※この作品はR-18です。

公爵家次期当主好色物語   作:ルペッタ好き

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切りどころが分からず、いつもより長めになりました


2-32 温泉でいこう。(スタンプ1)

 やってきました田舎の観光協会。

 パンフによると、ここで自転車を借りられるらしい。

 さすがに俺も義姉上も貴族風の衣装では目立って仕方がないので、人間界の現代風の服装に着替えている。ちなみに、着替えは魔力で一瞬ですることも可能なので、ドキドキ着替えタイムなんてなかった。

 プレイ中にじっくり脱いだり、ジレジレ脱がせたり、あるいは着せ替えたりしているのは、あれはあくまでもプレイなのである。ソーナとセラフォルーさんの御家であるシトリー家なんぞ、人間の記した書物では望みの男女を裸に引ん剝く力を持つとか書かれているらしいので、その逆もまた問題なくできてしまう。

 そう、ソーナはその気になればリュパンダイブもできる子なのだ。セラフォルーさんは魔法少女番組の変身シーンでよく使用しているしな。

 

 さて問題の義姉上であるが、私服のときはパンツルックが多い気がする。スカートなメイド服でいることが多い反動だろうか。

 日本の今の季節は冬。そろそろ年の瀬だ。そんな時期だが、昼間はそこまで寒くはない。本日の天気が良いってこともあるのだろうが、俺が人間の子供をやっていた頃はもっと寒かったような気がする。あれだろうか、温暖化ってやつのせいなのかね。この世界には各種神話の神々が実在しているのだけれど、彼らはこの事象に介入しようとはしていない。

 出来るのにやらないのか。それとも出来ないのか。はてさて、どちらなのだろう。

 

「義姉さん、ここで借りるみたい」

 

 人間社会で『義姉上』呼びは奇妙な気がするので、呼び方を変えてみたところ、

 

「ッ! そう、みたいね」

 

 何故かそのたびに義姉上がピクリと反応する。ちょっと面白いので繰り返してみたいところだが、実弟のユーグリットさん関係だとよろしくないのでほじくり返さない程度にしておこう。

 気晴らしに誘ったのに、余計に落ち込ませてしまってはよろしくない。

 

「すいませーん」

 

 東京近郊の駒王町と比較するとこの近辺は大層な田舎である。観光協会の建物と言っても駅の近くに二階建ての事務所があるだけで、ちょっと遠くを見やれば稲刈りの終わった田んぼがちらほら見えると来たものだ。人間界の空気が好みではないライザー義兄上でも、このくらいのところなら大丈夫なのではないだろうか。あれきっと、都会の空気が汚れてるとかそんな感じなのではなかろうか。

 

「はいはーい…………」

 

 ガラスにペタペタと観光名所やら近辺の地図の張られた引き戸を開け、観光協会事務所に入ると受付らしきおばちゃんが口をポカンと開けてフリーズしてしまっている。

 

「もしもーし」

「は、はい! 何か用か!? あ、すいません、今、英語話せるの呼ぶから!」

「いえ、日本語わかりますから。大丈夫ですよ」

 

 そういえば、今の俺は紅髪紫眼の北欧系美少年であった。ついでに連れの義姉上はスタイルとんでもない銀髪美女である。

 こんな派手な容姿の客、ここらにはそうそう来ないよな。

 物珍しいのか、じろじろと見られながらテンパった様子のおばちゃんから説明を受ける。男性職員どもの視線が義姉上の顔と胸を上下しているのに微妙にイラっと来るが、俺も男だ。理解はできる。出来すぎてしまう。そうだよな、見ちゃうよな……わかる。まぁ、俺の好みから言えば義姉上のお胸さまは少々大きすぎるのだが。

 なんだろう、守備範囲をコップに入った水にたとえると上限いっぱい超えて表面張力で零れ落ちないギリギリおっぱいというか。

 女は顔だからいいけどね。特に角度なのか光の加減なのか、それとも魔力の影響か、赤にも銀にも見える瞳が好きだ。

 

 説明によると、保険料としてちょっとだけお金を支払うシステムらしい。で、借りた自転車は目的地の温泉で預けてしまえばわざわざここまで返しに来なくてもいいとのこと。

 温泉には、一時間に一本くらいバスがくるので、帰りはそれを使ってくれていいよ、だそうな。まぁ、せっかく湯に浸かって温まったのにその後に自転車で寒い中走ったりとかしたら風邪ひきそうだし、人間ならそうなるか。

 

「風が気持ちいいわね」

 

 長い髪をくるっと纏めてペダルをこぐ義姉上を横目に見ると、冬の日差しを受けた銀色の髪が風にあおられて煌めいていた。

 ヘルメットつけてねと言われたが、つけてないです。すまないね。

 ついでに自転車二台横並びで走る悪い子スタイルだが、悪魔だから別によし。車にぶつかっても向こうが一方的に壊れるだけだから安全運転です。人間の法やマナーなど悪魔には関係ないのだ。

 

「冬で良かったかな」

 

 悪魔にとっては、冬の寒さも、夏の暑さも、魔力があればどうとでもなるものだ。

 なので、季節関係なく同じような格好をしている悪魔は結構いる。あと、いつも露出多めの女性悪魔とかも多い。

 

「あら、冬が好きだったの?」

「義姉さんは冬の服の方が似合ってると思うよ」

 

 個人的な意見なので異論は認めるが、俺は女性は冬服の方が可愛いと思っている。夏よりもアイテム数が多くなるし、なんというかこうモコモコしてていいよなって思うのだ。

 もちろん、夏の女性陣が嫌いなわけではない。薄着は薄着でいいものだ。あと水着。

 だがまぁ、どちらかと言えば冬である。マフラーとか手袋っていいよね。コート姿もグッド。学校の制服だって夏服よりも冬服派である。

 ただし、雪の日にヒール履いてるのはダメだ。ブーツにしろ、ブーツ、雪用のヤツ。それでも転んじゃったりしたところを抱き留めて、こうモコモコしてる上から抱きしめたいね。

 

「そう? ふふ、ありがとう」

 

 本日の目当ての温泉は、山の中にある。つまり坂道が多いわけだ。

 なので人間ならば冬場でも厚着をしていたら汗かきながら上って行かねばならないのだが、我々は悪魔なので基礎的な身体能力からして違う。その上、魔力で増強すら出来るのだから楽々である。平地も急な坂道も、スイスイよ。

 

「そういえば、リアスの『赤龍帝の籠手』の禁手なのだけれど」

 

 坂道を上っている途中、ふと思い出したように義姉上がこちらを見た。

 

「禁手がどうかした?」

 

 丁度良いところに道路の待避所があったのでそこで自転車を降りることにする。

 周りに人の姿はなく、時折自動車が通っていく程度、一般人には無縁な話をしても構わないだろう。

 葉の落ちた木々に囲まれた山道の途中から遠くを見ると、僅かな平地を挟んで向こう側の山が見える。冥界ではありふれているが、俺の縄張り付近には無さそうな光景だな。

 

「『赤龍帝の籠手』の通常の禁手は、『赤龍帝の鎧』(ブーステッドギア・スケイルメイル)』よね?」

「俺のは亜種になるらしいから。おかげで通常にはない能力もついてるし」

 

 ドライグにイメージとして見せてもらったことがあるが、『赤龍帝の鎧』は何処がスケイルメイルなんだって感じの代物であった。

 スケイルメイル=鱗鎧というよりもプレートメイル=板金鎧、いやそれよりも騎馬にまたがる前提のスーツ・アーマー、いやいやそれすら超えてパワードツースかロボットのような雰囲気に思えたものだ。

 まったく、通常禁手の名前を聞いて、革鎧の上に龍の鱗を張り付けた感じのスケイルメイルを想像した俺の期待を返してほしかったね。オタは中世ヨーロッパ風味のファンタジー系にはちょっと厳しいんだ。

 

「どうして、あの魔王の装束のような姿になったのかと思ったのよ」

 

 はて、見た目がああなった理由か。他の眷属の『悪魔の駒』を統べる『王』としてのイメージもあるだろう。悪魔で王なら、魔王という連想はすぐに出てくる。

 あとは、やはり強さこそ権力であるって俺の考え方からして……。

 

「俺の中にある、最強の『悪魔』のイメージですかね」

 

 悪魔に生まれ変わって以来、俺の中にある一番強い悪魔のイメージは兄上である。兄のサーゼクス・ルシファーは魔王なので、公式の場では魔王の装束を身に纏う。

 だから、板金全身鎧だかロボットよりも魔王の装束の方が強いってイメージが俺の中に根付いていたのかもしれない。

 もう一つ、俺の心の中に強者として植え付けられたイメージはドライグの『龍の姿』なのだが、こちらも魔力で変化することが容易かったことから考えて大きく影響しているのだろう。こちらの形も早々に実用段階にもっていきたいところだがなかなか上手く行かないので、まだまだ神器の深部に潜る必要があるのだろう。

 

「ふふ……」

 

 なんだか微笑ましいものを見るような笑みを向けられて、少し赤くなりかけた俺の頬を冷たい冬の風が撫でて誤魔化してくれた。どうやら、この山の神か冬風の神は気が利くらしい。心の中で礼を言わせてもらおう。

 

「あー……ガードレールもないとか、勢いよく下ってきたら危ないかもしれませんね。この道」

 

 ブレーキ壊れたりしたら崖の下に真っ逆さまだぞ。怖いなー。

 

「そうね。私たちは翼があるから平気でしょうけど」

 

 男の頬をつつかないでください義姉上。

 俺はもう子供ではないのだ。毎日ヤリまくってる大人なので、こういう扱いをされたくはない。

 俺は義姉上の貞操を狙っているんだからな。いつまでも子供扱いで油断していたら、ヒンヒン言うハメになるぞ。

 

「はぁ、さっさと行きますか」

 

 ちょっと乱暴に自転車の向きを変えサドルにまたがると、立ち漕ぎでペダルをグイグイと踏み込んで義姉上を置き去りに坂道をせっせと上る。

 

「何を拗ねてるの?」

「拗ねてない」

 

 追いついてきた義姉上に、ふんと鼻息荒く返事をしてやると、なんだか知らんが嬉しそうに微笑まれてしまった。

 義姉心はよく分からないな。まぁ、義姉上の笑顔が多めなのは良いことだ。

 

「懐かしい……」

 

 たどり着いた温泉の下駄箱で思わずつぶやいてしまった。

 

「どうかしたの?」

 

 総木製で、靴を入れて蓋をしめたら、扉に刺さっている番号が書かれた木版を引っこ抜いて持っていくとかいう形式の下駄箱。今生では初かもしれん。

 

「いや、昔を思い出して」

 

 しかしアレだな。俺も義姉上もお互いに口調が安定しないな。家では若君とメイドの立場か、義弟と義姉の立場、ここでは人間社会ように一般姉弟っぽく振舞うことにしているのだが、どう話していいものやら戸惑ってしまう。

 

「昔が恋しくなった?」

「いえ、今の方が楽しいです……よ。義姉さんもいますしね」

 

 前世は別にそこまで楽しくもなかったしな。生まれ変わってからの短い悪魔生の体験だけで、余裕で上を行っている。ここ半年だけでも遥かに上だ。

 義姉上、なぜ無言で頭を撫でてくるのですか? 俺もうかなり背が伸びたので、そういうのは別に……いや、結構嬉しいな。くそ、にやけそうな我が口元が憎い。

 

「ふぁぁ……」

 

 肝心の温泉には、混浴なんてなかった。いや、別にいいのけれどね。初回からいきなりそれとか、狙いすぎててダメだろうし。ついでに、義姉上が混浴に入って来てくれるとは限らない。最悪、おばちゃんたちに囲まれてチヤホヤされるなんて状況になってしまう。

 湯に浸かりながら右手を見ると、そこには輪っかになったゴムのバンドで吊るされた脱衣所のロッカーの鍵。

 

『なぁ、ドライグ』

『なんだ?』

『義姉上とヤるにはどうしたらいいと思う?』

『そんなことを俺に聞くな。オスなら自分でどうにかしろ』

『そういうと思ってた』

『だがまぁ、ドラゴンの界隈なら気に入ったメスを自分のものにしたいのなら、他のオスを蹴散らすものだ』

『兄上かぁー。強いんだよなぁ……』

『あれもまたお前と同じバケモノだ。それに、お前は身内にはそこまで攻撃的になれんだろう』

 

 あー……ほんと厄介な相手だよなぁ。叔父上とミスラさんのときとは違うのだ。

 堂々とは行けん。狙うとしたら、いつぞやこうやって風呂に浸かりながら考えていた、『一盗』か……。こっそり、こっそりとな。バレなきゃいいだろ的な。いや、バレても大っぴらにならなきゃ構うまい的な。

 悪魔的には不倫とか浮気って、そこまで世間からどうこう言われることでもないからな。嫉妬だの執着だの独占欲だのがあるから、当事者間は大変なことになるが。

 義姉上が、逆ハー思考で『グレモリー兄弟両方食べちゃいますわよ。うふふふふ……じゅるり』みたいな方だったならある意味楽だったのかね。美男・美少年集めている女性貴族もわりかしいるようだし。

 

『お前の中に諦めるという選択肢はないのか』

『振りきれりゃあいいんだけどなぁ……』

 

 いっそ兄上が悪魔全体を裏切るような、こうトンデモナイことをやらかしてくれたら……って、他者の行動に期待するのは悪魔のやり口ではないな。他力に頼るのは弱く儚き人間の生き方だ。

 神様仏様、清く正しい生活を送りますので、どうか来世で、死後の天国で、幸せに暮らさせてくださいませ、ってな。いや、完全に生まれ変わっていい思いをしている俺の言えたことではないが。

 思えば、前世で俺がよく読みふけっていた小説サイトには、そんな物語が大量に溢れていたような気がする。あれもまた人間の信仰の形なのかもしれんな。

 ま、俺はそれを実現してしまったワケだが。まったく、地獄の神だか仏様のお陰だ。ありがたや、ありがたや。

 

『なぁ、ドライグ』

『なんだ?』

『人間ってのは、昔っから今生よりも来世に夢を託して来たんだろうか?』

『まぁ、そうだな。俺がこうやって神器に封印されてから知った限りでは、多くの人間はそういうものだった。宗教に縋る連中はな。天国だの理想郷だのに期待して、今生での願望の実現を見送るのさ』

『ドラゴン的には気に入らない感じか』

『……そうだな。欲しければ奪い取るのが、力の権化たるドラゴンの在り方だ』

 

 飢餓や病、戦争。死が身近にあった昔でも、科学の発展がそれらをずっと遠くした現代でも、結局人間は現状の打破を死後に求めているってことか。

 神仏のエネルギー源たる信仰の大元がそこにあるのなら、聖書の黙示録の先の未来を求めている教会信者も多いんだろうな。意識しているかどうかは別にして。

 たしか、なんだったか……大雑把には『いろいろと災禍が巻き起こって穢れた世界が滅び、その後に教義に則って生きた清く正しい者だけが、天国に迎えられて末永く幸せに暮らせます』みたいな話だったはずだ。頭痛くなるから詳しくは思い出さないが。

 

『案外、黙示録に記された「夢幻」を司る最強の龍「真なる赤龍神帝(アポカリュプス・ドラゴン)」グレートレッドの力の源は、人間のそういう想いなのかもしれないなぁ』

 

 神々が信仰を求めるように、我々悪魔が欲望を貪るように、人外異形の存在はなんらかの形で人間を糧としているものだ。それはきっと、最強の龍神だって違わないのではないだろうか。たぶん。

 全人類の現状への不満。そこから生まれる夢や幻、理想の世界。グレートレッドがそんな意識的にか無意識的かに関わらず、現状に不満を抱えた人間たちの心から生まれるその手の感情・精神のエネルギーを糧としているとすると、そりゃまあ強いだろうな。

 

『それはどうかな? ヤツとてドラゴンの姿をしているのだ、自力での現状打破、願望実現を試みる心こそがドラゴン・オブ・ドラゴンの力の根源かもしれんぞ』

『ああ……ドラゴンならそうかもな。なら、人間たちの滅びを望む意志みたいなのは、もう一つの黙示録の獣の力だったりするのかもな』

 

 存在することは存在するらしいが、どこにいるとも知れぬ終末の獣。『666』の数字で有名な『黙示録の皇獣(アポカリプティック・ビースト)』。

 いろいろな神話や宗教で終末の話って出てくるし、それこそ仏教の弥勒菩薩をこれと絡めて666をミロクって読んでる創作物とかあったしなぁ……。

 救われるためにこの世ごと死んでしまいたいって感じで終末を望む感情。その人類の精神エネルギーのようなものを糧として、666の獣が育っていたら……とんでもなく強いんだろうな。あー、嫌になるね。黙示録そのままなら、この獣って悪魔の味方っぽい気がするんだが、黙示録の赤い龍ことグレートレッドは特に悪魔とどうこうってないし……。怖い、怖い。

 

『その獣が出てくるのなら、聖書の三大勢力の決戦のときに出て来ていそうなものだがな』

 

 ハルマゲドンっぽい過去の大戦時に出現して大暴れしたのは、黙示録の龍でも黙示録の獣でもなく、ドライグとアルビオンって全然関係のなさそうなところから突っ込んできた二頭の天龍っていうね。

 さっぱり訳が分からん。世の中ややこしくて分からん事ばかりだ。

 

『考えても分からんし、そろそろ出ることにする』

『しかし、お前はしょっちゅうくだらんことを考えているな』

『適当なことを思考しては放り投げるのは、友達の少ない俺みたいなヤツにはいい暇つぶしだからな。エロ妄想とこいつは、前世からの癖みたいなものだ』

 

 と、ドライグを相手にそんな益体もないことを話している内に、そこそこの時間が過ぎていた。そろそろ湯から上がってもいい頃合いだろう。

 温泉や銭湯に男女で出かけて、もう一方が出てくるのを待つ時間ってのは、なかなか趣がある。嫌いってヤツもいると思うが、俺は結構好きだ。本日の義姉上がどのくらいの時間湯船に沈んでいるのかは分からないが、先に出ておいて湯上り姿をお出迎えってのは心躍るね。一緒に風呂に入って、エッチぃことをするのとはまた別のわくわく感がある。

 露出度は同じでも、水着姿と下着姿は違うみたいな感じだろうか? いや、違うか。

 

 自販機ではなく、ガラスケースに入ったコーヒー牛乳の瓶を手に取り、カウンターに座っているおばちゃんに話しかける。

 

「これ下さい」

「はいよ、百円ね。おにいちゃんカッコいいけどまけてあげらんないんだ。ごめんな」

「じゃあ、俺が奢りますよ」

「あら、ヤダ! もう、おばちゃんにこんなことしても何もでないわよ!」

 

 もう一本取ってきて、二本購入。一本をおばちゃんに上げるとめっちゃ喜んでた。

 やはり顔か……いや、おばちゃんにモテてもしょうがないのだが。

 あー、美人女将が経営している温泉宿とかないものかね。ついでにそこがちょっと経営が傾いていたりしていて、お金持ちな俺に融資と引き換えに身体を差し出し、やがてそこに娘の美少女も巻き込まれて行って……客の入浴時間を終えた湯船に響き渡る母娘の淫らな喘ぎ声、みたいなエロ本的展開があってもいいと思うんだ。そこからさらに、家業を継ぐのが嫌で都会に出て行ったけれど挫折して帰郷してきた長女が加わって……。

 

 いかんな、ヘンな妄想を描いていると股間が起動してしまう。義姉上が出てきたときに、もりもりギンギンでは困る。

 男湯と女湯に分かれる手前の通路に設置された背もたれの無いベンチに腰掛け、邪念を追い出していると良く知ったオーラの気配が女湯の出入り口に近づいてきた。

 

「待たせちゃったかしら?」

「少しね」

 

 うーん、湯上り義姉上、よい。いつも顔の両サイドで結って垂らしている三つ編みもしていないし、後ろ髪もサッと垂らしているだけ。

 屋敷ではなかなかこういう姿はお目に掛かれないからな。これだけでも今日ここに来た意味があるというものだ。ほんのり上気している頬に、少しとろんとした瞳が色っぽい。

 ふむ、これはもしや少し眠そうな感じなのかな? 

 

「気分転換になった?」

「ええ、いつもと違う場所の空気も悪くないわね」

 

 隣に腰を下ろして来た義姉上の様子を伺うと、どうやら本当に多少は気が晴れているように見える。

 

「何か飲む?」

「そうね……どれがいいのかしら?」

 

 俺が決めて良いようなので、いちごミルクを選んで会計を済ませた。

 悪魔でもそうなのか知らないが、コーヒーよりは眠りやすそうな気がする。

 

「リアス、これすごく甘いわ」

「まぁ、そういうものだから」

 

 義姉上は甘いものが嫌いな訳ではないが、そこまでの甘党でもない。アップルパイに使うリンゴは、酸味の強い品種がお好みな方向性の女性だ。

 リンゴと言えばバアル領だが、あそこは初代様のこだわりなのかいろいろな品種を作っているので、その辺りも対応できていて良い感じである。これ、今はどうでもいい話だな。

 そんなことより、薄桃色の液体の入った瓶に口を付けている義姉上の唇の色艶に目が行ってしまう。あと、コクリコクリとそれを嚥下する喉の動きとか……俺、変態チックだな。今更か。

 と、なんともモヤモヤとしながら義姉上を眺めていると、飲み終わった後の瓶の始末に困っているようだ。どうすればいいのだろうとキョロキョロするさまが、なんだかとても可愛く見えてしまう。

 普段メイドをしていても、義姉上も純血悪魔の貴族だからな。こういった下賤の場には慣れていないのだろう。もしかしたら、初体験だったりして。

 

「はい」と手を出してビンを受け取り、カウンターに置いておく。どうやらさっきのおばちゃんは、奥の方で同僚とキャイキャイ盛り上がっているようだ。なにがそんなに楽しいのだか。

 

「すいません、連れが少し疲れてしまったようなのですが、どこかで休ませてもらえませんか?」

 

 と声をかけてみると、三人ものおばちゃんたちが出て来て案内してくれた。

 

「ここ使ってちょうだい。宴会用の座敷だけど、今日は予約入ってないから」

 

 と、無事に休憩場所を確保できたので、義姉上の手を取ってみることに。

 

「リアス……?」

「義姉さん眠そうだから、寝ておいた方がいいよ。あっちだと、気が休まらないかもしれないし」

「そう……かもしれないわね」

 

 座敷まで義姉上を引っ張って行って、適当に押し入れだか物入らしき場所を開ける。

 さすがに布団は置いてなかったか。だが、座椅子と座布団があったのでちょいと借りることに。ふむ、この木製でL字型の座布団を上に置いて使用する、床との間にほとんど段差の出来ない座椅子……使えるな。

 

「はい、ここどうぞ」

 

 畳の上に座布団を四つ縦に並べて、その一方の端に座椅子を横向きに置く。で、その座椅子の背もたれに背を預けた俺は、自分の腿をポンポンと叩いて見せた。

 

「ええと……?」

「膝枕、前はよくやってもらってたから。今日は俺が義姉さんの枕になろうかと」

 

 首を傾げる義姉上に説明すると、彼女はおずおずと座布団の上に身体を横たえる。すると、仰向けになった義姉上の瞳が、俺の膝の少し上辺りからこちらを見上げてくる形になった。

 まぁ、俺の太腿なんぞ女の子のそれと違って硬いので、あまり気持ちよくないかもしれないが。でも、俺は楽しい。

 

「そういえば、よくねだられたわね。いつから、しなくなったのかしら」

「どうだったかなぁ……。まぁ、今はそれよりも義姉さんがちょっとでも休むことの方が大事ですよ。こんなので申し訳ないけど」

「こんなことしたことがなかったから、なんだかとても新鮮な気分よ」

 

 そりゃそうだろうなぁ。日本のド田舎の温泉の微妙にタバコの跡とか残っている畳の上に座布団並べて、その上で寝るとかさ……悪魔の世界で『最強の女王』と呼ばれている義姉上がしたことなんてないだろう。俺も今生では初めてである。

 前世では……うん、会社の行きたくもない飲み会に出席して、うぇーと酔っぱらって寝かされていたことがあったような気がする。新人は酒注いで回れ、注いだら返杯だかを受けるのが礼儀だぞとかさぁ……そういうの今時流行らんぞ。まぁ、人間基準では結構昔の話だが。

 

「んっ……?」

「アイマスク。目を温かくすると気分が良くなるって聞いたような覚えがある」

 

 ひょいと義姉上の両目を覆うように左手を置いてみる。俺から見て左側に寝ている彼女の唇の端が、左手の小指と手首の間あたりに触れる感じだ。

 

「あぁ……ふぅ……」

 

 続けて義姉上の頭の天辺付近を右手で撫でる。手櫛で銀色の髪を梳くようにすると、指と指の間をサラッとした感触が流れて行って心地よい。

 

「黒歌は知ってたよね?」

「んっ……ええ、貴方の眷属……になる子よね」

 

 黒歌の所属はナベリウス本家との話がついていて、年内には俺の眷属に迎える予定だ。あちらの『王』が行方不明なので、駒を自在に扱えるベルゼブブさまの予定が空いた日を待っている状況になる。

 いろいろな場面を想定して契約内容をきっちりと作ってくれていたレイヴェルに感謝だな。

 

「彼女から聞いたんだけどさ、オーラでこういうのするといいらしいよ。仙術に近い働きがあるとかで」

「あ……っ……はぁ……」

 

 髪を撫でながら義姉上の魔力のオーラを掬い上げて、俺のそれと混ぜるようにして馴染ませていく。

 それをしばらく繰り返していると、オーラに干渉し始めたときにピクッと少し緊張した義姉上の身体から力が抜けていくのが分かった。

 どうやら受け入れてくれたらしい。魔力ってのは心に浮かんだイメージで操るものだ。自分のそれに干渉されるってのは、かなり緊張する。俺も黒歌に仙術を試してもらったことがあるが、「いまなら命脈を断つことも簡単にゃん」とか言われたときは、ビクリとなったものだ。命を預けている感覚ってのは独特なものがある。

 耳かきとか、よくよく考えなくても奥の方をグサッとされるだけで酷いことになるだろうに、やってもらうのがなんだか楽しいってあるよなぁ。

 

「んぅ……、ふぅ……」

「どうですか、義姉さん。気持ち良くなってきました?」

「ええ、なんだかふわっとして……頭の中が……」

「そのまま寝ちゃいましょう。大丈夫、俺が付いてるから」

「うん……ありがとう……」

 

 その後も目を覆い髪を撫で続けていると、やがて義姉上の口からスヤスヤと寝息がこぼれ始める。

 眠っている義姉上を眺め続けることしばらく、俺はそっと手を彼女の顔を覆っていた手を離してみた。

 

「よく寝てるな」

 

 頬をつついてみたり、鼻をつまんでみても起きる様子がない。まぁ、さすがに鼻をつまむと嫌がって眉が動いたが。

 ダメですよ、義姉上。俺のようなヤツのすぐ近くでそんなに油断した無防備な姿を見せたら。

 

「義姉さん……義姉上……起きないとキスしちゃいますよ? ……ホントにしちゃいますよ?」

 

 グッと背を丸めて、自分の膝の皿より少し上辺りにある美女へと顔を近づけていく。鼻が触れ合うような距離で一旦止めてみるが、特に反応はない。

 俺は少し頭をずらして、ゆっくりと唇が触れ合う寸前まで顔を近づけた。互いの口唇がくっつく寸前、義姉上のそれが僅かに開いて男の名前を呼ぶ。

 

「はぁ……」

 

 数十秒後、俺は座椅子の背もたれに体重を預け天井を見上げていた。

 なんとなく頭をかいてから、しょうがないので安眠用に仙術もどきでもしていようかとすると──。

 

「うぅん……」

 

 義姉上が大きく寝返りをうった。仰向けだったのが、うつ伏せになる百八十度の大移動だ。その移動方向は、俺の腹の方。

 

「んぅ……ふぅ……」

 

 おい、義姉上。今あんたが顔面を埋めているのは、俺の下腹部の下というか、両脚の付け根の間と言うか、いろいろと敏感な部分だぞ。

 勃っちゃうからやめなさい。クンカクンカするのをやめるんだ。風呂入ったばかりだから臭くはないと思うけど。

 

「すぅー……、んふぅ……」

 

 俺の葛藤など知らず義姉上はもぞもぞと頭を動かし、いきり立った肉棒を柱にして出来た股間のテントを揺さぶってくる。

 

「んぅっ……ふうっ……」

 

 こんなのもう、傍から見たら口淫風景ではないだろうか。実際にそうなった場合を想像してしまって、抑え込もうとしても抑えられず、むしろガンガンと隆起して行ってしまう。

 パンツとズボンで上を押さえつけられた空間が、狭い苦しい解放しろと我が分身が悲鳴を上げている。

 

「ンぁ……、すぅ……すぅ……」

 

 もぞもぞして落ち着かない様子で刺激を与え続けてくる義姉上。この動きを止めねば、最悪中で発射してしまうかもしれん。

 だから俺は、義姉上の頭をぐっと押さえつけた。

 

「はぁー……」

 

 未だに続けているオーラニックなマッサージの効能によるものか、後頭部と頭頂付近をさすっているとやがて義姉上の体勢が安定し始めた。

 まぁ、俺もこの半年ほどで脚に筋肉ついてきて太くなったしな。義姉上的には、うつ伏せの方が枕の高さが合うのかもしれない。自前で胸部にでっかいクッション持ってるから。

 

「んぅぅ……、すぅぅ……、んぅぅ……、すぅぅ……」

 

 ようやく落ち着いてくれた。自ら義弟の股間に顔を埋め、押し付けられて安眠にはいるとは……なんていやらしい女なんだ。義姉上でなかったら、「そんなに好きなら、オラ、しゃぶれよ」ってしているところだ。

 

「…………」

 

 眠れる美女の頭を撫でながら、悶々と過ごす時間はその後二時間ほど続いた。

 

 その後、起床した義姉上と共にスタンプを押してもらった。ここに来るきっかけとなったチラシに印刷されていたスタンプ欄ではなく、専用のスタンプ帳にだ。

 なんでも、チラシのスタンプ欄は見本で、正式なものはこちらの温泉の外観と浴室の風景写真が入っていて、ついでに所在地、地図、電話番号などの入ったスタンプ帖だったらしい。

 この企画を考えた人物と、自転車や印刷業者の関係がどうのこうのといらんことまでおばちゃんが教えてくれたが、そういうのは観光客に言わなくてもいいんじゃないですかね。

 

 

 

 

 ―○●○―

 

 

 

 

「リアスさま!」

「はい……」

 

 グレモリー家に帰った俺は、レイヴェルに捕まって正座させられていた。

 

「あれほど、グレイフィアさまはダメです! と私が言いましたのに、どうして聞いて下さらないのですか!」

 

 レイヴェル優しい。正座が寝室のベッドの上でいいだなんて……母上だったらギザギザ石の上に座らせているところだぞ。あと、膝上に乗っかる重石も、レイヴェル本人の柔らかボディではなく、硬くて重い石の板だぞ。

 

「いや、手を出してはいないから。これは本当だ」

「むー……、ウソでは、ないようですわね。でも、本当にグレイフィアさまはマズイですわ」

 

 そうなのだ。レイヴェルの言う通り、義姉上は非常にマズイのだ。ここはぐっと我慢するのが、正しいし利口だ。

 そう分かっているのに、どうにもこうにも抑えられぬ欲望がある。

 兄上がなぁ……もうちょっと嫌なヤツなら良かったんだが。別に嫌いなわけじゃないんだよな。ただ、なんとなくその政策と言うか、やり方が気に入らないことが多いだけで。

 なんなんだろうな、これ。現状に不満大ってこともないのにな。

 

「ちょっとリアスさま……私、今叱っているのですけれど……」

「いや、この体勢だと反応しちゃうだろ」

 

 俺は今、パンツ一丁でベッドの上に正座させられている。で、その俺の膝の上にネグリジェ姿のレイヴェルがこっち向きで座っている。そして、彼女の両脚は、俺の腰にガッチリと回ってホールド状態。

 身長差もあって、この体勢でもレイヴェルの視線の方が俺のそれよりもやや低い位置にあるので、不満ですと主張する視線も上目遣い。

 こんなの勃つに決まってるだろ。叱責というより誘惑です、完全に。

 兄嫁と二人きりで旅行してきたことに怒って、唇尖らせながらすりすり寄ってくる奥さんとか……ああ、もう可愛いんだよなぁ。

 

「リアスさま……私ではダメですか?」

「そういうのじゃないんだ」

 

 言いながら体重を前にかけて押し倒す。彼女の首筋に顔を埋めると、いつもより強い例の香水の匂いがした。

 

「あん……まだ話の途中ですのに……」

 

 耳たぶや首を軽く唇で挟むようにしながら、レイヴェルの小ぶりでキュッとしまったヒップに手をやる。両手を使って尻肉の桃の形をそれぞれぐにぐにと変形させて、その弾力を楽しむ。

 

「ちょっと聞いていらっしゃいます……の?」

「んー、今はこっちに集中したいから、聞いてない」

「ん……♡ 聞いてるじゃないですかぁ」

「レイヴェルもこうするつもりだったんだろ?」

 

 炎の魔力が強いためか、レイヴェルは普段から体温が高めだ。ほかほかした肢体を抱きしめていると、なんだかとても落ち着く。

 まぁ、コッチの方はまったく落ち着かないのだが。

 

「あ、やだ……そんなに擦りつけたら……♡ って、まだ、まだダメですわ。待って、まってくださいまし」

 

 パンツの中でギンギンに隆起した肉棒をレイヴェルの秘所に押し付けグリグリっと動かすと、見上げてくる彼女の顔つきが変わってギュッと抱き着いてくる。

 左右の手を尻の割れ目に進め、肉を掴んで開くようにしてやると、それから逃れるようにレイヴェルの腰が前に突き出された。そうなると、もちろん彼女の前の割れ目に押し付けている肉棒の先が食い込むわけで……。

 

「ほら、もう濡れまくってるじゃないか」

 

 強く圧された女の割れ目の中から、じゅわりと染み出て来た雌汁が彼女と俺のパンツをぐっちょりと湿らせる。

 

「んんぅ……もう♡ 仕方のない方ですわね」

「そうそう、俺は仕方のないヤツなんだ」

「んぅっ……ちゅっ……♡」

 

 唇を合わせ舌を絡め始めると、レイヴェルの手が俺の身体のあちこちを這いまわりだした。

 最初はくすぐったく思えるが、それがだんだんとよくなってゾクゾクとした快感に変わってくる。

 もう辛抱たまらん!

 

 

 …………。

 

 

「もう、いつもこうやって誤魔化すんですもの……ずるいですわ」

「嫌だったか?」

「嫌じゃありませんけど……でも、条件があります!」

「条件?」

「どうしてもグレイフィアさまに……ということでしたら、サーゼクスさまよりも、ずっとずっと強くなってくださいまし」

「兄上よりもか」

 

 絡み合った体勢から、レイヴェルが俺の額の前に片手をかざし、親指で中指を押さえてたわめた。

 パチンッ! と額に奔る衝撃。

 

「このくらいの感覚で弾き飛ばせるのでしたら、何も問題ありませんから」

 

 デコピンで兄上を倒せって……レイヴェルの要求は厳しいなぁ。まぁ、それぐらいになれば確かにどうとでもなるのだろうけれど。

 素の魔力で兄上を超えて、その上で一兆倍くらいまで『倍加』できるようになれば……いけるかな? 

『倍加』40回か、なかなか遠いな。俺、今はまだ10回ぐらいしか出来てないし。歴代には30回ぐらい力を『倍加』させた者もいたらしいから、人間よりも遥かに頑丈な純血悪魔の身ならいけそうな気もしなくもないが。

 いやいや、でもでも、だ。

 

 現在俺は白龍皇がするというこちらの大きさを半々にし続け消してしまうという恐ろしい技に対抗するため、自分の大きさを倍々にする技を練習中だ。

 

 それで、だ。ドラゴン変化の術で、頭から尻尾の先までの全長が20メートルぐらいのドラゴンに変化して、そこからさらにサイズの『倍加』を繰り返して一兆倍くらいに巨大化したら……俺って兄上どころか冥界そのものをデコピンで粉々にできてしまうのでは……? まぁ、今は『倍加』十回で、だいたい全長20,000メートルくらいが限界だけどな。余裕を持たせるとその一回手前の九回、10,000メートルか。

 

 しっかし、まともに考えなくても、全長二十兆メートルのドラゴンってヤバいな。ちょっと今は詳しいところが思い出せないが、太陽に足を置いたら木星を掴めそうな気がしてくるぞ……もう一つ行って、土星まで手が届くかな? 

 さらに体重もそれに合わせて増加するんだから、途中で重力発生して太陽系の重力バランス崩れちゃいそう。

 北欧の神話に太陽呑み込む狼とかいたような覚えがあるし、ヴィシュヌ神は三歩で全世界を跨いで見せたとか聞くが、俺にもそれが出来るって可能性があるのか? 

 んーむ、神話生物ヤバイ。マジヤバイ! ドライグがヤバすぎる。そりゃ、その気になれば地球なんか何度でも滅ぼせるとか言い出すわけだよ。

 

「分かった。レイヴェル……俺ちょっと頑張って、太陽をこの手で掴めるくらいのデカイ男になる!」

「ええ! その意気ですわ!」

 

 なお、後で聞いたところではレイヴェルは俺のこの発言を比喩表現だと思っていたらしい。

 

 

 

 

 

 ―○●○―

 

 

 

 

「本日より、リヴラクス・グレモリーさまとその眷属の皆さまのスケジュール管理を任されました、グレイフィア・ルキフグスです。よろしくお願い致します」

 

 翌日のことだ。レイヴェルと二人、父上に呼ばれて赴いてみるとそこにはメイド業務に復帰した義姉上の姿もあった。

 それはいいのだが、何故か俺と俺の眷属のスケジュール管理を義姉上がするのだという。

 

「グレイフィアだが、しばらくはサーゼクスの魔王の職務の補佐も出来ず暇だと言うのでな。お前の補佐を頼むことにした」

 

 父上、それは監視とかそういう意味合いでしょうか? 

 いや、いいんですけどね。俺としてはその辺りは大方針を俺が決めて、レイヴェルと相談して各所との連絡をしてもらい、諸々の手続きや時間管理なんかはリュイに頼もうかと思っていたわけなんですけど。

 そこに一枚、義姉上をかませろ、と。

 あー、いや、そうか、グレモリー家(つまりは父上)からの指示などの取次に義姉上が入るってことか。俺には俺のやり方があるが、次期当主としては現当主である父上の決めた予定が優先だからな。

 義姉上もメイドの恰好をしていることだし、まぁメイド扱いの態度でいいのだろう。

 

「しかし、急な話ですが何かありましたか?」

 

 俺ってほとんどこの家にいるし、出かけるときは一応予定を告げてはいるのだが。昨日急に人間界に行ったりはしたけれど、特に他の用事があったわけでもないしなぁ。

 いや、行き先不明は普通にマズかったか。エダーギ殿の事件があったばかりだし。

 

「実は政府からお前に依頼が来そうだ。まだ正式決定ではないようだが、まずこの通りになりそうらしい」

 

 デスクに座る父上がそう言うと、その脇に立っていた義姉上が書類を手にこちらへとやって来た。

 その内容をサッと確認する。

 

「レイヴェルには見せても?」

「そのために呼んだ。二人でよく見ておきなさい。フェニックスの特性、例のあの治療法絡みだからな」

 

 書面をめくり大まかな内容を読み取ると──。

 

「これはまた……人数が多いですわね」

 

 数百年前に起きた大戦と、それによって初代の魔王達が亡くなったことで起きた内戦。この二つの戦で身体に欠損を抱え、今もそのまま生き続けている兵たちの治療。

 名前や所属、大まかな怪我の具合などが書かれているのだが、とにかく数が多い。こんなにいたのか。

 グレモリー領の軍にも結構な数が居たが、それは戦後の分も含めてであった。魔王領や他の貴族家も含めると、ここまでになるのか。 

 

「これは、年末は十番勝負を眺めて過ごしている暇がないかもしれないな」

 

 悪魔の社会では、既に年末の風物詩となった「ディハウザー・ベリアル十番勝負」。観ていないと話題についていけなくなること必至の試合なのだが、これを急いでやるとなると……うん、録画しておくしかないか。

 

「代金は……あら、政府からの依頼ですのに、前に決めた金額そのままなのですね」

 

 バアル家からの依頼の際に決めて、今後もそれでいこうとなったフェニックスの特性を『譲渡』で付与して行う治療のお値段。これはかなりの高額なのだが、政府からの依頼でこの人数相手でも値下げ要求が書かれていない。これ、合計するとトンデモナイ金額になるぞ……支払いどうするんだ?

 

「ああ、なるほど。そう来たか……」

 

 ちなみにフェニックス家の兵はグレモリー家と同様、無料である。他所の家の兵を一旦フェニックス家に移籍させてなどの抜け穴を使われる心配はそうそうないと思う。だって、レイヴェルが絡んでいる話だしな。それやったら、友好度ガタガタよ。

 レイヴェルとの話し合いでそう決まった取り分は、俺が五割で、レイヴェルは二割、レイヴェルが遠慮して受け取ってくれない残りの三割はドライグ貯金ということになった。『赤龍帝の籠手』の力で出来ていることなのだから、ドライグの取り分があってもいいよねということで。

 まぁ、今のところ封印されているドライグには、世界各地から高級品から安いものまで様々な酒でも取り寄せて籠手についている宝玉から流し込んでやるくらいしか金の使い道がないのだが。

 これ酒集めまくってたら、グレモリー家の次期当主は大酒飲みとか言われそうだな。実際はまだ、酒の味がよく分からんお子様な舌だと言うのに。

 

「国債……。この年齢で、国に対してこれほどの額の債権を持つ身になるとは思いませんでしたわ」

 

 少し前に黒歌のことでディオドラから金借りようかなんて考えていたのに、今度は国に金を貸し付けている感じになるのか。一年にも満たない期間で変わるものだ。

 

「父上、他家にも借金の形で良しとするのでしょうか?」

 

 これ、相手が国だからいいものの、他所の貴族家の依頼で頼まれると困るな。本家ならばまず大丈夫だろうが、分家筋などだと支払いが滞る者もいるかもしれないし、そのときにいちいち回収の手間などかけていられない。

 

「それは受けないことにしている。今回は政府からということで特別だ。国がその気になれば、貨幣を発行するだけで金額を揃えられるからな。レーティングゲームで怪我をして……といった者は、何処かで借りて用意してもらうことになるだろう」

 

 やはり、ニコニコ現金払いが最強。まぁ、政府が潰れたり、貨幣の大量発行でインフレ起きても困るからこれは仕方がないか。経済の詳しいところは知らんのだが。というか、前世で経済学者がいろいろと言っていたが、その通りになった試しがあまりなかったような気もするので、俺程度が考えてもどうしようもないな。

 国破れたら、山賊にでもなればいい。ふはは、足りないものは有るところから略奪するだけのことよ。

 

「それで、このことで忙しくなるので、俺と眷属のスケジュール管理にグレイフィアが付くことになった、と」

「その通りだ。動く金額も大きい。お前にはまだ、ここまでの額はなぁ……」

 

 ああ、はい。心配ありがとうございます父上。

 まぁ、使い道の予定はあるのでそのうち相談してみよう。あぶく銭のようなものだしな、下級悪魔リーグとかにつぎ込んでも良かろうよ。この分だと、失敗したところでそう痛くもなくなりそうなことだし。

 何にしても余裕があるってのはいいことだ。一度に金が手元に来ないのも、お小遣いが増えたようなものと思えばよろしい。ちょっとは利息も付くようだしな。

 

 と、そんなこんなで話を終えて、ふと一人になったタイミングで俺の耳元に通信魔方陣が展開された。これは義姉上からか……。

 

『オフの予定、合わせられるから。……また行きましょうね』

 

 ふむ、義姉上はスタンプ集めの続きをご所望のようだ。

 そりゃあ、俺と眷属のスケジュールを管理してるマネージャーみたいな立場なら、そこに自分のオフ日も合わせられるか。

 うん、これはまたお出かけのことを考えておかないと。

 

 




グレイフィア・ルキフグス:
原作でもリアスとその眷属の予定を管理しているらしいので、そのように。義弟とお休みの日を合わせて温泉旅行だなんて……

スタンプ帖:たくさん集めるとイイコトがあるかも……?

巨大化ドラゴン:
サーゼクスの必殺技がスパロボのアストラナガンのインフィニティ・シリンダーが元ネタとかあったので、オリ主くんはガンエデンにしておいた。キャッチ・ザ・サンだか、フォロー・ザ・サンだったか。あとはYAIBAのヤマタノオロチとか
白龍皇が他者のサイズ半々にしていって存在消去とかするのなら、赤龍帝は自分のサイズを倍々にしていかないと……なので、ヴァーリのせいで地球の寿命がマッハ。
 やはり男の必殺技(もの)はデカくて、硬くて、(オーラ放出とかでもないので)持続力があると強いはず。

国債:
歴史は結構古いらしいので、悪魔でもあるのでしょう。貨幣単位とかよく分からなかったですけど。


数百年前の大戦:
(捏造)設定のために一応時期を考えました。
ジオティクスの『僧侶』アグリッパの生きた時代には、『悪魔の駒』が出回っているので既に悪魔の内戦まで終結済みのはず。
作中でも天界関係者から、前世は聖女扱いされているジャンヌは、(前世では)本当に聖女していたはず。それなのに天国に行けずに転生してしまっている=神は彼女を見ていなかった=聖書の神死亡済みかつ、ミカエルたちがシステムを把握して運用できていない時期だろうと想定。
なので、たぶん、ジャンヌが活躍した時期よりも少し前(悪魔基準)辺りで大戦があったのだろうと。
悪魔が内戦して、天使が立て直しに苦労していた頃、堕天使総督アザゼルは日本で織田家の祖先な戦国大名にブラジャーの試作品を渡していたそうですが……。堕天使が自由過ぎる件。


悪魔の年齢問題:気になって読み返したけれどよく分からなかったので、詳しい人いませんか? という件。

ゼクラム・バアルはリゼヴィムのことを「若い」とか「坊ちゃん」と言っていて年上のようなのですが、七十二柱は初代ルシファーがリリスに実験や術式を施して生まれて来たともある。で、七十二柱誕生後のリリスは肉塊状態になってたとか……。

リゼヴィムは、人型を保っていた頃のリリスと初代ルシファーが普通に性交して生まれて来たっぽい。
その後にリリスは初代ルシファーが七十二柱創り出して、肉塊に変化してしまう。

ゼクラムの方が年下っぽいような気も……? よく分からない。

リゼヴィムは数千年以上生きている。
リゼヴィムの能力からして、聖書の神はリゼヴィムの誕生以前から神器を造っている。
ゼクラムは約一万歳。


うーん? たぶん、この辺りの設定を適当に捏造しますのでよろしく。


あと、うっかりスラッシュドッグ本編の発生時期を一年ほど間違えていました。
もう修正が難しいので、ここでのスラッシュドッグ本編は、トビーが高校三年生になってからになりそうです。
幼馴染の女の子が、「健気な心根を堕とし込むのが好き」な悪役とか、「ここにいる者は皆イカレテいるに決まっている」なおじさんに洗脳、開発、調整されてしまう期間が長くなってしまうけど許して。
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