公爵家次期当主好色物語 作:ルペッタ好き
社交シーズンというのは、まったくもって面倒なものだ。
パーティー会場に顔を出せば、話したくもない相手とだって話さなくてはならないことがある。俺、そういうの苦手なんだよな。
だからこれまでは出来る限り避けて来たのだが、
『あなたはもう婚約者のいる身、嫌だからと避けてばかりではレイヴェルさんに恥をかかせることになりますよ』
と母上からお叱りを受けてはしかたがない。
俺自身は付き合いのない相手からどう思われようとも知ったことではないが、レイヴェルに恥をかかせるわけにはいかんしな。
レイヴェルはまだ学生だ。俺と違ってちゃんと首都リリスの名門学校に通っている。
そこで、「やーい、やーいお前の婚約者、せきりゅーてー」と後ろ指を刺されるようなことになっては申し訳なさ過ぎて俺の胃が痛んでしまう。
いや、実際はそんなことにはならないだろうけれど。元七十二柱フェニックス本家の姫君って学校内での立場高いから。
首都リリスの名門学校の同学年で、レイヴェルより格上の生徒ってグラシャラボラス本家のイリューカくらいのはずだ。
悪魔の子供はなかなか生まれない。ヤれば出来るが、毎日ヤって最初の子供まで数百年かかったなんてザラだ。
それでいて成長速度は人間と大差ない。外見、肉体的な成熟の速さは人間とほぼ同じ。魔力の成長も伸びが大きいのは60歳手前辺りまでらしい。
人間で言うところの大学生までの学習過程の者を子供と分類するとして、その子供が悪魔全体に占めるパーセンテージは極わずか。
戦前の方が圧倒的に長い期間があり、かつ悪魔の全体数も多かったので、生まれてくる数も多かった。戦時中にかなり減ったとはいえ、まだまだ戦前生まれが多い。
そして戦後の数百年に生まれた者の中でも、子供扱いは数百分の二十程度の割合となるので……。まぁ、とてもとても少ない。
同い年に数少ない元七十二柱本家の子供がいることの方が稀だ。ライザー義兄上から同世代の話って聞かないしな。
俺の生まれ年は、名門六家の本家だけで俺にソーナ、ゼファードルと多いが……これは世紀末だの、人間たちの間で広まっていた大予言だの、あとは地球の地軸の傾きからくる黄道十二星座の移り変わりの影響ではないかなどと言われている。あれだ、アクアリアンエイジとかそういうヤツ。
たまにお年寄りが「今世、今世」って言ってるのはコレ、水瓶座の時代って意味。
前の魚座の時代は過ぎ去って、
最初、今世紀って意味かと思ってたじゃないか、間違えてて恥ずかしい思いをした。万の年月を生きる悪魔その他の超常存在からしたら、人間界の一世紀=100年なんて短いもので、だいたい二千年周期のそっちの方がメインになるってさぁ……俺も五千年くらい生きたらそんな感覚になるのかね?
まぁ、なんにせよサイラオーグやディオドラ、シーグヴァイラは少し年上だが、それだけのことで名門本家に多くの子供が生まれたってことを考えると、悪魔という種が人間たちのオカルトから受ける影響ってのはすごいものだ。今生の俺は前世紀最後の年の4月生まれだしな。前世には、世紀末って何かあるのかと思っていたものだ。ヒャッハー的な。
悪魔は
と、いろいろあって、悪魔の名門学校といえども、貴族本家の者は稀なのである。それがさらに首都リリスとアスタロト領とで二つもあるのだからなおさらだ。少ない数が更に半分になってしまう。
そこに本家よりは数が多い分家出身の子供も通い、あとは平民の中での富裕層が金を積んで通ってくる。
名門学校に子供を通わせる親は、そこで出来る人脈を重視ししているのでどっちの学校に通わせようかって悩むわけだ。
俺が幼稚舎時代にちょっとだけアスタロト領の学校に通うことになったのは……はて、何故だったか。言われて「あ、そうなんだ?」くらいでアスタロト領の方に通うことになったような? うろ覚えである。
あの頃のソーナは俺にくっついて回っていたので、ソーナの学校は「一緒のとこにいくー!」みたいな感じで決まったことは覚えているけれど。
まぁ、何にしてもだ。ごく少数の本家貴族の子女、それよりは多いがそれでもまだ少なめの分家貴族の子女、それとそこにすり寄ってくる多くの金持ち平民。
この名門学校の生徒の割合は、そのままほとんど貴族家の社交パーティーと同じだ。いやー、平民多いわ。
自派閥の勢いも見せねばならないのが主催側の辛いところ。社交パーティーでヒトが少ないとみすぼらしいと思われてしまう。
ということで、下手な貴族家よりも金持ってることが多々ある成功した平民達もこういった席に呼ぶわけだ。
そんな有象無象の連中の前で、余興の見世物にならねばならんとは、まったくもって嫌になる。
ま、成功している平民ってのは有能な連中なワケなので、そこまで嫌いでもないが。使えて、ついでにこっちに利益を持ってくるなら有用ってことだ。
精々強さアピールして、ゴマすりを頑張らせてやろうじゃないか。
と、グレモリー家主催のパーティー会場の一角で、出番待ち中にぼんやり頭を巡らせている紅髪イケメンつよつよ悪魔。
それがこの俺、リヴラクス・グレモリー。これから一応戦闘だというのに、最高級品な貴族服のままである。
まぁ、相手が相手だしな。問題ないだろう。ことの経緯からして、余裕の楽勝ムーブを決めることが求められているワケだし。
年末に公開放送でぶちかました俺だが、その後にグレモリー家がまとめている現ルシファー派閥のメンバーや、そこと関係の深い富裕層などから声が上がったらしい。
『おたくの息子さん、強い強いと聞くけれど、実際のところどうなの? あと例の治療も現場で見てみたい』
こんな感じのが父上の所に届いてきたそうで、『そんなら、新年の景気づけに見せたらぁ!』といったことになってしまったのだ。
双方、実際はこんな言い方はしていないのだろうが意味はそう違わないはずだ。
デカイこと言うからには、デカイところを見せねばならぬ。声だけ大きくて何も出来ないでは、木っ端平民共と同じになってしまうのでな。
ということで、派閥メンバーの集まったところでグレモリー家次期当主と、悪魔社会でそこそこ名の知られた暴れん坊とが戦うことになったのである。
パーティー会場から見える形で整えられた、闘技場にて。
対戦相手はボーヴァ・タンニーン。名字から分かる通り、タンニーン殿の息子である。これがまた手の付けられない暴れ者で、あっちこっちで喧嘩しまくって困っているのだとか。
ついた呼び名が『破壊のボーヴァ』。大層なものである。名前だけだが。
ぶっちゃけた話。もうこれは勝負でも決闘でもない。勝ちが決まった余興だ。
ボーヴァはパワーだけなら上級悪魔クラスと言われているらしい。ボーヴァよりもずっと強い父親のタンニーン殿は、パワーだけなら魔王クラスと言われている。
で、この俺はパワーだけならセラフォルーさんに勝っている。超越者クラス。
父上は俺の力を知らしめるのに適当な相手を欲していて、タンニーン殿は素行の悪い息子に灸を据えようとしている。両者の思惑が一致しただけの見世物なのだ。
『命さえ無事なら、あとはどうしてくれても構わん』
タンニーン殿もこんな風に言ってたしな。スパルタ教育なのかね。いや、ドラゴン的には普通なのか?
『それではこれより──』
おっと、そろそろ出番か。
観客を守るための防護フィールドに囲まれた闘技場。そこに足を踏み入れた俺は、目の前にデンと居座る10メートル級のドラゴン『ボーヴァ・タンニーン』に見下すような視線を向けてから、観客席を見渡した。
さて、我が婚約者殿はどこかなっと。
―○●○―
闘技場内部に怒気を孕んだオーラが立ち込めた。悪魔に転生した竜王『
一部の観客──主に魔力の少ない平民──たちからどよめきが上がる。
が、観客席から闘技場を見下ろすレイヴェルには、ボーヴァのオーラは小さいものにしか思えなかった。
体長10メートルのドラゴン。元龍王の息子であり、転生悪魔の子として悪魔としての性質も持ち合わせている。分厚く頑丈な鱗とその内側にみっしりと詰まった筋肉。高温の火を噴き、悪魔と龍のオーラを操る。なるほど、すごそうだ。
(でも、私の『王』さまの方がずっと大きいですわ)
それが正直な感想だった。
魔王クラスの一撃でなければ、フェニックスは倒れない。そしてフェニックスの炎は龍の鱗をも焼き焦がす。自分でも、ある程度成長すればどうにかなりそう。
比較対象が超越者クラスの赤龍帝となれば、それなりに有名な『破壊のボーヴァ』もそんな風に思えてしまうのだ。
婚約者の父母であるグレモリー卿夫妻、自身の両親のフェニックス卿夫妻。そして対戦相手であるボーヴァの父・タンニーンと共に、レイヴェルは開始の合図を待った。
レイヴェルは婚約者が敗北する心配は全くしていない。ただ、やり過ぎて会場ごと消し飛ばしてしまわないかどうか、そこは少し、ちょっと、そこそこに心配していた。
試合開始の合図とともに、まず動いたのはボーヴァ。大きく吸い込んだ息に火を灯し、前方広範囲を焼き払う。
ドラゴンブレスを吹きかけられたレイヴェルの『王』は、それに頓着せずゆっくりと会場内を見渡しているまま。
炎が吹き抜けた後には、無傷の『王』の姿があった。
身に着けた衣装に焦げ目一つない。試合開始時から変化しているところと言えば、彼の身体の周囲を覆う『滅び』のオーラだけだろう。
『滅び』の力、消滅の魔力は戦闘において無類の強さを発揮する。攻めては敵に防御を許さず滅ぼし尽くし、守ればパワーに劣る攻撃を消し去ってしまう。
そこに相性も物理的な強固さも関係ない。込められた『力』で上回らなければ、防ぐも抜くも困難だ。特にドラゴンの多くがそうであるような、肉体の頑強さに頼った正面からの力押しには恐ろしく有効。
炎の息などなかったかのような表情で、軽く指を曲げてボーヴァを挑発するリヴラクス・グレモリー。
それに怒りの表情を浮かべたボーヴァの次なる一手は、オーラによる砲撃だった。パワーだけならば上級悪魔クラス、その看板に偽りのない威力の砲撃が2メートルもない人型の悪魔に直撃する。
しかし、それもやはり滅びのオーラの前に消え去った。『破壊のボーヴァ』の攻撃は、グレモリーの次期当主に一切の痛痒を与えていない。
観客席から見てそれがハッキリと分かる。
レイヴェルは観客たちの表情を観察し、大いに満足した。ポーカーフェイスは貴族の嗜みだが、それが崩れてしまっている者がそれなりの割合で存在していた。
「はぁ……」
これまで無言だったリヴラクスのため息。集音マイクが拾ったそれが妙に大きく響いた。
それはまるで、つまらないと告げているかのようで──直後、ボーヴァが怒号を上げる。
咆哮する龍の疾走。10メートルの巨体の全体重、全開駆動する四肢が大地を蹴る。ボーヴァの右前足に籠められた、全身全霊のオーラ。
ドラゴンの戦いの基本は、肉弾戦とオーラとブレス。消滅魔力を纏う者を殴りつける危険も顧みず、怒り狂うボーヴァは最大の出力でオーラを拳に込めて振り抜いた。
大振りの一撃。避けようと思えば簡単なそれを、リヴラクスは躱そうともしなかった。
ボーヴァの迫力に呆然としているのではない。紅髪の悪魔の顔に浮かんでいるのは余裕の笑みですらない。彼が平民を見下すときのそれと同じものだ。興味がない。
「ガァァァァッッー!!!」
直撃した。ボーヴァの全力がリヴラクスの身体の芯を捉え──そして腕が消し飛んだ。
右腕、あるいは右前足と呼ぶべきか、その半ばまでを消滅させられた元龍王の三男が悲鳴を上げる。太い断面から噴き出す血潮が大地を染めていく。
「まぁ、こんなものでいいか」
降り注ぐ血の全てを消滅させ、服に染み一つ作らせず、『紫紅の龍帝』がここでようやく神をも滅ぼす具現を顕現させた。
赤い籠手、『赤龍帝の籠手』の人差し指。その一本だけが立てられる。鋭利なその爪先が長々と伸びた。20メートル程か。
龍帝の指が曲げられた。腕も手首も使わない、指だけの動きで長大な刃物が振り下ろされる。
プリンを掬うスプーンのように、滅びの魔力の籠った爪が、ボーヴァの鱗、筋肉、血管、骨を滑らかに通過していく。龍帝の爪は、勢いのまま闘技場の地面までもを音もなく斬り裂いた。
カチン、と金属音がした。伸長していた『赤龍帝の籠手』の爪が元の長さに戻ったのだ。
その音が合図だったかのように、ボーヴァの巨体が切断面からズレ始める。
レイヴェルの耳に、ずんと巨体の沈み込む音が聞こえたような気がした。観客席からは声もない。
「レイヴェル!!」
名前を呼ばれた。自らの『王』の声だ。その声と共に、観客席と闘技場を隔てていた壁が消えてなくなる。
禁手化。素早く静かに為された『赤龍帝の籠手』のバランスブレイク。
「はい!」
レイヴェルの背に炎の翼が現れた。貴族服の上に魔王の装束を身に着けた主の下へと、不死鳥は羽ばたき、飛翔する。
炎の翼が巻き起こす風が、魔王の装束を揺らめかせる。火の粉が舞い散り、『倍加』された紫紅の魔力が会場に集った悪魔全てのそれを塗りつぶし圧倒していく。
「力を寄こせ」
喜びに背筋を震わせながら、レイヴェルは自らの特性を『王』に捧げた。譲り渡した。
『我が名はレギオン、我々は、大勢であるがゆえに』
聖書に記された、一人の男でありながら無数の悪霊の群れでもある者の名乗りから名付けられたこの禁手は、『
一にして多。多にして一。眷属全体で『力』を『譲渡』し合い、『倍加』によって高め、主従一体の
性交の恍惚とはまた異なる、魂が連結し合ってどこまでも昂っていく歓喜。
レイヴェルはいつも、自身が『王』の一部となったこの感覚に酔いしれそうになってしまう。湧き上がる陶酔感を抑えつけ、表情を保つのに苦労してしまう。
『Transfer』
特性の『譲渡』を受けたボーヴァの身体から炎が噴きあがった。焼き尽くすそれではなく、不死鳥の再生の炎だ。
真っ二つに斬り裂かれたドラゴンの身体が燃え上がり接合していく。消滅した前足が、炎の中で蘇る。
瀕死。強靭なドラゴンの肉体であっても、そう長くはもたないだろう致命の傷は極わずかな時間で消えて無くなった。
「こんな感じで問題なさそうか?」
倒れ伏し、地に頭を付けて呆然と見上げるボーヴァから視線を切って、『王』が『女王』の耳元で自信なさそうに聞いてくる。
「ええ、十分に御力を示せたと思いますわ」
レイヴェルがそう返すと、彼は一瞬だけ安心したような表情を浮かべた。
「そうか、ならもういいな」
婚約者にして『王』。リヴラクスの両腕がレイヴェルの背と膝裏に回される。抱き上げられ、観客席へと運ばれていく。
(ど、どうしましょう、これ……ううん)
龍と悪魔と不死鳥と堕天使。キメラのように様々な翼を出した婚約者に運ばれながら、レイヴェルは太ももをよじり合わせた。
正直なところ、パーティー会場よりも寝室に向かって欲しい気分になってしまっていたのだ。
―○●○―
さて、余興が終わった後はダンスのお時間である。
ダンスは別に嫌いではない。脳みそと身体のスペックのお陰か、割とスルスル覚えられた。ダンスの家庭教師が美人さんだったのも大きい。
最初にダンスの練習があると聞かされた時は、なんとなくこうキッツイ眼鏡のおばさんがやって来そうなイメージだったのだ。だが、そんな予想に反してやって来たのは見た目同い年ぐらいの美少女であった。というか、悪魔は見た目年齢変えられるので、生徒に合わせて変えてくれていた。
身長合わせた方が教えやすいってことらしい。なので、俺のダンスレッスンは5歳ぐらいの見た目の美少女先生から習い始めたわけだ。うん、楽しかった。
で、まぁ、レイヴェルとの婚約交渉も終え、メイドも堪能しまくった後にもダンスレッスンは続いているわけなのだが……。
ダンスって、ほら、こう身体がくっついたりするわけで。勃ってしまったりするわけだ。
そうしたら先生が「あら?」って婀娜っぽい笑みを浮かべてきまして……ベッドの上でのダンスに発展してしまったりもするわけだ。
あの先生、グレモリー関係の男子連中はだいたいお世話になってきたそうだけど、普通に愉しんでいる様子だったから……。
冥界にダンス文化が入って来た頃に真っ先に覚えて、この職に就いたとか言ってたし……。
案外、俺にはそっちの穴の兄弟が多いのかもしれない。
まぁ、いいか。別に。気持ち良かったからな。
ダンスもあるので、本日のレイヴェルの服装はドレスである。背中がガバッと出てるやつ。悪魔ダンスって翼を出したりする型もあるから。
フェニックスの翼は他の悪魔と違うので、これがよく目立つのだ。火の粉も舞い散るのでキラッキラ。
グレモリーとフェニックスの身内だけのパーティーのときは、紅に金鳳凰の着物で通していたのだが、あれはあれで良かった。だが、これもこれで良い。
ちなみにタンニーン殿は、放心状態の息子を掴んで飛び去って行った。
『心臓が止まるかと思ったぞ』
などと言われてしまったが、一応ボーヴァの心臓は避けたつもりだ。メスドラゴンならともかく、オスドラゴンとか知らんし。いや、まだメスドラゴンの美醜とかよく分からんけど。
ドラゴンハーレムの主たるタンニーン殿にでも習えばいいのかね?
あのボーヴァくんは、俺がタンニーン殿に「娘さんを乗り物にしたいからおくれ」と言ったことに腹を立てていたそうなので、今回のことで意見が変わってくれたらよいのだが。バッサリやったからな。たぶん、変わる変わる。たぶん。
まぁ、オスドラゴンなんぞどうでもいいとして。
ダンスといえば、こう途中で相手が変わって行ったりするものだと思っていたのだが、誰も寄り付いてこない。
熱い視線を感じる気はするのに、向こうから寄ってきたりはしないのだ。この場合、男から行くものなのかもしれないが、レイヴェルがピッタリくっついている状況でそれはどうにも憚られてしまう。
ということで、もっぱらレイヴェルと踊り、休憩を挟んでまた踊るといった具合になっている。
休憩をしていると、話しかけてくる連中が出てくる。主に欲の皮の突っ張ったオッサンである。残念。たまにご婦人もいるが。
ただまぁ、欲に塗れているのは悪くない。儲け話が多いしな。変に慈善団体とかないのが悪魔の良いところだ。
こっちも儲かって、あっちも儲かる。それがいい。実に良い。
といっても、主にそういった連中の話し相手をしてくれているのはレイヴェルである。俺、こういうの苦手なんだよね。
それでいて、レイヴェルは俺がただ座っているだけの置物にならないよう答えやすい話題を狙ってこっちに振ってくれる。
おかげで以前ちょっと社交に顔出したときより、ずっと快適だ。好きにはなれそうにはないが、顔を出すくらいなら……まぁ、いいかと思えてくる。
うちの嫁さんは本当に二つ年下なのだろうか……?
これが純粋な貴族教育の賜物なのか……?
もしかして、俺って下手に前世の記憶なんぞ引き継いでいなかった方がハイスペック貴公子になれたのではないだろうか……?
嘘、俺の前世って何の役にも立っていない……?
まぁ、いいか。今さらどうこうなることではない。
前世の記憶持ち転生者は、大概は偉業を成して歴史に名を記した者だとか、伝説的な英雄などらしい。だが、俺の前世にはそんなものは一欠けらもなかった。
たぶん、前々世辺りで何かデッカイことでもしたのだろう。神滅具持ちで超越者クラスな魔力持ちで、現在のルシファーの弟に生まれるような、罪深い偉業かなにかを。
思い出せないから、何の役にも立っていないが。
「そろそろ次に行こうか」
考えても仕方がないので、次に行こう、次。
話も丁度切れ目のようだしな。とりあえず、今は踊っておくタイムだ。
「ええ、それでは」
俺とレイヴェルとでは身長差が結構あるので、なかなか綺麗には踊れない。だが、まぁそれも悪くはないと思う。
成熟したら俺の方が年齢戻して背を低くすればいい。そう考えると、それが出来ない今という時間はなかなか貴重なものだ。
といった感想を伝えたところ、レイヴェルも嬉しそうに頷いてくれたので良い良い。
俺はこの身長差気に入っているしな。出来ればこのままを維持して背が伸びて行って欲しいものだ。ヤることヤるときに、レイヴェルとスルときのお気に入り体位である対面座位がはかどる。
膝の上に乗っけてズッポリしたときの顔の位置というか、高さ関係が丁度いいのだ。俺的に。
「リアスさま?」
「ああ、例の話をしないといけないなと思ってな」
くるりくるりと踊りながら、この後、現ルシファー派の貴族の面々にも『王の駒』とかリュイのことを話さないといけないことを思いだしていたことにした。
いぶかし気に見上げてくるレイヴェルに、えっちなこと考えてましたとは言いづらい。
ちょっと勃ってるけど、まぁ許せよ婚約者さん。俺はこうやってくっついていると、すぐに発情してしまうのだ。
「グレモリーとフェニックスは終わったが、ここまでは身内だ」
「ええ、ここからが難しくなりますわね」
と、そんな話をしていたタイミングで、こちらに近づいてくる来る家臣の姿があった。
「若さま、実は――」
知らせを聞いて、俺は少し驚いた。
グレモリー家が主催するパーティー会場に、下級種のドラゴンに乗ったディオドラとラティアが向かっていると知らせがあったらしい。
最近は転移魔方陣から自動車を使うことも多いが、各貴族家毎の伝統的な乗騎を用いる方が訪問先に礼を示していることになる。そのため、ドラゴンに乗っていることは問題ない。タイミング的にさっきの余興を思い出してしまうけれども。
少し驚いたのは、ラティアが来ていることだ。
本日ディオドラが顔を出すことは聞いていたが、パートナーはてっきり元シスターの『騎士』を連れてくるものかと思っていたのだが……。
俺と同じで社交の場は好きじゃなかったはずなんだけどな。
オリ主は前々世で死亡後に、レテ(忘却)の川の水を飲んでいるって設定
ギリシアというか、ローマ時代