公爵家次期当主好色物語 作:ルペッタ好き
目を覚ますと知らない部屋だった。
黒歌は鼻をスンスンと鳴らして周囲を確認し、隣に寝ている紅の髪の男の胸に頬をすり寄せる。
無防備な寝顔だ。意識のあるときならばともかく、今ならば自分でも命を奪えてしまうだろう。
「油断しすぎにゃん♪」
もぞもぞと動いて胸や下腹部、頭をスリスリと男のあちらこちらに擦りつけていく。
はて、どうしてこんなことを……と勝手にそうしてしまう自身の状態に違和感を覚え、発情期をコントロールしていた仙術が解けてしまっていたことを思いだした。
慌てて戻そうと一瞬だけ思考して、すぐに思い直す。
前回自然に迎えた発情期のどうしようもない飢えを今は覚えていない。不思議に思って自分の下腹部に触れてみるとそこがポッコリと膨れていた。
「こっちの術は解けなかったのね」
嬉しいような、残念なような、なんとも言い難い気持ちで膨らんだ腹を撫でる。
一夜にして赤子が出来て育ってきた。ということではない、あまりにも大量に注ぎ込まれた子種が術の影響で胎から出て行けずに溜まってしまっているのだ。
正直、ちょっと苦しい。苦しいが、嫌ではない。
しかし、この後のことを考えるとどうしてもため息が漏れてしまう。
その気分を誤魔化すように、紅髪の少年に身体を擦りつけた。そうしていると、ゴロゴロともクルルルルとも声が自然と出てくる。
「はぁ……。寝顔はカワイイのにね」
見た目は美少年なのに、とんでもない性豪だ。発情期の真っ最中にされてしまったのに、今日の所はもう勘弁というほどに満足させられてしまっている。
そうやって黒歌がすりすりと肌を寄せていると、眠っている少年の股間がムクムクと勃ち上がってきた。
「わぁお……まだいけるにゃんて……こっちは凶悪すぎにゃん♡」
あれだけ自分に中出ししまくっておいて、まだ満足しないのかコレは。なんという生物だ。とんでもなさすぎる。
純血の悪魔ってヤツは皆こんな風なのだろうか。男性悪魔にはハーレムを形成している者が多いと聞くが、これならそれも納得だ。
ただ、黒歌の現在の『王』であるエダーギ・ナベリウスは、黒歌の父親と同じで女よりも研究といった様子だったが。欲望に忠実なのが悪魔なので、その欲望の方向性によって変わってくるのだろうか。
益体もないことを考えながらも、黒歌は指で輪を作り勃起した肉棒を扱き始めていた。
「んふふ……」
気持ちいいのか、眠っている少年の顔に色が浮かぶ。吐息が変化して、感じていることが分かる。
「お返しにゃん♡」
あれだけの真似をされたのだ、このくらいの仕返しは可愛いものだろう。
黒歌のような女の横で無防備に眠っているのが悪い。公爵家の次期当主で、魔王の弟で、将来の超越者で、赤龍帝なんていう立場にあるまじき態度である。
もっと警戒しておかないとダメだろう。魔力ならば分からないが、仙術で生命の根幹を傷付けられたらどうするつもりなのか。
「信用されてるって……ことなの?」
ギュッと心のどこかが締め付けられるような気がした。ちょっとサービスしてやってもいいくらいに。
黒歌はくねくねと肢体を擦りつけるのをやめて、ガチガチになって血管の浮き出たオスの象徴に唇を近づけた。
「んっ……ぺちゃ……んんっ……じゅっ……ふぅん……」
舌を這わせ舐め上げていると、それが綺麗に掃除されていることに気付いた。昨夜の行為によって濃厚にまとわりついただろう、男女の性交の汁の味がしない。
気になって自分の匂いも嗅いでみるが、どうやら洗われているようだ。いつの間にと思い、気を失っている間にかと簡単に結論付ける。
部屋も変わっているのだ。あの後、綺麗にされて清潔な場所に運ばれたのだろう。
「ちゅっ……そのときに置いていけば良かったのに……にゃん♡」
ほんの少し前よりも熱心に、黒歌は舌を遣った。にじみ出て来た先走り汁を味わい、口内に女啼かせの逸物を呑み込んでいく。
「あんんぅ……ふぅぅう……、ごくっ……ふんっちゅっ……んんっ、んんんっ……じゅぱぁっ……」
一旦口を離すと、ペロリと唇を舐めまわす。
下の口はお腹いっぱいでもう受け入れられないが、どうやらまだまだ自分は発情しているのだと自覚する。
少年のモノが美味しくて仕方がない。ずっと舐めていられそうなきがしてくる程に、愛おしく思えてくる。
「んぁぁぁ……♡ じゅりゅっ……じゅりゅりゅ……うっん、ううんんっ……んんっはぁ……」
しばらくそうしていると、肉棒の根元からググっと何かがせり上がってくるのを感じた。ミチミチと太くなり口内を圧迫してくるソレに噴火が近いことを確信し、黒歌は頭を上下させる速度を速める。
ぐびゅっ、びゅっるうっ、びゅっ、びゅっるるぅ!!
「おくっ、じゅるっ……こくっ、んはぁぁぁ……なんで、まだこんなに濃いのよ」
すごすぎるにゃん♡ と呟いて口内を舐めまわし喉を鳴らして白濁を嚥下した。
「お前、何やってるんだ」
「あ、起きたの……んー、なんとなく?」
さすがにこの刺激に目が覚めたのか、リヴラクスが呆れたような目を向けていた。
「なんとなくで飲むのか……このエロ猫が、昨日あれだけヤったのにまだ足りないのか」
「にゃはは……いや、そっちは満足よ。もうお腹いっぱい」
言いながら、ポッコリとしてしまった腹を見せる。
「いや、いやいやいや、まさか一晩で出来たのか?」
「まっさか! そんなワケないにゃん♪ ちょっと仙術で子種を溜めてるだけよん」
「ああ、それでか……ああ、そういえばそうだった。お前が寝てしまった後、こっちに運ぶときもそうだったな。仙術ってなんなんだ一体……」
仙術は生命の流れを操る術であると言われている。生命に流れるオーラ、チャクラなどと呼ばれるものを扱う。
気やオーラの流れを読み、周囲や特定の相手の状態を知ることや、自身や他者の肉体の内外を強化し、あるいは逆に弱めることも出来る。
「それくらいは知っているが、こっち方面にも随分応用が効くんだな」
男の手が黒歌の頭に伸び招き寄せる。唇を合わせてから、彼は一瞬「しまった!」と言いたげな顔をした。
「ん? どうしたの?」
「いや、俺の精液の味がした……どうも抵抗があるから、フェラさせた後はあまりキスしないようにしていたのにな」
「にゃはは、ボーっとしてるからよ。だいたい、女にはたくさん飲ませてるんでしょ?」
「まぁな……あーところで、話を戻すが、仙術はそっち方面にもかなり効果があるのか?」
「そうねー、まぁ私が発情期をいじってるのもそうだし、房中術なんて呼ばれているのも仙術の範囲よ。主さんが昨日使ってたやつみたいなの」
「ん? いや、俺は仙術は使えないぞ」
「はい、それウソにゃん。シてるときにオーラを合わせて来たでしょ? あれもその一種よ。ま、本来は治療なんかに使うことが多いんだけど。たしか、悪魔は同じ眷属同士なら魔力の波長が同じだとかで、傷を癒したりできるんでしょ?」
「ああ、やったことないけどな」
「私もないから、実際のところは知らないけどね」
あのナベリウスと肌を合わせて怪我の治療なんてゾッとしてしまう。だが、同じ眷属の悪魔同士なら魔力のオーラを合わせることで致命傷に近い傷でも癒せるのは本当のことだ。
神器や、そういった特性を持った魔力、高位の魔法ほどの即効性はないが、おおよそ一晩もあれば大抵の怪我は治せるらしい。
「仙術は生命の根幹に直接触れる術だから、むしろこっち方面の方が本領よ」
言いながら、黒歌はその豊満な胸を男の肩に押し付けた。
「うーん、そうか……悪魔でも仙術は使えるのか? 従兄に闘気を扱うのがいるんだが」
「あーっと、前に聞いたサイラオーグって子のこと?」
「ああ、話していたか」
「親戚にいるのなら、少しは才能があるのかもしれないわね。でも、なに、仙術つかいたいの?」
「ん、ああ、別に戦いに使おうとは思っていないが……こっち方面が本領ってことなら、子供ができやすくなるかと思ってな」
「あー、そういう……」
◇
悪魔は子供が出来にくい。悪魔に限らず、基本的に長寿の種族ほど子供が出来るまでに時間がかかるとされている。
それこそ神話の時代から存在する神々がポンポンと子供を成していたら、今頃世の中は神様だらけだ。
神話の中では、一撃必中とばかりに子供を作っているゼウス神ですら、何万と子供がいるわけではない。彼の神がその全世界に知れ渡る精力を全開にして、必中スナイパーをかましていたならば、その子供の数は毎年1000以上増えていたことだろう。もしそうならば、オリュンポス大勝利、欲望の未来にレディ・ゴー! 間違いなしである。
「まぁ、神々は信仰かなにかの関係で限界があるのかもしれないが、大戦前の悪魔はかなり数が多かったらしいからな」
グレモリー公爵家にはかつて二十六の軍団があったという。
一軍団は十大隊によって構成され、一大隊は三個の中隊によって成り、中隊は二つの小隊が合わさって出来ている。一小隊の人数は百名だったらしいので、一軍団はおおよそ六千名。
それが二十六軍団あったのだから、グレモリー家だけでも十五万を超え軍勢が居たわけだ。
当時のグレモリー家は七十二柱の中での序列はどちらかといえば低い方だったので、軍団の数は少ない方だった。序列が全てではないが、当時から七十二柱最高位にあったバアル家などは、六十六軍団を有していたと聞く。
そんな悪魔の軍勢も大戦と、内戦と、二天龍のせいでガッツリと減ってしまった。
逆に言えば、信仰というか人間の幻想とでもいうのか神々がやたらめったらと増えない要因となっていそうな、神話的なキャパシティのような何かがあるとすると、その空き容量が大量にあるということでもある。
「よくそんなこと考えるわね。妖怪でも、悪魔でもそんなおかしなこと考えないわよ」
「ドライグが言うには、俺の魂は人間のものらしいからな」
俺が悪魔の世界に生まれて思ったことの一つに、悪魔と言う種の想像力というか妄想力の欠如がある。
どうやらそれは天使や堕天使、他の神話の種族など、異形の存在全般にあるようで、なんというのだろうか……こう余計なことを考えないところがある気がするのだ。いや、考えてはいけない……だろうか。
『始まりの始まりを考えたところで答えは出ない、そんなことより今を生きろ』といった感じのことをお釈迦様が言ったそうだが、異形の存在のほとんどはその通りに生きている。彼らはそれを考えない、自分たちがどこから来たのか、どこへ行くのか、そういったことに思いをはせない。哲学しないのだ。
「人間って不思議よねー」
「そりゃ、人間の信仰やら欲望やらで神も悪魔も存在しているそうだからな」
考えることが自体が出来ないのかもしれない。人間の信仰あっての神ならば、創世や天地創造についての神話の全ては偽りとなってしまう。
聖書の神話にしろ何にしろ、先に人間ありきならば、どうして神々が天地を創造できるって話だ。アイデンティティ崩壊の危機だ。そりゃ思考が停止する。
大学生やってた頃に、単位が楽って話で取った『哲学』の教授が言っていたが『神は子供の「なぜなぜ」攻撃に答えるために生まれた』なんて話も案外本当なのかもな。
とにかく、第一原因を『神様』って答えておけばそれで話が終わるからなぁ。
「雷はなぜ落ちるの?」「雷神さまのお怒りじゃ」
「雨はどうして降るの?」「天の神様が降らせて下さる」
「この世はどうやってできたの?」「神様が無から作ったんだ」
「じゃあ、神様は誰から生まれたの?」「それは考えてはいけない」
こんな感じに。
「ぎにゃー! やめて、やめて! 頭が割れちゃう!」
「悪魔に聖書じゃないが、異形に存在論はキツイのか……。ま、とにかくそんなことはどうでもよくて、今は子作りの話だ」
分からんことを考えていても仕方がない。そんなことよりセッ○スだ。
気持ちいいは、全てに優先する。だって欲望に生きる悪魔だもの。
「で、仙術覚えたら子供が出来やすくなるのか?」
「まぁね。生命の大元に干渉するのが仙術だから、そりゃそうよ」
「あとは俺にその才能があるかどうか、か……」
「別になくても大丈夫なんじゃにゃい? 主さんのバランスブレイカーって、眷属の性質を取り込んで、増幅して、分配するんでしょ?」
「ああ、そうか。黒歌は種族的に仙術の才覚があるんだったな」
「そそ」
「そう考えると、安い買い物ってことになるなぁ……。黒歌、お前絶対買い取るから逃げるなよ」
「にゃはは……、いまのところそんなつもりはないから……、でも、もし何かあっても、引き受けてくれる?」
それまで楽しそうに話していた黒歌の表情が急に陰った。
「何かあるのか?」
「あるけど、言えないのよ」
「そうか」
まぁ、よほどのことでなければ構わないが……。
「どうしても言えないのか?」
「契約があるから、無理よ。言えるのは、人によっては物凄く不愉快に感じるかもしれないってことぐらい……にゃん」
「ん、分かった。覚悟はしておく」
それから数時間ほどゴロゴロしてから、黒歌はナベリウスの分家へと帰って行った。
しかし、うん、仙術で子供の出来る確率を上げられそうなのか。
これ知れ渡ったら仙術の素養のある種族が、悪魔の眷属として大人気になって狩られまくりそうだな……。
それで被害が広がった日には、その情報元が滅茶苦茶恨まれそうな気がする。仙術って東洋系なイメージが強いし、俺からは発表しないようにしとかないとな。
一応、元は仏教徒やってた身であることだし。うん、俺の子供さえ増えればそれでいいとしておこう。
とりあえず、眷属に迎えてからの黒歌の仕事が一つ決まったな。
『子作りの術』の開発! これ超重要!!
これが先に分かっていたら、ギャンブルなんぞしなくとも父上からいくらでも予算引っ張れただろうなぁ。
でもなぁ、これ政治的に利用したらかなりのアドバンテージになりそうなんだよなぁ。
悪魔社会の大問題の一つであることは確かなんだから。
「ふむ、仙術ではなくて、赤龍帝の力の一端で着床率を『倍加』していると言い張ったらいけるんじゃないか?」
他所の貴族悪魔から依頼されて、俺が出て行くことで子供が出来やすくなる。という形に出来れば、赤龍帝の評判も上昇するだろうし、俺個人の悪魔社会への影響力がグンと増しそうな気がするな。
「子作りドラゴン……ありだな」
『やめろ……やめてくれぇ……!』
ドライグが嘆いているような気がするが、これ悪魔の重要問題なのよね。
黒歌のターンは、もうちょっとだけ続くんじゃ……
しかし、神話が複数同居していて、創世神話もたくさんあるけどどうやって折り合いを付けているのだろうか、この世界。
地獄や天国は宗派ごとらしいですけど、考えると頭痛くなる。