公爵家次期当主好色物語 作:ルペッタ好き
ゼクラム・バアル(17巻)
Boss × Boss.
「ごきげんよう、サーゼクス殿。いや、
『サーゼクスで構いませんよ、ゼクラム・バアルさま』
「
『……。ゼクラムさまからの直接の連絡、よほどのことでしょう』
口元に苦みを滲ませたサーゼクスに向けて、ゼクラムは薄い笑みを浮かべてみせた。
「ふふ、なに、そう大した用件でもないのだがね。話はリヴラクスのバランスブレイカーの件だよ。──実は先日、我が家の古参兵の治療を依頼してね」
『弟が……フェニックス家の「不死身」の特性を他者に付与することの可能なバランスブレイカーを発現したことについては、グレイフィアから報告を受けています』
「治療を受けた者たちは、その後の経過も順調だ。そこでどうだろうか、私の弟子に、魔王さま方の軍、そして貴族各家の軍の傷痍兵の治療を行わせては──と考えたのだよ。アレが動いたのならば、王子も同様と考えた方がいい。
『……治療に関して、政府から依頼という形を取れ、と? 聞いた通りの金額を支払うとなると、莫大な金額になりますが』
今度は表情を変えなかったサーゼクスに、ゼクラムは頷きを返す。
「治療の対価となる金額は、
どんな都合にせよ、値引いたという事実が一度でもあれば他のところからもそれを要求されてしまうものだ。
「──短期的にみれば莫大な出費となるかもしれないが、長期的に考えれば政府としてもそう悪い話ではないはずだ」
『この先の傷痍兵恩給を先払いしたと考えれば、確かに元は取れる……か』
現魔王であるサーゼクスたちは、過去の戦争によって傷痍を負った者たちに手厚い保護を与えている。
これは何も優しさだけによるものではない。軍の士気に関わるからだ。
とはいえ、人間とは違って悪魔の寿命は長い。どこかで打ち切らなければ延々と続くその出費の合計は、とてつもないことになる。
だが、残された傷痍を治療したとしてそこで保護を切ってしまえば、今後それを支払う必要はなくなるのだ。
なにより、現政府の方針、これまでのサーゼクス達の発言がゼクラムの提案を通さざるを得なくさせている。
「過去の大戦と、それに続いた内戦。その清算は早めに済ませておいた方がいい。王子たちが動き出したとなると、
『戦となったとき、あの戦場を生き抜いた者たちが万全の状態で動けるというのは、たしかにありがたい。士気も上がるでしょう』
足を失っても翼がある、腕がなくとも魔力で補えはする。それでも身体の何処かを失えば弱体化は避けられない。
強さを尊ぶ異形の世界。永遠に失われたと思っていた身体部位が戻って来たならば、それを喜ばない者はまずいないだろう。
そして、次の戦争が起きた際にも、治せると知っていること。この意味は大きい。死ねばそれまでとしても、生き残ったときに弱くなった自分に苦しむ心配がないのだから。
「我々としても、いまさら前魔王さま方の血族に戻って来られても困るのだよ。此度のアガレス大公家の姫君とアジュカ殿の一件も、そうした考えあってのものだろう?」
『ご想像にお任せします。もっとも、既に確認をすまされているのでしょうが』
現四大魔王とその出身四家、アガレス大公家、そしてバアル大王家、どこも現在の悪魔の体制を選んだ者たちだ。前魔王の血族から見れば等しく裏切者だろう。
貴族家の中には、サーゼクスたちに勝てないからと現政府の側についた者も多い。それらの中には、未だに前魔王の潜在的な支持者がいる。
仮に戦が起きたとしても、その前魔王派とでも呼ぶべき隠れた者たちが動く余地を与えてはならない。
僅差の勝負では困るのだ。
現体制側が圧倒的な優位を保ち続けなければ、それらがあちらへと転んで泥沼になりかねない。もしもそうなれば、悪魔という種の消耗は甚大なものとなり、天使や堕天使どももそれを見逃しはしないだろう。どこの陣営にも戦を望む者はいるものだ。
「忙しいところに時間を取らせて申し訳なかったね。この話、是非考えてみてくれたまえ。では、そろそろ──」
『ゼクラムさま、貴方はリヴラクスをどうするつもりなのですか?』
通信を終えようとしたゼクラムは、サーゼクスの言葉を穏やかな笑みで迎えた。
「……ふむ、私は常々思っていたのだよ。君たちはよくやってくれている。だが、貴族の当主の立場というものを理解するよりも前に現在のポストにつくことになってしまった。これは当時の情勢ゆえに致し方なかったことだが──やはり貴族のことをよく知る魔王も必要ではないかとね」
『弟を大王派の傀儡にするおつもりですか?』
「これはまたハッキリと言ってくれる。……最近は若い世代へと当主を譲る流れが進んできているようだ。リヴラクスがグレモリー家を継いだとて、五百年後にはもう交代となっているかもしれん。サーゼクス殿も、弟が当主を務め終えた後のことを考えておいた方がよい。あの力は野放しにするにはあまりに大きく、危険だ。それに、あれは何かを与えて縛っておかねば、ある日ふらりと去って行ってもおかしくない気性をしている」
リヴラクス・グレモリーは愚かだ。その考えは見透かしやすく、また気も長くはなく、さらに忍耐弱い。
だが同時に賢くもある。裏に自身を操る糸の繰り手が居たとしても、それを気にしない程度の図太さ、ある種の利口さはあるように思える。その場での自身の気分が良ければ構わない、とそう割り切ってしまえるところがあるのだ。前世で受けた教育の影響か目上に対して敬った姿勢を見せることが多く、理と利を示せばすぐに納得する。
基本としては友好的に接し、敢えて敵対的な者を他所に用意し、こちらがリヴラクスにとって不利となることを成す際には理由を伝えて先に話しをつけておく。これだけで良いのだ。
ゼクラムにとって、リヴラクス・グレモリーという超越的な力を持った悪魔は実に扱いやすい。くれてやる利も今のところは実に分かりやすい。
女だ。
「──色欲を司るとされるアスモデウスの名が残っていれば良かったのだが、『龍の魔王』とも呼ばれるサタンとすると……。ふむ、サーゼクス殿の異名である『
『それは構いませんが……ゼクラムさまは、リアスが大きな力を持ちそれでいて役職も持たぬ状態になることを警戒している、と』
ゼクラムとしては、現四大魔王の働きに不満はない。むしろよくやってくれていると考えている。
強大な力を持ち、カリスマを備え、大王側との折衝も程よいところでこなしてくれる彼らは、ゼクラムにとっては理想的な魔王像でさえあるのだ。
「我々は強者を尊ぶ異形の種たる『悪魔』だ。強大な力を持つ者は、それだけで弱き者たちを惹きつける。力ある者には相応の立場についてもらわねばな」
ゼクラムは、古く力ある悪魔でありながら人間界に拠点を置いて政権からは遠ざかり、それでいてなお強い影響力を残すとある悪魔を思い浮かべていた。
リヴラクスにあのようになられては困るのだ。それぐらいならば、魔王にまつりあげてしまった方が良い。
地位、名誉、金、そして女。
その程度で超越悪魔の赤龍帝を抱え込めるのならば安いものだ。現魔王の派閥に超越者が二名もいる現状、大王側に傾いた魔王として擁立できるのならばなお良い。
派閥間の武力のバランスが崩れすぎると、ゼクラムの維持したい貴族社会の崩壊もありうる。口でどうこう言おうとも最終的にモノを言うのが暴力であることは、昔も今も変わらないのだ。
―○●○―
どうにかシーグヴァイラから話を聞けた。彼女もなかなか忙しいらしい。まったく、悪魔はまだ赤ちゃんみたいな俺たちの世代に働かせすぎだろう。
ハッキリとは教えてくれなかったが、シーグヴァイラの言うことにはどうも政治的なパフォーマンスの意味合いが大きかったらしい。
現体制の維持に大きく貢献しているアガレス大公家の姫君が、現体制の象徴である魔王の眷属となることでアガレス家及び中立派は今後もこの体制を続けていくつもりであることを示したわけだ。
長い間姿を現さなかったユーグリッドさんの登場で揺れている貴族連中などに、改めて立場を強く主張して見せた、と。
元来、ルキフグス家はルシファーの忠臣として仕えてきた一族、ルキフグス動くところルシファーあり。現在認定されている三名の超越者の内の一であるリゼヴィム・リヴァン・ルシファー王子の動向を気にして中立派閥内でも何かしら動きがあったのかもしれない。その引き締めとかそんなところだろう。
ちなみに、シーグヴァイラに「騒ぎが終わったらトレードで俺のところ来ないか?」とたずねてみたところ、『アガレス家に婿に来るのなら考えましょう』だそうな。クール系オタ眼鏡っ子は嫌いじゃないが、アガレス家に婿入りは厳しいぜ。オタトーク出来る系女子は貴族界隈では貴重だけどな。
でもちょっと、ダンガムパイロットスーツ風コスプレックスとかしてみたくはある。
ああいうのは、お互いが元ネタ知っていないと盛り上がら無さそうだからな。
「ぐへへ、戦争で捕まった女パイロットがどうなるか……わかるよなぁ?」
「くっ、やめなさい! このような辱めを受けるぐらいなら……ッ!」
「おおっと、簡単に死なせるわけがねぇだろうが! オラァッ!!」
「ああっ……!」
そこから始まる調教ものみたいな。でもってお互いほだされて雪山で混浴したりしてな。うむ、よいよい。
朱乃なら分かってくれるだろう。前世と違って、相手もコスを用意する金もあるってのはいいものだ。
といったことを父上に報告し終えた俺は、レイヴェルをベッド上で快感失神に追い込んでから義姉上の部屋へと向かって移動中である。フェニックスを倒すには心を責めて落とせってそれ昔から言われているから。
当たり前だが、大公姫に声をかけてみた件は父上に伝えていない。無論、エッチな妄想の話しもしてはいない。
「ミリキャスが心配していてな、気休めでもいいから義姉上を診て欲しいと頼まれたのだ」
メイドをしていないときの義姉上は、兄上の妻であり、ミリキャスの母である。つまり邸内に専用の区画を持つ貴婦人なのだ。
当然ながらホイホイとは顔を出しにくい。強引に押し通ることも朝のミリキャスのようにすれば可能だが、ここはそのミリキャスの名前を出して使用人たちに道を開けさせる。
昔は簡単に通過できた場所も、今ではなにやら使用人たちの目が光っている。これ絶対父上あたりに気付かれているよな。俺が義姉上に対してムラムラとしたものを抱えていること。
まぁ、気付くか。相手は伊達に年を喰っているわけではない。その辺り、義姉上には気づかれていないのだろうか。なんか、こう、義姉上ってさ、俺がグツグツっとくる仕草をするときがあるんだよな。
もうちょっと気を付けていただきたいものだよ。
義弟のちんちんをイライラっとさせるなんて、まことにけしからん義姉だ。責任を取れと声を大にして言ってやりたい!
「義姉上、リヴラクスですがよろしいでしょうか?」
さて、使用人たちに聞いてみたところどうやら義姉上は部屋に引き籠っていらっしゃる様子。そりゃミリキャスでなくても心配する。
「リアス……? ごめんなさい、今は少し気分が……」
「ミリキャスが心配していましたよ。それで俺に治してほしいと言って来まして」
「あの子が……」
そっと静かに部屋のドアが少しだけ開いたところを見計らって、グイと力任せに全開にしてしまう。
ドアの向こうにいた義姉上の服装は別段おかしなところのない至って普通のものだった。メイド服の方が慣れているので、逆に私服の方が新鮮なのが俺にとっての義姉上という女性である。
このまま室内に押し入ってしまいたいところだが、なんといってもここはグレモリー邸。当たり前のように使用人が後ろについてきている。
不埒な真似は許さんということだ。まったく、悪魔だと言うのに貞操観念がしっかりしていて嫌になってしまうね。いや、俺としてもレイヴェルや朱乃がガバガバでは困るのだが。
まったく、俺って男は自分の下半身の都合しか考えちゃいないんだから始末に負えない。
「もしかして、寝ていないのですか?」
服装に乱れは見られなかった義姉上だが、目の周りがなんとなく落ちくぼんでいるというか、寝不足っぽく感じられる。
悪魔でも普通に睡眠はとる。睡眠不足を魔力で補えなくはないので、七日七晩に渡る戦いなんてことも可能ではあるのだが、眠れる時には眠った方が良いのだ。
「いろいろと考えてしまって、寝付けないのよ」
ふむ、ここにいたところで俺の目的は果たしにくい。なんといっても監視付きだ。
ならば多少強引でも場所を変えるしかあるまい。
「過度なストレスや睡眠の乱れは、眠り病の発生に関わっているかもしれないという説もあるそうです」
ミスラさんの件があるので、俺が眠り病についてある程度調べているようなことを話したとしてもなんら不思議はない。実際にある程度調べはしたしな。
その結果といえば、現状ではどうにもならないことが分かっただけだが、こうして役に立つことがないでもない。
「……眠り病は怖いわね」
「気分が優れないときは、環境を変えてみるのもいいかもしれませんよ。この部屋にずっと留まっていなければならない、ということでもないのでしょう?」
義姉上は兄上が執務を行う魔王の城への出入りを、自主的に控えることを求められているだけだ。メイドの仕事もお休み中だが、そちらは特に禁止されているわけではない。
つまり今の義姉上は貴重なオフの日なのだ。しかも兄上は忙し過ぎて義姉上に目を向けられない状態。今頃きっと書類と格闘しているか、偉いさんのお年寄りと会議でもしているのだろう。
まことにお疲れ様です。そんな忙しい兄上に代わって、弟の俺が義姉上を気晴らしに誘ってしまうことにしよう。一人でぐるぐるとアレコレ思い悩んでいたところで、どうこうなるわけでなし。
だから、気分を紛らわすことは必要だと思うのだ。
「そうね。でも、環境を変えると言ってもどうしたらいいのかよく分からないのよ」
「義姉上は普段から働きすぎなんですよ。もう少し休みを取った方がいいと前から思っていました」
これはホントにそう。メイドの仕事をしながら、兄上の執務の手伝いもしているからな。
いや、メイド業が息抜きなのか? 趣味でやっているのだろうし、たぶん。
「ということで義姉上、ちょっと一緒にお出かけしませんか? 義弟からのデートのお誘いです」
そう言いながら、俺はちょっとおどけた調子で亜空間からスタンプ欄の目立つチラシを取り出した。
「サイクリングで温泉巡りスタンプラリー?」
義姉上は俺が手渡したそのチラシに目線を落とし、不思議そうな表情をしている。
「人間界の縄張りに行ったときに見かけまして、どうでしょう。これを少しずつ埋めて行ってみませんか?」
日本のとある海のない県の温泉施設の宣伝用なのだと思われるチラシ。なんでも観光協会から自転車を借りて、県内の温泉を巡ってスタンプを埋めていくというものらしい。駒王町でふと目について手に取ったのだが、なかなか悪くないのではないだろうか。期限はないらしいので、ゆっくり進めてもオッケーだ。いや、さすがに悪魔の寿命基準のゆっくりだとマズイだろうが。
ちなみにスタンプ帖を完成させると、豪華特典として県内の温泉すべてで割引が利くようになるそうだ。意味あるのかな、これ……?
眠れないときは、無理に寝ようとしてもどうにもならないときがあるからな。酒でもカッと喰らってバタンといく手もあるが、それをここでしたところでメイドが世話をするだけだ。
やはりある程度身体を動かすとスカッとして寝付きやすいのではないかと思う。
ここ半年ほどドライグコーチの身体造り講座を受けて実感してるから、きっとそう。
「そうね……でも……」
おや、どうやら義姉上は迷っている様子。正直ダメ元だったのだが、ここはちょっと強引に行ってみるか。
失敗したらどうするか? 知るか!
「俺はこれをやってみることにする! 供を頼むぞ、グレイフィア!!」
「はい、リヴラクスさま! ……あっ」
さて、義姉上の同意も得られたので、サクッと人間界に転移してしまおう。
メイドばっかりやっているから、ワガママ若さまの面倒をみようとするクセが付いてしまうんですよ、義姉上。
「それじゃあ、行ってくる。ミリキャスによろしく言っておいてくれ」
傍にいたメイドに言づけて、義姉上の手を掴んで魔方陣転移開始。
転移関係のセキュリティを見直したばかりの我が家だが、次期当主である俺はその仕様を当然知っている。内部犯かつ魔力量に自信ある俺ならばどうということもないのだ。
「待ちなさいリアス──」
と義姉上が止めようとする間に、転移完了。
「──もう、こういうところはサーゼクスに似ているのね」
仕方ないなと仕草で表現しつつ、義姉上の表情は結構嬉しそうだ。
幸い現地の天気は晴れ。時間も丁度良い塩梅。
いやー、義姉上とサイクリングデートして最後は温泉浸かって帰るってなかなか楽しそうじゃないかね。混浴のあるところや、お泊り部屋のある温泉もあるようだし。
いつまで義姉上の活動自粛状態が続くの分からないが、その間にスタンプ全部埋めたいね……クフフ。
まぁ、今日のところは義姉上がおねむになったら終了だが。
原作2巻の婚約破棄騒動。
悪魔陣営にきた赤龍帝が妹に懸想しているのを見て、サーゼクスが魔王として囲い込みにかかったのかなって。ライザーさんはその犠牲になったのだ。
その後は、金(おっぱいドラゴンのプロデュース)、名声、地位、女と与えていっているようにも思える。
ここではゼクラムさんがそれをする方向性。やったねオリ主くん、偉い悪魔が女の子紹介してくれるって(なお、バランスが~とか祖父さまが考えているのに、来年あたりにセラフォルーを篭絡するオリ主)