※この作品はR-18です。

公爵家次期当主好色物語   作:ルペッタ好き

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「ハイスクールD×D 0」を入手出来ていないので、アスタロト家当主さまはオリキャラです。



紅衣の『女王』と紫衣の『騎士』(3)

 ああ、お空の上のラティアの可愛かったことよ……。もう、アスタロト本家のパーティーなんか行かないでお持ち帰りしたい。

 まだ本番はイタしていないのだ。ハグってキスだけである。

 さすがに、最初からスカイ・Love・ハーケンなんて超高レベルプレイは出来ないからな。

 ちなみに、ハーケンとは登山の際などに岩壁や氷壁の割(・)れ(・)目(・)に(・)ぶ(・)ち(・)込(・)む(・)道(・)具(・)のことである。

 しかし、あのサッカー漫画はその後どうなったのだろう。前世の俺は直撃世代だったのだが……サッカー得意じゃなかったけどさ。

 

 はぁ、もう今すぐにもぬちゅっぬちゅっとしたいのだが、まだ我慢の時である。

 ラティアとのアレやコレは例の異空間フィールドが完成して、彼女をこちらに迎えてからってのがあちらの両親との約束だ。その際に馴染みの使用人も連れてくるって話だしな。

 で、それならやはりミスラさんのときのように「お城いるよね?」となるわけだが、パーティー会場までの道すがらに聞いたところ、

 

『わたくしのための城を用意する必要はないわ』

 

 とのことだったので、ラティア用の城は築城しないことになった。かと言って、ラティアがグレモリー本家の屋敷の俺用後宮スペースでずっと過ごすということでもない。

 もちろんラ(・)テ(・)ィ(・)ア(・)の(・)た(・)め(・)の(・)部(・)屋(・)は用意しておくが、基本的には普段は別の場所に住む形だ。ラティアの連れてくる使用人の居場所は俺の後宮にはないからな。

 とはいえ、将来的にはレイヴェルはグレモリー本家の屋敷に住むことになるし、ミスラさんには城を贈った。

 それなのにラティアには何もないってわけにはいかないので──。

 

『せっかく異空間に時間術式用のフィールドを用意するのだから、そこを使わせてもらうわ』

 

 今度造るというか、現在準備中の異空間フィールドをラティアに渡すことになった。

 その後の維持費などを考えると、城よりお値段高くなるからな。

 面積広めのフィールドを用意しておけば、「俺がラティアを冷遇している」とか、「ラティアが俺から雑に扱われている」とか、そういったことを言われることもないだろう。北海道くらいあればラティアパパの分家領地より広くなるだろうから、それぐらいで良かろうよ。

 

 面倒くさい上に無駄のように思えても、お貴族さまは見栄を張らねばならん。

 ちゃんと大事にしてます、きちんと大事にされてますってところを目に見える形にして示しておかないといけないのだ。

 

 そうしないと、当人同士が納得していたとしてもラティアの実家の家臣やら、そこの領民やらがブチギレるかもしれない。

 たぶん、アスタロト家全体でも程度の差はあれそうなる。あとラティアママの実家のアガレス家にもカチンとくる者が出るだろう。他家に出て行った貴族の子女ってのは、実家の御家と領地の代表みたいなものだからな。

 まぁ、俺は平民どもからの評判などどうでもいいと思っているのだが、一応ね。金で解決できることは金出しておけばいいのよ。

 いくら俺でも自ら望んで「叔父のバアル家当主のようだ」なんて言われたいとは思わないのだ。

 

 

 

 

 

 

 アスタロト本家のパーティー会場は、それはもう豪勢な様子だ。

 豪華さだけならば我がグレモリー家も負けてはいない。『聖書の神』の信徒どもから虚飾・虚栄と蔑まれようが、見栄張ってなんぼなのが貴族というもの。

 だが、『アスタロト』は旧き聖書や黙示録にも記された大悪魔。兄上の魔王襲名によって成り上がった部分の大きいグレモリー家よりも、アスタロトの方が古来からの格式は上だ。アジュカ・ベルゼブブさまって超越者の魔王も輩出しているしな。

 同じ超越者クラスの魔王を輩出した名門同士ならば、古くからの序列が高いアスタロト家の方がやや格上と見られるのは仕方がないところか。

 

「何曲か踊っておこうか」

 

 その会場にラティアと連れ立って登場した俺は、かなり注目を集めた。

 今現在、上級悪魔や平民の富豪たちの話題の中心になっているという自覚はあるので、当然と言えば当然なのかもしれないが。

 

「ええ、せいぜい足を踏まれないように注意しておくわ」

「そっちこそどうなんだ? 言っておくが、俺はダンスの授業が結構好きだからな」

「そう、どうせいやらしいことでも考えていたからでしょう?」

「当たり」

 

 お互いこういった場に出ることが少なかったので、実はラティアと踊るのは初めてだったりする。

 だが、まぁ、結構上手く息が合ったのではないだろうか。今のところは身長差がほとんどないことを考えてか、彼女がかかとの低い靴を履いてくれていたのも良かったのだろう。

 男の方が適度に背が高い方が見栄えはするんだよな、この手の社交ダンスって。

 

「俺は180を超えておきたいな」

「わたくしは170超えそうなのよね」

 

 数曲踊って一休み。椅子に座っての話題は身長のことである。

 純血悪魔男性の平均的な身長は180㎝付近。俺が前世を過ごした日本人ばかりの世間よりは随分と高い。基本的には、北欧系白人種の人間みたいな見た目だからな悪魔って。

 純血悪魔女性の平均身長は160台後半辺りだ。165を超えてまだすくすくと背が伸びているらしいラティアは、背が高めな方になりそうだ。

 ちなみに、悪魔女性の代表的存在であるセラフォルーさんは160㎝と小柄なのだが、魔法少(・)女(・)のために見た目年齢を低くしているから背も低めなのだと思われる。もう少し外見年齢を上げたら平均身長くらいまでは伸びそうだ。

 まぁ、御家の血筋によっては3mオーバーも、1m以下も普通にいるのが異形の種族らしいといえばらしいか。平均身長うんぬんはそういう極端な例を除外したデータだしな。

 異形と言えば、男性の顔が魚みたいな御家もあるそうで……モテなくて困っていると聞いた覚えがある。

 俺はグレモリー家で良かったなぁ……。鏡を見る度につくづくそう実感させられる。

 

「ダンスのときの理想的な身長差は10センチと聞くから、そうなると丁度良いかもしれないな」

「そうね」

 

 身長差の大きいレイヴェルと踊るときは派手に決めていく感じになったが、ラティアとは落ち着いた感じがいいのかもしれない。普通にやっていれば、普通に格好がつくので。

 今後もこういった機会が最低でも年に二度は巡って来るから、これは是非とも練習しておく必要があるな。

 やはりダンスが上手い方がモテるそうだから、面倒でも社交に出なければならないのならば、いつかあるかもしれないその時のために練習はしておきたいものだ。

 たまたま踊ったどこぞのお嬢さまと、そのまま盛り上がってしっぽりって可能性はあるはずなので、ぬふふ。

 

「しかし、誰も寄ってこないな」

 

 ぐふふ、と妄想を膨らませてしまうくらいには暇である。

 ラティアとのことを想像すると、すぐに盛りたくなってしまうから困る。

 相変わらずペタペタ触って来るし、ラティアはあれか、俺を挑発しているのか。すぐに受けて立つぞ。

 

「うるさいよりも、ずっといいわ」

 

 レイヴェルと参加したときは、なんだかんだとヒトが寄って来たものだ。

 だが、今夜は遠巻きにチラチラと見られはしても、そこから進み出て話しかけてくるヤツが全然いない。どうやら、俺とラティアのふたりでいると近寄りがたい感じになるようだ。

 ラティアの言うように楽でいいけど。

 

「なら、そろそろアスタロト卿に挨拶しておくか」

 

 アスタロト本家当主は、ラティアの祖母である。

 ラティアの両親から許可は得ているし、ディオドラが話を通してくれているようだが、だからといって挨拶をしておかなくても良いってことはない。

 俺はディオドラを訪ねてアスタロト本家にはよく顔を出しているので、アスタロト卿とはそれなりに話をしたことがある。なので、幼稚舎時代に数度会ったことがあるだけのラティアの両親よりは、話しやすかったりするのだ。

 

「そうね。休まれていたとしても、もう準備を済まされた頃合いでしょう」

 

 派閥トップの御家の当主ともなるとこの社交の時期は忙しいもので、俺たちがこの会場に着いた時は「少々疲れた」と休憩中だった。

 これまでダンスを踊っていたのは、アスタロト卿が「ふぇぇ……」と気を抜いているところに押しかけるのも気が引けるので、少しばかり時間つぶしをしていた面もあるのだ。

 本当は何時何分って時間を決めておけばいいのだろうが、社交シーズンってこの辺りがいい加減になるというか、敢えてゆるっとさせているというか。とにかく伝統的にそういうものらしい。

 

「ようやく顔を見せたか。待ちくたびれたぞ」

 

 パーティー会場から離れた一室で、俺とラティアは豊かな金髪の女性に迎えられた。

 アスタロト卿だ。彼女は、なんというか迫力のある女性である。見事なプロポーションの二十代後半の美女といった見た目をしているが、視線に剣呑な圧がある方だ。

 俺の場合は、魔力量で大幅に上回っているのでどうということもないが、同格以下だと受けるプレッシャーがすごいらしい。……レイヴェルがそう言っていた。

 まぁ、アスタロト卿はそんな感じのヒトだ。

 なんかこう、力尽くで押し倒して、手籠めにして、尻穴ほじくり返してひんひん言わせたい気分になる女性だな。なんか、そっち弱そうだし。

 絶対に面倒過ぎることになるだろうから、ヤらないけど。

 

「リアス、少し顔を貸せ」

 

 そう言って手招きされたので近寄ると、アスタロト卿は俺の頬に手を添え目尻のあたりに親指を当てた。

 アスタロト卿は背丈は俺と同じくらいだが、ヒールの高い靴を履いているのでこちらが見下ろされる形になってしまう。なんだか微妙に悔しいな。

 

「ふん……。お前は見る度にジオティクスに似てくるな」

 

 俺の顔はどちらかというと母上似だと言われることの方が多い。ただ、やはり親子なので父上に似ているところもある。

 

「ああ、そうだ。ラティアの代わりに、この私が遊んでやるとしよう。どうだい坊や、いい考えだろう?」

 

 ぐっと顔を近づけられ、アスタロト卿の金色の瞳が俺の視界を占領してきた。

 

「いえ、遠慮しておきます」

「おや、振られてしまったか。これは残念だ」

 

 豪奢な美女からのお誘いではあるのだが、今はそのタイミングではないのだ。

 からかわれているだけではなく、若干の本気が感じられるのがまことに惜しいが。

 

「お祖母さま。お戯れはそれぐらいになさってください」

 

 ラティアが俺の腕を引っ張ったので、それに合わせてアスタロト卿から距離を取った。

 

「なんだ、ラティア。妬いているのか? 坊やは興味がありそうだったぞ?」

「リアスがそういう男なのは、よく知っています」

 

 ニヤニヤと面白がるような笑みを浮かべるアスタロト卿。その金の瞳は、俺に腕を絡めたラティアを見ている。

 

「まったく、お前は悪いところばかりが私に似てくる」

「お祖母さまに良いところ……ありましたか?」

 

 この組み合わせを俺が見ることは稀なので知らなかったが、結構仲が良いらしい。

 あれかな、アスタロト卿の子供は男ばかり三名なので、女の子が欲しいとか。それで代わりに孫娘をいじって楽しんでいるみたいな。

 

「ははは、そういうところが似ていると言っているんだ。知っていながら出遅れるところもな」

 

 アスタロト卿はそう言うと、ふっ、とどこか遠くを見るような表情を浮かべた。

 雰囲気を信用できないアスタロト家の上に、演技も達者な方なので、それがどういう意味なのか俺には理解しようもない。

 

「……まぁいい、そら、さっさと座らないか」

 

 大仰な身振りをまじえて着席を促されたので、ラティアと並んで指し示されたソファに腰を下ろした。

 全員が席に着くと、アスタロト卿はすぐさま亜空間から一枚の紙を取り出しこちらへと放ってくる。

 魔力で操作されたその紙は、俺の前に滑るように飛んできてピタリと停止。さっさと書面を確認しろと無言の主張をしてくる。 

 

「契約の内容は、事前に聞いていた通りのようですね」

 

 契約書には、俺とラティアとの間に子供が生まれたら、その第二子までをアスタロト家の子、ディオドラの養子とすることについて書かれていた。

 

「騙されたくなければ、よーく確認しておけよ。なにしろこの私は、孫娘から悪いところしかないと言われるお祖母ちゃんだからなぁ」

 

 ラティアから言われたことを笑い飛ばしているように見えたが、実は地味に気にしていたのだろうか。まぁ、あえて突っ込むことでもないだろう。

 言われたように契約内容を確認するが、特におかしなところはない。

 

「ラティア」

「ええ」

 

 ラティアにも見てもらうが、やはり引っ掛かるところは無いようだ。

 まぁ、こんなところでハメる意味もないか。通常ペースで考えると、子供二人って千年計画だしな。

 

「ふふん、そんなに穴が開くほど見つめるな。特に何もありはしないさ」

 

 契約書は同一内容のものが全部で三枚。こちらで保管する分と、あちらで保管する分。そして、政府に提出する分だ。

 これは当事者双方だけでやり取りするものよりも、より厳格な形式になる。

 

「では、署名といこうか」

 

 話がまとまったところで呼ばれて来た政府の者も交え、アスタロト卿、俺、ラティア、それから見届け役の名前が契約書に記された。

 ちなみにこの立会ってくれた政府の者だが、かなりの高官である。ぶっちゃけ知り合いというか、兄上の眷属だ。

 そのままの流れで、雑談タイムに突入。

 

「まさかここで、マグレガーが出てくるとはな」

 

 マグレガー・メイザース。兄上が『僧侶』を二駒も消費して眷属とした大魔法使いだ。

 数ある魔法使いの結社の中でも大規模な組織の一つである『黄金の夜明け団(ゴールデンドーン)』。その創設者の一人であり、かの有名なアレイスター・クロウリーの師匠だったという男だ。

 最終的にその弟子とは喧嘩別れしたらしいけど。

 魔法使いにも派閥争いやら、解釈の不一致による論争からの対立などいろいろとあるらしい。ヒトが三名集まれば派閥が出来るというしな。

 凡人が三人集まれば文殊の知恵だが、非凡な者が集まるとなかなか上手く行かないってことだ。有名な画家同士にも共同生活してみたら酷いことになったって話があったような。

 強い個性同士がぶつかってしまうのだな。

 

「若さまにおかれましては本日もご機嫌麗しいようで、素晴らしい『騎士』を迎えられまこと喜ばしい限りですな」

 

 緋色のローブを着た大魔法使いの視線は、俺とラティアの間に向けられていた。

 ラティアはその性質上よく知らないヒトが相手だと割と緊張しがちなので、安心できるように手を握っていたりする。表情は不機嫌そうなのだけれど、握り返してくる彼女の手からほわっとした気持ちが伝わって来て、大変可愛らしい。

 

「そうだろう。そうだろう!」

 

 兄上のただ一名の『騎士』は、日本では有名な新撰組の隊長をやっていた沖田総司だ。

 なるほど、彼は凄腕の剣士だ。身体の中に大量に妖を飼っていて、剣と鬼の使い方について朱乃に教えてくれてもいる。戦えばラティアよりも強いだろう。

 だが、沖田総司とラティアであれば、どちらが上かは明白。美少女の勝利に決まっている。

 俺の中の価値基準ではそうなる! さらに俺の『騎士』はラティアだけではない! 

 俺vs兄上の眷属ハーレム勝負『騎士』編の結果は──2対0。勝ったな。お風呂でヤって、ベッドでもヤろ。 

 

「リアス、調子に乗り過ぎよ」

「浮かれるぐらいは許してくれ」

 

 ラティアちゃんに叱られたので、ちょいと大人しくしておこう。

 俺が口を慎むと、主にアスタロト卿とマグレガーとの会話になる。

 しばらくの間この二人の世間話が続いた後、アスタロト卿がこう切り出した。

 

「さて、メイザース卿。このあとちょっとした余興を予定しているのだが、見物していかないか?」

 

 マグレガーは兄上の眷属として悪魔に転生してから十分な功績を積み上げ、冥界に自身の領地を所有している。

 そのため主の付き添いではなく、貴族家当主としてパーティーに顔を出すことも出来るのだ。

 

「余興ですか。大変興味深いのですが……」

「ふん、ここまで足を運んでおきながら、アスタロトの宴には顔を出せないということか。魔王眷属はお堅いな」

「いえ、決してそういうわけでは。サーゼクスさまが忙しくされているところで、その眷属が羽目を外すわけには参りませんので」

「それが堅いと言っている」

 

 現在、魔王さま方は大変お忙しい状況にある。旧き魔王の残党、堕天使、それから俺があちらこちらで言ってまわっている『王』の駒の件など、処理しておかなければならないことが多いのだ。

 そのため、例年ならば社交の場に顔を出す四大魔王はお仕事が忙しいのだろう。少なくとも兄上はそう。

 アスタロト卿はその後もいくらか誘ったが、マグレガーはそろそろ帰るつもりのようだ。懐中時計を取り出して時間を確認する仕草をしている。

 

「やれやれ仕方がない。今日の私は振られてばかりだ」

「申し訳ありません」

 

 こうしてマグレガーは帰ることになった。

 

「若さま、例の件の候補が絞れましたので後日連絡いたします」 

 

 と帰り際になって、気になり過ぎる言葉を残して。

 

「ああ、分かった。早いな。もっとかかるかと思っていたから助かるよ」

「ええ、では皆さま。私はこれにて」

 

 マグレガーは去って行ったが、アスタロト卿とラティアからの視線が俺に刺さる。

 

「なんだなんだ、この私の眼の前で気になるやりとりをする。聞いてくれと言っているようなものだ」

「リアスのことだから、どうせまたそちら絡みなのでしょう?」

 

 そちらとは、つまりはアチラ。女絡みである。俺の行動はなんでもソッチ方面だと思われてしまっているらしい。

 正解である。

 

「眷属の『僧侶』として、魔法使いを予定していまして。その候補の人選をマグレガーに頼んでいたのですよ」

 

 マグレガーがこの場でわざわざ口にしていったということは、俺の『騎士』になるラティアとその身内にはある程度話しておいてくれってことだろう。

 依頼の内容的に、マグレガーが自身の息のかかった者を俺のところに愛妾として送り込んだように思われそうだからな。

 マグレガーもそんなことでアスタロト家と揉めたくはあるまい。俺から頼んだのだとアスタロト家にハッキリ伝えておかねば。

 

「なるほど、ヤツは『黄金の夜明け団』の創設者の一人。そして今や魔王ルシファーの眷属だ。悪魔との付き合いが多い魔法使い連中には顔が利くだろう。なんだ、それなりに考えているんじゃないか、リアスは。それに比べて、うちの息子は趣味に偏り過ぎだ。とは言え、あれはあれで面白いから構わんが」

「ディオドラが魔法使いを眷属にすることはなさそうですね。たしかに」

 

 魔法使いと教会って仲悪いから、ディオドラの眷属集めの場には寄り付かないだろうよ。

 

「すでに日本の妖怪を『僧侶』にしていたわね。しかも変異駒の」

「ああ、ラティアは黒歌とはまだ会ったことがなかったか。猫魈という希少種の妖怪出身だ。その黒歌に変異駒を使ってしまったから、通常の『僧侶』でまだ育っていない者かつ将来性のありそうな者を……と少しばかり難しい条件で探してもらっていたんだ」

 

 なお最重要な条件は、美女もしくは美少女であることである。

 

「十分に成長し、技を磨き知識を蓄え、名の知られた魔法使いはそれこそ今のマグレガー・メイザースのようにコストが重いから、か」

 

 アスタロト卿の言葉のように、魔法使いは、技と知識と名を積み上げるほどに魔法力を強めていく。それに合わせて『悪魔の駒』の容量に関係する評価値も高まっていくのだ。

 超越者である兄上の『僧侶』二駒とか、マグレガーは神器持ちではない人間としては転生時の駒換算評価が相当なものだった。人間をやっていた時点で、裏の世界に名が知れ渡っていたからな。

 まぁ、それは父上の『僧侶』のアグリッパも同じだが。

 俺としては、父上や兄上のように若返りや長い寿命を餌に高名な魔法使いのジジイを釣り上げるよりも、色々な意味で有望な若手をこれまた色々な意味で育成していきたい。

 迷信、『夢幻(ファンタジー)』の類は一般人間さんの知らない裏の世界では事実となる。魔女が悪魔と交わることで力を高めるという話も、こっちの世界では本当のことなのだ。

 俺ほどの大魔力持ち悪魔が股間の箒(ほうき)を魔女の股に当てがって意識を飛ばしまくってやれば、それはそれは強力な黒魔女になること間違いなし! 箒や杖にまたがって空を飛ぶってそういう意味合いもあるらしいからな! 

 俺vs兄上の眷属の華やかさ勝負。『僧侶』部門も圧勝になってしまいそうだな、これは。わははー。

 

「それでお祖母さま、余興というのはどういうことでしょうか? タイミングから考えてわたくし達が関係していそうですけれど」

「おや、さすがは我が孫だ。私の考えが読めているな。なーに、グレモリーはドラゴン退治の見世物をしたそうじゃないか。そうだろう、リアス?」

「ええ、俺とタンニーン殿の子ボーヴァとの戦いを見せましたが」

「そうだろうとも。ならばこの私もヴェネラナに負けてはいられん! それなりの見世物を客人たちに提供しないといかんよなぁ! そら、ついてこい!」

 

 脚の付け根まで見えてしまう切れ込みの激しいドレスを翻し、大股で歩き出すアスタロト卿。

 その後ろに、俺とラティアはついていくしかなかった。このヒト、かなり強引かつ我が儘マイペースで、すぐに面白がって行動するからなぁ……。

 

「で、どうしてここにいるのですか? ……ライザー義兄上」

「アスタロト卿に呼び出されたら来るしかないだろう!」

 

 連れていかれた部屋には、何故かいつものように金髪の前髪をピンと逆立てたライザー義兄上がいた。ただ、心なしかその勢いが弱いようにも思える。お疲れなのかな? 

 あとその話し相手でもしていたのか、ディオドラもティーカップを傾けていた。

 

「あと、ディオドラは久しぶりってほどでもないな。会場で見かけなかったが、ここに居たのか」

「やぁ、リアス。ラティアとは上手く行ったみたいだね。そうそう、余興の主役の接待さ」

 

 ディオドラは相変わらずの人当たりの良さそうな穏やかな笑顔を見せてくる。

 この顔と雰囲気で、内心は聖処女堕落調教嫁化計画にどろどろとした熱意を燃やしているのだから、見た目の印象ってのはまったくアテにならない。ポーカーフェイスは貴族の基本スキルだが、アスタロト家はそんなの目じゃないんだよなぁ。

 あと、ライザー義兄上は割と素直に内心が表情や態度に出るヒトなので、大変分かりやすい。

 しかし、室内の金髪指数が非常に高い。悪魔って金や銀の髪が多いから、紅髪のグレモリー家の目立つこと。

 

「リアス、ここまで見せたら本日の余興の内容は分かるな?」

 

 言いながらアスタロト卿は俺の肩を叩いてくる。

 

「即興劇……では、ないですよね?」

「ハーッハッハー! そんなわけがないのは分かっているはずだ。分かっていながら女に言わせるのは、あまり趣味が良くないぞ」

 

 一人で盛り上がっているアスタロト卿をラティアがジトッとした目で睨んだ。

 

「お祖母さま、つまりリアスとライザーさまの決闘でしょうか?」

 

 ライザー義兄上の気の進まない様子からして、なんとなく予想はしていたが……。

 

「グレモリーがドラゴンならば、こちらはフェニックス! どちらも伝説の生物。余興として戦いを見せるのならば、これに勝る演出はないだろうよ!」

 

 ふむ、しかしこう言っては何だが、俺とライザー義兄上では勝負にならない。

 フェニックスは強いが、その強さを支えているのは魔王や武神クラス以下の攻撃ではそうそう倒されない不死身の特性にある。

 俺はいわゆる魔王クラスを超えているので、やろうと思えば一撃で決着だ。ボーヴァ・タンニーンのときと大差ない結果になるのは目に見えている。

 

「ああ、それからラティア」

「ええ」

「勘違いしているようだから言っておくが、戦うのはリアスではない。お前だ」

 

 ラティアが、戦うのか。それならばまた分からなくなってくるが、いや、それにしても……。

 

「不満そうだな、リアス。なに、このライザー・フェニックスだが、実はラティアの婚約者候補でな」

「は?」

 

 アスタロト卿のその一言で、俺の視線はライザー義兄上に向いてしまう。

 

「おい、リアス。やめろ! 攻撃的なオーラをこっちに向けるな! 俺は知らなかったんだよ! いつの間にか父上が話を進めていてだな……」

「フェニックス卿はなかなか欲深い男ということだ。グレモリーに長女を嫁がせ、三男をアスタロト家に……ふふん、私は嫌いではないぞ。その強欲さ。だから、縁談を勧めたのだが断られてしまった。なぁ、ラティア?」

 

 演技がかった身振りで、アスタロト卿は室内の者の視線をラティアへと誘導した。

 

「嫌よ、趣味じゃないもの」

 

 注目を浴びたラティアは、俺に寄り添うようにしながらライザー義兄上に冷たい言葉を浴びせる。

 

「グぅ……おぉ……。なぁ、リアス! 俺が一体何をした! 何もしていないのに、どうしてこんな目に遭わされねばならん!」

 

 おお、ライザー義兄上が、告白もしていないのに手酷くフラれたみたいになっておられる。

 俺も前世のトラウマを掘り起こされてしまいそうだ……。

 ライザー義兄上、ラティアはそこまで義兄上を嫌っているわけではないのです。ただ、言葉のチョイスがキツイだけなのです。

 でも、これ説明しづらいんだよなぁ……。  

 

「とまぁ、このような縁があったので、ライザー・フェニックスに今回の余興に出てもらうことにしたわけだ。さて、ラティア。龍帝の『騎士』のお披露目だ。フ(・)ェ(・)ニ(・)ッ(・)ク(・)ス(・)相(・)手(・)に(・)精々盛り上げて、私を楽しませてくれよ!」

「フェニックス……そういうことですか。分かりました、お祖母さま」

 

 




次回は、HDD二次の伝統





アスタロト卿:アジュカとディオドラの母親。ラティアの祖母。
女性にしたのは、グレモリー、シトリー、バアル、アガレスと男性当主ばかりなのでバランス的に。悪魔は女性当主も普通にいるようなので。
なんとなく宴おばさんを思い浮かべながら書いていたら、脳内でフルボイス再生出来てしまった……。



当初は『王の駒』編を10話くらいでサクッと終わらせて魔女に行くはずでしたが、なんだか長引いてしまっているので(行き当たりばったり)、章タイトル変えました。
魔女はこの次に持ち越し。
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