のレイヴェルと……なんてシチュエーションも自由自在なのだ。
「なぁ、レイヴェル、この猫又姉妹両方欲しいんだが、買ってもいいかな?」
しかし、これって完全に人身売買……いや、俺は前世の倫理観など捨て去った悪魔。悪魔的にはありありの合法だ。
「それは、その、リアスさまがお決めになることですけど……私に何か?」
うん、鋭い。レイヴェルに頼みたいことがあるのだ。
「いや、俺の禁手の能力を考えると……姉妹で揃えたいが両方を俺の眷属に入れても得られる特性は同じだろう?」
「私の眷属に出来ないか、ということでしょうか?」
「そうなんだ。妹の方をレイヴェルの駒でいけないかと」
我が家の場合、眷属悪魔かそうでないかで扱いも相当変わるからな。どうせ姉をいただくのなら、妹もしてしまいたいわけだ。
「姉の方ではないのですか? 『僧侶』を二つも使っていますし、リアスさまの『僧侶』は一つ変異していましたよね?」
「ああ、そこはベルゼブブさまに頼もうかと思う。俺の変異『僧侶』ならエダーギ殿の通常『僧侶』二つ分の容量は軽いだろうから」
『悪魔の駒』の受け入れられる強さの容量は限度がある。そして、その容量は『王』の強さに応じて変わってくる。
失礼だが、エダーギ殿はそれほど名の知れていない悪魔。彼がまだ見ぬ恐るべき強者ということでもなければいけるだろう。
『悪魔の駒』の開発者である、アジュカ・ベルゼブブさまならその辺りはどうとでも出来るはずだ。
「ですが、そのような話を受けていただけるでしょうか? それに魔王の弟ということで通していただいたとしても、大王派から……ああ」
「次に挨拶に行くのはゼクラムの
『赤龍帝の籠手』全力倍加での攻撃禁止なんだよ。フィールドが脆いばかりに。
不公平じゃないか全力出させろよー、開始五秒でフィールドごと全部まとめて塵一つ残さず消滅させてやれるのにさー。みたいなことを言ったらどうにかならないだろうか。
「コネはアスタロトですか?」
「そうだな、兄上にも話はするが、メインはディオドラ経由でお願いしてみようかと。ダメならダメでその時だな。姉の方が強いから俺の方に欲しいところだが、逆にするって手もないことはない」
ディオドラよりもラティアからの方が話を聞いてくれるかもしれないが、ラティアはベルゼブブさまの姪なのだし。悪魔はなんとなくだが、親類の年下女性に弱い気がする。
「私の駒を使いたいということは、分かりました。でも……その、説得してくださいまし」
もじもじとしながら振り返ったレイヴェルに、熱っぽい流し目を決められた。ギュッと彼女の腹を抱える。
つまり、こういうことだ。
『いやですわ、いやですわ。私の眷属に旦那さまのハーレム要員を入れろだなんて!』
『そんなこと言わずに頼むよ、な?』
『いや、あぁあっ♡ こ、こんにゃ、ことされても、ダメですわぁ♡』
『ほら、頼むって、もっとズコズコしてあげるから、さぁっ!!』
『ああぁああうんんぅんん……♡♡!!』
みたいな説得してくれということだ。
「じゃあ、今晩頑張って説得するよ」
「ええ、お願い致しますわ♡」
最近は、俺が何か頼むときはこうやって色仕掛けをするようにしている。で、レイヴェルから何かねだられるときも色仕掛けをされている。
最初から答えは出ているのだが、こうなんというか、寝室生活のちょっとしたスパイス的にね。割と楽しい。
しかし、これだけやってもらうとなると、ちゃんとレイヴェルの望みを叶えないとな。やっぱり、手っ取り早く名声稼ぐなら戦争か。
ディオドラから聞いたところによると、堕天使共は神器持ちの人間を殺して神器を抜き取ったり、狩り集めて人体実験を繰り返したり、洗脳教育を施して戦力化したりしているらしいし。どうも神器の研究も進んでいるようだ。その研究成果をごそっと奪いとれたら、かなり俺の望みが進むだろう。
悪魔グレモリーたる者、身内には甘く、情愛深く接していかねば。
しかし、ディオドラはすごいな。同世代とは思えん。
篭絡したシスターを使って教会から情報を抜き出し、教会をドロップアウトさせたシスターを堕天使側に潜り込ませてスパイ活動させるとか……なんなのアイツ。強さはそこまででもないけれど、アジュカさまとは違った方面で裏方向きだよな。
―○●○―
「父上、リュイのことなのですが。ああ、俺の所のメイドですけど」
父上の空き時間をみて、あのメイドのことを尋ねてみることにした。
「リュイ……ああ、あの角の生えた」
「ええ、あれはどういった者なのでしょうか? どうも他のメイドとは少し違うようで」
いつもの密談部屋で、ふむ、と父上は顎に手を当てた。
「実はあのメイドは、お前の教師役になる予定だった者なのだ」
「は? ……教師、というと、その例のアレのでしょうか?」
「そうだ。だが、必要なくなったのでな。謝罪して断わりを入れたのだが、ならば『最強の女王』もするという、グレモリー家のメイドを体験してみたいと言われたのだ」
グレモリー家のメイドというのは、ちょっと変わった立場だ。義姉上のせいで。
悪魔女性が憧れる女性の一人であるところのグレイフィア・ルキフグスの職業ということで、上流階級の者でも、なってみたい、やってみたい、体験してみたいという者がそこそこいるそうなのだ。
「それで、俺付きになったのですか?」
お手付きありなのに?
「元々お前の教師役として依頼するつもりだった方だ。本人からそれで構わない、むしろそれが良いとまで言われては、直前で断った手前な……」
あ、これアカンやつだ。父上の言い方が、結構いいところの相手に対する感じだ……。
「その……父上。では、リュイは……もしや貴族の……?」
「ああ、気付いていなかったのか。あのメイドは純血の悪魔だ」
「魔力の質が……そこまで無いように思えたのですが……」
「技巧に優れた者でな。彼女は年齢、外見の操作、それから魔力の抑制、気配の遮断も得意なのだよ」
「そ、そうですか……」
マズイ……どこのどなたか存じませぬが、完全にグレモリー魔力で完堕ち服従状態にしてしまった。俺の「おせっせ先生」になるはずだった方を……!
「なにか、あるのか?」
「あー、そのですね……。まことに言い難いのですが、リュイを例のグレモリーの特性の実験に使ってしまいまして……」
「ああ、なんだ好意を得るくらいならば……ん、待て……それも使ったのか?」
俺は『赤龍帝の籠手』を顕現させた。
「はい、俺の魔力量で、倍加を重ねがけして……どうなるのかと、その」
「そ、そうか……いや、だが普通に見えるが。グレモリーの特性はある意味強力だが、彼女相手にそこまでは……さすがに」
「心の内では、もう、その完全に……。たぶんですが、死ねと言ったらその場で死んでしまいそうな……。その、ですね、グレモリー魔力倍加に加えて、『赤龍帝の籠手』のもう一つの能力も……使ってしまいまして」
やはりやり過ぎてしまったらしい、ぞ。コレ。
「何をしたんだ……」
「えー、そのですね。『譲渡』というのが出来るのですが、これは感覚の強化も可能でして、例えば目に力を『譲渡』すると視力が上がるといった……」
父上はテーブルに肘をつき、頭を抱えてしまった。
「一応聞いておくが、どこをどうしたんだ……」
「オマンコの感度を256倍強化してヤリまくってしまいましたぁ! すいません!」
俺はテーブルに打ち付ける勢いで、頭を下げた。
でも、父上も言っておいてくださいよ。やっちゃダメな相手くらい。義姉上以外にもいたのならさー。
「本人から、秘密にしてくれ、他のメイドと同じ扱いで頼みたいと言われ、契約してしまったのがマズかったな……」
「そうですか……契約なら、仕方ないですね。で、そのどこの誰なのかは……? 場合によっては、というか責任問題が……?」
父上は首を横に振った。
「誰とは言えん。そういう契約だ。ただ、うーん……どうしたものか」
何事も限度はわきまえろと言うことか。平民メイドなんて壊しても構わん、フハハハハッハーな悪逆貴族プレイとかヤラなければ良かった。
ディオドラ・アスタロト:
原作を読み直してみると、アーシアの教会追放から、リアスの縄張りへのレイナーレの誘導(堕天使の行動を操作)、ドーナシークがその縄張りがダブル魔王の妹なんて危険地帯と知らなそうな雰囲気(情報規制)、一巻の頃のリアスの性格(教会や堕天使には関わりたくない)なども読んでやっていたように思えるので、なんか有能っぽい?
教会を含めた和平でシスター篭絡できなくなって、ちんちんイライラしてああなっちゃったけど、生きてれば良い裏方になれたのかも。 なんて