公爵家次期当主好色物語 作:ルペッタ好き
「リアスさま、エダーギ・ナベリウスさまとの練習試合の日程は、これで良かったでしょうか?」
「大丈夫だ、問題ない」
レイヴェルの示した日程に頷きを一つ返す。俺は基本的には暇な日が多いのだ。試合形式は、エダーギ殿が数値を指定する変則ダイス・フィギュア。
まぁ、単独で強い眷属、連携の得意な眷属といるだろうし、その辺りをお披露目してくれるわけだ。
「それから、人数合わせのメンバーですが、ライザーお兄さまからお借りしておきましたわ」
目当ては一人とはいえ、エダーギ殿の他の眷属も見ないわけにはいかない。
ならば試合としての体裁を整えなければならないわけだが、なにせこちらは『王』、『女王』、『戦車』の三名。まともな形にならない。
そこで他所から足りない部分を埋める人手を借りてくるわけだ。こういうときは親族を頼るのが一番なのだが。
「ライザー義兄上の眷属なら、大体の実力が分かるから助かるな。まさか兄上から借りるわけにもいかなかったし」
「お義兄さまからお借りしたら……大変なことになりますわね」
魔王眷属はレーティングゲームには出ないので、見せてくれと方々から言われてしまうだろう。父上の眷属もそれぞれ仕事があって忙しいし。
ライザー義兄上は眷属の数も多く、予定も空いていることが多いようなので、こういうときには実に助かる。
「エダーギ殿との試合は、レイヴェルの紹介が一通り終わったあとになったので良いとして……。明日は大丈夫そうか?」
「バアル家は、やはり緊張しますわ」
明日はバアル大王家に訪問、次の休みにアガレス大公家、あとはシトリーにアスタロト。ま、俺の交友範囲など狭いものだ。
「気を付けるのは、現当主の叔父上と、叔母上くらいだな。次期当主のマグダランにも会ってもらうが、大人しい子だぞ」
叔父上は、異母姉である俺の母ヴェネラナへのコンプレックスやらなにやらで、もう非常に面倒くさい。会うたびにイラッイラさせられて、プチンとなりそうになる。
まぁ、バアル家最強の女傑とも言われていたらしいヴェネラナ・バアルと比較され、しかもその母上は当主にならずにグレモリーに嫁いで行く。残された叔父上は、母上と比べると凡庸なために、いろいろと言われたらしい。その上、生れた子供でも大きな差がついてしまった。
母上の二人の子は、どちらもバアル家の特性である「滅び」を強く発現し、魔力量も桁違いな魔王サーゼクス・ルシファーと俺こと赤龍帝のリヴラクス・グレモリーである。
対して、叔父上の子供は魔力量がごく少なく「滅び」を受け継がなかったサイラオーグ・バアルと、その弟で長ずれば最上級悪魔クラスと言われているマグダラン・バアルだ。
マグダランの魔力は俺が育てた。ゼクラム祖父さまに魔力の扱いを習うことと引き換えの対価だな。
貴族は努力を表に見せると、優雅ではないと馬鹿にされるのでマグダランがリヴラクス式魔力トレーニングをやっていることは極秘事項になる。まぁ、魔力の上昇速度が速いので他家にもバレているだろうが、こう優雅に泳ぐ白鳥も水面下では──のような感じだ。
サイラオーグでガクリとし、マグダランでは俺に世話になっている状況。叔父上はそれが気に入らなくて仕方がないのだろう。どうしても自分の子と母上の子とで比べられるからな。
俺個人としては、サイラオーグとマグダランどちらの従兄弟ともそれなりに仲良くやっているつもりなのだが、親はなかなかそう思ってくれないらしい。
そして、バアル家次期当主マグダランの母である叔母上は、一時期俺がバアル家への養子に、などという話があったせいでこちらを非常に警戒していて、なんともやりにくい。
同じ叔母でも、サイラオーグの母で第一夫人のミスラさんは、なんかエロい感じでいいのにな。
―○●○―
ああ、腹が立つ! ほんとに、ああ、もう、くっそ!
あのクソ叔父上が! ぶち殺してやりたい!
「リアスさま、オーラを抑えてくださいまし」
バアルの城内通路を不機嫌も顕わに、怒りの籠ったオーラをまき散らしつつ歩いているのが、俺だ。
それを諫めようとしてくるレイヴェルは、実に心が広いと思う。
「レイヴェルがバカにされたんだぞ!」
「ですが、ここはバアル家の……」
この城の防御結界は、貴族悪魔の城の中でも屈指の分厚さと言う話だが、内側からなら関係ない。外側からでも五十超の多層結界をまとめて吹き飛ばせるので関係ないが。
「俺は怒りを溜め込まないようにと、ここの始祖さまから言われているからいいんだ」
怯え切った案内の使用人には悪いが、苛立ちを吐き出さなければまたプッツンしてしまう。叔父上はアレなのか、俺がいつ目の前で完全にブチギレするのか試しているのか。
そういえば、フェニックス卿はマグダランと俺とで、どちらにレイヴェルを嫁がせるか天秤にかけていたのだったか。そうなると、それを知っていての嫌味だったのか?
「はぁ……まあいい。叔父上がああいう方だから、レイヴェルが俺のところに来たと思うことにする」
「リアスさまは魔力が桁外れなのですから、どうにか抑えていただきませんと」
魔王サーゼクス・ルシファーの真の姿を知る者は、それほど多くない。年若い世代にはほとんどいないだろう。
なので、見かけ上の魔力量では俺の方が兄上を抜き去っているように思われがちだ。実際はまだまだ差があるのだが。
「リアス兄さま」
なだめられつつ歩いていると、目的の人物から声がかかった。
「マグダラン!」
よっと抱き上げようとすると、我が従弟殿に逃げられてしまった。
「僕は、もう子供ではありませんので」
「子供ではないってことは、ハーレム作ったのか」
「いや、その、ハーレムは関係ないでしょう!」
俺は魔力増強トレーニング法と共に、ライザー義兄上から教わったハーレム道の心得もこの従弟に教えているのだ。だが、まだ性欲がみなぎる年齢ではないためか、恥ずかしがってしまうところがある。レイヴェルよりも更に年下の小学校低学年の上の方な感じなので、仕方がないのかもしれないが。まだ半ズボン履いてるお年頃だ。
とはいえ、興味はあるようなので、いずれハーレム大王バアルが誕生することだろう。うん、バアル家だけに許された特権だな、ハーレム大王の名乗りは。
「あの……」
「マグダラン。俺の『女王』で婚約者のレイヴェル・フェニックスだ。何かで連絡することがあるかもしれないから、そのときはよろしく頼む」
親戚付き合いから取り残される形にしてしまったレイヴェルを、マグダランに紹介しておく。婚約者と従弟が慣れた様子で自己紹介のやり取りを交わしている様子を見ると、俺の交友経験の少なさが浮き彫りになるようでやや悲しい。
「兄さま、あの花、上手く行きましたよ!」
「あれか、やったな! ……見せてくれるか?」
「はい!」
マグダランはかつての三勢力の大戦時の戦災によって絶滅したという花を蘇らせる研究をしている。花や木などの植物が好きな男の子なのだ。
俺はどうにもグレモリー気質なのか、それとも年長者意識なのか、ソーナのときと同じような感じでマグダランに接している。
というか、血縁のないソーナに「おにーさま」と呼ばれている方がおかしいな。転生者ムーブしてる。マグダランは従弟なので、普通。甥っ子のミリキャスからも「兄さま」と呼ばれているし。
ちなみに俺はサイラオーグに「おにーちゃん」などと呼びかけたことは無い。気分的にはこっちが年上なんでな。
「綺麗ですわね。リアスさまの瞳の色ですわ」
マグダランの案内で向かった先、そこにあったのは紫色の美しい花だった。見事に残されていた古い種子から、絶滅したはずの花を復活させたらしい。まだ小さいのに頭いいなこの従弟。尊敬するわ。
「ええ、バアルの血を引く者は紫の瞳を持ちますから……バアル家を象徴する花になればいいと」
「素敵ですわ。あの……この花を育てるのは難しいのでしょうか?」
「いえ、それほど手間はかかりません。いずれこの城中にこの花を植えて行こうと思っているくらいですから」
「でしたら、よろしければいくつか譲っていただけませんでしょうか?」
「あの庭に植えるのか?」
以前レイヴェルにねだられて、グレモリー家の庭を一つ任せることにした。そこにどんな花をどう植えて行くのか、あれからそんな話をしていたのだが、どうやらメインの一つが決まったらしい。
「ええ、リアスさまの色の一つでもありますし、お義母さまの実家の色ですから」
バアルの紫瞳と、グレモリーの紅髪、両方持っているから『紫紅の龍帝』なのだ。
母上はどうにも、可哀そう可哀そうとサイラオーグとミスラさん贔屓な発言が多いが、別にマグダランのことが嫌いなわけではない。叔父上との仲は最悪だがな。
なので、この花は喜んでくれるだろう。
「マグダラン、頼めるだろうか?」
「はい! それでは後ほど育て方などを記したものと一緒に届けさせますね」
滅茶苦茶嬉しそうにするマグダランに花のことを頼むと、俺とレイヴェルはバアル家の始祖、つまりゼクラム・バアルさまの隠棲先の城へと向かった。
マグダランの趣味は、あまり叔父上や叔母上から良く思われていないらしい。ただ、魔力の上昇量が同年代の平均と比べてかなり高いので文句を言われてもいないようだ。
ただ、褒めてももらえないようなので、代わりに俺が褒めているワケだ。
というか、こんな成果をグレモリー家で出したら……なんだかお祝いのパーティーとか開かれそうな気がする。あと、金儲けの得意な母上のことだ、何かしらこう上手いキャッチコピーをつけて大々的に売り出しそうな気もする。
母上は、ほんと稼ぐの上手なんだよな。美人で、強くて、金稼ぎが得意なうえに、ベッドでは可愛いとかさー、父上はホント上手くやったな。
やっぱり、何かの間違いでバアル家に養子に出されたりしなくて助かった。
小遣いの出所が母上なので、サッパリ頭が上がらないのが悩みどころか。
バアル本家で転送魔方陣を借りて、ゼクラム祖父さまの隠棲先までひとっ飛び! とはいかない。魔方陣のジャンプ先からしばらく道があるので、そこをゆったりラクダで進む。
「マグダランは、植物の研究者になりたいらしいんだ」
「あら、ですが当主の仕事が──」
「だから、当主を引退してからやったらいいと──」
ソーナの頑固者と違って、マグダランはそれでサクッと納得してくれた。なので植物の研究は、当主業務ための勉強と大王家の代表としてなめられないための極秘魔力トレーニングの合間の趣味となっている。まったく理解が早くて結構なことだ。ソーナのおたんこなすめ。
「私もラクダの騎乗方法を覚えるのですよね?」
「結婚したら名字がグレモリーになるから、一応召喚されたときのために格好がつく程度には覚えてもらいたい」
俺の愛ラクダは、ふたこぶだ。冥界ミツコブラクダが有名だが、フタコブラクダもいる。どうしてフタコブかと言えば、ラクダのこぶの中には脂肪が詰まっていると聞いたからだ。
脂肪の詰まったこんもりとした二つの丘。つまり、おっぱい。ならば二つが良かろうよ。こうして、その間に鞍を置いてもたれかかりつつ進むわけだ。
今日は前にレイヴェルを乗せているので、ある意味前後サンドイッチ状態である!
「ちなみに、コイツの名前はゴポリンだ」
「ゴポリン……グレモリーの別名のゴモリーからですか?」
「そんな感じで名付けたと思う」
さすがに冥界のラクダと言うべきなのか、ちょっと宙に浮いて歩いてくれるので揺れは少ない。悪魔はもともと空を飛ぶので酔うこともあまりないのだが。レイヴェルも平気なようで、良かった良かった。
速度はこれ、原付くらいは出ているのではないだろうか。計測したことはないが。
ふむ、原付……バイク……二人乗り……後ろからぎゅっと押し付けられる二つのたわわ。そこから始まる野外の行為。
あ、いやダメか。レイヴェルだと髪型的にヘルメットが厳しいな。バイクに乗れるようになったら朱乃と……いや、あの黒猫もなかなかのものを……。ネコミミヘルメット、ライダースーツで野外ックス。
いいんじゃないか、これは。
「ッ……もうっ! リアスさま、こんなところで!」
おっと、硬くなってしまった。
ふむ、このままラクダの上で「これ絶対入ってるよね」というのはどうだろうか。
この丁度良い揺れ加減を利用して……いや、さすがにマズイか。
マグダラン・バアル:
バアル家の次男にして次期当主。オリ主の従弟。年齢はレイヴェルよりいくつか年下ということにした。魔力量に過敏になったバアル家からの依頼で、オリ主式トレーニングを教える。多少は効果があった模様。原作リアスちゃん部長くらいの魔力。
サイラオーグ・バアル:
バアル家の長男。たぶんオリ主の二つか三つ年上。
幼い頃のマグダランを魔獣から助けたことがあるらしいが、その後に移ったバアル領辺境では下級悪魔の子供にいじめられて泣かされたりしたらしい。
誰かを守る時にはより強くなれるとか、そういう力があるとしたら獅子の家の特性?
ゴポリン:
オリ主の乗騎(使い魔)の冥界フタコブラクダ。名前の由来は「ポリゴン」。