公爵家次期当主好色物語 作:ルペッタ好き
グレモリーの城からの帰り道、見送りと別れた黒歌の表情が陰鬱なものに変わった。
ナベリウス分家の当主、エダーギ・ナベリウスの屋敷へと戻った後にすることへの不快感。それが彼女をそんな表情にさせる主な原因だ。
「あっそ……はぁ、分かってるわよ」
出迎えた使用人たちにいい加減な返事をし、黒歌は今の住処の扉を潜った。「すぐに顔を出すように」などとエダーギからの言伝を受けては、どうしても対応が悪いものになってしまう。
気分が表情や態度に大きく出てしまうところは直した方が良いのだろう。数か月先には黒歌の新しい『王』となる予定の男は、それはそれで可愛らしいと愛でてくれるのだけれど……貴族と関わっていくのなら必要なことのはずだ。
ふと、男の精を胎内に抱え込んだ腹をさすってみた。
ハマちゃったんだろうな……。気楽に考えていた数か月前に戻りたくなってくる。
「おかえりなさい、姉さま」
ててて、と黒歌に走り寄って来たのは、妹の白音だ。
白音は黒髪の姉とは違い、白い毛並みをしている。瞳の色は同じだが、どこか悪戯めいたツン上がった目じりの姉とは異なり、真面目そうな印象を与える瞳をしていた。まだ年齢が低いため白音は猫又としては未成熟な状態で、人間でたとえるならば小学生の中頃程度のような背丈をしている。
両親を亡くした黒歌がナベリウスとの取引に応じて悪魔に転生し眷属となったのが、ちょうど今の白音くらいの頃だった。
「まだすることがあるのよ。分かってるでしょ」
甘えてくる妹を突き放して、黒歌はひとり自室に引っ込んだ。これからすることを考えると、気分がクサクサして妹に構っていられなくなる。
白音にとって黒歌は唯一の肉親で、たったひとりの頼れる相手だ。だから、寄ってくるのは分かる。
「……私にはいなかったのにね」
妹には姉がいる。けれど、その妹を抱えて困窮し、飢え、姉妹揃って死にかけていた黒歌には頼る相手はいなかったのだ。
黒歌が妹で白音が姉で、そんな風にもしも逆だったのならどんな関係だったのだろう? などと、たまに妙なことを考えてしまうことが以前まではあった。
今はそうでもないが──これまで男と添い寝なんてしたことはなかったし、誰かから何かを贈られたりすることも、撫でられながら誉められるなんてこともなかった。甘えてくる相手はいたけれど、優しくしてくる人はいなかったのだ。
思えば、黒歌は誰かに甘えたことなどほとんどなかった。
母親は父親にベッタリで、数度顔を見た程度の父親はそもそも黒歌を娘などとは思っていないようだった。付き合いのあった妖怪連中は基本的には話をすることがある程度で、可愛がられたような覚えはない。
うるさいことを言ってくる三毛の婆さん、上下関係にうるさそうな組織だった男衆に、無関心な女衆、どいつもこいつも助けになんてなってはくれなかったのだから……。
そう考えると、エダーギ・ナベリウスは、まだしも黒歌に関心を持っていた部類だと言えるだろう。
希少な種族の妖怪を眷属として育て高値で売り飛ばす。そのためとはいえ、事故死した部下の親族のことを覚えていて拾いに来る程度には気にかけていたのだ。エダーギが居なければ飢えて死んでいたのだろうから、命の恩人と言えなくもない。
一時は頭に血が上って「ぶっ殺してやろうか!」などと考えていた黒歌だが、少し落ち着いて考えてみればそこまでするほどのことでもなかったような気がしてきていた。
白音にも強化訓練を施そうとしていたことで腹を立てていたのだけれど、黒歌自身がエダーギの課した訓練の効果を証明してしまっているのだから。
「白音のことも話しておかないと……」
ザーッとシャワーの流れる音がする。自室に戻った黒歌は服を脱いで裸になると、すぐに浴室に向かっていた。
一通り身体を洗い流し乾かした後、黒歌は自身に施しているいくつかの術の効果を操作した。
「ううっ……んっ……ヒッ……ンンッ」
この作業をしやすいようにと整えた女陰の割れ目から、術に操られた白濁液がとろとろと吐き出されてくる。それをナベリウスから事前に渡されていた魔術の施された容器へと移していく。
容器の中身を確認して封を締めると、気の滅入る作業を終えた黒歌はそっと目元を拭った。
◇
「ハハハ、随分と気に入られているようだな。今回も大量ではないか」
渡した容器を手に上機嫌な様子のナベリウスに、黒歌は鼻にしわが寄りそうな気分になった。
「これ、どうするの?」
男が別の男の精液の詰まった容器を片手に、ニヤニヤしている絵面というのはなかなかに気持ち悪いものがある。
「ふん、お前は『僧侶』のくせに学がないのだな」
「生憎、今のご主人様はあまり眷属に知識を付けさせてはくださらなかったので仕方ないにゃん」
「そんなものは自分でどうにかして覚えろ。私は忙しいのだ。衣食住の面倒をみて、その上強くしてやったのだからそれだけでもありがたいと思え」
「はいはい、それには大変感謝しております」
肩をすくめて見せる黒歌を見て、エダーギも不愉快さを滲ませた。
「まあいい、ホムンクルスやアルラウネについて調べてみろ。現ルシファーの弟にして赤龍帝の精液ともなれば、いくら出してでも手に入れたいという連中がいるものだ」
錬金術などで男の精液を素材として用いることは、珍しくはない。通常の純血悪魔のそれですら希少だというのに、リヴラクス・グレモリーのものともなれば途轍もない値が付くことは想像に難くない。
結局は金か……と黒歌はひとまず納得し、その場を去った。
元々、エダーギは自身の研究内容を眷属にも秘匿し続けている男だ。そして、研究者がその研究内容について秘密にするのは、よくあることである。ついでに、種類にもよるのだろうが多くの場合研究というものは金がかかるものらしいのだ。
―○●○―
ゴロゴロと喉を鳴らして甘えてくる黒歌を撫で繰り回しつつ、我が家の廊下を歩く俺はリヴラクス・グレモリー。
ちなみに現在の黒歌は黒猫モード。動物の猫の姿なので腕に抱えて連れ歩けるのが良いところ。まったく移動中だというのに周りを見もせず気にもせず夢中でスリスリしながらうっとりとしやがって、可愛いなぁこの畜生め。
ついでに俺の肩の上には白猫の使い魔であるシロが乗っていて、そんな黒歌に不満そうな目を向けている。
「あたしの居場所を取りやがって! この泥棒猫!」といった雰囲気だ。
だけど、俺にはくっついてくるのだから、これはこれで可愛らしい。使い魔契約に則って魔力を流してやっているので、このシロちゃんもそのうち魔物化してくれることだろう。きっと可愛い女の子に化けるに違いない。まだ獣並みの知性しかないときから、たっぷりと躾けているので将来が楽しみである。ちょっとした光源氏計画的な気分にも浸れて素晴らしい。眷属は実力重視で固めて、使い魔に可愛い子を揃えるって方々もいるらしいが、その気持ちも分かるというもの。
そんな使い魔娘コレクションも、貴族男性の嗜みの一つの形だ。悪魔社会は業が深いぜ。
「さて、今日は縄張り予定地の下見に行くわけだが、お前はそのままで来るのか?」
「にゃん♪」
どうやら猫状態のままついてくるつもりのようなので、このままで行くことにしよう。
ゼクラムの祖父さんから伝えられた、俺の縄張り『駒王町』。これまでも一応データ上では確認していたが、今回はその目で見ておこうということでちょっと出かけてみることにした。
レイヴェルや朱乃を連れて行かないのは、まだ現地の状況がよく分からないからだ。あっちにいるグレモリー家の家臣からは「安全です! 絶対安全です! お任せください!」と何度も言われたが、人間界ってのは結構危険だからな。
教会勢力とかいるし、現地の神仏妖怪などもいる。堕天使の大幹部の娘とか、フェニックスの涙なんて大金を産む貴族悪魔を連れてくるのはよく確認してからにしたいところだ。
というわけで、今回のお供は俺の眷属(予定含む)の中では比較的重要度の低い黒歌を連れて行くことにしたのだ。
リュイならまず心配はないのだが、生憎と現在レーティングゲームに忙しい。早く完全に俺のものにしてしまいたいものだ。
「準備は出来ております」
「ああ、御苦労」
駒王町との行き来に用意させた専用の転移魔方陣ルームには、既に護衛の悪魔達がそろって居た。
一応、グレモリー領軍の精鋭である。といっても隊長が中級悪魔で、その他は下級悪魔、俺基準ではさほど強くはない。
ということで武力的な面ではさほど頼りにならない連中だが、魔力を感知できない人間相手ならば大変役に立つ。2メートル近い身長のゴッツイ体格をした黒服サングラスの白人系に見える護衛を引き連れて行けば、まず絡んでくる人間はいないだろう。
魔力で推し量ってくることの多い悪魔と違って、人間は見た目で判断するからな。数か月鍛えた程度の肉体しか持たず、身長も160台半ばな、中学生程度な顔つきの俺では面倒ごとに巻き込まれるかもしれない……カツアゲとか怖いし。いや、撃退するのは簡単なのだが、いちいち相手をするのは面倒だ。
しかし、さすがに猫二匹引っ付けたまま歩くのは面倒か。
「シロは留守番だな。ほら、あっちにいって遊んでもらえ」
見送りに来ていたメイドのひとりにシロを預ければ、うん、肩がすっきりした。
「シロさま、私と一緒に行きましょうね~」
いゃーんと不満そうなシロとお別れして、起動させた転移魔方陣で人間界へと跳ぶ。
転移特有のふわっとした感覚がおさまると、そこにはたくさんの悪魔達が頭を垂れて待ち構えていた。
「若様、ようこそおいで下さいました!」
グレモリー家はこの駒王町にかなりの投資をしていて、いくつかの施設を所有している。
それらのトップは当然我が家の息のかかった者が務めているのだが、こいつ等はそういった者たちだ。ほとんどが人間界に溶け込んで暮らしている悪魔で、一部はそれらの恩恵を受けている人間もいるらしい。ここにいるのは全員が悪魔のようだが。
「お前が代表か?」
「はい! 駒王学園の理事を務めさせていただいております!」
とりあえず、正面中央に居たヤツに声をかけてみた。
見た目は威厳のありそうな60代くらいの男性なのだが、滅茶苦茶腰が低い。前世の俺だったらビビっちゃうね。なんというか、大会社の重役がペコペコしてくるような感覚。
今の俺は日本の本州くらいの領地を抱える貴族の次期当主なので、こういった態度を取られるのが普通だ。だが、普段会わない連中からこういった扱いを受けると、ちょっと戸惑ってしまうこともある。
顔には出さないけどな。
「駒王学園は、この近辺でグレモリーの所有している施設の中では最大規模だったか」
駒王学園はこの駒王町という縄張りの一番の特徴だろう。幼小中高大と揃った、土地の狭い日本にしてはわりと大きな敷地を誇る学園である。
なお、アホのように広い冥界の学校のそれと比べて狭いと言ってはいけない。ここは日本なのだ。
この学園の特色として、経営陣が悪魔関係者であることもあって異能持ちの人間や、一部の妖怪、魔物などの一般の人間の知らない世界の住人を受け入れているところにある。そのせいで起きる様々な騒動をもみ消すために、悪魔の魔力式結界を張って誤魔化しているのだとかどうとか。
どうしてそんな面倒なことをしてまで学校経営なんぞに手を出しているのかと言うと、何やら日本の異能者、異形の種族とのやり取りの結果なのだそうだ。異能持ちの子供とか、普通の学校で暴走させたらマズイしな、妖怪などの異形の存在の中にも人間の学校に憧れる者もいるのだとか。でも、やはり人間とは根本が違う存在なのでいろいろと事件を起こしてしまうこともある。
そんな連中の望みを叶えてやり、起きてしまった問題をもみ消して、それらから欲望を啜るのが我ら悪魔のお仕事ってわけだ。普通に授業料をかなり多めにもらってるそうだし、取引だね、取引。
「何も知らずに巻き込まれている人間どもはご愁傷さまだな」
なお、そういった特殊な事情の持ち主はごく一部で、生徒の大半は一般的な普通の人間さんたちである。
彼ら彼女らは、異能やら異形やらが引き起こす出来事に巻き込まれつつ、それらのために人間の学園生活気分を盛り上げてくれている大事な存在でもある。これで学費も取ってるって言うんだからヒデー話だこと、悪魔か。悪魔だ。
俺がただの人間だったら、絶対こんな物騒な学園に通いたくはないね。でも、ただの人間はここが危険地帯であることに気付くことすらも出来ないのだ。むしろ気付いてしまったら……南無南無。記憶処理かな。
「こちらは高等部でして──」
ぞろぞろとこっちじゃ重役だろう連中を引き連れて、駒王学園を案内させる。一応授業風景なども見ておきたかったので、本日は平日だ。
なんだなんだと一般生徒や、裏の事情を知らない教員などがこちらを見てくる。まぁ、何事かと思うだろうな。
この学園を所有する一族の御曹司御一行様です。
「あっちの建物はなんだ?」
大学部の案内から始まって、高等部に入ったところでやや古い建物が目についた。人の気配がないので、使っているということもなさそうだが。
「あ、はい。あちらは旧校舎になりまして──」
いくらか前に校舎の建て替えをして、前の学舎がそのまま取り壊されずに残っているらしい。
新しく部活動などを立ち上げる者などが居た際に、部室に充てられるということもあってそのまま残されていたようだ。
「気になるようでしたら取り壊しますが?」
「いや、いい。そのまま残しておけ」
もったいない精神というわけでもないが、人の出入りの少ない学校施設というのは浪漫がある。なんというかこう、エロいことの舞台になりそうな感じがして良い。
本格的にこちらでの活動が多くなってきたら、適当に女子生徒でも捕まえて連れ込んでもいいしな。ふふふ、やはり学園ものは、学園内の設備を使ってこそだろう。
俺がこんなことを考えてしまったり、あらぬ妄想にムラムラっとしてしまう。それもこれも、目につく女子学生の制服姿がエロいのが悪い! 大学部は私服だったのにな!
なんだあの制服は! スカート短いぞ! 身体のラインを強調しまくってるじゃないか! 特に腰回りの細さと、胸を強調するデザイン! けしからん! 誰だあれを制服として定めたのは!?
兄上だと!? くそっ、兄上め、良い趣味をしておられる……割と普通に見える男子制服とのデザイン制の違いに、注ぎ込まれた労力と熱意の差を感じてしまう。というか、兄上って密かにここの女子生徒を喰ってそうな気がするな、結構手間暇をかけているようだし。
なるほどなー、どうも人間っぽい文化が好みだと思っていたら、そういうことか。ならば、俺がヤっても良かろうよ。
今の俺は金持ちでチョーイケメンだからな。女生徒を食いまくってやるさ!
駒王学園の美女・美少女は、全てこのグレモリー卿(予定)のものに! なんてな。
「男子学生が少ないようだが」
「はい、実は少々事情がありまして共学化したばかりでして──」
なるほど、それで男女比が偏っているのか。あと制服の差もそこらあたりから来ていそうだ。女子校ってイメージが付いているだろうし、幼・小・中からエスカレーター式に高等部まで上がってくる生徒も大半は女子学生か。
一応資料で知ってはいたが、こうして目の当たりにしてみると、まったく大変よろしい光景である。女目当てに編入とか考える野郎もいるんだろうなコレ。で、女子勢力の強さに押し負けて肩身が狭いまま何もできずに卒業して消えて行ったりするのだ……。
モテるヤツは、こんな女の園に突っ込まなくても男友達と気楽に過ごしつつ、ちゃっかりヤルことはヤってそうなイメージ。でもって、女ばっかりのところで立場が低いと大変居づらいってことも知ってそうなイメージ。
ハーレムするには男が上の立場でないとキツイのだ。
「ところで、俺がこちらに人間として顔を出す場合の立場だが……ここの理事長ということで構わないのだな?」
「はい、それはもちろんです! グレモリー本家の方に、それも未来の当主様に来ていただける。私共にとって、これほどの名誉はございません」
兄上や父上もそうだが、悪魔の中には人間としての立場や顔を持っている者が結構いる。財閥の会長とか、そんな感じのだな。
俺は今までそういったものがなかったのだが、ちょっと魔力を使って成人男性と認識させ、この駒王学園の理事長としてやって来たことにするわけだ。この学園はグレモリー家の所有物なので、そこの御曹司って形でだな。実務は慣れている現地在住悪魔関係者の理事諸君がやってくれるので、本当に肩書だけだがな。仕事はしないのに、給料は出る。縄張りでの悪魔としての本業は、契約取ることなので。
ぐふふ、学園という一種の閉鎖社会、そこにおける最高権力者になるってことだ。
くっそ、夢が膨らむぜ。股間もググっときそう。女生徒も女教師も、事務のおねーさんも、なんなら生徒の母姉だって行けそうな気がしてくる。フハハ。
「主さん、いやらしいこと考えてるにゃん?」
「分かるのか……」
「私、仙術使いよ? 気配でねぇ」
腕に黒歌を抱いたまま考えることじゃなかったな。
というか、黒猫を撫でながら偉そうにしているのって、なんというか実に悪役っぽくてよろしい。いや、白猫もありだが。ライオンとか豹もありだよね。
その後は中等部、初等部、幼稚園と見て回ったワケだが、さすがに初等部からはムラムラ来ないな。いや、中等部でも大概だが。肉体年齢的には同い年付近なので仕方あるまい。
と、ここまでで午前の部は終了だ。ザっと見て回っただけなので詳しいことはまでは分からなかったが、その辺りはおいおいだな。
「ご要望にあったので、昼食の席にこの国の裏の関係者を招いてありますが――」
名前だけとはいえここの経営陣のトップ扱いになるので、一応それっぽいことはしておきたい。
ということで裏の事情を知る関係者で、この学園の生徒をしている者と話してみたいと伝えておいたのだが、どうやら受けてくれた生徒がいたようだ。
「事前に聞いていなかったな」
「申し訳ありません。なかなか、その……若さまのお名前を聞くと」
「ああ、まぁ仕方ないな」
赤龍帝の純血悪魔なんて、そりゃあ怖いに決まっている。ちょっとお話をするだけ、なんて言われてもなかなか受けてくれる者がいなかったのだろう。
「それが、先ほど急に承諾の連絡がありまして……。視察中の若さまのお姿を見かけて興味が湧いたということで……その、もし、よろしければ」
「ふん、まぁいい。こちらから希望していたことだ」
「ただ、先方の性格がですね……ご不快にならないと良いのですが」
「余程でなければ構わん」
こちらからの誘いを一度断っておいて、今日になって急に会ってみる気になったとは……。なかなかに豪胆な相手が来るのかもしれないな。
名前は――ほぅ、有名どころじゃないか。面白そうだ。
前世の俺でも知っている名前だ。人間やっていた頃は五大宗家なんて知らなかったが、この家名は聞いたことがある。一般人からしたら、こちらの方が日本の霊的守りの要って言われて納得するだろう。
「オーッホッホッホッホッ! ごきげんよう、悪魔の公子さん。お会いできて光栄ですわ!」
で、現れたのは栗毛を縦ロールにしたなかなかの美少女であった。俺は縦ロールは好きだぞ。年齢は俺と同じくらいか。
しかし、なんというか、濃そうだ。性格が、かなり。
「わたくし、
「リヴラクス・グレモリーだ」
こっち側に関わりがあって、『安倍』って言ったらあの安倍の子孫とかだよなぁ。
「ところで、リヴラクスさん、あなたが連れていらっしゃるその猫……」
「私に何か用なのかにゃ?」
安倍の視線は、俺と俺が抱えている黒歌の間を行ったり来たりしている。
「ずばり、猫魈ではありませんこと?」
「そうよ?」
「赤龍帝だけでなく、猫魈まで!!」
なんというか、うん、使い魔マニアの知り合いっぽい気配を感じる。その手の趣味の悪魔とも話が合うんじゃないかな? 視線にそんな雰囲気を覚える。
俺はならんし、黒歌もやらんが。
「黒歌は転生悪魔だからな」
「ああ! 惜しい! 実に惜しいですわ!」
これはなんとも、退屈しない昼食会になりそうだ。
猫姉妹が、清芽さんに拾われていたルートとかあったのかもしれない。