公爵家次期当主好色物語 作:ルペッタ好き
『リーくんのおバカ! おたんこなす! いじめっ子!』
「いきなりなんですか、レヴィアタンさま……」
シトリー家のパーティー会場から帰って来たら、魔王さまから通信が飛んできた。
その第一声がこれである。立場的にはあちらが圧倒的に上だけど、いくらなんでも失礼過ぎない?
いや、セラフォルーさんだからいいけどさ。許せる。
『おねーちゃん! おねーちゃんなんだからね!』
「はいはい、おねーちゃん、おねーちゃん」
『「はい」は一回!』
「はーい」
『よろしい!』
相変わらずテンションが高くて安心する。なにやら怒っているようだが、割といつものことだ。
おねーちゃん呼びを強要してくるのはどうかと思うが、このパターンのときは魔王としてのお仕事モードではない。気分的には近所のおもしろカワイイ系おねえさんである。
まぁ、本性はなかなか物騒なヒトなのだが。それはそれで、悪魔で魔王だしね。
『それで、どうしていっつもソーナちゃんにイジワルするの!?」
「いや、最近は特にした覚えがないけど?」
ソーナが朱乃みたいな性癖なら、そりゃ毎日イジメまくってあげるけれど、今のところそんな兆候は見られない。あの個性は朱乃だけでいいのだ。
いや、うーん……「おにいちゃん……やめて、もうイジメないで」とか言いながら濡らしちゃうソーナとかそそるけどさ。まずは魔王にならねば、そこには行きつけないという。
ソーナの攻略難度高すぎ問題。
二人っきりの場面を作るのはそう難しくないので、そこで強引に迫ってグイグイグイグイと押しまくり、そのまま押し切ってググイっとぶち込むまではいけると思うのだ。でもその後が大変面倒なことになるので手が出せないっていう。
もう攫っちゃおうかな。俺ってときどきお姫さまを攫ってしまいたい衝動が出てくるような気がするんだが、これがドラゴンオーラの代償なのだろうか? まぁ、男のロマンのひとつでもあるか。
今の立場を自分から投げ捨てるつもりはないので、やらないけど。
でも、面倒なことしてないで、力づくで気に入った女を奪って集めて「グワハハハッ! 女どもを取り返したかったら、この『紫紅の龍帝』に挑んでくるがいい! もっとも、そのころには女どもは俺の虜になっているだろうがなぁ!」とかそんなドラゴンムーブをやってみたい気がしなくもない。
『じゃあ、なんであんなこと言ったの!?』
「あんなことって?」
セラフォルーさんが「おねーちゃん、おねーちゃん」言ってくるときは、親しい感じで話した方がいい感じだ。俺としても話しやすくて助かる。
『「お前には、『兵士』の駒がお似合いだ」とかなんとか言ったって聞いたんだから!』
「似てない」
セラフォルーさんの声で、俺の声真似は厳しいと思う。俺の声は父上によく似ているらしいし。自分で話していてもよく分からなかったが、録音して聞いてみたらビックリするくらい似ていた。
ちなみに、えっちの時に耳元で囁かれるとキュンキュン来ちゃうーとメイドたちからは大好評である。俺が父親似で良かったなと思うところの一つだ。血の繋がりに感謝感謝。
『昔はあんなに可愛い声だったのに、おじさまそっくりになっちゃって……。うー、リーくんのくせに生意気なんだから!』
「顔は母上に似ているってよく言われるけど?」
今ではこんな俺だが、ちっちゃい頃は女装の似合いそうなそりゃあ可愛いらしいお子さまだったのだ。ミリキャスもそんな感じがあるけど……家系かね。
だいたい、ライザー義兄上と話すようになった切っ掛けも……別に女装してたわけでもないのにボーイッシュな娘だと勘違いして声かけて来て「騙された!」はないと思う。俺は訴えてもいい。
あのヒト、眷属見れば分かるけど、ちっこい娘も守備範囲なんだよなぁ。『女王』は熟した感じだけど……なんか、俺の守備範囲って義兄上から影響受けまくってないか。
『そうそう、おばさまに……って、話を逸らさないの! あとヘンなこと考えてたでしょ?』
「ばれたか」
『おねーちゃんは、リーくんのことなんてお見通しなんだから! バレバレなんだからね☆』
このおねーちゃん、魔法少女の格好でパンチラしてくれるだけのヒトではない。ちいさいころの俺に、あんなことや、こんなことをしたヒトだったりする。
赤ちゃんちんちん見られてるくらいに付き合いが長いと困っちゃうね。
「で、えーっと、たしかに『兵士』が似合ってるって言ったけど?」
『だから、どうしてソーナちゃんが『兵士』なの!? そこは、こう……『ソーナ、俺の女王になれ』みたいなことをね』
「もう俺の『女王』決まってるから。というか、ソーナはシトリーの次期当主だから。あと、やっぱり似てない。もうやめたらソレ?」
『リーくんのおたんこなす! わからずや! にぶちん! 女ったらし! そんなにレイヴェルちゃんがいいの!』
「うん」
『うぬぐぐぐ……!』
この感じだと、ソーナのヤツ『あのこと』は話していないようだ。
いやいや言っているようで、アイツお姉ちゃん大好きっ子だからなぁ。全部話してしまったのかと思って微妙に焦ってしまった。
まぁ、セラフォルーさんなら大丈夫そうだけど。シトリーのおじさんにバレると、俺がヤバイ気がするからな。
「いや、ほら、ソーナはいつもレーティングゲームの学校がーって言ってるから。それで、仮にソーナが誰かの眷属になるとしたらって話になったときに、それなら『兵士』が向いているよなと」
『理解はできるけど、一応説明してくれる?』
「下級悪魔がレーティングゲームなんて、現状では無理だろうけど、それでも奇特な上級悪魔に拾われることがあるかもってことで考えてみると……。まぁ、『兵士』しかないでしょ?」
転生悪魔のスタート地点でもある階級としての下級悪魔と、純粋な生まれながらの下級悪魔は違う。
ほとんどの場合において、転生悪魔は純粋な下級悪魔である平民よりも強いのだ。わざわざ弱い者に駒を使うとしたら、美少女コレクションとかそんな意味合いしかない。
だから、転生悪魔ならば下級悪魔の『女王』とか、『戦車』もいる。俺の眷属である、『戦車』朱乃も変異『僧侶』黒歌も下級悪魔だ。
でも、平民にはそこまでの価値も強さもない。弱い平民に駒価値=容量の大きい駒を使うのはもったいない。
サイラオーグの『戦車』リキーゴみたいな突然変異でもない限り、平民なんぞ通常の『兵士』1駒で十分だ。なにせ純血の上級悪魔、貴族ですら駒価値「3」の『騎士』や『僧侶』でほぼいけるらしいからな。
大戦前から生きていて成熟を終えていたエダーギ・ナベリウス殿は、まだ幼少期の黒歌を眷属にするのに『僧侶』を2駒も使った。種族的な潜在能力で言えば、猫魈は純血の貴族悪魔の倍くらいのものがあったってことだ。たしか、レイヴェルが白音を測ってみたときは、『戦車』1駒でいけるかどうか、『僧侶』や『騎士』だと2駒必要になりそうって言ってたし。
バラキエルと日本の退魔名門五大宗家の一つである姫島家の巫女との間に生まれた朱乃の秘めている才能は、その両親を考えれば相当なものなのは確実。
「生粋の下級悪魔向けのレーティングゲームの学校を作ったとして、そこの卒業生が受け取る駒はほぼ『兵士』。おねえちゃんも分かってるよね。そんなこと?」
黒歌や朱乃のような強力な者を少ない駒数で眷属に迎えられる容量の大きい駒。それらを平民に使う物好きな『王』などまずいない……と思う。
駒の数には限りがあるので、平民を『女王』や『戦車』なんかにした日にはレーティングゲームで勝つとかまず無理である。戦術だの戦略だので覆せる戦力差ってものには限度があるのだ。
俺がソーナとチェスをして勝てたのは、随分前のことだ。今はソーナの方が遥かにチェスの腕前は上になっている。普通にやったら百回やって百回負ける。
でも、さすがに俺が全駒持っていて、ソーナは『兵士』と『王』のみなんてハンデ戦をしたら勝てる。というか、それで負けたりしたらバカ過ぎて死にたくなりそうだ。
『……そうでしょうね』
テンション低めというか、抑えた感じの声を出されるとセラフォルーさんは結構怖い。「魔法少女よ☆」とかやってるけど、なんだかんだでこのヒトも魔王なのだ。
「なら、『兵士』養成学校の校長先生になりたいソーナには、やっぱり『兵士』がお似合いだよ」
でもまぁ、俺って正面からのぶつかり合いならセラフォルーさんにも勝てますし? ということで言いたいことは言うのである。
本気の殺し技使われたらヤバイけど……。俺の脳みそが干物になる。
魔法少女番組やレーティングゲームでウケの良い見栄えのする性質じゃないんだよな、シトリーの魔力特性の本当のところって。
一般に知られている『水の術』が得意ってのは事実だが、それだけだと『海』を制する旧魔王レヴィアタンの血筋の下位互換でしかない。規模が違う。
シトリーの怖いところは、『水』をもっと細かくえげつなく使えるところだ。
悪魔は『夢幻』の存在、超常にして異形ではあるが、その身体構成は人間に近いところがある。
まぁ、つまり身体の6割くらいは『水』ってことだ……。体内の『水』を支配されてしまったら、あとはもうシトリーの術者のなすがまま。初代シトリーの伝承にあるような、
シトリー家が医療に重点を置いているのも、そういうところから来ている気がする。医者やってれば、悪魔やその他様々な種族の身体構造を把握できるし……怖いね、怖い怖い。
ま、ソーナやシトリー卿くらいの魔力量だと、俺の魔力を抜いて徹せないだろうから平気だけどな。
『リーくんってさ、ソーナちゃんに甘すぎ』
「さっきと言ってること違うよね?」
『同じだよ。うちはソーナちゃんに自分で学んで欲しいの。だから、やりたいことはやらせるし、すごいね、すごいねーって誉めるの。そうするとソーナちゃんは頑張ってくれるでしょ? なのに、リーくんはすぐにあれがダメ、これがダメ、こうした方がいい、ああした方が良いって言っちゃうでしょ?』
「え? シトリー家ってそういう教育方針だったの?」
『そうだよ? うちは誉めて伸ばして、いろいろやらせて、問題や困難にぶつかったりしたら、そこから自分で考えてもらうつもりだから』
「じゃあ、現行のレーティングゲームの制度だと下級悪魔……面倒だから平民って言うけど。平民の参加が厳しいというか、ほぼ無理なのを変えてあげたりとかは? 魔王の権力で」
『しないよ? 私はそうしたいと思わないし、そう思っているなら最初にそうしているから。ソーナちゃんがどうしても今を変えたいって思うのなら、それはソーナちゃんが自力で叶えなきゃ』
うわ、厳しい。そりゃ、俺でも分かるような問題点なんて、魔王のセラフォルーさんや長年当主やってるシトリー卿が分からないはずないけどさ。
知ってて教えないで、応援だけはして、ぶつけて行くって方針か。でもって、特権で助けたりはしない。
「それで、失敗したらどうするの?」
『いいのよ、失敗しても、くじけても。諦めちゃったなら、諦めるってことを学べる。それでもどうにか頑張るってことなら、それはそれでいいでしょ?』
「いや、でも費用とかかかるし」
『それぐらい安いものなのよ。……あ、リーくんは人間の感覚が残ってるかもしれないけど、100年くらいなら後でいくらでも取り返せるんだからね?』
どうも見た目のせいで忘れがちだが、セラフォルーさんはこれでも500歳を超えている戦争経験者だ。俺とは時間の感覚やら何やらが違うよな。
シトリー家は魔王輩出の名門。お金もあるから、多少の損失は飲み込んでしまえる。医療っていう流行り廃りのない稼ぎを抑えているから、収入も落ち込みはしない。
しかし、その分の損失はソーナの心の中にずっしりとした経験になって残るわけだ。
『ソーナちゃんはシトリーの当主になる子なんだから、自分で決められるようになってもらわないと困るのよ。何かあるたびに、私やご先祖さまに相談したり頼ったりってなっちゃうとね……。あと、リーくん!』
「はい!」
思わずピシッと背筋正して返事をしてしまった。急に大きい声出さないで欲しい。
『リーくんがソーナちゃんのお婿さんになってくれるなら良かったのよ。でも、そうじゃないでしょ? だけど、今のソーナちゃんはリーくんに頼っちゃってる。それだと、将来シトリーの当主になったときにどうするのってこと』
俺はグレモリーの当主になる。ソーナはシトリーの当主になる。
で、その頃にはシトリーの当主さまが、ことあるごとにグレモリーの当主にどうしたらいいのか聞いてくるようになっていたとしよう。
「それ、俺としてはまったく問題ないような?」
『シトリーは困るのよ』
そりゃそうだ。実質グレモリーの傘下になっているようなものだ。
「ついでに言うと、俺って別にソーナの親でも兄でも、教師でもないので」
妹みたいな感じで接してきたが、血の繋がりはないのだな。血の繋がらない妹っぽい娘って、そこはかとなくエロい響きがある気がする。
ということで、ぶっちゃけシトリー家からソーナとの関りについてどうこう言われる筋合いはないのである。ソーナの成長に影響はあるかもしれないが、責任はない立場。
それが、俺。リヴラクス・グレモリー。無責任にお兄ちゃん風だけを吹かして来た男である。
『そうなのよね。だから、お父さまからは言えなくて、私がこうして話しているのだけれど』
まぁ、セラフォルーさんからなら話は聞くけど。言うことを聞くかどうかは別にして。
「じゃあ、これからは、ソーナからの通信は無視して、顔を合わせても会話もしないってことで? セラフォルーさんからそうしろって言われたってことで……。魔王さまからの命令じゃあ仕方ないなぁ……はぁ」
『やめてやめて、そんなことしたらソーナちゃんが泣いちゃうでしょ! 私も嫌われちゃうから!』
「あーあー……ソーナとの付き合いもこれまでかぁ……悲しいなぁ」
『リーくん! おねえちゃんのことイジメて楽しいの!?』
「わりと楽しいかなぁ」
『もう! 真面目な話してるのに! プンプン!』
「そういう反応が可愛いなーと思ってやってる」
『ほんと? おねーちゃん可愛い?」
「わりと」
実際、スタイル的にはセラフォルーさんが俺的理想かもしれない。おっぱいのサイズとか腰のくびれ具合とか。
口に出すと、その後延々とからかわれそうだから言わないけど。
『そっかー☆ って、すぐにそういうこと言うんだから! だからソーナちゃんも……?』
通信魔方陣に浮かぶセラフォルーさんの顔の前に、亜空間から取り出した『悪魔の駒』を浮かべて見せる。宙に舞っている『兵士』の駒の数は
『兵士』の駒は全部で8個。
魔力量が大きく、かつ『赤龍帝の籠手』で『倍加』したりしていた俺の手持ちの『悪魔の駒』は変異しまくっている。容量小さめの『兵士』の駒は、全て『変異の駒』だ。
そして俺にはまだ『兵士』の眷属はいない。
「シトリーのパーティーに行くまでは、全部あったんですけど……うっかりどこかに忘れてきてしまったみたいで。大切な物だから、どこかの親切なヒトが預かってくれているといいのになー」
まぁいろいろ言われたが、俺はさっきセラフォルーさんが「お婿さんになってくれるのなら良い」とかなんとか言っていたのを聞き逃してはいない。
つまり、もらってしまえばオッケーということ。
いざってときになって、「あ、使っちゃってた」とかなったら困るので、預けて来たのだ。
手元に残しているとうっかりノリで使ってしまいそうだしな、俺は意志の弱い男なので。
『あっと……でも、リーくんグレモリーの当主になるって言ってたよね?』
「おねえちゃんだから話すけど……父上や母上、兄上にも義姉上にも言っていないので、秘密ってことで」
『うんうん、了解……それで?』
なんだろ、えらく嬉しそうだなセラフォルーさん。
「欲しいものがあるので、ちょっと魔王になってみようかと」
『あっ……』
『兵士(変異)』の駒が一つ行方不明。未使用。
ギャー君の例とか考えると、変異の駒の容量は通常の三倍以上はありそうってことで。
シトリーの特性:水の術が得意
原作の描写そのままだと、真レヴィアタンの下位互換な印象しかないので……捏造です。
医療系、グレモリー眷属vsシトリー眷属戦の匙くんの攻撃方法、元ネタの悪魔シトリーのえろい能力、いろいろ合わせたらこんなイメージに。